実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第36回特別研究指定校(活動期間:平成22〜23年)

三原市立幸崎中学校の活動報告/平成22年度8月〜12月
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セールスポイント

教育研究会(10月5日)の開催

 2学年(社会),3学年(国語)の2クラスで学習集団やICTを活用した授業を公開した。社会科では,西南戦争と自由民権運動について,電子黒板で提示した資料をもとにグループで話し合い活動を行った。国語科では,論説文を読み,学習集団での話し合いで筆者の考えに的確に迫り,まとめを電子黒板で掲示してクラス全体で共有した。
 さらに1学年では英語科で小中連携をテーマに授業を公開した。その際,電子黒板を効果的に活用して指示を出したり,例題などを示したりすることができた。
 授業後は,分科会で反省・改善点等について協議し,参観された先生方からも様々な助言をいただくことができた。

ICT活用をテーマに授業研究を実施

 (3教科)(数:9月27日,国社:9月30日)数学,社会,国語の3教科の授業研究を実施し,前回(7月5日)の反省を踏まえて,ICTを活用した授業を展開した。

数学 1年「文字式」: 
個数を「n個」と表す際,生徒がイメージ化しやすいように,アニメーションを使って徐々におはじきの個数を増やしていくことで,文字式の特色を表した。また,授業内容のまとめの際には,学習集団で話し合いをしてまとめた内容を,書画カメラで電子黒板に映し,クラス全体に共有化することができた。

社会 2年「文明開化」:
明治時代の文明開化の様子について,江戸時代と明治時代のそれぞれの街並みの違いを見つけて発表しあったあと,文明開化によって明治政府がどんな国作りを目指していたか学習集団で話し合い,まとめた。

国語 3年「『問題な』日本語」:
最近見られる日本語の間違った使い方について,電子黒板で提示し,どこが間違っているか,どんな言い方が正しいか,それぞれグループで協議して正解を発表しあった。また,書画カメラを使って生徒のまとめを電子黒板に映し,まとめ方の交流を行った。

みつわ祭(文化祭)での活用

 体育館での発表の際,パワーポイントの画面やビデオで撮影した映像をプロジェクターを使って映し,分かりやすく観客に伝えることができた。
シンポジウムを開催します

群読)平家物語の群読を行った。その際,平家物語のあらすじやみんなで群読する場面の説明をパワーポイントを使って分かりやすく紹介することができた。

(各学年での発表)
1学年 幸崎中学校校歌の歌詞から,幸崎町やふるさとについて考え,自分たちの意見を発表した際,学校での様子や校歌の歌詞,ふるさとの風景などをパワーポイントで映し,より分かりやすい発表とすることができた。
2学年 8月に行った職場体験学習についてニュース番組風に発表した際,職場体験学習についてのまとめやその活動の様子などを,パワーポイントを使って映し,分かりやすく説明することができた。

3学年 自分たちが発表する劇の練習風景などをビデオで撮影し,劇の最後にキャスティングなどと共に映して,発表を締めくくった。

実践経過

(1) 夏季校内研修(8月25日)

 安田女子大学の片上宗二教授に講師としてきていただき,思考力・表現力育成のための学習集団の形成,ICTの活用,小中連携など,多岐にわたってご教授頂いた。
 また,教育研究会に向けて指導案検討や授業の改善ポイントなどについてもご教授頂き,大変参考になった。


(2) 第10回 校内研修(9月27日)

 数学の研究授業を行った(内容は上記)。また,授業後に研修を行い,指導主事からは,学習集団での話し合いの持ち方の工夫について,まとめ方の工夫などについて適切な助言をいただくことができた。


(3) 第11回 校内研修(9月30日)

