実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

富山市立山室小学校の活動報告/平成21年度1〜3月
前へ

セールスポイント

研究のまとめ

 2学期末に実施した3部会による研究のまとめを受け、学年での研究の見直しを進めた。
 まずは、各学級担任が自分の学級での実践を振り返り、「生活規律確立」「基礎学力定着」「授業力向上」の3つの観点で成果と課題を明らかにし、A4サイズ1枚の資料にまとめた。資料は印刷して全教員に配付した。各担任の小さな工夫や改善を少しでも共有できればよいと考えたからである。
 次に、資料を基に学年部会で学年としての成果と課題を明らかにした。学年の総意として発表するため、事前に学年で検討し、吟味して発表に臨む必要がある。資料に沿って話を聞き合うことで、紙面では伝わらない指導法のよさや子どもの育ちを共有することができた。さらに、全体研修会でプレゼンテーションするための資料作成に取りかかった。限られた時間内で、どんな観点で、何を取り出して発表するかを検討した。このように実施した学年研修そのものが、非常に効果的な研修時間となった。
 最後に、全体研修会で各学年の発表を聞き合い、来年度の研究につながるように研修を深めた。学年の実態に応じた取り組みの工夫や改善、そして苦労を知ることができ、来年度、担任が替わっても継続して研究を続け、指導していくために必要な情報を共有することができた。

実践経過

今年度の研究のまとめ・来年度の研究の構想

1月
  • 学年部会
    • 学級の取り組みを見直し、成果と課題を明らかにする。
    • 各学級の成果や課題を基に、学年の取り組みを見直し、成果と課題を明らかにする。
    • 学年研究の成果と課題についてまとめ、校内発表の準備をする。
2月
  • 校内発表会
    • 各学年の研究の成果と課題について発表を聞き合い、共通理解する。
       「生活規律確立」のための取り組みの成果と課題
       「基礎学力定着」のための取り組みの成果と課題
       「授業力向上」のための取り組みの成果と課題
    • 生活科や総合的な学習の時間の指導から、育った力を分析し、研究の成果との関連を考える。
  • 「基礎学力の時間」で使用したフラッシュ型教材及びワークシート類を整理し、共有化する。
3月
  • 来年度の研究の方向について構想を立てる。
 

成果と課題

各学年の研究成果の確認

●成果 【各学年の成果の確認】
 「生活規律確立」「基礎学力定着」「授業力向上」の3部会での研究の成果を2学期末に確認した。今学期は学年部会を中心とした研修を実施し、学年として、研究を通して明らかになったこと、残された問題点をまとめた。それらを全体研修の場で発表し合い、共有化することで来年度の研究につなぐことができると考えた。学年の実態に応じた指導内容や指導法、子どもの学力の実態などを聞くことができ、来年度の研究の構想に役立てることができた。
【効果的な指導法の共有】
 各学年の発表を通して、個々の教員が実践してきた指導法の工夫を知ることができた。生活規律確立のために継続して徹底させてきたこと、ポイントをしぼって指導してきたことなど、ねらいに迫るためのちょっとした工夫点が参考になった。また、「基礎学力の時間」の中で使用するワークシートやフラッシュ型教材にも子どもの習熟に合わせた改善点や工夫点が見られ、効果的な指導につながっていると感じた。このような指導法の工夫を知ることは、教員個々の指導力向上につながったと思う。
●課題
 各学年の研究の成果を来年度の研究につなげていくために、全体研修会で、成果を系統的に整理したり、課題について検討したりするなど、まとめるための時間を十分に確保することができなかった。研究推進委員会で検討し、来年度につなげたい。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

教員のプレゼンテーションスキルの向上

 今年度の研究のまとめを共有するための全体研修会では、プレゼンテーションソフトを使用した発表が多く見られた。昨年度に比べると多くなっているだけでなく、そのクオリティも高くなっていると感じる。日常的にICTを活用してきたことによって機器に対する抵抗感が少なくなったことと、「伝える」ための手段として効果的であることを実感してきたからかもしれない。
 毎朝の「基礎学力の時間」や授業で日常的にプレゼンテーションソフトを活用している教員が増えてきているのも事実だ。フラッシュ型教材を使った習熟のための指導、分かりやすく説明するための資料提示の工夫、段階的に思考を深めていくための提示資料など、学習のねらいに即して活用している。このような日常的な活用が、教員個々のプレゼンテーションスキルの向上につながっている。
 

