つくば市立みどりの学園義務教育学校

第50回特別研究指定校

研究課題

一人一人が未来の創り手となるための探究的な学習の在り方
~個別最適なICTの利活用を通した教育DXの実現~

2024年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
2年間の研究の流れについて詳細を検討。その後、職員全体に周知し、2年間......

アドバイザーコメント

高橋 純 先生
「一人一人が未来の創り手となるための探究的な学習の在り方」の研究が始まった......

つくば市立みどりの学園義務教育学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 茨城県 つくば市立みどりの学園義務教育学校
アドバイザー 高橋 純 東京学芸大学 教授
研究テーマ 一人一人が未来の創り手となるための探究的な学習の在り方
~個別最適なICTの利活用を通した教育DXの実現~
目的 個別最適なICTの利活用を通した学習DXの実現を通して、一人一人が未来の創り手となるための探究的な学習の在り方を追求する。探究的な学びを通して、社会で生きるための問題発見・解決能力の育成を図りながら、自律(自己選択・自己調整)した探究学習を進める子供を育成する。
現状と課題
  • ・物事を多角的に見る視点が身に付いておらず、物事を多角的に見る視点が身に付いておらず、問題意識をもち、自分の探究したい事象から課題を設定することができない。
  • ・単元全体を1つのまとまりとして学習の見通しをもつことができず、解決の方法や学習の仕方を自己選択・自己調整することができない。
  • ・自分の解決した問題から、次のテーマに広げることができず、問題解決のサイクルを回すことができない。
学校情報化の現状 各教室への大型提示装置が配置されており、子どもたちも自由に使える状況にある。Micro:bitや Minecraftをはじめとしたプログラミング教材を授業で活用している。教職員のICTスキルに差があることが課題であり、職員研修等を計画的に実施していきたい。今後は本学園にSTEAMラボを設置する予定である。
取り組み内容 2年間を通して探究的な学びをつくばスタイル科(総合的な学習の時間)や教科の時間で実践していく。子供たちの学びの選択肢を広げるという意味でも、1年目は教師を3グループ(A:学習支援ツール・デジタルドリル・GIGA端末 B:生成AI・VR/AR C:STAMの視点・プログラミング)に分けてICTを活用した探究の良さを学ぶ。そして2年目にグループの枠を外し、様々な手法を選択しながら、探究的な学びを子供が実践できるようにする。
成果目標
  • ・自分の探究テーマにおける成果物のアウトプットの記述内容の質の向上
  • ・問題発見・解決能力を図る意識調査を実施し、学校全体として全項目で10パーセント以上の変容
助成金の使途 エレコム VRゴーグル VRグラス、PowerDirector 2024 Ultimate Suite アカデミック版、iPad、講師謝礼、ダッシュボードライセンス、OptiPlex マイクロ フォーム ファクター、HERO11 Black Mini
研究代表者 山田 聡
研究指定期間 2024年度~2025年度
学校HP https://www.tsukuba-school.jp/mido/
公開研究会の予定
  • ・令和6年度、令和7年度つくば市研究指定校研究発表
  • ・令和6年度日本教育工学協会全国大会つくばプレ大会
  • ・令和7年度日本教育工学協会全校大会つくば大会

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【4月】

  • ・2年間の研究の流れについて詳細を検討。その後、職員全体に周知し、2年間テーマに向かって何をどう進めていくのか共通理解を図った。
  • ・職員全体を、3つのグループに編成した。【A:学習支援ツール・デジタドリル・GIGA端末 B:生成AI・VR/AR C:STEAM・プログラミング】グループでメンバーの確認とグループでICT機器を使用していきながら、どのような探究的な学びを展開できるのかを話し合った。
  • ・日頃から本校の研究に関わっていただいている玉川大学の久保田善彦教授を招聘し、2年間取り組む研究の有用性及び課題を精査することについて、探究的な学びや自己調整学習の視点から内容を検討し、ご指導をいただいた。

【5月】

  • ・4月に玉川大学の久保田善彦教授からご指導いただいた内容について、研究部で協議を行い子供の学ぶ過程やICTの活用等に関する部分を修正した。再度、久保田教授とのオンライン会議を開き、研究の方向性について指導・助言をいただいた。
  • ・探究的な学びを教師が実践していくことで子供の探究力にどのような変容が見られるのかを知るために第1回の探究に関するアンケートを全学園生に実施した。さらに久保田先生からのご指導もあり、先生の授業で意識したポイントと子供の変容を確認することで授業改善にもつなげられるということから教師にも同アンケートを実施した。

