実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

平成25年度 実践研究助成贈呈式レポート
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平成24年度実践研究助成贈呈式平成25年度「実践研究助成」助成金贈呈式を5月24日、パナソニックセンター東京で開催しました。

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約5倍の難関をくぐってこられた学校の代表者、大学の研究者や来賓の方々など140名が参加し、会場は満席となりました。

■助成金贈呈式

理事長挨拶

遠山理事長

はじめに、パナソニック教育財団 遠山敦子理事長より挨拶がありました。
「北は北海道、南は沖縄、全国各地、さらに海外からもお集まりいただきまして本当にありがとうございます。「実践研究助成」は、子ども達の確かな学力、また豊かな人間性を育むということを目的としておりまして、ICTメディアを活用した新しい教育方法や教材の開発活用方法の実践研究をしていただくことを目的として助成をさせていただいております。財団設立以来、今日まで39年間継続的に実施をしており、財団にとって一番大きな柱となっております。」
「特に特別研究指定校は2年間の実践研究をしていただいて、その間にその学校のことのみならず、地域のリーダー、また全国の学校にとってもモデルになるような活動をしていただいております。」
また最近の教育界の深刻な話題について、「滋賀県大津市のいじめによる自殺のケース、また大阪市の高校におきまして体罰を受けて生徒が自殺するという、あってはならないことが次々に起きていることに衝撃を覚えました。」「言うまでもなく、学校というのは児童生徒にとって一番安全で、また通っていて楽しく、仲間をつくる場であって、いじめにあったり、体罰にあって誰にも相談することなく、死に追いやられるところでは決してあってはならないわけでございます。」そして先生方には「いざという時に全国の教員が一致して対応するという姿勢を貫いていただきたいと思います。」とメッセージを送り、学校で一丸となってICT活用に取り組む姿勢と通ずるのかもしれないと話しました。
さらに昨年の訪問校の中でモントリオール日本語補習授業校の例をあげ、学校と家庭が離れていてもICTでうまく連携を深めていくというように「ICTを使ってどのように学校の授業を楽しくしていくか、子どもたちに力をつけていくか、ということに対して一つの方式しかないのではなく、先生方あるいはそれぞれの学校の工夫が子どもたちに伝わって成果をあげていく」と締めくくりました。


来賓祝辞

来賓のご挨拶として文部科学省 下村博文文部科学大臣よりご祝辞をいただきました。(ご公務により欠席のため、文部科学省生涯学習政策局 新井孝雄参事官新井孝雄参事官が代読)
「厳正なる審査の結果、助成を受けられることとなった学校、教育研究機関等の皆さま、まことにおめでとうございます。日頃より教育情報化の推進のために、多大なご尽力をいただいていることに対し、厚く御礼申し上げます。」
「第2次安部内閣では、経済再生と教育再生を内閣の最重要課題として掲げており、文部科学省といたしましても学校教育、社会教育におけるICTの活用を進めていく所存です。ICTには時間的、空間的制約を超える双方向性を有するなどの特徴があります。教育分野でICTを積極的に活用していくことにより、一人ひとりの能力や特性に応じた個別学習、子どもたち同士が教え合い、学びあう協働学習といった新しい学びを実現することができます。」
また助成校の実践研究について、「個別学習、協働学習を通じて子どもたちの主体的な学びを推進することは、子どもたちの興味・関心を高め、一人ひとりの個性や能力をのばし、21世紀にふさわしい学びを実現できると考えております。」と述べられました。
最後に「本日パナソニック教育財団の助成金をお受けになる皆さまにおかれましては、引き続き様々な情報通信メディアの創意工夫あふれる活用を展開されるよう大いに期待しております。」とエールを送っていただきました。


選考経過報告 パナソニック教育財団 常務理事・事務局長 下田昌嗣

下田昌嗣 常務理事・事務局長

「応募件数は431件で昨年より113%伸び、助成件数は84件、42都道府県と海外に助成します。」
「2年間特別研究指定校として助成を受けた学校が、その活動を地域に広げていこうと研究グループを組んで、助成を申請された事例もございました。こういう形で特別研究指定校の成果が地域や全国に普及することを私共としても応援していきたいと思っております。助成校の実践研究の継続性と、学校から地域への広がりは、全国への普及の第一歩として期待がもてる事例だといえます。」
 「今年度の使用機器の傾向としては、タブレット端末が昨年度のほぼ倍の259件、タブレット端末と電子黒板を連動させた取り組みもあります。テーマにおいて伸びたのは、知識・技能習得したものを活用する言語活動、協働学習。教科としては、理科の探求型の学習、防災というテーマにおいてICTを活用して色々な学習をしていくという学校があったことも今年度の大きな特徴かと思います。」
最後に、「先生方の学校での取り組みを保護者また地域の方に知っていただくために、当財団のホームページを利用いただきたい」と締めくくりました。


