実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)
分科会報告/第32回(平成18年度)

ICTの活用は本当に学校向上に有効なのだろうか?

論より証拠。まずは実践研究助成を受けられた学校の、ICT活用を学力の向上に結びつけた事例の一部をご覧ください。

「日常の授業における基礎的な学力向上のための ICT活用指導法の開発」

「日常の授業における基礎的な学力向上のためのICT活用指導法の開発」
(富山市立山室中部小学校)

「思考力・表現力を育成する 授業の創造〜ICTを活用した国語科・算数科の授業改善〜」

思考力・表現力を育成する授業の創造〜ICTを活用した国語科・算数科の授業改善〜」
(三次市立三和小学校)

「個に応じた学習支援活動を通して、意欲の向上と 基礎・基本の確実な定着 を図る〜すべての普通教室における様々なICT機器の効果的な活用を通して〜」

「個に応じた学習支援活動を通して、意欲の向上と基礎・基本の確実な定着を図る〜すべての普通教室における様々なICT機器の効果的な活用を通して〜」
(坂出市立府中小学校)

上記の事例に加え、教科指導におけるICT活用の学力向上に対する効果は、これまでの調査研究などから明らかになっています。特に「知識・理解」や「技能・表現」の観点で高い効果得られることが実証されています。

ICT活用の効果

客観テストのよって明らかとなったICT活用の効果

※平成18年度及び19年度に文部科学省の委託を受けて、独立行政法人メディア教育開発センターが実施した「教育の情報化の推進に資する研究(ICTを活用した指導の効果の調査)」結果より

では、このような成果を出した学校はなぜそうなったのでしょうか?

【成果要因1】ICT活用の頻度が高い

学力向上への効果があるICT活用ですが、そのポイントはどこにあるのでしょうか。
文部科学省の「教育の情報化の手引き」によると、次の2点が指摘されています。
 ・ICT機器が常設されていること
・準備に時間がかからないICTの活用を行うこと

ICT機器が教室に常設され、必要な授業場面で いつでも使えるようにすることでICT活用が進む事例は、当財団の特別研究指定校からの報告でも数多くみられます。

すぐに使えるICT機器の整備が進めば、その活用が進むのは間違いありません。

各階に機器を整備して活用しやすくすることで、授業の中で生徒も教師も手軽に活用する姿が見られ、活用能力が向上してきた。また、ICT機器の活用が学習内容の理解と深く結び付いており、活用が進めば進むほどキャリア発達が促されることが実感できた。」(上越市立城北中学校)

各階に機器を整備して活用しやすくすることで、授業の中で生徒も教師も手軽に活用する姿が見られ、活用能力が向上してきた。また、ICT機器の活用が学習内容の理解と深く結び付いており、活用が進めば進むほどキャリア発達が促されることが実感できた。」
(上越市立城北中学校)

「パナソニック教育財団から実践研究助成をいただいたことで、プロジェクターや児童の学習用パソコン、校内LANなどを整備する事ができました。これらを活用することで、教師も児童も教科書を活用した学習活動、自主学習をもとにした家庭と学校との学びの連続に、力を入れて取り組む事ができるようになりました。」(岐阜市立本荘小学校)

「パナソニック教育財団から実践研究助成をいただいたことで、プロジェクターや児童の学習用パソコン、校内LANなどを整備する事ができました。これらを活用することで、教師も児童も教科書を活用した学習活動、自主学習をもとにした家庭と学校との学びの連続に、力を入れて取り組む事ができるようになりました。」
(岐阜市立本荘小学校)

活用シーン、メディアを吟味して使っているこれまでの調査結果などから、教科指導におけるICT活用の効果が明らかなのは先に述べた通りです。しかし、ICTが劇的に授業を変え、いい授業にするのではありません。

