先導的実践研究助成(高等教育機関の研究者に対する助成制度)先導的実践研究助成(高等教育機関の研究者に対する助成制度)

平成22年度 先導的実践研究助成贈呈式レポート

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ICTの効果的な活用法を推進する実践的な研究を支援

「平成22年度 先導的実践研究助成」の贈呈式が、2010年4月24日(土)、東京・港区の芝パークホテルにて行われました。先導的実践研究助成とは、初等中等教育におけるICTの効果的な活用を促し、実践を根付かせることを目的とする、高等教育機関の研究者を対象とした助成制度です。贈呈式には財団の赤堀侃司常務理事・白鴎大学教授と審査員・主査、助成を受ける研究者らが出席、研究者が課題を発表するヒアリングと、互いの情 報を交換し合う懇親会も開かれました。 大学など高等教育機関における教育研究を支援する制度にはさまざまなものがありますが、 「先導的実践研究助成」における最も大きな特徴は、「研究を実践と結びつける」という点にあります。机上の理論だけに終わらず、実際に小中高の教師が教室で利用することのできるプログラムや教材を開発する。これが、当助成制度が最も大切に考えていることです。

贈呈式であいさつを行った赤堀侃司常務理事・白鴎大学教授はこのように述べています。「研究を研究だけで終わらせず、いかに実践に生かすかということは、現在、世界的に広く重視されている課題です。私たちの助成は、いかに実践に役立つかという視点で採択し、主査がヒアリ ングを行って進捗状況を確認し、教材やセミナーといった形で成果が完成するまでを見届けます」。 さらに研究のタイプを、すぐに活用できるものを提供する「普及型」、先導的な実践 を記述・開発する「モデル型」、将来を見越した新しい取り組み「萌芽型」に分け、現場に即座に還元できるものから、未来につながる研究までを、まんべんなく支援しています。

教育分野での研究を幅広く募る制度でもあり、今年も特別支援教育での外国語活動、ハイビジョン、e-learningなど、多彩な研究テーマが集まりました。

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ヒアリングによって研究の成果・完成度を高める

「先導的実践研究助成」の贈呈式に続き、主査と研究者によるヒアリングが開かれました。当制度の創設に携わっている研究者が主査となり、助成を受ける研究者たちのプレゼンテーションを聞いてアドバイス等を行ったものです。最初に問題点や課題を話し合うことで、研究の精度を高め、より実現しやすいものにしようという試みです。

ヒアリングは、研究のタイプに合わせ、3グループに分かれて行われました。「普及型(1)」は堀田龍也玉川大学教授、「モデル型」は木原俊行大阪教育大学教授、「普及型(2)と萌芽型」は黒上晴夫関西大学教授がそれぞれ主査を務め、研究の方法とその成果のまとめ方について確認しました。

「普及型」の中で、中山晃愛媛大学准教授は、特別支援教育での外国語活動におけるICT活用支援の発表を行いました。小学校では、2011年から外国語活動が必修となりますが、その方法論はまだ固まっておらず、特に特別に支援が必要な児童生徒に対して実践例はほとんど報告されていません。そこで、授業の実践モデルをICTを使って開発し、現場の教師へのサポートを行うというのがこの研究の目的です。

主査の堀田龍也玉川大学教授からは、「現場の教員の意欲を喚起するのが難しい」「最初に制作するもののイメージを明確にしてはどうか」といった具体的な指摘があり、ガイドブックやDVDなど、さまざまな可能性が示唆されました。

「モデル型」では、影戸誠日本福祉大学教授による、国際協働プレゼンテーション大会を素材としたマルチメディア英語教材作成についての発表などがありました。主査の木原俊行大阪教育大学教授は作業人員の確保など進行について確認し、また著作権表 示の問題などについて他の研究者も交えた議論が行われました。

「萌芽型」では、石井奈津子芝浦工業大学講師が、e-learning教材の開発について発表。主査の黒上晴夫関西大学教授とともに、教材の目的についての確認が行われました。

この他、出席した一人一人の研究者による発表があり、主査の先生方との話し合いの中で、研究の実現・成功に向けての大きな成果がありました。なお、今回のヒアリングには財団の職員も出席しました。今後も会議やメーリングリストに参加し、研究の状況をしっかりと把握しながらサポートを続けていきます。

助成先一覧 普及型
高橋 純 高橋 純
富山大学准教授
ICT活用初心者教員のための「ICTを活用した授業づくりリーフレット」の開発
 
新地 辰朗
宮崎大学教授
新地 辰朗
教育経営に機能する教育情報化の普及を支援する“教育情報化事例ガイド”の開発
 
野中 陽一 野中 陽一
横浜国立大学准教授
学校の情報化の状況を具体的に示す「学校情報化チェックリスト」の普及とその効果的な活用
 
中山 晃
愛媛大学准教授
中山 晃
特別支援教育での外国語活動におけるICTの活用促進を目指した参加型校内研修の企画・運営ガイドの開発
 
村川 雅弘 村川 雅弘
鳴門教育大学教授
総合的な学習の時間のカリキュラムマネジメントのためのワークショップ型研修パッケージの開発
 
モデル型
内垣戸 貴之 内垣戸 貴之
福山大学講師
ハイビジョン規格コンテンツの制作モデルの活用と精緻化
 
中橋 雄
武蔵大学准教授
中橋 雄
映像の理解・表現に関するメディアリテラシー教育教材の開発
 
影戸 誠 影戸 誠
日本福祉大学教授
国際連携を志す教員を支えるICT教材整備と交流デザイン
 
萌芽型
石井 奈津子 石井 奈津子
芝浦工業大学講師
中等教員養成におけるICT活用指導力の質保証を実現するe-learning教材の開発
 
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懇親会で情報交換 研究活動への抱負を語る

ヒアリングの後は、参加者一同により懇親会が開催されました。日頃学会等で顔を合わせている研究者たちもいれば、初対面同士という人もいましたが、同じ教育という分野を専門としているだけあり、尽きることなく談義が交わされていました。

当助成は、新人からベテランまで、多様な立場の研究者に助成を行っています。懇親会の顔ぶれもさまざまですが、その中で、2004年から教鞭を執っている若手の研究者、内垣戸貴之福山大講師にお話をうかがいました。
内垣戸先生は、授業の中にハイビジョン映像を取り入れるための研究を行っています。「ハイビジョンの16:9の縦横比は子どもの視野に近く、ハイビジョンの映像を見せると、これまでよりも細かいところに目が行くようになるということがわかっています。私たちの研究は、私たちのところにとどまらず、現場の先生に確実に還元されるものなので、今回は、私のチームと現場の先生方を代表して助成を受けているつもりでいます」。「先導的実践研究助成」は研究者に対する制約が少なく、自分たちの考えで効果的に利用できるという点でも、利点があるそうです。

今年度は、21件の応募に対し9件が助成の対象となりましたが、審査委員でもある主査の木原俊行大阪教育大学教授はこう語っています。「最も大切なのは、研究者と小中高の先生とのパートナーシップが確立していて、現場の ニーズが研究の中に確実に生かされていること。また、期間が1年間と区切られているので、きちんとした計画や準備ができており、1年の間に何かしらの成果が上げられるという見通しがある点も大事です」。 助成を受けている研究者と主査、財団職員の間でしっかりとコミュニケーションが取れていることから、研究者が安心して活動に取り組むことができるという点も、他の支援制度にはない大きな特徴とのことです。今後、研究がどのように進んでいくのか、その成果に大いに期待を持つことができそうです。