LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校

第49回特別研究指定校

研究課題

習得ー活用ー探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案
~学習環境デザインの視点から~

2024年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
今年度は研究2年目でまとめの年になる。全体研究を開催し、......

アドバイザーコメント

吉崎 静夫 先生
本校は、今年度で開校4年目となり、1年生から6年生が在籍している。......

LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 愛知県 LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校
アドバイザー 吉崎 静夫 日本女子大学 名誉教授
研究テーマ 習得ー活用ー探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案
~学習環境デザインの視点から~
目的 本研究テーマは、「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案」である。2年間取り組んできた授業実践を元にカリキュラムの有用性及び課題を精査し、授業マニュアルを作成する。それを元に授業を実施し、カリキュラムの効果を検証することを目的とする。
現状と課題 (現状)
「習得―活用―探究」の3つの学びの場の授業を実践しながら、授業ガイド作成へ向けて、記録の蓄積をしている。また、カリキュラムの有用性及び課題の精査のために、3つの学びに対して子どもがどのように認識しているかアンケートを実施し、その分析に取りかかろうとしている。
(課題)
・カリキュラムの効果検証にあたっては,ポートフォリオに記録された児童の学びの姿から「習得―活用―探究」のカリキュラムの相互作用について明らかにするための具体的な方法について
・子どものアンケート分析から抽出児を選択し、インタビューを実施しようと考えているが、その選択の視点やインタビューの内容について
学校情報化の現状 先生たちの意識も高く、情報活用能力の育成へ向けて、中学校までの体系化を考案中である。
取り組み内容 教科指導では、iPad を学習用具の一つとして自然に活用できている。基礎的なタイピングやプレゼン等、校内でのコンテストを開催し、子どものスキル上達を目指している。ペーパレスを目指し、会議等では、全員がPC画面及びモニターを閲覧しながら話し合いを進めている。中学校設置へ向けて、情報と探究担当者メンバーで、どのような体制作りをするか検討している。
成果目標 (成果目標)
・「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」授業ガイド作成へ向けて、3つの学びのそれぞれの単元計画、指導案、成果と今後の課題などの記録を蓄積し、次年度、その実践を修正し授業実践し、ガイドブック完成を目指す。
(取り組み後の状況)
・だれもが授業ガイドを活用して授業の質を高めていくだけではなく、他校への情報提活動にも取り組む。
助成金の使途 Meeting Owl Pro MTW200、16インチMacBook Pro、全日本教育工学協議会等参加費、研究者招聘、授業マニュアル完成版の印刷等
研究代表者 三宅 貴久子
研究指定期間 2023年度~2024年度
学校HP https://www.seto-solan.ed.jp/
公開研究会の予定 2023年8月2日(水)教員対象研修会を実施。その際、1~5年までの探究学習の授業公開を予定。
2024年1月27日(土)第3回研究発表会を実施。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

(4月)

  • ・研究の方向性について、研究推進委員会(月1回第1木曜日)を開催し、担当を明確にし、2年間の研究の流れについて詳細を検討。その後、研究全体会議を実施し、目的・内容・ゴールについて共通理解した。研究日は毎週木曜日に設定。
  • ・各学年で、習得部会、活用部会、探究部会に分かれていただき、部会でメンバーの確認と部会で取り組む内容について確認。
  • ・開校当初から関わっていただいている鳴門教育大学の研究者を招聘し、2年間取り組んできた授業実践を元にカリキュラムの有用性及び課題を精査することについて、具体的な内容を検討。
  • ・子どもの成績データや成果物等を e-ポートフォリオと関連できる仕組みを設計する。(主に習得・活用学習において)
  • ・本校独自のe-ポートフォリオシステムの活用について、昨年度の反省をもとに活用の改善を検討した。話し合った結果、次の時間までには個々の子どもへのフィードバックが確実にできるように共通理解を図る。

(5月)

  • ・5月10日(水)、2年間関わっていただいている鳴門教育大学の泰山先生に来ていただき授業研究会を実施。1年の国語、3年の国語、2年の探究の授業の研究授業を実施し、指導・助言をいただいた。1、3年の国語は新採用2年目の若手教師が挑戦をした。授業は習得と活用の授業である。両教師の授業とも、教師が子どもと対話を重ねて授業を展開しているところは評価できた。しかし、授業参観者から、授業のねらいとルーブリックが子どもの実態とずれていたのではないかという指摘もあり、習得と活用の授業のねらいの設定について議論し、共通理解した。

(1年の国語「はなのみち」の授業風景)

(6月)

  • ・6月7日研究のアドバイザーである吉崎先生をお招きして授業研究を実施。
    5年情報、4年プロジェクト、3・4・5年の探究を公開し、指導・助言をいただいた。
    授業公開後、放課後に全体研究を実施し、吉崎先生の本校の研究に対するご意見をお聞きした。研究構想図について、カリキュラムの特色、学習環境の視点、授業の特長、評価の特長などを整理していただき、21世紀型スキルについてのお話を伺い、全教員で学習した。

(5年の情報の授業風景)

  • ・全体研究の場で、習得―活用―探究の3つの学びの往還をどのようにみとっていくか、全体で協議後、部会に分かれて話し合った。また、探究における子どもたちのまなポートの記述について、どのように蓄積されているかを昨年度のものを閲覧し、整理した。

(7月)

  • ・各部会に分かれて、研究授業の計画や実施された研究授業の振り返りを実施。
  • ・探究部では8月2日の教員研修会について授業内容の検討。また、今回は、参加者の先生方に対して、探究の授業支援に参加したい方は意思表明をしていただいた。その先生方とのオンラインミーティングについて計画