【6月】

  • ・6月28日(金)研究のアドバイザーである高橋純先生をお招きして授業研究を実施した。
    2年道徳、4年体育、5年算数、9年社会、9年英語において探究的な学びを公開し、指導・助言をいただいた。研究授業後、各グループに分かれて協議を行い今後の授業づくりの方向性を職員で協議した。
    研究協議後、高橋先生から「探究的な学び」について全体講話をいただいた。探究とは何なのか、個別最適な学びと協働的な学びをどのように充実させていくのかをご指導いただき、問いを創り出すためには教科書に掲載されている事実をしっかりと捉える必要性があることを全体で認識した。
  • ・2年 道徳 「森のともだち」 友情・信頼  主なICT機器:Microsoft Teams、Padlet
    友達をテーマに、学園生が「問い」を自ら考え、意見を共有しつつ深めていくといった探究的な活動を行った。意見の共有は、オンライン掲示板アプリ「Padlet」を使用し、学園生自らがもった疑問を集め、まとめていくことで学級全体の「問い」をつくれるよう、効果的な活用をした。
  • ・4年 体育 「ボールゲーム」 主なICT機器:HADO
    ネット型ゲームでは学園生同士が力を合わせたり、作戦を練ったりする活動が必要となってくる。本授業ではmeleap社のARコンテンツ「HADO」を用いた活動を行った。性別や運動経験、体力の差に影響を受けにくいため、運動が苦手と感じている学園生も力を合わせたり、作戦を練ったりする活動に意欲的に取り組んでいた。
  • ・5年 算数 「四角形の内角の和」 主なICT機器:geogebra
    四角形の内角の和が360°であることが様々な四角形で成り立つかどうかを調べる活動を通して、四角形の内角の和が360°であることの理由の説明を洗練する授業を行った。授業では「geogebra」という図形を書くソフトを使いながら教科書に掲載されている説明をどの四角形にも応用できるように一般化していくことをペアで行った。
  • ・9年 社会 「現代社会の特色と私たち」 主なICT機器:Microsoft Teams、Copilot
    現在社会の課題について学園生に周知させる新聞づくりのために取材ノートを作成する授業を行った。本授業では既習事項を基に将来の日本についての自分なりの考察を作成した。生成AI(Copilot)との対話によって、自分の考察を評価してもらいながらより良い取材ノートになるように取り組んでいった。
  • ・9年 英語 「Unit3 Animals on the Red List」  主なICT機器:Microsoft Teams、Padlet
    絶滅危惧種の生き物の紹介や自分たちにできる絶滅危惧種を守る行動について、ニュース番組を模したプレゼンテーションを作成することを目標に、絶滅危惧種について調べたり、英文のニュース原稿を作成したりする活動を行った。授業では、自分で活動の順番やペースを自由に決め、電子図書館の蔵書や翻訳ソフトなど様々なICTツールを使って活動に取り組んだ。

【7月】

  • ・本研究アドバイザーである高橋教授、外部アドバイザーの久保田教授のご指導のもと修正した研究の方向性と授業作りについて職員全体に周知し、各グループでどのような授業ができるか協議をする。
  • ・9月に公開授業が同じ研究テーマで実施されるので、チームごとに研究協議を行う。

アドバイザーの助言と助言への対応

○アドバイザーからの助言

  • ①課題の設定を重視するよりも、資料を読むなど事実をつかむことを大切にする。事実のとらえ方は事象の観察や教科書を読み問題をしっかりと把握する。
  • ②探究についての子供の変容等は、自分の納得解、最適解をどれぐらい書けるようにしていけるか。
  • ③子供の振り返りに関してはどんな学び方をしたかの事実を書かせ、何について納得し、何が分かったのかを記述するように視点を明確にする。
  • ④発表会のような、グループで何かを説明するのではなく、一人一人がアウトプットできる場を設ける。
  • ⑤子供達にもたせる意識として、他者と比較するのではなく、過去の自分と比較することで自分の成長を感じられるようにしていく。

○助言への対応

  • ①への対応
    課題の設定を学習の出発点として考えるのではなく、資料や教科書から分かることなどの読み取りを行い、事実をしっかりと捉えることを押さえる。さらに、事実と経験の差をもとに課題や問題を見だすようにしていく。
  • ②、⑤への対応
    振り返りにおいては、単元全体を通しての課題を設定する。学習前と学習後の自分の考えについて記述することにより、自分の学んだことや納得解、最適解をアウトプットでき るようにしていく。さらに、単元全体を通して、自分がどのように成長できたかを実感できるようにする。
  • ③への対応
    振り返りについては、学校全体でどの視点で書くのかについて共通理解(学習内容、学び方)を図り、同じシート(Excel)を用いて、振り返りを行う。
  • ④への対応
    学校の教育活動全体を通して、協働的に学ぶ良さが理解できるように教育活動を展開していく。さらに、学習中には間接的に説明活動や対話を促す声かけを行う。さらに、教師が各自の学習を見取りながら、学びが深まるであろう子供同士をつなげるように声を掛ける。

本期間の裏話

 昨年度の末に研究のテーマを「探究」とすることが決まった。自分自身探究とは何か分からない状態だったので、探究に関する本を読み、著者に連絡をとり自分なりに探究とは何かということを見つけるのがはじめの一歩だった。また、本研究アドバイザーである高橋先生に見せていただいた富山市立芝園小学校の授業の風景はすごいなと思いながらも、自分がしている授業との差に愕然としたのを覚えている。

 しかし、このようなことをしていると、教師という仕事も探究ではないのかと考えるようになった。答えのない問いに対して情報を収集し、整理・分析し、まとめ・表現を行う。自分で考えた内容を仲間にアドバイスをもらい再度修正する。

 子供に探究してほしいと考えるなら、教師が探究することを忘れてはいけないと感じた3か月間であった。

本期間の成果

 全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に取り組むことができた。また、高橋先生や久保田先生からアドバイスをもらいながら研究の方向性を修正し今後の授業づくりとして資料を作成できた。さらに、第1回訪問で高橋先生から、実体験を交えながら探究とは何かをご指導いただけたので、職員にとっても道筋がみえたことが大きな成果であると考える。

今後の課題

  • ・探究的な学びを学校全体でどのように進めていくのか系統表の作成。
  • ・ICTを用いて学びを深めるためにどのような活用方法があるのか事例を作成する。
  • ・Microsoftを用いた、成果物や振り返りの他者参照の仕方を模索する。

