神奈川県立生田高等学校
第42回特別研究指定校研究課題
~社会が求めるICTスキルの獲得を目指して~
神奈川県立生田高等学校の研究課題に関する内容
都道府県 学校名 | 神奈川県 神奈川県立生田高等学校 |
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アドバイザー | 野中陽一 横浜国立大学教授 脇本健弘 横浜国立大学講師 |
研究テーマ | 21世紀型学習スキルの育成と実践 ~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~ |
目的 | 21世紀型スキルの学びを通し、問題解決型能力の向上を目指す |
現状と課題 |
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学校情報化の現状 | 県立高校としては比較的ICT機器の整備は進んでいる。GoogleAppsのIDの整備も進み、自宅学習の下地は整っている。 |
取り組み内容 |
ICT端末を活用し、全教科、1つ以上の単元で「問題解決型協働学習」を実践する。(27年度の継続)
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成果目標 |
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助成金の使途 |
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研究代表者 | 天野 尚治 |
研究指定期間 | 平成28年度~29年度 |
学校HP | http://www.ikuta-h.pen-kanagawa.ed.jp |
公開研究会の予定 |
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研究課題と成果目標
研究課題 | 21世紀型学習スキルの育成と実践 ~社会が求めるITスキルの獲得を目指して~ |
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成果目標 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(4~7月)の取り組み内容 |
○計画
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○実績
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※アドバイザーの助言と助言への対応 |
○助言
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○対応
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
本期間の裏話 |
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成果
本期間の成果 |
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今後の課題
- 電子紙芝居的な使い方以外でのICT機器の効果的な利活用方法。
- 一人一台ネットワークに繋げてもストレス無く動くWi-Fi環境。
- クラスルームシステム(ガイアエデュケーション)、GoogleApps、Classiの使い分け。
今後の計画
- GoogleAppsを利用した協働作業。
- クラスルームシステムを利用したグループ学習。
- Classiを利用した夏休みの反転学習と学習記録(1年生)。
- 横浜国立大学 教育人間科学部附属教育デザインセンター 教授 野中 陽一 先生
- 横浜国立大学 教育人間科学部附属教育デザインセンター 講師 脇本 健弘 先生
生田高校は、「ICT利活用教育推進モデル校(平成26・27年度)」「ICT利活用教育推進スーパースクール(平成26~28年度)」等継続して県の指定を受け、ICTを利用したパイロット校としての実績がある。
さらに昨年度は、財団の一般助成を受け、以下の取り組みを行っている。
1)自立学習を充実、学習意欲と協働学習の質を向上。
2)言語活動の充実、生徒の思考力、判断力、表現力を育成する。
3)問題解決能力、情報活用能力を育成する。
一方、教室のICT環境は常設ではなく、各フロアーの収納庫にプロジェクタを配備し、共有して活用しており、日常的な活用のための工夫と苦労が見られる。ICT環境の改善も同時に進めながら研究を進めていくことになる。
特別研究指定校としての研究課題は、「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」とかなり大きなテーマであるが、この実現を図るためには、学校全体のカリキュラム・マネジメントが重要となる。
当面は「ICT端末を活用し、全教科、1つ以上の単元で「問題解決型協働学習」を実践する」ことを通して、学校カリキュラムを構築していくことになるだろうが、教科、学年、単元等の相互の関連を明確にする必要がある。
今回の訪問では、多くの授業が公開されたが、研究課題と単元や本時との関連が示されず、実践が個々に行われているように思われた。21世紀型スキルの育成のための授業や授業研究のあり方に加え、次期学習指導要領を視野に入れたカリキュラム・マネジメントの実現についても成果を期待したい。
研究課題と成果目標
研究課題 | 21世紀型学習スキルの育成と実践 ~社会が求めるITスキルの獲得を目指して~ |
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成果目標 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(8~12月)の取り組み内容 |
○計画
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○実績
[公開授業の様子] |
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※アドバイザーの助言と助言への対応 |
○助言
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○対応
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