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・6月の訪問時に、「①研究のグランドデザインを作成すること」、「②習得、活用、探究の3つの学びに対する児童の認識を調査すること」、③「指導案の書き方」についての3点について指導・助言をいただいた。①については、ある学校の研究のグランドデザインを参考にしながら現在作成中である。②については2−5年の児童にアンケートを実施し、3つの学びの違いについて子どもはそれぞれの学びの質について概ね理解はできていた。そして、探究活動の質の高い児童ほどその関連に自分なりの意味づけをしていることが明らかになった。今後、探究に対する学びの特長のある子どもに対してインタビューを実施する。③については、現在部会で検討中である。吉崎先生からは、本校が考えている5つの学習様式、例えばモジュールの習得学習とか、プロジェクトとしての活用の学習などについて、それぞれの学習時間、学習環境等がよくわかるように指導案に明記した方が良いのではないかと言う助言であった。

本期間の裏話

  • ・研究アドバイザーである吉崎先生が探究の 授業を参観されている時、3年生のある子どもが先生のところへ行き、話しかけたようである。その子どもは、ずっと吉崎先生に自分の探究のテーマ「戦争はどうしたら終わるのか」について語っていた。話終わった後、その子どもはとても満足した表情であった。聞いてみると、「ちがう視点で話が聞けたし、話をして自分の考えが整理できた」と話していた。「探究は自分で創る学習」と日々子どもたちと共通理解をしてきた。そのことが、行動としても表れていることがうれしかった。

本期間の成果

  • ・全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に取り組むことができた。また、吉崎先生のお話が大変勉強になり、全教職員が授業実践に力を入れていることが一番よかったと考えている。研究部だけの研究ではなく、学校全体の教職員が個々の目的意識を持って、全体で目指す方向へ取り組んでいけたらと考える。

今後の課題

  • ・研究のグランドデザインの完成
  • ・授業ガイド作成へ向けて素案作り
  • ・指導案の形式についての検討

今後の計画

  • ・研究者を招聘し、各部会で精査してわかったことの情報交換をし、授業ガイドの素案を検討する。
  • ・8月2日の教員研修会へ向けて準備を進め、当日は他校の先生方と探究学習を支える教員の資質・能力について議論する。
  • ・一人一回の公開授業の準備。その際、事前の指導案検討、模擬授業及び授業後の振り返りの会を実施する。
  • ・10月27・28日の第49回全日本教育工学研究協議会全国大会で発表するための原稿作成。
  • ・11月4・5日の日本教育メディア学会第30回年次大会で発表のためのテーマ設定。

気付き・学び

  • ・8月2日のパネリストの打ち合わせのミーティングの中で、吉崎先生から総合的な学習が導入されたときに関わっていた研究開発校での子どもや教師の意識について研究の視点からお話を伺った。子どもも教師も全員が探究を得意とするわけではなく、苦手な子どもも得意な子どももいる。その前提において、なぜSOLANは探究学習を軸としたカリキュラムを推進しているのかについて、今一度考案した当時のことを思い起こした。「グローバルシチズンシップの育成」という教育理念のもと、「自立・自律」した子ども像を目指している本校にとって、探究学習は目指す子ども像に子ども自らが変容していく学びの場であることを再確認した。一方で、他校の先生方に対してきちんとした説明ができるように、言語化していく必要性も感じた。

成果目標

  • ・「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」を授業ガイドという成果物と共に提案することで、他校の実践の手がかりを提供できることを目標としている。その実現へ向けて、これまでの実践を振り返り、成果と課題を整理する。本校のカリキュラムを実践してきた教員の経験や子どもの実態をこれまでの成果物をもとに振り返りながら、有用性や課題を洗い出し、授業ガイド作成のための視点として整理する。
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 本校は、開校3年目の新しい学校で、1年生から5年生が在籍している。そして、e-ポートフォリオを中核とする実践研究で、パナソニック教育財団の一般研究助成を2年間にわたって受けた。今回は、その研究成果をふまえて、「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案~学習環境デザインの視点から~」という研究課題に挑戦している。

 本校は、「グローバルシチズンシップの育成(世界の抱える問題を自分の問題として捉え直し、他者と協働的によりよく解決するための方策を考え、持続可能な社会を創るために自ら行動する世界のリーダーとしての志をもつ人間の育成)」という建学の精神にもとで、「探究学習」「英語教育」「ICT教育」という3つの軸を学校教育の基本としている。

●本期間の研究成果

(1)「習得―活用―探究」にもとづく5つの学びの様式が次第に確立されつつある。それらは、①個別の知識の習得(スキル・リテラシー学習)、②活動を通した概念的・手続き的知識の習得(教科学習1)、③各教科の見方・考え方の活用(教科学習2)、④協働での問題解決学習(プロジェクト学習)、⑤個々の興味・関心にもとづく課題発見・解決学習(探究学習)である。そして、これらの5つの学びの様式が本校の目指すカリキュラムの中核であり、①と②が「習得」、③と④が「活用」、⑤が「探究」にそれぞれ位置づけられる。

(2)本校の研究体制(研究推進委員会と部会)が整備されたために、全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に意欲的に取り組むことができている。

(3)学習環境デザインのための視点が次第に明確になっている。それらは、①ひと(仲間、教職員、保護者、外部人材)、②もの(実物、ICT、図書)、③場所(教室、ラーニングコモンズ、学外施設・機関)、④時間(モジュール制にもとづく時間割)などである。

 2023年6月7日に本校を訪問した際に、3年生から5年生全員が参加する「探究学習(SOLAN学習)」の授業を見学した。そこには、3年生以上を担当する教員、10数名の保護者、数名の大学教員と大学生が参加していた。特に印象に残ったのは、保護者が学習サポーターとして一人一人の児童(必ずしも自分の子どもではない)に寄り添っている姿である。まさに、子どもと一緒に悩みながら、共に学んでいる姿勢である。