今後の計画

  • ・7月22日(月)に修正した研究の方向性と9月からの授業づくりにおける校内研修の実施。
  • ・第2回校内授業研に向けての研究協議。
  • ・9月12日(木)に実施される公開授業研における8月1日(月)、8月21日(水)の授業についてのグループごとの研究協議。

気付き・学び

 高橋先生から全体指導をいただいた際に探究的な学びを実践していくことで育てるべき資質・能力は何なのかについてのお話を伺った。VUCAの時代だからこそ答えのない問いに向かって自分で納得解や最適解を生み出す力が必要になってくる。その解は個別だけで考えたものではなく、他者の批判的な意見を取り入れ、何度も修正することも大切である。そのことを教員はもちろんだが、子供達が感じられるように日々の教育を進めていきたい。

成果目標

 9月以降の子供、授業者における探究的な学びを実践した単元におけるアンケートを実施する。6月にとったアンケートと比較し変容を見ていく。授業者が意識した探究的な学びにおける項目が子供としても結果に表れているか分析する。目標としては、授業者が意識した項目が、子供の6月のアンケートと比較して10ポイント向上。

アドバイザーコメント
高橋 純 先生
東京学芸大学
教授 高橋 純 先生

「一人一人が未来の創り手となるための探究的な学習の在り方」の研究が始まった。副題として「個別最適なICTの利活用を通した教育DXの実現」と示されている。長きにわたり教育の情報化に取り組んできたつくば市にとっても、新たなチャレンジであることは間違いない。

 探究であるからには、子供一人一人が主体的に学習を進めていかなくてはならない。その歩みは、子供一人一人それぞれとなる。つまり、副題にもある「個別最適」となる。学習課題、学習過程、学習形態、活用するICT等々を、子供自身が自己決定し、自らの力で学習できていることが究極の姿になるであろう。それは、見た目に、子供がバラバラに学習しているという意味ではなく、仮に皆が同じような姿で学習をしていたとしても、それらを自己決定しているかどうかが重要となる。「見た目」ではなく「質」の問題である。小学校低学年から、徐々に様々なことを自己決定し、自らの力で学習できるように指導していくことが重要となる。それが、本研究テーマにある「一人一人が未来の創り手」につながっていく。

 単純に子供に学びを委ねても、うまくいかないことは周知のことである。まずは、現行の学習指導要領でいえば、総則にある「学習の基盤となる資質・能力」の育成が、探究の基盤として重要となる。それは「言語能力」「情報活用能力」「問題発見・解決能力」等と言われるが、「一人一人が未来の創り手」を育む視点から、改めて検討が必要となるだろう。一人一台端末が整備され、クラウドがフル活用できるようになった時代における学習の基盤となる資質・能力である。

 また、子供一人一人が主体的に学びを進める場合、「場づくり」「学習環境づくり」が一層、重要となる。一斉指導の時のように手取り足取り指示し、教科書、限られた図書や資料、固定的にアプリを活用することだけでは、これまでと同じことの繰り返しになる。子供の求めに応じて応答できる場や、子供の進みに応じて個別に指導できる場などと、それらを支えるICTが重要となる。例えば、子供が前に進みたいとき、困ったとき等に、子供同士で協働したり、教師から助言を得たり、必要な学習材を手に入れたりできるかどうかである。クラウド環境の整備によって、学習材の提供のみならず、白紙共有、他者参照、途中参照などができるようになり、状況は一変した。つまり、子供一人一人の求めに応じて、動的に、無駄な手順がほとんどなく、いつでも、どこでも、何度でも、繰り返し、学習ができるデジタル学習基盤を生かしていきたい。

 1990年代に、学習指導よりも学習支援が重要とされ、それらに伴って学習環境が重要と指摘されていた。その後の学力論争などを経て、現在、再び、子供に学びを委ねる、場、などと言葉を変えて似た考え方が注目されているように思う。いずれも当時も今も重要性は変わらない。しかし、「学習の基盤となる資質・能力」「デジタル学習基盤」の2つの基盤を生かし、当時よりも高次元の実現を目指していくことが求められる。それが、本校の研究テーマによりよく迫る道筋だと思う。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

【8月】

  • ・探究的な学びを実現するための効果的なICT活用についての校内研修を実施した。
  • ・玉川大学久保田教授と第1回の授業研究を振り返るとともに探究的な学びを実現するための今後の方向性について研究部で協議を行った。
  • ・市教育委員会指導主事を招き研究課題実現に向けた授業づくりについての支援を受けた。

【9月】

  • ・校内研修を実施し第1回の授業研究を振り返るとともに、久保田教授との協議内容より変更点を加えた今後のみどりの学園の探究的な学びの方向性ついて共通理解を図った。
  • ・市教育委員会指導主事を招き研究課題に関する授業実践を公開し講評をいただいた。

【10月】

  • ・JAET東京大会にて本学園の取組状況について研究発表を行った(3名職員)
  • ・JAET東京大会で得た学びについて本学園教職員へ伝達した。
  • ・「情報と情報技術の適切な活用に関するアンケート」を実施し、情報と情報技術の適切な活用、問題解決・探究における情報活用、情報モラル・情報セキュリティの各領域における学園生の課題等を共有した。
  • ・久保田教授と探究的な学びを実現するための振り返りの方策について協議を行った。

