実践研究でパワーアップする教師たち
平成22年2月,平成21年度に引き続き,広島県三次市立三和小学校は,三次市教育委員会と協力して,市内の小中学校の研究推進リーダーを対象とする研修会を開催した。この「研究推進リーダー研修会」の企画・運営は,特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性を示すものであろう。その特徴は,各学校の研究推進リーダーを対象とする,ワークショップの実施に象徴される。参加したリーダー教師たちは,三和小学校から示されたチェックリストを利用して,所属校の平成21年度の実践研究の実態を点検し,また,それを踏まえて平成22年度の取り組みを展望した。これらによって,三和小学校の実践研究と他校のそれが共鳴した。
そのための資料として作成された,『研究推進パワーアップガイド』は,その内容において,秀逸である。学校における実践研究を充実させるための知恵が満載である。三和小学校は,平成21年11月に研究発表会を催し,その際に,研究紀要を配布している。それに加えて,2年間のパナソニック教育財団の「特別研究指定校」としての取り組みのエッセンスをガイドにまとめて,研究推進リーダー研修会の参加者に提供したのだ。それは,研究ポートフォリオと呼べるものであり,参加者にとって有用であるだけでなく,三和小学校の教師たちにとっても,ガイド作成の過程は,研究的実践を省察するためのよき機会となったであろう。彼らは,平成22年3月には,『研究紀要増補版』まで準備するようだ。学校における実践研究の過程や成果を文書にまとめていく作業は,面倒ではあったろうが,三和小学校の教師たちの力量形成に資するものであったと確信する。
上述した期間だけでなく,平成21年度・同22年度の2年間ずっと,三和小学校の教師たちは,国語科と算数科を中心として,ICT活用による思考力・表現力の育成を図ってきた。例えば算数的活動とICT活用を接続させたり,プロジェクト的な学習にICT活用を位置づけたりして,いわゆる「『活用型』授業」の成立と充実を実現してきた。
さらに,授業研究の企画・運営を工夫し,それを重ねてきた。特に,参加型・ワークショップ型の事後協議会のデザインをいくつも開発してきた。そして,前述したように,その軌跡を何度も,研究発表会を開催したり,文書にまとめたりして,他校の教師たちに発信してきたし,それを通じて実践の省察を繰り広げてきた。
それらの取り組みの様子は,学校における実践研究で成長する教師の姿を象徴するものだ。そうしたパワーアップが今後も継続されることを期待している。同時に,三和小学校をモデルにして,特別研究指定校の制度を活かして,成長する学校が続くことを祈念している。