●今後の課題と期待

 基本的には、本校の活動報告書に記述されている「今後の課題(①研究のグランドデザインの完成、②授業ガイド作成に向けての素案づくり、③指導案の形式についての検討)」の通りである。さらに加えるとすると、「学習評価の枠組みづくり」を行ってほしいということである。例えば、ルーブリックやe-ポートフォリオのような「日常のカリキュラムに埋め込まれた評価」と、アンケート調査や学力調査のような「オンデマンド評価」を組み合わせた「評価の枠組み」を考えてほしい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

8月2日(水)

 教育向けの研修会を実施した。全国から52名の教育関係者が参加。今回は、探究学習に絞って公開し、授業に支援者として参加する形式も導入した。新しい試みではあったが、多くの先生方から授業を実感できてよかったという評価を得た。

9月

 保護者への探究学習に対する情報提供のために探究の支援サイトを立ち上げた。探究学習の保護者サポーターミーティングの際に保護者サポーターに紹介し、意見をもらった。探究学習を支援する際の情報として、探究学習の時の子どもの様子等を書き込むことで、参加できない保護者にも探究の様子がより伝わるようになると考えている。学習環境デザインの一つである。今後、保護者サポーターとさらに意見交換を重ね、より機能するサイトに改善していく。

10月28日(土)

 第49回全日本教育工学研究協議会全国大会(青森)で、4本の実践研究発表をした。研究課題との関連では、「習得―活用―探究の3つの学びの相互作用をめざしたカリキュラムの開発と評価-児童の意識調査の結果よりー」のテーマで発表。習得―活用―探究の3つの学びによるカリキュラムの評価を行うことを目的とした。このカリキュラムを児童はどのような認識で捉えているのかについて明らかにした。アンケートやインタビュー調査の結果,児童はそれぞれの学びの質の特徴を概ね理解はできていた。そして,3つの学びの関連については,児童の約7割が「関連がある」と回答し,使用するツールなどの共通点を見出していた。一方で,つながりを見出せない児童は,活動内容,学習形態等の差異が判断基準になっていることがわかった。

11月2日(木)

 研究アドバイザーの吉崎先生に訪問していただき、授業を参観後、ご指導いただいた。今回は、探究学習に加えて、2年生の国語の物語文の教材を使って、活用型の教科学習を公開した。授業担当者は、国語部会で指導案検討を重ね、子どもたちの課題解決的な物語文の授業を構想し実施した。その結果、子どもたち自ら学びに向かう様子が印象的な授業であった。全体研究会では、吉崎先生より、習得で学んだ知識・技能を活用して課題解決する授業デザインについて指導・助言をいただいた。

12月

 1月27日(土)に授業を公開する先生方が授業を実施した。研究者にも加わっていただき、全教員で①スキル・リテラシー学習、②教科、③教科型プロジェクト、④教科横断型プロジェクト、⑤探究学習の5つのパターンの授業についてディスカッションをした。それぞれ何が違うのか、どのような視点で区別できるのかなど熱心に議論した。今後、ここでの話し合いをもとに、5つの授業パターンの定義を明確にする。

アドバイザーの助言と助言への対応

 研究アドバイザーの吉崎先生からは以下のような助言をいただいた。

 探究学習は、①スキル・リテラシー学習、②教科、③教科型プロジェクト、④教科横断型プロジェクトの4つの学びに支えられている。探究での子どもの学びをみとる中で、基礎の習得の何が足りないかわかる。その際は、基礎に戻って学び直す。子どもは基礎を学ぶことの必要性がわかって学び直しをするので、以前とは違う。このように、行きつ戻りつしながら学ぶことに価値がある。

 上記の助言を受けて、構想図の修正を試みた。

本期間の裏話

 8月の教員向け研修会では、52名の先生方が全国から参加。その際、探究学習に支援希望を募り、共に支援者として活動に参加した。その後、ディスカッションをしたが、子どもたちの情報収集能力や説明力の高さを評価してくださったことは、とてもうれしかった。加えて、「初対面でもSOLANの子どもは自然体で話しかけてくるのでとても支援がしやすかった」と言っていただき、普段から様々な立場の方々と学び合っている体験が生きていると実感した。

本期間の成果

 習得、活用、探究のそれぞれの部会で、研究授業の授業検討が活発に行われるようになった。その際、先生方の意識が①スキル・リテラシー学習、②教科、③教科型プロジェクト、④教科横断型プロジェクト、⑤探究学習の5つのどの授業パターンの授業をデザインするかを考えるようになったことが研究の前進につながったと思う。研究の輪が学校全体に広がっていることを感じている。

今後の課題

 授業の5つのパターンの中の教科と教科型プロジェクト、教科型プロジェクトと教科横断型プロジェクトについて、資質・能力や課題の設定の仕方など、どのような視点で整理するか検討していく。

今後の計画

  • ・2024年1月27日(土)の第3回研究発表会へ向けて、研究紀要の作成、公開授業の指導案検討
  • ・探究ガイドブックの解説編の作成
  • ・習得、活用の授業マニュアルの作成

気付き・学び

 探究学習については、子どもの意思を中心に活動を展開した結果、ワークショップや発表交流などの自ら協働的に学ぼうとする姿が見られるようになってきた。

成果目標

「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」を授業ガイドという成果物と共に提案することで、他校の実践の手がかりを提供できることを目標としている。その実現へ向けて、今年度の研究授業でみえてきた5つの授業パターンのデザインを何で差別化を図るのか多面的に考え整理する。それをもとに、授業ガイドの原案を作成する。

アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 本校は、日本教育工学協会(JAET)の学校情報化認定制度において、2023年度「教科指導におけるICT活用先進校」の認定を受けた。今年度は、20数校の優良校の中から、4校だけが先進校の認定を受けた。まさに快挙である。また、2023~2026年のApple Distinguished Schoolに認定された。このように、探究学習、英語教育、ICT活用を柱にしてグローバルな人材を育成しようとする本校の教育が内外から高く評価されている。