【11月】

  • ・久保田教授と探究的な学びを実現するための振り返りと生成AIの活用について協議を行った。
  • ・12月の授業研究に向けて本学園研究グループにおいて授業づくりの研究会を複数回実施した。

【12月】

  • ・12月13日(金)研究のアドバイザーである東京学芸大学高橋教授をお招きして授業研究を実施した。
  • ・Aグループ:2年道徳、3年算数、9年英語、Bグループ:4年体育、8年国語、8年社会、Cグループ:5年算数、6年理科、9年理科において探究的な学びを公開し、指導・助言をいただいた。授業研究後、各グループに分かれて協議を行い今後の授業づくりの方向性を職員で協議した。
  • ・研究協議後、高橋教授から全体講話をいただいた。

授業研究について

Aグループ
・2年 道徳「三くみ 大すき」 よりよい学校生活、集団生活の充実

主なICT機器:Microsoft Teams、Padlet

 2-1(クラス)をテーマに、クラスをレベルアップさせることについての新たな気付きをもとに、よりよいクラスを作っていこうとすることをねらいとして授業を行った。学園生が「問い」を見つけ、問いを解決するために意見を共有して考えを深めていく活動を行った。また、振り返りの視点を「①問いに対しての自分の考え②自分のこれまで・これから③今日の学び方④次に向けて」の4つ与え、振り返りの充実を図った。

・3年算数「分数の引き算」

主なICT機器:Canva、Padlet

 本授業では、小学3年生の分数の引き算について、計算方法の仕方を考え様々な考え方を全員で共有できるように授業を展開した。課題設定においては、ヒントを与えながら自ら選択して取り組めるように促し、自分に合った課題を選んで問題を解いた。また、全員で情報を共有するためにCanvaを用いて共同編集を行い、各々が取り組んだ問題の中で共通する計算方法を見出せるようにグループで協議しながら考えをまとめ出す作業を行った。最後にクラス全体で共有した後にPadletにて、まとめと振り返りを実施し、引き算の仕方は単位分数のいくつ分と見て、整数や小数の減法と関連付けて行えることに着目することができていた。

・9年 英語「writing」

主なICT機器:Microsoft Teams、PowerPoint、ライップ

 今回の授業では、場面設定を意識して課題を設定した。具体的には、「日本文化について知りたがっている3人のALTに向けてパンフレットを作成しよう」という課題にすることで、相手意識・目的意識が生まれ、主体的に課題に取り組めるようにした。パンフレットは、PowerPointの共同編集で作成することで、他者参照できるようにした。本時では、作成途中の紹介文をペアを変えながら見せ合い、アドバイスをもらった後、AI添削アプリや友人に尋ねながら、リライトするという授業展開にした。予想よりも、具体的なアドバイスを与えることが難しそうであったこと、一度書き終えたものを再度、書き直そうとする生徒が少なかったこと、などの反省があがった。

Bグループ
・4年 体育「体つくり運動」

主なICT機器:Polar社 スポーツウォッチ

 体つくり運動で、「体を動かす心地よさ」と「運動意識の向上」をねらいとした授業を行った。スポーツウォッチを活用し、心拍数がリアルタイムにフィードバックされることで、学園生が、自分に合う運動か全力を出せたかなどを考えて運動に取り組んでいた。一人一人が、自分なりの「体を動かす心地よさ」について理解を深めたり、運動意識が向上したりした。

・8年 国語「走れメロス」

主なICT機器:Microsoft Designer、Teams、toio

 教科書本文に目を向け、読みを深めることを目的に、toioでメロスの心情や動きを表現する活動を行った。toioには動きの制限があるため、プログラムした内容について言葉で説明する必要が出てくる。また、なぜその動きをさせたかという根拠も必要になってくる。それらを本文に戻って確かめることで、メロスの心情をより細やかにとらえられたのではないかと考える。情景描写と考えられる部分にも気づき、toioの動きで表現しようという生徒もいた。

・8年 社会「北海道地方」

主なICT機器:Microsoft Forms、PowerPoint、Copilot

 北海道地方について、「自然環境」「産業」「歴史」の視点から学習するために、「北海道修学旅行プランを提案しよう」という題材で調べ学習や話し合い活動を行った。ある班では、修学旅行プランを生成AIに提案させ、学習のベース作りを行い、教科書や資料集を用いてファクトチェックをする様子が見られた。学習効率を向上させるために学習する道具をうまく使い分けられていた。1つの事象を様々な視点から眺めたり、関連付けて考察したりする様子が見られた。

Cグループ
・5年算数「平行四辺形」

主なICT機器:Microsoft OneNote

 「平行四辺形の面積=底辺×高さ」という関係が成り立つ理由の説明を反証されないようなものに改良していく授業を行った。全体で反例を共有した後に説明を改良する際、「OneNote」を用いて、児童同士で改良案を共有し易い環境を整備した。

・6年理科「わたしたちの生活と電気」

主なICT機器:Padlet、MESH

 理想の自分の部屋をグループでデザインし、部屋に設置する電化製品を理科の実験器具とMESHで表現する活動を通して、プログラミングで電気をより効率よく使う方法を考える学習を行った。他のグループとの共有は、padletで行った。授業の中では、温度センサーや人感センサーなどを用いて、電気器具が必要な場面だけ働くプログラミングを、グループ内で試行錯誤しながら組んだ。