本期間の裏話 |
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成果
本期間の成果 |
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今後の課題
- 教材の共有における教員側の壁の克服。
- すべての生徒がICTを利活用できるための、カリキュラムの開発。
今後の計画
- 12月中にH29年度に向けたワーキングチームの結成と第1回打ち合わせを行なう。
- ClassiやGoogle Appsを利用した冬休みの教材配信。
- 横浜国立大学 教育人間科学部附属教育デザインセンター 教授 野中 陽一 先生
スモールステップではあるが、研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」に向けた取り組みが具体的になってきた。
一つは、指導案の改善である。研究課題に沿ったICT活用の意図、本時の学習活動におけるICT活用場面が具体的に記されるようになり、それらが単元の計画の中で位置付けられるようになった。
二つは、教科内での実践の共有に加え、教科を超えた実践の交流が見られるようになったことである。研究授業に関する協議や研究課題に沿ったICT利活用についてのディスカッションを全体で行うことができ、今後の授業改善の取り組みの方向性を共通理解する場となった。
こうした取り組みによって、生徒がICTを活用する学習活動の充実が図られ、操作スキルの向上にもつながっている。また、まず自分で考える→グループに考えを広げる→全体での共有という学習活動の流れをベースに授業を組み立てたり、複数のICT機器を組み合わせた活用を構成したりすることが可能となった。
授業研究を基盤とした校内研究が日常化していない高等学校においては、一歩一歩、教師の個々の取り組みから、学校全体への取り組みへと広げる工夫が必要となる。研究主任を中心とした校内研究のマネジメントがより重要なのである。教科、学年、単元等の相互の関連を明確にした学校カリキュラムを構築していくためには、校内に学校研究の文化をつくることが求められるのである。
研究課題と成果目標
研究課題 | 21世紀型学習スキルの育成と実践 ~社会が求めるITスキルの獲得を目指して~ |
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成果目標 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(1~3月)の取り組み内容 |
○計画
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○実績
[学習成果発表会 生徒の発表したスライド] [研究成果発表会 教員の発表したスライド] |
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※アドバイザーの助言と助言への対応 |
○助言(11月に行った公開研究授業での助言)
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○対応(1月~3月までの期間)
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
本期間の裏話 |
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成果
本期間の成果 |
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今後の課題
- 新年度に向けた、教員に対する研修の充実(Google Apps、Ciassiなど)。
- 新年度に向けた、新たなICT利活用推進ワーキングチームの発足。
- すべての生徒がICTを利活用できるための、カリキュラムの開発。
今後の計画
- 平成29年度に向けた計画の立案。
- 3月中にiPad40台を用いた授業に関する教員対象の研修を行う。
- Classiを利用して学習状況を把握する。
- Google Appsを利用して教材配信を行う。
- 横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 准教授 脇本 健弘 先生
研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」に向け、取り組みが進んでいる。
一つは、ICTを活用した授業のやり方に関する共有が進んでいるということである。授業の目的やそれに伴いICTをどのような目的で活用したのか、共有シートを作成することで、校内の共有を図っており、全校への波及に向けた取り組みがなされている。
二つは、よりICT活用の実践の幅が広がっているということである。生徒がICTを主体的に活用する場面も増えてきている。自身で情報を集め、発表するといった授業などが増えており、協働的な活動をどのように支援するのか検討がなされている。また、そのような時間を確保するため、一斉講義形式の授業については、動画教材を作成するなどし、生徒が視聴することで自学自習を支援するなどの取り組みも行われている。
三つは、教科を越えたICT活用についても成果が見られるようになっている。部活動などでも科学部の研究データの共有や、運動部でのスケジュール管理など、様々な場面で活用が行われ、生徒の学習道具としての普及が見られる。
今後の課題として2つ挙げられる。
一つは、21世紀型学習スキルの育成と実践を目指したカリキュラムの作成である。個々の授業や生徒の活動は充実してきたものの、カリキュラムレベルでの改革はこれからである。そのためには、教科や学校全体の研究のマネジメントが重要になる。まずは各教科で単元毎にカリキュラムを開発、実施しつつ、それらの取り組みを共有し、学校としてのカリキュラムを考えていくことが求められる。校内での教科、学校全体での連携した取り組みが今後の重要課題であると言える。
二つは、より協同学習を深めていく必要があるということである。ICTの活用により、生徒の対話や情報の共有は進んだものの、その対話をどのように行うのか、情報の共有によりどのような活動を展開していくのかといった点には課題が見られる。より質を高めていくためには、授業における生徒の発話を振り返り、どのような活動構成にすべきか検討することが求められる。
研究課題と成果目標