●本期間の研究成果

(1)習得―活用―探究の3つの学びの相互作用をめざした「カリキュラムの形成的評価」が多様な視点から行われた。

 1つ目は、8月に行われた「全国の教員向けの研修会(授業公開)」において、授業に支援者として参加した「学外教員」が本校の探究学習についての評価を行った。2つ目は、保護者向けの「探究学習支援サイト」を立ち上げて、保護者サポーターばかりでなく、参加できない保護者からも探究学習についての意見をもらえるようにした。3つ目は、児童が「習得―活用―探究のカリキュラム」をどのようにとらえているのかをアンケート調査やインタビュー調査で明らかにした。4つ目は、2024年1月下旬に実施される研究発表会で授業公開を行う教員が授業を実施し、5つのパターンの授業についてディスカッションを行った。そして、それぞれがどう違うのか、どのような視点で区別できるのかを熱心に議論した。

 このように、「学外教員」「保護者」「児童」「本校教員」といった異なる立場から、多様な視点で本校のカリキュラムの形成的評価が行われている。

(2)研究アドバイザー(吉崎)の指摘をふまえて、「習得―活用―探究」のカリキュラム構想図がより充実したものとなっている。

 そこでは、「習得―活用―探究」は、スパイラルのように「いきつ、もどりつ」することが示されている。まさに、子どもたちは、探究学習やプロジェクト学習を行うなかで、自らの基礎(スキル・リテラシー、教科)の不十分なところに気づき、新たな視点から基礎学習を行うことが示されている。

(3)10月28日に青森県三沢市で行われた「第49回全日本教育工学研究協議会全国大会」で、本校の教員が4本の実践研究を発表した。

 このことは、全国の教員に本校のカリキュラムと授業実践を知ってもらうばかりでなく、本校の教員にとっても自らの実践研究に対するフィードバックをえることができる点で大きな意味がある。

●今後の課題と期待

(1)「習得―活用―探究」の相互作用を、5つの授業パターンの実践を通して、一段と深く追究してほしい。

 特に、子どもにとって基礎(スキル・リテラシーや教科)を学ぶことの意味が、探究学習やプロジェクト学習を経験するからこそ実感できることを明らかにしてほしい。まさに、「基礎を学ぶことの大切さ」である。

 ところで、2023年に逝去された著名な教育評論家で僧侶の無着成恭氏は、次のようなことを言っている。

 基礎をしっかりと身に付けて新しいことにチャレンジする人は「型破りの人」であり、基礎を身に付けないでただ自由勝手にする人は「形無しの人」である。

 まさに、習得(基礎)と探究(創造)との関係もそうである。だからこそ、習得(基礎)―活用(応用)―探究(創造)の関係は、「行ったり来たり」である。

(2)習得、活用の授業マニュアルをわかりやすい形で作ってほしい。

 本校はすでに「保護者・教師のための探究サポートガイドブック」を作成している。このノウハウを活かして、わかりやすいマニュアルを作ってほしい。そこでは、教育方法に対する広義の考え方が求められる。つまり、教育方法を「課題提示」「説明」「指示」「発問」「指名」「板書」などの教授スキルのレベルだけでとらえるのではなく、「学習形態」「学習活動」「教授組織(外部サポーターを含む)」「ICTなどの教育メディア」「学習時間(モジュール制を含む)」「学習スペース」「学習施設・設備」といったさまざまな学習環境レベルでとらえることである。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

○1月・2月

(「考える技」授業公開)

(「探究学習」授業公開)

(パネルディスカッションの様子)

  • ・1月27日(土)の第3回研究発表会を実施した。今回は、探究学習だけでなく、習得の考える技、情報、英語、活用の教科型プロジェクト及び教科横断型のプロジェクトと、5つの学習パターンの授業を公開した。約150人ほどの参加者が熱心に授業を参観し、その後、習得、活用、探究の3つの分科会に分かれて、子どもの学びのみとりについて協議した。分科会では、公開した授業をもとに、授業のデザインや学習評価について議論した。参加者は、学習評価に対する関心が高く、活発に意見交換がなされた。
     午後のパネルディスカッションでは、各部会の報告の後、鳴門教育大学の泰山先生、東北学院大学の稲垣先生、芝浦工業大附属中高等学校の金森先生の3名がパネリストとなり、話題提供をしていただいた。一方的な話し合いだけでなく、ICTを活用して、参加者の意見を拾って、その話題に対する議論を展開したり、参加者と本校教師で編成したグループごとで話し合ったりして、会場が一体となって、テーマ「子どもの探究的な学びをどうみとるか」について熱い議論を展開した。
  • ・校内研究の全体会や各部会で1年間、各自が取り組んだ授業をもとに振り返り、授業マニュアルの作成に向けて話し合いを実施した。

○3月

  • ・習得―活用―探究のそれぞれの部会から授業マニュアルの作成担当者を選出し、内容の検討を実施した。
  • ・授業マニュアル案を作成し、印刷をする。
  • ・1年次の研究報告書の作成・提出をする。

アドバイザーの助言と助言への対応

 研究発表会の授業参観を通して、5つの学習パターンにおいて一定の評価はいただけた。

 一方で、子どもの探究学習に取り組む姿から、習得や活用の授業デザインを見直し、子どもにつけたい資質・能力の何が身について、何が身についていないかを明確にしなければならないことがわかった。まずは、本校独自のe-Portfolioであるまなポートの子どもの記述のみとりについて明確にしていきたい。今後、分析方法については、吉崎先生の助言をいただきながら取り組んでいきたい。また、探究学習については、今後、中学校までのカリキュラムを視野に入れながら、「子どもが学びを創る」本校の個人探究についての考え方を全ての教師が共有し、保護者サポーターとの協働的な取り組みを推進していきたい。さらに、授業公開で1年生の算数、2年生の国語の教科型プロジェクトを公開したが、吉崎先生からは、算数については図形領域で他領域の学習内容と関連づけた授業デザインが開発できるのではないかという助言をいただいた。今年度末の校内研究会で、各学年のプロジェクトの取り組みについて振り返り、まずは、全学年の国語と算数のプロジェクト学習の授業デザインを考案し、実践研究に取り組んでいく。