奨励状贈呈

各助成先の代表の先生が一人ずつ登壇し、遠山理事長より奨励状が贈呈されました。それぞれが熱い思いを胸にしっかりと受け取られていました。

奨励状 奨励状

パナソニックセンター見学

助成金贈呈式の後、参加者は2グループに分かれて、1階スマートソリューションズ フロア、2・3階のリスーピアを見学しました。
リスーピアの2階クエストフロアは楽しみながら不思議を感じるフロア。
パラボラアンテナの原理でもある「放射線の焦点」コーナーでは「ほー。よく作ってるなぁ。不思議だなぁ。」と感心しながら、何度も試してみたり、他校の先生を誘って同時にボールを落としてみたりされていました。
3階ディスカバリーフロアは見て、ふれて、理数の不思議を旅するフロア。
熱が伝わる様子や、サイコロの確率、光の三原色についてなど真剣な表情で体験されていました。たまたま中学生のグループも一緒になり、中学生が一生懸命になっている姿をじっと見ておられる先生もおられ、ご自分の生徒と重ね合わせていたのかもしれません。
機会があれば学校から子どもたちと訪れて、一緒に楽しんでいただきたいと思います。

パナソニックセンター東京
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くるま座ディスカッション
くるま座ディスカッション

見学後、助成先は地域別に18のグループに分かれ、実践研究の概要を互いに発表しグループディスカッションを行いました。それぞれのグループにはパナソニック教育財団の専門委員(初等中等教育現場に詳しい大学研究者)が入り、今後の実践研究の方向性や手法について助言いただきました。

初めに、助成事業のスケジュールやディスカッションのねらいなどについて、パナソニック教育財団 金村俊治より説明がありました。

くるま座ディスカッションのねらいは3点です。
1.計画を見直す
2.専門委員や他校の助言をいただく
3.他の助成校との交流・情報交換 

 いくつかのグループの中の発表内容をご紹介します。

関東Uグループ

関東Uグループ
専門委員 山梨大学 成田先生
つくば市立桜南小学校
つくば市立栗原小学校
つくば市立竹園東小学校
つくば市立吾妻小学校

<つくば市立栗原小学校>
「学力診断テスト等においては基礎基本を習得している児童が多く、割と理解力があるのですが、思考力や表現力ということになるとなかなか力が発揮できないというところがあります。」「私達教員がそういった授業をなかなか展開してこなかったのではないかなという姿勢をもとに、昨年末協議をしました。」
「ICTを活用していけば、表現力や伝え合う力が伸ばせるのではないかと、テーマを決めました。」「パソコンを使って一人ひとりの考えを取り上げる、またグループで取り上げていくなどの活動の中で、お互いに考えを共有するとか、協働学習を展開していく。」
また「グループでの電子黒板を活用したものですが、パソコン教室だけでなく、今後は普通教室でも活用してプレゼンを展開していく」
ICT活用には、苦手意識をもつ先生方もおられるようなので、今後は研修に力を入れたいと話されていました。

近畿Uグループ

近畿Uグループ
専門委員 奈良教育大学 小柳先生
大阪市立淡路中学校
「iPadではじめるe授業」研究グループ
大阪私学教育情報化研究会
兵庫県西宮市立小学校 北地区ICT推進委員会
宝塚市立宝塚中学校
兵庫県立西はりま特別支援学校

<兵庫県立西はりま特別支援学校>
研究3年目という西はりま特別支援学校は「1年目は機器がなくてもできるだろうなどと一部の先生から抵抗が見られた」そうですが、そういった先生方も研修を通し、また実際に使っていく上で「やってみてよかった、役に立つんだ」という意見に変化してきたそうです。中心になっておられる先生方は大変だったかと思いますが、これは導入1年目の多くの学校が経験することと考えられ、とても希望のもてる経験談でした。 
2年目は子ども対象に先生方が課題を考えて進められたそうです。特に「コミュニケーションのとれない生徒が多い」ので、学校や家庭の様子をiPadを連絡帳代わりに使ったり、学校で発作の症状が出た時の映像を家庭から医師に見せるなど、支援学校ならではの個々に応じた活用法を紹介されました。
今年は授業に組み込んだ形を中心に、見通しがないとパニックに陥る子どもにはスケジュール管理、体重増加に対応するため、体重、運動量、カロリー管理などを考えておられるそうです。また「教員も意欲が高まってきたので、引き続き環境を整えつつ、教師の意識もそのまま維持していけたらいいと考えています」と発表されていました。
専門委員の先生からは「今年の目標である学習支援、自立支援の2点を中心に、ニーズに分けて、何が有効だったかということを整理されて成果報告をされた方がいい」とアドバイスがありました。

