財団活動日記&ニュース
2012年2月15日
 知識を知恵に変え、競技力の向上へつなげる
  == スポーツ健康科学科の「研究発表会」==
 

今年度(第37回)実践研究助成 特別研究指定校の京都府立乙訓高等学校のスポーツ健康科学科2年生による「研究発表会」が実施されました。(2月7日、9日)
今回の「研究発表会」は2月度の公開授業としても位置付けられており、2日間ともそれぞれ15名前後の外部からの参観者がありました。

乙訓高等学校は昨年度から京都府で唯一の体育系専門学科となるスポーツ健康科学科を設けました。スポーツ健康科学科では高校生アスリートとして才能を伸ばすとともに、将来のよき指導者となるようにも育んでいます。2年生の専門科目の取組みは全てが初めてのものとなっています。

生徒たちは専門科目である「スポーツ概論」などの既習事項や自身の競技種目などを踏まえ、グループごとに課題(テーマ)を見出し、仮説をたて、それを調べるための方策を考え、実験や調査を行い、得られたデータを分析し、考察する、という一連の活動を夏休み明けから行い、本日の研究発表会に至りました。実験やデータ分析にあたっては高大連携先である立命館大学の研究施設を利用させていただいたとのことでした。

7つのチームがそれぞれに斬新な視点からの課題(テーマ)を設け、スポーツ健康科学科の1年生、教育委員会、外部指導者(大学コンソーシアム京都、立命館大学など)、他校教諭、保護者など100名以上の聴衆を前にして2日間に亘り「研究発表会」を実施しました。


【研究発表 】*7日の発表

1、「パフォーマンスの違いが性格に及ぼす影響について」

陸上競技の各種目と選手の性格特性には何か関連性があるのでは、との疑問からはじまり、短距離、長距離、跳躍、投てきの4つの競技について高校生アスリート110名の性格調査(YG検査)を実施し、その傾向を分析。同時に各競技のトップアスリートの情報を検索し、性格に関連する発言などを抽出し、競技特性と性格の関連を考察し、高校生アスリートの結果と比較した。そして、その違う部分を補うためのメンタルトレーニングについて提案した。

例えば神経質という観点では、短距離の場合はスタート時の集中力や俊敏性が求められるので神経質傾向にあるが、長距離の場合は路面変化、多数集団での走行など競技中にストレスのかかることが多いので、ストレスをストレスと感じない耐性が必要であり神経質でない傾向にある。

集中力にかける人にはイメージトレーニングが有効であり、ストレスに対する耐性を強化するにはリラクゼーショントレーニングが有効である、など。


得られた結論を自身の競技力向上につなげていきたいとの決意、他の生徒へのメッセージを伝え発表を締めくくった。


2、「アンダーウエア着用時の温度変化について」

コンプレッションウェア(スポーツを科学することで生まれてきたウエア)と一般ウエアの着用による体温上昇や温冷感の違いを実験(心拍数を150前後に保ちながら30分間走り、5分ごとに鼓膜音と温冷感を測定)によりデータ測定を行い、スポーツ用コンプレッションウェアの有効性を検証した。(実験データの測定のために大学の研究施設を利用させていただいた。)


3.「スタートダッシュの区間について」

陸上競技部に所属する生徒の“どうしたらより早く走れるのか”という練習中の課題からはじまった、スタートダッシュの動作を理論的な観点から見直し、自分の動作に反映させる取組み。短距離走のスタートダッシュの動作分析を行った。(この動作分析にあたっても大学の研究施設にて、地面反力を測るフォースプレートやモーションキャプチャーなどの専門機器を利用させていただいた。)

また学説(短距離走の場合、直前の静的ストレッチは好ましくない)を検証する実験も行ったが、学説とは違う結果を得ることとなった。これに関しては、実験の方法(静的ストレッチにかける時間、ストレッチ方法など)に問題はなかったか、など自分たちの検証方法に対する課題も見出していた。


4.「高校野球において流れは存在するか?」

試合中に監督やコーチから“流れを大切に”と言われてきたが、“流れとは何か”、の疑問や得点の入りやすい回が存在するのはなぜか、の疑問からスタートし、過去の試合データを分析し、先制したチームの勝率や各回の得点率やその要因、得点時の打者の出塁方法などについて分析を行った。またラッキー7についても科学的根拠はないとしながらも、データ分析の結果7回は得点率の高い回となったので、なぜそのように言われるのかを考察した。