本期間の裏話

 うれしかったこととして、若手が研究授業を実施し、吉崎先生からお褒めの言葉をいただいたことがとても嬉しく、今後の自分の実践への励みになったと話してくれたことである。加えて、公開へ向けて、部会で指導案を検討したり、模擬授業をしたりして部員みんなで支える体制に対しても、このような研究がやりたかったと話してくれた。一方で、個人探究について、保護者サポーターとのリフレクション会議において教師間の支援の差、体験の充実など様々な課題があがってきており今後の進め方が難しい局面に入ってきている。

本期間の成果

 研究発表会を実施したことで、全教師の実践研究に取り組む意識が高まってきたことである。本校のカリキュラムと現在の自分の授業とを関連づけて振り返り、今後の課題を明確にできたと考える。また、研究会後の校内研究では、本年度の実践を振り返る会議を重ねている。会議での教師の積極的な発言も見られ、自ら実践研究に取り組んでいるという姿が多く見られたことは成果であると考える。さらに、子どもも多くの先生方に来ていただき、その場で自分たちの授業をみていただいたことは、よい刺激になっている。自立・自律した学習者を育成していくための場となった。

今後の課題

 子どもは、習得、活用、探究の3つの学びの特徴については概ね捉えているが、つながりまでは十分に認識できていない。これは、教師側の5つの学習様式のデザインのつながりを意識して実践できていないところにあるのではないかと考えられる。

(1)【活用】単元の再構築

 探究プロセスで必要な資質・能力を活用の授業で獲得できるように、教科型のプロジェクト、教科横断型のプロジェクトで育てる資質・能力について吟味し、単元を再構築する。特に、教科型プロジェクトについては、国語と算数について、各クォーターに1つの単元を構想し、実施する。

(2)学習評価と指導のための資質・能力の明確化

 教科横断型プロジェクトの評価のあり方について検討が必要である。学習活動に紐づけられた教科のどの資質・能力が、どの評価材料で評価されているか、それを教科の評価に戻す手続きが十分に機能していない。教科横断型では教科で習得した知識及び技能を子どもが意識して活用するように支援しなければならない。子どもはともすれば活動に没頭し、活動することが目的化する。教師は、その活動を通してどの教科のどのような資質・能力を活用するのかを子どもに意識づけるとともに、活用できたかどうかをみとることが重要である。

 そのためには、単元構想の際、学習活動に紐づけた資質・能力を再検討するとともに、何でみとるのか評価材料を明確にし、それを蓄積する方法を教師間で共通理解しておく必要がある。

今後の計画

 今年度の実践研究をもとに、作成した「『習得―活用―探究』の授業マニュアル」をもとに実践し、精査した結果を活かした改善案を作成・検討し、授業のマニュアルを完成する。内容としては、授業の目標、学習内容、教材、評価のあり方をまとめる予定である。

○4月

  • ・前年度作成した授業マニュアルに沿って授業を展開していくことを校内の全体研究会議で確認する。
  • ・研究のゴールが、「カリキュラムの効果を検証し、従来から重要とされている『習得-活用-探究」の関係性を授業レベルでより具体化し、他校へ提案性のある実践研究にしていく」ものであることを共通理解するとともに、2年次目の研究計画について提案し、検討する。
  • ・研究者を招聘し、どのようなデータを収集し、どのように分析していくのかなどの効果検証の方法について学ぶ。
  • ・カリキュラム部の各部会で授業計画を立案する。

○5月・6月

  • ・各自が授業マニュアルに沿って、指導案作成や教材の準備に取り組むとともに公開授業の計画を立てる。
  • ・1本の公開授業をもとに、データの収集や授業の分析などの演習をやってみて、今後の授業分析に活かすようにする。その際、アドバイザーの吉崎先生に来校いただき、指導・助言をいただく。

○7月・8月

  • ・一人1回の公開授業をスタートさせる。その際、事前の指導案検討、模擬授業及び授業後の振り返りの会を実施する。授業後は、授業を分析し、データを全体で検討し、まとめる。

○9月・10月・11月・12月

  • ・7月24日に本校を会場にした夏の教員向け研修会を実施するとともに、日本教育工学会(9月7、8日)、全日本教育工学研究協議会全国大会(10月25、26日)、日本教育メディア学会年次大会(10月5、6日)で発表する。
  • ・アドバイザーの吉崎先生に来校いただき、2年目の研究状況について説明し、指導・助言をいただく。
  • ・1月の研究発表会へ向けて、研究紀要および授業案を検討する。
  • ・研究発表会へ向けての準備と授業マニュアルの修正に取り組み、完成へ向けて作業をする。

○1月・2月

  • ・第4回研究発表会(1月24日)を開催し、その成果と課題をもとに、各部会で授業マニュアルの修正に取り組み、完成をめざす。

○3月

  • ・授業マニュアルの製本をするとともに、2年次の研究報告書を作成し、提出する。
  • ・吉崎先生に来校いただき、2年間の研究について振り返りをする。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 教師一人ひとりが、カリキュラムを理解し、授業をデザインしようとする意識が高まってきており、特に若手教師の成長は著しかった。それは、アドバイザーである吉崎先生が3回に渡って本校を訪問し、適切なアドバイスをいただけたからだ。先生が長年学校現場に関わって教師と共に構築された実践研究と関連づけながら、本校のカリキュラムの具現化へ向けてご意見をいただけたことに感謝している。