2年間(20・21年度)の実践を終えての感想

 本校は、平成17年度から「基礎学力の時間」を設定し、基礎的な学力の向上に向けて取り組んできた。また、平成18年度からは、ICT機器の日常の授業での使用を考え、学力向上のための効果的な活用法を模索してきた。特別研究指定を受けた段階で、このような研究の基盤がある程度構築できていたことが大きな研究成果につながったと感じている。そして、研究助成を受けることで、研究を推進することが容易になったと言える。
 具体的には、全学級に機器を常置することが可能になり、研究の推進につながった。そして、訪問アドバイスのシステムにより、玉川大学の堀田龍也先生、富山大学の高橋純先生のご指導を受けながら推進していくことができた。さらには、公開研究会を実施することにより、他者の意見や考え方を知る機会を得、実践への見直しを図ることができた。
 特別研究指定校としての2年間は、本校の教員にとっても、子どもたちにとっても、大変有意義であり、充実した2年間だった。パナソニック教育財団に心より感謝申し上げたい。
 

次年度(22年度)以降、今回の成果をどのように展開するのか(課題、目標など)

 今年度末の子どもの実態、研究の成果と課題をふまえ、来年度以降も研究を継続していくつもりである。効果が見えてきた指導法の工夫改善を図りながら、子どもの学力向上を目指して実践を重ねていきたいと思っている。それとともに、「習得した事項を活用する学習活動」や「習得した事項を活用した探究型の学習活動」についても、子どもの言語活動を充実させながら取り組んでいきたいと考えている。
 そのためには、まず、今年度と同様に実践していくための体制を確保し、研究組織を早々に構築して、各学級での実践をスタートさせることである。指導法のノウハウを共有するための研修の機会を設け、新担任による実践をスタートさせ、早い段階で学級のルールや約束を作ることができるようにしたい。そして、今年度同様に、日常の授業における指導法の工夫改善を研究の核として進めていきたい。
 学力に関しては、4月実施予定の県の学力調査の結果を活用し、平成20年度、21年度のデータと比較して考察し、子どもの実態に応じた研究となるように配慮したい。

解説と講評

コメント:玉川大学 教授 堀田龍也先生

 2009年11月13日(金)に本校の公開授業研究会で配布された研究紀要「わかる授業はじめの一歩II」等の成果物は,昨年度に公開研究会後も参観者たちの話題となった。
 本校では,昨年度同様,公開研を過ぎても,日常的なICT活用は繰り返し行われている。教員が日常的にICTを活用することの副作用として,ICTに対する抵抗感が低減した。特にフラッシュ型教材の作成等でプレゼンテーションソフトを用いていることから教員のICT操作能力が高まった。さらに,日々の学習指導において段階的に思考を深めさせるための提示の方法などを考えてきたことから,教員のプレゼンテーションスキルの向上につながっていることは特筆すべきであろう。
 本校の2年間の研究は,基礎基本の徹底,とりわけ習熟させる学習指導法にICTを融合させるという点で,我が国のスタンダードとなったと言っても過言ではない。特別研究指定校の1年次と2年次で学校長はじめ多くの教員の人事異動があったが,学校の指導システムにICT活用が組み込まれていることで,揺らぎの少ない教育実践となったことは高く評価できる。本校の研究がこのように進展した背景には,パナソニック教育財団による特別研究助成の後押しの他,地元大学である富山大学人間発達科学部の高橋准教授による継続的な支援が大きい。学校に実践が根付き,それが他校に影響を及ぼしていくためには,地域を単位にした共同研究支援体制が不可欠であることが示された好例とも言えるだろう。
 2年間の山室中部小学校の努力に敬意を表し,2年間の最後の講評としたい。
 
前へ
富山市立山室中部小学校の基本情報へ