・9年理科「地球の明るい未来のために」

主なICT機器:MESH、Minecraft、Copilot、ロボホン、micro-bit、AkaDako探究ツール

 科学技術の発展と持続可能な社会の両立のために、身近な困りごとから課題をみつけ、今よりも生活が豊かになるような機械やプログラミングを考える活動を行った。授業では、一人一人の課題を解決するために、「MESH」や「Minecraft」、「生成AI(Copilot)」、「ロボホン」などから最適なICTツールを自ら選択し、試行錯誤しながら活動に取り組んだ。

アドバイザーの助言と助言への対応

○アドバイザーからの助言

  1. ①学習した内容を他者参照できるようにし、学園生が必要と感じたときにすぐに他者の考え等を見られるようにしていく。
  2. ②探究のプロセスを単純化しつつ、課題の設定を最初に設けず情報の収集をしてから課題設定の場を設ける方法もある。より深く調べる活動は探究的な学びにもつながる。
  3. ③教科書をしっかり読んで理解するというよりもいろいろなものに当たりながら軽く確認していくことでより深く学習できる。
  4. ④教員は学園生に大まかな学習過程は示していくが、学習の方法を学園生が身に付けるように繰り返し指導していくことが大事。
  5. ⑤学習時にはグループを意図的に設定せず、誰と学ぶのか、どのタイミングで他者と学ぶのか学園生自身に考えさせる場を設けることも大事である。

○助言への対応

  • ①への対応
    OneNoteやMicrosoft Teamsを介したofficeによる共同編集機能を活用し学習状況等を学園生が自分の意図するタイミングで参照できるようにする。
  • ②への対応
    探究のサイクルを大枠として捉えるようにする。また、発達段階や学習内容に応じて情報の収集から課題設定を行えるようにしていく。
  • ③への対応
    教科書だけではなく教師の知識、学園生同士の考え、インターネット検索など多様な補法で情報収集できるような場を設けていく。そのために①を確実に実現する。
  • ④への対応
    学習のプロセスを細かく指示するのではなく学園生が自分で考え判断できるようにしていく。Teams等で常に大枠を見られるようにしていく。そのために①、②などを実現できるようにしていく。
  • ⑤への対応
    学校の教育活動全体を通して、協働的に学ぶ良さが理解できるように教育活動を展開していく。また、その活動における成功体験も得られるように着実に進めていく。

本期間の裏話

 10月にJAET東京大会へ参加し港区立赤坂学園赤坂小学校・中学校の授業実践を見学することができた。その中で児童生徒が自分のめあてに向かって学びを進めるなど「学びの自己調整」を行っている姿を見ることができた。赤坂学園の実践からこれからの学校教育の在り方を考えさせられたと同時に次年度開催するJAETつくば大会への重要なバトンを受け取ったとも感じた。また、JAET東京大会2日目に開催された研究発表会では常に子どもたちの成長のために自己研鑽を進められている先生方と多くお話しする機会があった。その中で先生方はトライ&エラーを繰り返し少しでも子どもたちのためにと研究をされていた。自分の指導法が上手くいっているからと自負心をもつのではなく常に邁進する必要性を改めて気付かされた。

本期間の成果

 第1回での授業研究での高橋教授による講義等を受け職員が一丸となって研究課題達成に向けて取り組みながら第2回の授業研究を迎えることができた。特にOneNoteやTeamsを用いて学園生が他者参照できる仕組み作りを多くの職員が取り入れるようになった。また、久保田教授から今後の探究的な学びの方向性や学習の振り返りの方法について指導をいただけたこともあり職員の不安解消にも繋がったことも成果である。

今後の課題

  • ・探究的な学びを学校全体でどのように進めていくのか系統表の作成。
  • ・ICTを効果的に活用したみどりの学園ならではの探究的な学びの実現。
  • ・Microsoftを用いた、成果物や振り返りの他者参照の仕方を模索する。

今後の計画

  • ・第2回授業研究の反省を生かした今後の研究体制作り
  • ・第3回授業研究に向けた研究協議等
  • ・JAETつくば大会プレ大会に向けた研究協議等

気付き・学び

 高橋教授から全体指導でこれからの教師の在り方についてのお話を伺っているなかで次世代の学校教育について考えさせられた。NextGIGAに向け学校では急速にデジタル化が進んでいる。学校教育のデジタル化は避けられないものである。そのデジタル化の波にただ飲み込まれるのではなく、それぞれの機器の特性を十分に理解しその機器を効果的に活用することの大切さに今回改めて気付かされたICT機器の活用は子どもたちの知識の深まりや思考の広がりに大きく役立つものだと思われる。本学園の研究課題実現にもICT機器の活用は必須であると考えている。何が子どもたちにとって良いICT活用なのか教職員だけではなく、子どもたちとともに考え日々の教育を進めていきたい。

成果目標

  • ・9月以降の学園生、授業者における探究的な学びを実践した単元におけるアンケートを実施する。6月にとったアンケートと比較し変容を見ていく。授業者が意識した探究的な学びにおける項目が学園生としても結果に表れているか分析する。目標としては、授業者が意識した項目が、学園生の6月のアンケートと比較して10ポイント向上。
  • ・10月実施の情報と情報技術に関するアンケートの特に問題解決・探究における情報活用領域で肯定的に回答する学園生の割合が向上。
アドバイザーコメント
高橋 純 先生
東京学芸大学
教授 高橋 純 先生