 4月から2年目の研究に取り組むことになるが、この1年の各自の授業デザインを振り返り、課題を明確にして次年度への研究に精力的に取り組んでいきたいと思う。

成果目標

(図1 本校におけるカリキュラム図)

「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」を授業ガイドという成果物と共に提案することで、他校の実践の手がかりを提供できることを目標としている。その実現へ向けて、これまでの実践を振り返り、成果と課題を整理する。本校のカリキュラムを実践してきた教員の経験や子どもの実態をこれまでの成果物をもとに振り返りながら、有用性や課題を洗い出し、授業ガイド作成のための視点として整理する。

アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 1月27日(土)に、北は北海道、南は九州まで全国各地から約150名の教育関係者が集い、「第三回瀬戸SOLAN小学校研究発表会」が行われた。開校3年目の本校が毎年研究発表会を行っていることは、大いに評価できる。今回の研究発表会では、5つの学習パターン(スキル・リテラシー学習、教科学習、教科型プロジェクト、教科横断型プロジェクト、探究学習)の授業がすべて公開された。とりわけ、若手教員や外国人教員が積極的に授業公開したことが印象的であった。

本期間の研究成果

(1)「習得―活用―探究のカリキュラム」についての教職員の問題意識が深まり、それぞれの学習において「どのような資質・能力を育てるのか」「どのように子どもの学びを評価するのか」という議論が活発化した。特に、研究発表会での授業公開に向けて、3つの部会(習得部会、活用部会、探究部会)で学習指導案を検討したり、模擬授業をしたりして、部員みんなで授業公開者を支える体制が整ったことが評価できる。

(2)「教科型プロジェクト」において、ある領域で学んだ見方・考え方を同一教科内の他領域で活用するような授業デザイン・実践が行われた。例えば、1年算数科において、100までの数の計算の仕方(考え方)を活用し、それぞれに10の位の値段がついている三角形、四角形、円形を組み合わせて、100円以内で自分の好きな図形(車、飛行機、花など)を作るような学習活動が行われた。その図形作成には、子ども一人一台のタブレット端末が使われていた。そこでは、算数科における「数領域」と「図形領域」のつながりが見られた。このように、同一教科内での領域間のつながりや、日常生活とのつながりを意識した授業デザインが構想されるようになってきた。

(3)校内研究の全体会や各部会において、各教職員が1年間取り組んだ授業を振り返り、「授業マニュアル」作成にとりかかっている。本校はすでに「保護者・教師のための探究サポートガイドブック(入門編、解説編)」を作成している。これら2冊は、「探究学習」を実にわかりやすく説明しているため、他校の教職員にも大いに参考になる。「授業マニュアル」もそのようなものになってほしい。

今後の課題と期待

(1)5つの学習パターンの実践によって、子どもたちに育成したい資質・能力を明確にすること

 わが国の学校教育が直面している主要な教育課題の1つが「探究学習」である。そこでは、「探究学習を通して、子どもたちに育成したい資質・能力は何か」「子どもたちの探究学習をどのように支援したらよいのか」「子どもたちの探究学習のプロセスや成果をどのように評価したらよいのか」などが課題となっている。本校では、「集団探究(教科横断型プロジェクト)」と「個人探究(探究学習)」の二通りの探究学習を、小1から週2コマ(45分×2)実践している。前者は「協働的な学び」に対応し、後者は「個別最適な学び」に対応している。そこで、本校が取り組んでいる二通りの「探究学習で育成したい資質・能力は何なのか」を明確に示してもらいたい。さらに、その他の3つの学習(スキル・リテラシー学習、教科学習、教科型プロジェクト)で育成したい資質・能力を明記してほしい。

(2)「探究学習での子どもの学び」を評価する方法を考えること

 その際、日常の学習の様子をみとる「カリキュラムに組み込まれた評価」と、定期的に学習の成果をみとる「オンデマンド評価」の両側面から考える必要がある。

 前者のためには、本校が開発した「まなポート(e-ポートフォリオ)」の内容分析を行う必要がある。データマイニングの技法を取り入れてみることも有効である。

 後者のためには、子ども一人一台端末を活用して「アンケート調査(好き・きらい、得意・苦手、学んだこと、教科学習との関係など)」を行ったり、「インタビュー調査(探究が大好きな子、やや苦手な子など、特徴的な子を対象として)」を試みてほしい。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

○4月

  • ・今年度は研究2年目でまとめの年になる。全体研究を開催し、2年間の研究のゴールとして授業ガイドを作成することを共有した。そのため、研究組織での部会は、カリキュラムの5つの学習様式のグループと英語の6つに編成し、それぞれのグループで授業ガイドブックの作成へ向けて、実践を積み重ねると共に、実践から導き出された理論をまとめることを共有した。
  • ・2023年度と同様、毎週木曜日は校内研究の日に設定した。その中で研究推進委員会も必要に応じて開催することとした。
  • ・Googleクラスルームを積極的に活用するため、新しく赴任されてきた先生方への講習も含め情報の学習会を実施した。