先制したチームの勝率が高いこと、イニングと得点率には関連傾向があること、出塁方法で得点差がでることなどが導き出され、“流れは存在する”と考察結果をまとめた。

試合の流れについて理解することが出来たので、有利に試合を進めるために役立てたいと発表を締めくくった。

発表後、“では、この結果を受けて、これからはじまる春の大会に向けて具体的にどのように挑むのか”との質問があり、“打順が2巡、3巡目となり得点率の高くなる5回、7回はしっかり守り、しっかり攻撃する。得点率の高くなる四死球やエラーなどによる出塁はさせないようにする”などの対策が答えられた。

=== 以下のテーマの発表は、9日に行われた ======
5.「バドミントンのスマッシュ動作の分析について」
6.「スポーツドリンクとパフォーマンスの関係について」
7.「野球の打撃時における体重移動の動作分析」
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4つのチームの発表後、高大連携先であり、今回の生徒たちの実験にあたり研究施設を提供いただいた立命館大学の松生先生より、「疑問をかたちにしていく(疑問からはじまってデータをまとめる)という大変な活動をやり遂げたことへの評価と、思うような結果が得られなくても、そこからまた学ぶことができる、ネガティブデータも大切にして欲しい、などの講評をいただきました。


【 事後の意見交換 】

研究発表会後、スポーツ健康科学科の先生方と教育委員会、外部指導者による意見交換を行いました。

外部指導者(大学関係者)からは、大学のスポーツ統計学においてもICT活用に不慣れでデータ分析に手間取る学生が多いという実情があるので、高校生のうちからこのようなICT活用能力を身につけることは有意義である。との感想がありました。併せて、高大連携プログラムを今後一層充実させていきたい旨のお話もありました。

教育委員会からは、本学習の取組みや本日の生徒の発表に対し高い評価がありました。また、それに加え、今後に向けて次のような要望も述べられました。

  • 質問に答えさせる力”をつけさせることも大切である。そのような仕掛けがあってもよいのではないか。
  • 結論を統計学的に説明できる力も身につけさせて欲しい。
  • より強いメッセージとするために、結論を得て、“では自分たちはどうする”というところまで発信して欲しい。

【 感想 】

本活動において生徒たちが課題を見出すまでは、時間がかかったとのことでしたが、課題(テーマ)が閃く(決まる)とそこからの活動は早かったとのことでした。
これはスポーツ概論などの専門教科や普通科目で学んできた、さまざまな知識や情報がしっかりと刻まれており、課題が閃いた瞬間にそれらがシナプスのように繋がれた結果だと思います。教育(education)の語源であるラテン語の連れ出す、引き出す(ducere)がなされたのです。
今回得られた結果を自分たちの競技力の向上に活かしていきたい、との生徒の感想(決意)がありました。自分たちで課題を見出し、検証、分析を行い、知識を知恵に変える活動がなされましたので、次はこのことを競技力の向上に結びつけて欲しいと思います。そして最終的にはこの学びをスパイラルに繋げ、競技力の向上のみならず指導力の向上にも結びつけて欲しいものです。

2年生はスポーツ健康科学科のはじめての生徒であり、すべてにモデルがありません。そのような中での頑張りに敬意を表したいと思います。今回の発表会により1年生にはモデルが示されました。1年生はこれをモデルとし、より活用的、発展的な学びを培ってくれるものと、来年度の発表会に更に期待してします。

高校時代にこのような学びの経験を積めることを羨ましく思いました。


乙訓高等学校の今までの活動報告

乙訓高等学校の基本情報
平成23年度8〜12月の活動報告

乙訓高等学校の財団職員によるレポート

手軽にできるICT活用授業(平成24年1月31日)
五感を使った学習(観察、実験)を補うICT活用(平成23年12月22日)
習熟度別クラスに、ICT活用 (平成23年11月24日)
次なる課題は【 ICT活用により生まれた時間の活かし方 】(平成23年11月4日)
効果的なICT活用について、月1回、全教科の授業を公開(平成23年9月28日)
デジタルとアナログの融合(平成23年6月14日)
スポーツを通して、地域・京都・未来 に貢献(平成23年5月25日)


2012年2月15日(水)UP (三田)

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