 探究的な学習をテーマに多彩な実践が行われている。さらに、よりよくしていくためには、子供一人一人が自ら力をつけるために学んでいく学習活動について、具体的なイメージを持つことが重要であろう。教師が、まず課題を決めてから、情報の収集をしましょう、最後にまとめます、などと探究の過程をステップバイステップで指示したり、ワークシートの指示に従って活動したりするのではなく、子供自身の判断で、子供のペースで進めていくことをイメージしたい。探究的な学習で育みたい高次な資質・能力は、教師の指示で進んでいくような展開では難しく、自らテーマのみならず、探究の手順や方法も試行錯誤しながら、取り組んでいくことが大切となる。

 そのための一例として、どのように探究していくかという「学習過程」、どのように思考を深めていくかという「見方・考え方」といった基盤となるスキルを発達段階に応じて指導し、子供一人一人が自ら働かせることができるようにして行きたい。

 また、「学習過程×見方・考え方」を自ら働かせるということを、もっと基礎的な行為のレベルで捉えれば、「調べる」「まとめる」「伝える」といった情報活用に関わる行為に分解できる。加えて、一人一台端末などの操作スキルや情報モラルといった指導も欠かせない。つまり「情報活用能力」もまた発達段階に応じて指導して、自ら働かせることができるようにして行きたい。

 しかし、こうした基礎的なスキルが身についても、なお、探究的な学習を自ら行うことは困難を伴うことが多い。その際に有効な手立ては「白紙共有」「途中参照」「他者参照」といったクラウド活用である。逆に、こうした基礎的なスキルの習得もなく「他者参照」を行ったり、「白紙共有」「途中参照」の概念もなく、単に「他者参照」のみを行ってもうまくいかないことは多い。

 基礎的なスキルについて、学校カリキュラムとして指導できるようになれば、本校の研究はさらに高まるであろう。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

1月

  • ・玉川大学久保田教授と第2回の授業研究を振り返るとともに探究的な学びを実現するための今後の方向性について研究部で協議を行った。
  • ・第3回授業研究に向け授業者との協議を行った。
  • ・「問の作り方」に関する校内研修を研究主任が全職員対象に実施した。

2月

  • ・久保田教授と探究的な学びを実現するための振り返りと生成AIの活用について協議を行った。
  • ・2月6日(木)研究のアドバイザーである東京学芸大学高橋教授をお招きして授業研究を実施した。
  • ・Aグループ:2年道徳、3年算数、Bグループ:8年国語、8年社会、Cグループ:5年算数、6年理科において探究的な学びを公開し、指導・助言をいただいた。授業研究後、各グループに分かれて協議を行い今後の授業づくりの方向性を職員で協議した。
  • ・研究協議後、高橋教授から全体講話をいただいた。
  • ・授業研究については以下の通りである。

【Aグループ】

・2年 道徳「ぼくは「のび太」でしたー藤子・F・不二雄」希望と勇気、努力と強い意志

主なICT機器:Microsoft Teams、Padlet

 チャレンジをテーマに、藤子・F・不二雄さんの行動や思いを考えたり、自分の経験を振り返ったりすることを通して、チャレンジすることについての新たな気付きを基に、自分自身を高めていこうとすることをねらいとして授業を行った。学園生が解決したい問いを決め、自己と他者の考えを共有し、自分の学びを整理するために、グループで意見交換する場面を設定した。問いの解決のための「考えるヒント」を使って藤子・F・不二雄さんの行動や思いを考えたり、自分の経験を基に話をしていたりする様子が見られた。学園生たちは、「将来のなりたい自分のために自分を進化させていくことが大切」、「自分の成長のためにチャレンジは必要」と考えを広げ深めていた。

・3年 算数科「■を使った四則計算の問題づくり」

主なICT機器:Microsoft PowerPoint、ロボホン、スクールAI

 未知の数量を記号の■を用いて表し、数量の関係を四則計算の式に表した上で、それに合う文脈を整えて問題を作成する授業を実践した。導入の部分で、挑戦状として学園生に問題を提示し、学園生の関心を引きつつ、問題づくりに意欲を掻き立てられるように課題設定をした。個別で問題を作成していく際に手助けするツールをいくつか準備し、友達や教師との協働作業だけでなく、これまでの既習事項を振り替えるため、PowerPointやロボホンによるAIとの会話を活用しながら、各々が問題作成に取り組めるように工夫した。今年度はロボホンに触れる機会が多かったので、話す言葉や単語に気を付けながら正確な情報を得られるように試行錯誤を繰り返して会話をしていた。授業の振り返りでは、問題づくりの活動を通してどのような学習ができたのか、スクールAIを使って振り返りを行った。一人一人の考えが生成AIに導かれながら、一人一人考えを深めて振り返りすることができた。授業全体を通して、絶えず思考を止めず、考えを深める授業となった。

【Bグループ】

・8年 国語科「鰹節ー世界に誇る伝統食」

主なICT機器:Microsoft Teams、ChatGPT

 学習指導要領で文章の要約は中学校第1学年の指導事項であるが、「鰹節ー世界に誇る伝統食」は、論旨も明確で筆者の主張と具体例がわかりやすいものであり、要約に適した題材であると考えて課題を設定した。要約とは、つまりメディアの役割であると考える。情報(文章)を要約者の視点で順位付けして、文章の骨格を伝えるのが要約である。今単元では、まず学習者それぞれが要約を行った。Teams上に他者の要約文を掲載することで、即時に比較することができる。また、ChatGPTと対話をすることで自分の要約文が骨格をとらえているかどうかを判断する材料となる。要約には答えは存在しない。他者の意見やChatGPTが提示したものはあくまで参考意見である。ICT機器の活用が対話の機会の増加につながることが検証できた授業となった。