○5月

  • ・5月21日(火)、本校の研究アドバイザーである吉崎先生をお招きして授業研究会を実施。3年の算数、4年のプロジェクト学習、2・3年の探究学習を公開し、指導・助言をいただいた。3年の算数(習得②)は、コースごとに行う計算領域の授業を公開した。コース上位の子どもは学年相当の内容にとどまらず、該当学年を超えて問題を解き進められることについて、新規性と提案性のある授業であると評価していただいた。今後、習熟度別と習熟度が混在した状態で指導するべき単元の精査が必要とご指導いただいた。4年プロジェクト学習(活用④)では、調べる問いをグループで話し合って計画を立てる、課題設定段階の授業を公開した。子ども達の興味関心から単元が構想され継続されていることについて評価をしていただいた。ただし、プロジェクト学習における協働的な学びについて、協働する良さを子どもが感じられる工夫が必要であるとご指導いただいた。2・3年の探究学習(⑤)は、教師や保護者サポーターとの面談を通して、フィールドワークの目的や活動内容を具体的にしたり、図書資料やインターネットなどを使って調べたりすることを目標にして活動した。保護者サポーターの支援や子どもの主体的な活動については評価をいただいた。今後は、低学年における個人探究の支援のあり方についてさらに検討していかなければならないとご指導をいただいた。授業公開後、放課後に全体研究を実施し、吉崎先生の本校の研究に対するご意見をお聞きした。本校のカリキュラムと5つの授業の型をもとに、学習意欲を喚起する授業デザインやICTの利活用について実践例を紹介いただき、教科横断的な視点に立った授業デザインと評価について全教職員で学習した。

(3年の算数「足し算と引き算」の習熟度別の授業風景)

(4年のプロジェクト学習「ビオトーププロジェクト」の授業風景)

(放課後の全体研究での研修風景)

  • ・5月22日(水)、開校当初より研究に関わっていただいている中京大学(前鳴門教育大学)の泰山先生に来ていただき授業研究会を実施。6年の理科の授業を公開し、指導・助言をいただいた。6年の理科は、全10時間の人体のつくりと働きについて学ぶ教科型プロジェクトを計画し、その2時間目の習得段階の授業を公開した。当日は、必要な器具を使いながらトリの解剖を行い、写真や動画で記録する学習活動を行った。子どもの興味関心を引き出す単元計画について評価していただき、「なぜ学ぶのか」子どもが必要性を見出し、個別最適な指導を実現するための工夫が必要であると指導いただいた。放課後に全体研修で、泰山先生より教科型プロジェクトを位置付ける意味について講義をいただき、今後学校として構築する教科型プロジェクトの単元構想について議論を行った。

(6年の理科「人の体のつくりと働き」の授業風景)

○7月

  • ・7月24日(水)に開催される夏の研究発表会へ向けて、掲示物の整理、授業準備等に取り組んだ。掲示物については、各学年の教科横断型のプロジェクトの過程がよくわかるように工夫するように確認した。
  • ・公開する情報の授業では、今年度体系的なシラバス作成に取り組んでいるため、そのシラバスと情報のカリキュラムとの整合性について検討した。また、5・6年はデータ活用で扱うデータについて情報収集を実施した。
  • ・探究部では、公開する1年、2・3年のグループに分かれて、当日予想される子どもの活用やそれに対する支援のあり方について検討した。なお、教師の支援のやりやすさから、1年生も分野別に分かれることにし、情報収集する際の情報源について検討した。

アドバイザーの助言と助言への対応

 吉崎先生からは、今年度の実践研究に期待する3つのテーマを提案していただいた。

 一つ目は、「教科および教科型プロジェクトにおける授業デザイン」である。「概念的・手続き的知識の習得」と「教科の見方・考え方の活用」を両全させる授業デザインのあり方について検討するようにご指導をいただいた。デザインのあり方として、教科の面白さを知るために概念的知識や手続的知識を習得するということが重要であると考える。知識は、単に何かを覚えるようなものだけではなく、どのような方法で解を導き出せば良いか、その手続き的知識も含まれる。まず、そこをきちんと理解した上で単元を構想することを教師間で共有し、教科部会を開き、単元のデザインについて話し合い、今後教科型プロジェクトの授業公開を実施していく予定である。二つ目は、「5つの学習様式がめざす資質・能力を明確化させること」である。吉崎先生にご提案いただいた資質・能力も参考にしながら、さらに検討を重ねていく。特に探究学習の資質・能力について、先生からはレジリエンスをご提案いただいた。子どもの実態から、探究に粘り強く取り組めている子どもとそうではない子どもが見られる。テーマ設定段階での対話のあり方、追究段階での子どものみとりなど、子どもへの支援のあり方を検討していかなければならないことを担当教師間で共有した。また、保護者サポーター会議でも話題にし、支援体制を工夫していきたいと考えている。三つ目は「それぞれの資質・能力を評価する方法を具体化させること」である。これについては、事前の評価計画、まなポートの活用などさまざまな視点で取り組んでいかなければならない。特に点数で評価できない学習活動での評価が課題である。国語部会では、作文ルーブリックを作成し、それに照らして自己評価、相互評価、教師評価を実施していく。そのために、単元構想の中にもルーブリックを子どもも参加して作成する時間を設定する単元を構想するなど、子ども自らが何を目指して学ぶのかを意識できる授業デザインをすることが子どもの主体的な学びへつながると考える。特に書く活動は、探究学習で発揮される知識・スキルである。今後も実践を重ねながら評価のあり方を検討していきたい。

本期間の裏話

 研究アドバイザーである吉崎先生は、授業を参観されると毎回子どもとの関わりを大切にされる。今回も3年生の算数の授業である子どもが先生のところへ行き、一緒に算数の課題を解いている様子があった。子どもは、初対面の先生なのに自然に話をしている。探究学習ではよく見られる光景であるが、子どもがわからないと思ったら、周りにいる大人に自ら聞きにいけるのは、このような雰囲気を大事にしている担当教師の授業作りに対する思いの表れであると考える。若手も中堅も、子どもの目線を大事に、子ども自らが学びたい!わかりたい!授業をデザインすることを大事にしようとしている。それがSOLANの文化として根付いてきているのがとてもうれしい。

