実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第36回特別研究指定校(活動期間:平成22〜23年)

三原市立幸崎中学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

充実した教育機器

 昨年度からの整備により、社会科教室、数学科教室、英語科教室に電子黒板が1台ずつ、また、スマートボードやプロジェクターを利用できる特別教室もある。さらに、書画カメラが6台、理科室には高速度カメラ、デジタルカメラ付き顕微鏡も整備されている。手軽に視聴覚機材を使用できる環境が整っているため、教職員も積極的にICTを取り入れて授業を行おうとしている。他にも、英語科ではデジタル教科書、数学科ではデジMATHといったデジタル教材も今年度から取り入れている。
 

学習集団・ICTの活用をテーマに、授業研を実施(3教科)

国語 1年「書道」:
書画カメラで『大志』の文字を書き、どんなところに注意して書いているかを考え、話し合わせた。その後、意見を発表し、電子黒板のペン機能で色を使い字形を説明した。各自の練習の後、代表の生徒が実際に書く様子を書画カメラで映し出した。(右の写真がその時の様子)
美術 3年「鑑賞」:
グループで担当するルネサンスの作品についてインターネットで調べ学習し、パワーポイントに前時までにまとめておいた。それを情報処理室の教師用パソコンから生徒用パソコンへの画像転送システムを使い、スライド紹介を行い、教材提示装置も活用し、グループ発表を行った。
数学 3年「式の計算」:
学力向上対策事業の研究授業で、主に学習集団を活用した授業を行った。ICTは課題提示や問題を解くときのポイント説明として利用した。

実践経過

(1) 第3回 校内研修
(5月23日)

学力向上対策事業として研究授業を行った。(内容はセールスポイント参照)また、大阪教育大学の木原俊行教授にも来ていただき、授業について、また、これからのICT活用方法についてご教授いただいた。他校の教員も参加していたため、我が校での取り組みを普及することができた。
 
(2) 第6回 校内研修
(6月13日)

ICTの活用をテーマにした研究授業に向けて指導案検討を行った。視聴覚機材を使う際の注意点(操作方法、事前準備のポイントなど)について確認した。
 
(3) 第7回 校内研修
(6月27日)

第6回の校内研修を受け、国語・美術の2教科について研究授業として公開した。(内容はセールスポイント参照)また、第7回の研修にも木原教授に来ていただき授業についての指導・助言、公開研究会に向けての授業のアドバイスをしていただいた。
 

成果と課題

成果
  • 校内研修を通して、他教科でのICT活用方法を見て、自分の教科ではどのような活用ができるだろうかを考える場面が増えた。

  • 昨年度1年間の取り組みを経て、授業の中でICTを活用しようとするとどのような活用方法があるだろうかと考えることも増え、教員の意識が高まってきている。

  • 生徒も活用頻度が増え、機器に慣れたり、パワーポイントを使って上手にまとめたりすることができている。

課題
  • 我が校の研究主題でもある『思考力・表現力』の高まりとICT活用がどう作用しているかという評価の仕方がまだ明確ではない。

  • 小規模校で各教科1人体制なので、今年度転任してきた教員と昨年度からいる教員とで、取り組みに差が出たり、機器を使いこなせていない教員もいたりする。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

5月23日の研究授業では大阪教育大学の木原先生に来ていただいた。実は、その日は木原先生のお誕生日だったことを後日パナソニック教育財団からのメールで知った。ケーキやお饅頭の1つでも準備しておけばよかったと教職員の間で悔やんだこと。

解説と講評

コメント:大阪教育大学教授 木原俊行先生

ICT活用の進展を支える授業研究の充実

 広島県三原市立幸崎中学校の教師たちは、昨年度に続いて、2011年度も、生徒に思考力・表現力を育むためのICT活用を追究している。そして、そのレパートリーがいっそう広がりを見せている。学校による報告にも記されているが、昨年度に定着した、電子黒板を用いて課題提示等を遂行するスタイル(数学)が確認されると同時に、書画カメラで生徒が自身の作品を発表する場面が新たに設定されている(国語)。さらに、コンピュータ室で生徒が調査結果をレポートする姿も登場している(美術)。同校では、あらゆる教師が、自身の授業改善課題にどのようにICT活用が位置づくかを検討し、それにチャレンジしているのだ。

 それらのICT活用の進展は、幸崎中学校の授業研究の充実に支えられている。特に、その企画・運営上の工夫に注目したい。例えば、5月の授業研究会においては、三原市教育委員会による学力向上対策事業と連携して進められた。それゆえ、市内の中学校の数学科の教師が参加して、同じ教科の実践者としての立場から、当該研究授業に関してコメントを呈してくれていた(幸崎中学校には、数学の授業を担当する教師は、1名しかいない)。

 さらに、5月や6月の授業研究会においては、前回の授業研究会で明らかになったICT活用の課題と成果を、事後協議会の開始時にていねいに確認して(写真左の小ボードにそれが記されている)、協議のポイントに据えている。同校の教師たちは、それを通じて、異なる教科の研究授業を接続させ、そこで繰り広げられたICT活用を関連づけ、学校内で共有化しようとしている。

幸崎中学校の教師たちの取り組みは、ICT活用の進展と授業研究の充実のよき関係を体現するものであろう。

写真 幸崎中学校の6月の授業研究会(事後協議会)の様子

 
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