授業をつくるのは先生方です。だからこそ、今の授業や指導法を大きく変えなればならないICT活用では長続きしません。

では、どんなシーンでICTは役立つのでしょうか?授業での主な活用シーンを取り上げてみました。

先生が使う
・わかりやすく説明したいとき
・理解を深めたいとき
・基礎基本を定着させたいとき
・学習習慣を身に付けさせるとき
・興味・関心を高めたいとき 
児童生徒が使う
・発表をするとき
・情報を集めるとき
・まとめるとき
・知識の定着を図るとき 等

※詳細は「わかる・できる授業づくりにICT活用を!」(玉川大学 堀田龍也教授)をご覧ください
(ダウンロードできます)

このように様々なシーンで役立つICTですが、目指すべき授業や先生方の指導の仕方によって、当然、活用する場面や方法、使用するメディアは変わってきます。

ICTは単なる道具でしかありません。だからこそ、どんどん使うことで自分なりの活用がわかってくるのです。

ワンポイントアドバイス
・日本の学校では、多様な学習活動を含む、一斉授業が原則的な授業スタイルとなっています。その中で、もっとも活用されているICTは、先生・児童生徒による提示装置です。特に、先生方が情報提示を充実させるために、ICTは力を発揮するということが、様々な調査研究などから明らかになっています。
【成果要因3】全校を挙げて取り組んでいる

ここで、全校を挙げて取り組まれている先生方の声をお聞きください。

「各クラスに機器が設置されたことで、 ICTを使った授業を全員が行っている。 便利だから、児童が分かる授業を目指す中で、自然と使うことが多くなってきた。」 
(練馬区立中村西小学校)「各クラスに機器が設置されたことで、 ICTを使った授業を全員が行っている。 便利だから、児童が分かる授業を目指す中で、自然と使うことが多くなってきた。」
(練馬区立中村西小学校)

「 研究授業を全職員が参観し ,木原教授のご助言を頂いた事によって,『ICTを活用した授業』の具体的なイメージがわき,今後の授業改善につなげられる」
(三原市立幸崎中学校) 研究授業を全職員が参観し ,木原教授のご助言を頂いた事によって,『ICTを活用した授業』の具体的なイメージがわき,今後の授業改善につなげられる」
(三原市立幸崎中学校)

「この研究を始めるにあたって、今までほとんどコンピュータを使っていない年代の方々が積極的に取り組もうとしている。 全校挙げての取り組み になっていることが、何よりも嬉しいことである。」 (京都教育大学附属桃山小学校) 「この研究を始めるにあたって、今までほとんどコンピュータを使っていない年代の方々が積極的に取り組もうとしている。 全校挙げての取り組みになっていることが、何よりも嬉しいことである。」
(京都教育大学附属桃山小学校)

全校体制で研究を行う学校では、ICTの導入をきっかけに、授業改善に向けた取り組みがますます盛んになっています。

ICTを効果的に使うために、今までの授業や指導法を見直し、授業づくりを行う過程で、先生同士の新たな交流が生まれているのです。

ベテランの先生方は、若手の先生方にICTを、若手の先生方は、ベテランの先生方の授業力や指導力に学び、“それぞれの得意分野を活かしながら研究を進めるムード“ができあがっていくのです。

また、学校として目指すべき「授業像」が明確になることも大きいようです。目指すべき授業を全員で共有しながら取り組みを進めることで、より一層研究がパワーアップするのです。 

このようにICTは学校研究を活性化するのにも一役買います

今後は、スクールニューディールにより、整備されたデジタルテレビなどの機器を活かすための整備が、日常的なICT活用のポイントになっていくのではないでしょうか? 便利で使いやすいICT機器

いかがでしょうか。

多くの学校がICTをうまく取り入れながら、学力向上に向けて、全校を挙げて取り組まれているのがおわかりになるかと思います。

また、当財団の助成制度を活用して、たくさんの学校がICT活用を推進し、学校課題の解決に取組まれておられます。

ぜひ、貴校も実践研究助成に応募し、学校課題を解決してみてはいかがでしょうか?