 国語・社会の研究授業を行った(内容は上記)。また,大阪教育大学の木原俊行教授にもご来校頂き,指導・助言をいただいた。木原教授から,ICT活用の3つの効果について改めて説明して頂いた。さらに,ICTの基礎的活用にとどまらず,本質的活動,副次的活用も含めて活用できるような指導方法の工夫が必要であるとの助言をいただくことができた。また,"2015年の教室でのICT活用"の様子の予想図を見せて頂き,今後,ICTでどのような活動が可能であるか,目指す形を少しずつイメージすることができた


(4) 教育研究会(10月5日)

 国語・社会・英語の授業公開を行った(内容は上記)。また,安田女子大学の片上宗二教授に御講演いただき,思考力・表現力を育成するためにどのような実践やアプローチが必要であるか,学習集団の力を向上するために教え合いや学び合いをどのように実践していくかなど,様々な観点から講話して頂き,大変勉強になった。


(5) 第12回 校内研修(12月27日)

 生徒アンケートの分析や,教育研究会後のICT活用の実践例のまとめについて研修を行った。また,3学期に向けてどのように授業や生徒への指導を改善していくか協議した。


 

成果と課題

成果
  • ICTを活用した授業の具体例を各教科で徐々に積み上げることができたので,授業中に様々な活動ができるようになった。
  • 電子黒板に加えて書画カメラも導入され,生徒の作品をすぐに全体で共有できるようになった。
課題
  • まだ活用範囲がICTの基礎的活用(資料の提示,興味づけなど)にとどまっている場合が多い。ICTの本質的活用(思考力・表現力を育成するためにどうICTを活用するか)を,授業の中でどのように実践していくかが課題である。そのためには,生徒の知的好奇心を刺激するような教材の工夫・開発が必要であると思うが,それをどのように見つけるかが難しい。
  • 「学習集団の育成を通して」という本校の研究テーマといかにリンクさせてICTを活用していくか,まだまだ検討が必要である。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • 機械操作に充分精通していないので,まだ模索しながら行っている。特に書画カメラの倍率を操作したり,パソコン画面と書画カメラの画面を転換したりする操作が難しく,授業中に時間がかかってしまうことがあった。
  • 電子黒板の画面が光で見えにくい,という生徒からの意見があり,暗幕カーテンを教室の南側の窓に設置したが,反対の北側の窓に取り付けなかったため,やはり反射してしまい,画面が見にくかった。

解説と講評

コメント:大阪教育大学教授 木原俊行先生

研究的実践の蓄積と公開 − 広島県三原市立幸崎中学校の取り組みの特長

広島県三原市立幸崎中学校は,3学年とも単学級の小さな学校である。当然,教師の数も少ない。しかしながら,学校のレポートに記されているように,同校の授業研究会の回数は多い。一人の教師が1年間に2度,3度と研究授業を実施する。

しかも,提案される授業におけるICT活用のレパートリーが豊富だ。教師の資料提示に用いられる場合もあれば,子どもたちが発表や意見交換に用いる場合もある。それは,同校の教師たちの研究に対する姿勢によって加速している。学校のレポートにこれも記されているように, 7月5日に筆者が指摘した ICT活用の様々な可能性をすぐに検討し,9月の研究授業にて,それを実践化して確かめている。また,写真のように,教員数が少なくても,研究授業後の協議会はグループワークを中心に構成して,ICT活用に関する教員間のアイデア交流を活性化しようとしている。同校では,教師たちの研究に向かう真摯な姿勢によって,ICT活用に関する研究的実践が着々と蓄積されているのだ。

さらに,10月には,公開研究会を催し,全学年で授業公開をおこなうとともに,分科会形式で公開授業に関する協議を実施している。そして,そこで,参加者から授業改善の視点等を提供してもらっている。研究的実践の公開とそれによる授業改善の促進のよい関係を,同校の公開研究会の様子に確認できよう。

そうした研究的実践の積み重ねが功を奏しているのであろう。授業研究以外のシーン,例えば文化祭においても,子どもたちがICTを用いてプレゼンテーション等をおこなうようになっている。それも,同校の研究的実践の充実を物語る風景であろう。

 
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