本期間の成果

  • ・全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に取り組むことができた。習得②の計算領域の授業公開を実施したことで、指導法について教員の授業デザインの共有化を図れた。今後6年間の体系化へ向けて構想をまとめていく。
  • ・1本の教科型プロジェクトの授業公開を機に、今後全員が公開授業を実施していくための見通しが持てた。
  • ・吉崎先生のご助言がとても参考になり、一人ひとりの教師が何をすれば良いのか自ら考え実践に取り組むようになった。

今後の課題

  • ・授業ガイド作成へ向けて実践研究の質を向上させていくこと
  • ・教科との関連を意識した教科型プロジェクトとの開発
  • ・5つの学習様式のめざす資質・能力の具体化及び評価のあり方

今後の計画

  • ・7月24日の夏の教員研修会へ向けて準備を進め、当日は他校の先生方と低学年の探究学習の公開を踏まえて、探究との出会いの段階での教師の支援について議論する。加えて、探究学習を支える情報の学習のあり方についても意見交換をする。
  • ・一人一回の公開授業の準備。その際、事前の指導案検討、模擬授業及び授業後の振り返りの会を実施する。
  • ・10月25・26日の第50回全日本教育工学研究協議会全国大会で発表するための原稿作成。

気付き・学び

 SOLANで大切にしたい子どもの主体的・創造的な学びの確立へ向けて、今年度から初任者研修も実施している。授業を公開していただき、その授業をもとにディスカッションする。会を重ねるにしたがって、授業を参観する視点も明確になってきており、SOLANで大事にしている授業理念が伝わってきていると感じている。この会には研究者に関わっていただき、毎回ご指導をいただいている。授業力を向上していくために、校内の教師間の学び合いはもちろんのこと、研究者を加えることで授業作りに対する新たな視点を得ることができる。さらに、探究学習については保護者サポーターの活動をみる視点も重要である。

 このように、SOLANの教育は、様々な立場の方々と創り上げている教育だと思う。多様な人々との教育に対する意見交換をするコミュニティー構築は、今後も大切にしていきたい。

成果目標

  • ・「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」を授業ガイドという成果物と共に提案することで、他校の実践の手がかりを提供できることを目標としている。その実現へ向けて、これまでの実践を振り返り、成果と課題を整理する。本校のカリキュラムを実践してきた教員の経験や子どもの実態をこれまでの成果物をもとに振り返りながら、有用性や課題を洗い出し、授業ガイド作成のための視点として整理する。
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 本校は、今年度で開校4年目となり、1年生から6年生が在籍している。そして、来年度からは中等部(中学校)が新設される予定である。それにともなって、瀬戸SOLAN小学校は、瀬戸SOLAN学園初等部となる。「探究学習」「英語教育」「ICT教育」という3つの軸を学校教育の基本とする義務教育学校として、県内外からますます注目されることになる。

 本校は、「グローバルシチズンシップの育成(世界の抱える問題を自分の問題として捉え直し、他者と協働的によりよく解決するための方策を考え、持続可能な社会を創るために自ら行動する世界のリーダーとしての志をもつ人間の育成)」をめざして、既存の学校教育の常識(当たり前)にとらわれない時間割(クオーター制やモジュール制)、日本人教員と外国人教員によるダブル担任制、ラーニングコモンズなどの学習スペース、そして1年生からの週2コマ(45分×2回分)の「個人探究」、児童全員が活用する「まなポート(e-ポートフォリオ)」などを導入している。その中で、次の2つの「SOLANの学びの姿」が明確になってきたように感じる。

 1つは、「子ども一人一人が学習材に真摯に向き合い、学ぶことの価値を自ら意味づけようとする姿」である。このことは、「個人探究」で期待される「子どもが学習活動に没頭し、自ら学習を創ろうとする姿」に具現化されている。

 もう1つは、「子ども、教師、保護者、外部支援者」がそれぞれの立場から相互協力・連携して「共に学ぶ姿」である。まさに、「個人探究」や「教科横断型プロジェクト」では、子どもだけでなく、関わるすべての人がそれぞれの学びを楽しんでいる。

●本期間の研究成果

(1)特研校指定の2年間の研究成果のゴールを教職員間で共有している。それは、「授業ガイドブックを作成すること」である。そのために、5つの学習様式(①スキル・リテラシー、②教科、③教科型プロジェクト、④教科横断型プロジェクト、⑤個人探究)のグループと、英語のグループの6つを編成して、それぞれのグループでガイドブックの作成に向けて、実践を積み重ねている。

(2)研究アドバイザー(吉崎)が訪問した5月21日(火)に、3学年の「算数」、4学年の「教科横断型プロジェクト」、2・3学年の「個人探究」の授業が公開された。「算数」では、計算領域に「習熟度別学習」が取り入れられていた。そこでは、「習熟度の水準」と「学習方法の好み(自分のペースでの学び、教師のガイドを得ながらの学び)」の2軸で児童を6つのタイプに分け、習熟度別学習が行われた。まさに、「個別最適な学び」であった。「プロジェクト」では、グループで話し合いながら、グループの課題を追究するための学習計画を立てていた。まさに、「協働的な学び」であった。

(3)本校は、7月24日に開催される「夏の研究発表会」、来年1月下旬に予定されている「冬の研究発表会」、そして10月下旬に予定されている「第50回全日本教育工学研究協議会全国大会での研究発表」と、積極的に実践内容や実践成果を公開して、学外の教育関係者からの評価や助言を得ようとしている。これらのことを通じて、本校の実践研究の成果を普及させることができるだけでなく、本校の教職員の力量向上につながる「専門的学習共同体( Professional Learning Community )」の構築を図ることができる。

●今後の課題

 本校の活動報告書に記載されている3つの課題の通りである。

  1. 授業ガイドブック作成に向けて実践研究の質を向上させていくこと
  2. 教科との関連を意識した教科型プロジェクトの開発
  3. 5つの学習様式がめざす資質・能力の具体化および評価のあり方