<兵庫県西宮市立小学校 北地区ICT推進委員会>
「西宮市立北六甲台小学校が昨年まで財団の特別研究指定校を受けました。その成果を同じ地区にある4校を交えてデジタル教科書の有効活用を中心に広げていこうという取り組みを考えています。」と今回グループで応募されたきっかけを話されました。
すでに5月には4校の先生方60名を対象に、学年ごとの分科会によるワークショップとアンケートをされたとのことで、積極的に活動を進められているようです。また3年目になる北六甲台小学校では「子どもたちが本気で自分の考えを伝えていけること」を目的とし、「子ども自身がデジタル教科書を操作しながら自分の考えを言えるような場面をたくさん取り入れていきたい」と発表されていました。
またこの研究を通して「活用・実践事例集のようなものを西宮市に広げていくというのが最終的な目標」と今後の抱負を話しておられました。
専門委員の先生からは、「最初の段階で、どの教科、どの学年、どの規模、先生方の年齢、ICT歴といったことがわかる表を作成されていると5校で進める上でよい」といったことや、「年齢が上の先生方にはどのようなサポートが必要なのか」「授業デザインと組織や研修スタイルについて予め計画しておいた方がよい」などのアドバイスをいただきました。

前半は先生方も少し緊張と遠慮をされていた様子が伺えましたが、ディスカッションの終わりが近づくにつれ、どのグループも熱心に議論をされていました。日々の忙しい業務の中では、情報交換の時間もなかなかとれないとは思いますが、これを機会に同じ地域同士、また同じ志をもつ先生方同士で交流を深めていただければと思います。そしてまた当財団のホームページを訪れて様々な情報を共有していただければ幸いです。


全体講評・挨拶 パナソニック教育財団 常務理事 選考委員 赤堀侃司氏(白鴎大学教育学部 教授)

全体講評・挨拶 「3つのグループのディスカッションに参加させていただいて、ただただ私は感心しました。」「最初のグループでは思考力・判断力がICTに関わるかという大変難しい研究に取り組まれていて、この実践研究がうまくいくならば基礎研究に結びつくはず」と今後に期待を寄せられました。
2つ目のグループでは養護学校のICT活用について「特別新学級や通級指導においてのICT活用はどうしてもやらなくてはいけないのではないかと思っていた」また「非常に意味のある研究だと思いました」とコメントされました。専門委員の先生の『センターとして全国に広げていってほしい』というアドバイスも紹介されました。
3つ目のグループでは「タブレットを使って、自分の思考を働かせて皆で共有しようじゃないかということを発表されて、すごい研究をされていると思いました。」と感想を述べられました。
最後に「専門委員の先生方は学会でもなかなか会えないすごいメンバーが集まっておられ、今日はお忙しい中来ていただきました。ぜひこれからも専門委員の先生方にご協力いただきながら、素晴らしい研究を続けていただければと思います。」とのお言葉をいただきました。

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参加者インタビュー

福岡県立戸畑高等学校 前田毅先生 盛岡市向中野小学校 新屋敏明先生
Q.応募のきっかけと抱負にについてお聞かせください。
岩手の復興教育ということで、沿岸の子どもと内陸の子どもがこれから5年10年ずっと友達として岩手なり日本を支えていけるような子どもたちにしたいという想いがあります。新しく学校ができて今年2年目になりましたので、そういった取り組みを地域にも発信したい思っています。またこの機会に地域だけでなく色々なところと交流したいと考えています。

京都市立一橋小学校 木村明憲先生 福島市御山小学校 渡辺茂雄先生
Q.応募のきっかけと抱負についてお聞かせください。
福島市は放射線の影響が色々あり、学校内は除染されたので大丈夫ですが、学校の周りの川や草花を授業の中で実際に見て触れることが制限されています。子どもたちが教材を共有できる方法がなく、先生方が採ってきたものをICTを利用して拡大したり、子どもたちも機器を利用すれば、学習することができるということが理由です。周りが完全に安全になれば問題はないのですが、そうなるまでにICTを活用して、お互いに学び合えるようにしていきたいと思っています。

徳島県立盲学校 小杉企史先生 石垣市明石小学校 上原麗子先生
Q.本日の感想をお聞かせください。
すごい勉強になりました。学校だけだと学校の中に閉じこもって自分達の考えだけでよかれと思って進んでいってしまいます。色々な助言をいただいたことで、方向や気をつけなくてはいけないことがわかってきました。学校に戻ってから修正して頑張れると思います。

日本福祉大学国際福祉開発学部 学部長 教授 高知大学教育学部附属教育実践総合センター
島田希先生

Q.本日の感想と助成校に期待することをお願いします。
くるま座ディスカッションの中で、1年間の取り組みをスタートさせるにあたって、目指すべきものと現時点でのプランの確認に少し時間を割きました。同じような状況でも取り組む方向性が違う学校があって、それを共有することができたので、それぞれの助成校が自分達はなぜそれに取り組もうと思っていたのかということの再確認と、同じ状況でもこういうやり方もあるんだ、というようないい交流の機会になったのではないかと思います。

Q:ICTに関して全国の学校へのメッセージをお願いします。
今日のディスカッションで多く聞かれたのが、ICT機器の整備状況として、とにかく十全には揃ってない、という状況が非常に共通していたと思います。その中で試行錯誤されていると思うのですけれども、そのことがおそらく他校への普及という意味で、非常に大きいのではないかと思います。全部がそろわない中でも、どのように工夫されているのかというあたりをぜひ発信していただきたいとディスカッションの中でもお伝えしました。