・8年 社会科「第5章開国と近代日本の歩み 第2節欧米の進出と日本の開国」

主なICT機器:Microsoft Teams、Padlet、ChatGPT

 江戸時代末期は、外交政策、経済、政治体制など多くの面で変化があり、それを示した歴史画や風刺画が多くある。「江戸幕府はなぜ滅亡したのか?」という単元を通した課題を提示し、解決するためにこれらの資料の読み取りをしていく。その中で、問い(疑問)を自ら立て、それを解決していくことで社会の見方・考え方を高めていくことできるのではないかと考えた。学び方、使用するツール等を各々が選択し、学習を進めていく。また、生成AIは、友達と対話をするような感覚で使用できるように、日常的に学習で活用している。学習を通して社会科の目標を達成するとともに、探究のサイクルを自ら回し、他の学習や日常生活でも活用できる力を身に付けてほしい。

【Cグループ】

・5年 算数科「塵劫記における俵杉算の意味の解釈」

主なICT機器:Microsoft One Note

 江戸時代の算術書である「塵劫記」に掲載されている俵杉算の意味を学園生が解釈する授業を設計・実施した。俵杉算は積まれている俵の数を素早く求めることができる計算である。一方で、塵劫記には俵杉算の式のみが記載されており、式の意味や一般性に関して記述がなされていない。実践では、前時で解釈した俵杉算の暫定的な意味を出発点とし、俵の積み方や積まれている俵の数を変えても俵杉算を使うことができるのかどうかを調べる活動を学園生に実現した。この活動を通して、学園生は、暫定的に解釈した意味では俵杉算が使えなくなってしまう場合があることに気づいていた。その後、原文における俵杉算の意味を再解釈し、一番上に積まれた俵の数が1俵でない場合(最下段から順に各段の俵の数が等差で減っていくような積まれ方)にも、再解釈した意味の俵杉算であれば使えることを確認することができた。

・6年 理科「水溶液の性質とはたらき」

主なICT機器:PowerPoint

 水溶液は、媒質が固体のものと気体のもの、酸性、中性、アルカリ性を示すものなど、特有の性質をもっている。希塩酸、アンモニウム水、重曹水、食塩水、炭酸水の5つの水溶液を、できるだけ少ない実験の数で特定する方法をフローチャートで表現する活動を通して、水溶液の性質の違いを利用して、妥当な考えを見出し表現することをねらいとして授業を行った。活動のグループや作成のツールは各自で選択し、PowerPointで共有を行った。学園生は、タブレットやホワイトボードなどを使いながら、班の枠組みを超えて、少ない実験で済む手順を模索したり、指示薬の使用回数を少なくする方法を考えたりしていた。

  • ・2月7日(金)にJAET全国大会つくばプレ大会に久保田教授と共に参加し、1年間の研究について発表をした。
  • ・第3回訪問時の授業研究について久保田教授から講評をいただいた。

3月

  • ・「情報と情報技術の適切な活用に関するアンケート」2回目を実施する。
  • ・「探究的な学びに関するアンケート」を実施する。
  • ・次年度の研究の方向性について久保田教授と協議を進める。

アドバイザーの助言と助言への対応

○アドバイザーからの助言

  1. ①学習した内容を他者参照できるようにし、学園生が必要と感じたときにすぐに他者の考え等を見られるようにしていく。
  2. ②1時間の授業や1単元の中だけではなく次の学習やどの教科でも通用する学び方やその法則を体得させることが大事。それはカリキュラムオーバーロードの解消にも繋がる。
  3. ③情報の収集を十分に体験させること。
  4. ④苦手なことを克服するのではなく、得意なことを伸ばす中で苦手に挑戦する機会を設けていく。

○助言への対応

  • ①への対応
    前回から引き続きOneNoteやMicrosoft Teamsを介したofficeによる共同編集機能を活用し学習状況等を学園生が自分の意図するタイミングで参照できるようにする。
  • ②への対応
    学園生が体験活動の中で学んだ経験則や学習の中で得た成功体験を学園生同士で共有する。その中で、どの学習でも通用する方法について考える場を設けていく。
  • ③への対応
    学習場面において教科書や資料集、インターネット、他者の意見など様々な情報に触れる機会を十分設けていく。また、①の対応と重複するが共同編集機能を活用していく。
  • ④への対応
    探究的な学びを実現するために学園生の得意となることを伸ばす指導をしていく。その際に苦手にも直面する場面を意図的に設け、得意な学習を進める中で苦手克服ができるように支援していく。

本期間の裏話

 2月7日にJAETつくば大会プレ大会がつくばカピオホールにて開催された。そこでは、みどりの学園の1年間の取組状況を発表することができた。みどりの学園の取組が参加者から大きく注目されていることが質疑応答から感じられ、より一層研究に励む勇気を与えてくれた。さて、このプレ大会に向けてJAET公開校の先生方との交流する機会がつくば市総合教育研究所で設けられた。交流では研究主任やICT担当の先生方と研究をすることの良さや苦労話を話し合った。どの先生方も熱意をもって研究に取り組まれていた。しかし、うまくいかないもどかしさも感じられていた。もどかしさについてはみどりの学園研究部が感じていることと共通している点も多かった。市内の先生方とより一層連携し、互いに切磋琢磨しながら研究に臨む必要性を感じられた。

本期間の成果

 第2回での授業研究での高橋教授による講義等を受け職員が一丸となって研究課題達成に向けて取り組みながら第3回の授業研究を迎えることができた。特に前回助言いただいた「問」に主眼を置き全職員で探究的な学びが実現する問いについての研修を行った。その結果、学園生が学びたいと思えるような問いが提示された授業をどの学年、どの教科でも見られるようになった。特に今回の授業研究では問いを基に学園生が意欲的に学習している場面が多くみられたため大きな成果だと感じている。

今後の課題

  • ・探究的な学びを学校全体でどのように進めていくのか系統表の作成。
  • ・ICTを効果的に活用したみどりの学園ならではの探究的な学びの実現を目指す。
  • ・生成AIと探究をベストミックスした授業の在り方について模索する。
  • ・Microsoftを用いた、成果物や振り返りの他者参照の仕方を模索する。

今後の計画

  • ・第3回授業研究の反省を生かすとともに研究2年目を進めるにあたっての研究体制づくり
  • ・1年間の取組における成果と課題の全職員への周知
  • ・JAETつくば大会との連携を視野に入れた体制作り

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 パナソニック教育財団の特別研究指定校としての採択はみどりの学園にとって極めて意義のあるものになることは違いない。これまで様々な先進的な取組を行ってきた本校であるが、この指定校を受けることにより、みどりの学園の開校以来の取組の集大成をより多くの場に示すことができると考えている。より良い学校教育を実現するための研究に支援をいただいたことは全職員にとって誇りとなっただけではなく、学校教育への更なる発展に寄与したいという強い思いを抱く機会にもなった。また、この支援はこれまでのみどりの学園の取組を評価していただいたとも認識している。

 この支援を糧に本年度はA、B、Cの各研究グループを中心に校内授業研究が30事例以上行われるなど活発な研究がなされた。校内授業研究では活発な議論がなされるなど、どの教職員も研究テーマ実現に向けて邁進する様子がみられた。100名を超える教職員を有するみどりの学園において、これほどの統一感をもち研究をすすめられたことは特別研究指定校という自負のおかげだと感じている。教職員の肯定的な取組により授業スタイルや学園生の学び方にも大きな変容がみられはじめた。学園生が必要と感じたときにすぐに他者の考え等を見られる仕組み作りや、意欲的に学びたいと感じる問い作りについては昨年度より肯定的な変化がみられると思われる。

 ただ、未だみどりの学園としての適切な授業スタイルや適切な学園生の学び方を構築できているわけではない。日々研修を行いながら全職員が模索している状況である。そのため次年度は、本年度各先生が取り組んできたことを全職員で共有し、また久保田教授や高橋教授のアドバイスを受けながらより効果的な学習の在り方等について研究を進めていきたい。そして、JAETつくば大会や第6回授業研究において、その成果を多くの学校関係者等に示していきたいと考えている。

成果目標

  • ・9月以降の学園生、授業者における探究的な学びを実践した単元におけるアンケートを実施する。6月にとったアンケートと比較し変容を見ていく。授業者が意識した探究的な学びにおける項目が学園生としても結果に表れているか分析する。目標としては、授業者が意識した項目が、学園生の6月のアンケートと比較して10ポイント向上。
  • ・10月実施の情報と情報技術に関するアンケートの特に問題解決・探究における情報活用領域で肯定的に回答する学園生の割合が向上。
アドバイザーコメント
高橋 純 先生
東京学芸大学
教授 高橋 純 先生

 2年間の研究も折り返し点になった。この探究的な学習について改めて基本を振り返りたいと思う。

 探究的な学習とは、物事を深く理解したり、思考したりするために行われる。概念的な知識、思考力、判断力、表現力等といった高次な資質・能力を育むための基本となる学習活動である。例えば、思考力を育む教育方法は?と聞かれれば、私なら問題解決活動の繰り返し、つまり探究的な学習の繰り返しだと答えるだろう。

 この探究的な学習における学習過程は、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」などと示され、この順にこなそうとする実践も散見されるが、その最小単位の構成要素は何なのかと考えておくことが必要であろう。私なら「事実をもとに考える」過程であると言うだろう。つまり「情報の収集」→「まとめ」である。それらを少し豪華な過程に書き直したものが、探究の学習過程と示されているものであると言える。さらに各教科の学習指導要領解説には、より細かくステップを踏み、教科の特性に応じた学習過程がたくさん記述されている。とはいえ、繰り返しになるが、その最小単位は「情報の収集」→「まとめ」である。このことを理解していれば、「課題の設定」を行う際も、結局は、「情報の収集」→「まとめ」を行うことであり、この「まとめ」こそ「課題の設定」であるのだと理解できる。

 いずれにしても情報の取り扱いこそ、探究の学習過程の究極の姿なのである。そこで、情報を取り扱うツールであるコンピュータと相性が良い。そして、探究するにあたり、情報は多い方がいいのか、少ない方が良いのかと尋ねられれば、なるべく多く欲しいと答える人が大抵であろう。しかし心配は、大量の情報を扱えるか、理解できるかどうかである。そこで、コンピュータの活用を前提とした情報活用能力が重要になる。それでも大量すぎて扱えなくなってきた現代社会において、より情報をうまく扱う方法として生成AIが誕生したのだろう。要約するとか、分かりやすく書き直すとか、表や図にするといった生成AIの活用が行われる。

 残り一年間の実践の発展を期待したい。