研究課題 | 21世紀型学習スキルの育成と実践 ~社会が求めるITスキルの獲得を目指して~ |
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成果目標 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(4月~7月)の取り組み内容 |
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※アドバイザーの助言と助言への対応 |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
本期間の裏話 |
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成果
本期間の成果 |
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今後の課題
- 主体的で対話的な学びについては、多くの授業で成功例を積み上げることができているが、深い学びについては更なる教員の工夫が必要。
- エビデンスを残すことが大切で、その方法について考えていく必要がある。
- 学校におけるカリキュラムマネジメントの確立。
- 協働学習の内容を深める。
- グループ学習の質の向上。
今後の計画
- ロイロノートを利用した双方向授業をプロジェクトチームや若手教員などを中心に研究する。
- Classiを利用して、生徒に夏休みの学習記録をつけてもらう。
- プロジェクトチームを中心に、10月と11月に行われる研究授業の準備を行う。
- BYODの方向性を探る。
気付き・学び
G Suiteやロイロノートの導入拡大により、パワーポイントによる1場面でのICT利活用から、シンキングツールとしての利活用へと深化している。授業形態としてもグループ学習の質の向上をどうするか、教員のファシリテーターとしてのスキルアップが臨める。
- 横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 准教授 脇本 健弘 先生
昨年度に引き続き、研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」に向け、実践を行っている。
ICTの活用の幅はさらに広がりを見せ、生徒が学習の道具として様々な場面で活用をしている。数学や物理ではシミュレーション教材として、自作動画の視聴による数学の問題演習、英語での発音の利用など、昨年度と比較して、その範囲は広がっている。また、校内の実践において、どの学習場面で、どのようにICTを活用するのか効果的なのか、共有が進むことで、各授業でのICTの活用が、授業の特性にあわせ複数場面で利用されるようになってきた。
そのような中で、今年度は、特に協働学習に焦点をあてて実践を進めており、G Suiteを用いた協働学習などが行われている。また、ICTのみにとどまらず、ホワイトボードなども活用することで、生徒の協働学習をより深めることができている。
また、学校組織としても、ICT利活用研究プロジェクトのもと、組織的にICT利活用の授業の計画が立てられており、組織としての活用もより進んでいる。若手教師を中心に、ICT活用に関する授業の研修と実践も行われており、学び続ける組織としての文化の定着の兆しも見られた。
今後の課題として、2点が挙げられる。
1点目は、協働学習についてより深めていくことが挙げられる。現状においても、生徒は、学習課題についてICTなどを利用しながら対話を行えているが、グループによってばらつきが見られる。授業において、教師がひとつひとつのグループを観察し、状況に応じて、各グループに働きかけることが求められる。そのためには、研究授業のあり方について変えていく必要がある。現状の研究授業では、ICTの活用の効果の検証が主に行われてきたが、そこに、生徒のそれぞれの学びがどうであったか、詳細に振り返っていくことが求められる。どのグループの対話がうまくいき、うまくいかなかったのか、その原因は何なのか、生徒の姿をもとに検証していくことが重要である。
2点目は、カリキュラムマネジメントの確立である。各教科でどのようにICTを活用していくのか、その方向性が見えつつある中で、より広い範囲で、21世紀型学習スキルをどのように身につけさせるのか検証することが求められる。各教科で、そして、教科の枠を越え、学校としてどのようなカリキュラムを進めていくべきであるか、考えていく必要がある。
本期間(8月~12月)の取り組み内容
- 8月2日にパナソニック教育財団成果報告会に参加し、中間報告を行った。
- 8月30日の総合的な学習の時間に、ドイツから来た留学生とICTを利活用した異文化交流を行った。
- 10月12日と11月9日に研究授業と協議会を行った。特に11月9日は今まで研究授業の事例が少なかった国語でも実施することができた。
- 1年生の全クラスと2年生の一部のクラスで、21世紀型学習スキルの育成を踏まえた、問題解決型協働学習をロイロノートスクールで行った。
- 若手の教員を中心として、ICTを利活用した授業の研修と実践を行った。(2回)
- 1年生と2年生対象にICT利活用アンケートを行い、スマートフォンの利用状況や家庭でのWiFi設置状況などについて調査を行なった。
- 12月21日のアドバイザー訪問に合わせ、正解の無い問題に対するグループ学習と教科横断型問題解決の公開授業を行った。
- 12月27日に県立高校改革Ⅰ期指定校の学習成果発表会において、生田高校の生徒がICT利活用授業研究推進校として、横浜北東・川崎地区の教員・生徒に向け、3年間でICTをどのように利活用したか発表を行う。
グラフ作成ソフトを利用した授業
ロイロノートスクールを用いた問題演習
ドイツからの留学生との交流
教科横断型学習
アドバイザーの助言と助言への対応
- 教科の目標を達成するためICTを利活用する訳ではない。社会が求めるICTスキルと関連させる。また、21世紀型学習スキルと情報活用能力の育成との整理が必要。
⇒本校の今までの取り組みから、教科・科目の視点からではなく、活動内容を中心とした、21世紀型学習スキルと関連させたモデル図を作成した。本校の目指す中心を「仕事の内容」に絞り、仕事の方法である「情報活用能力」とは区別している。
- 最終報告書の作成に向け、もう一度申請内容の確認を行ったほうが良い。
⇒ICTプロジェクトを中心に、報告書の作成に向け、申請書の内容でできた部分とできなかった部分の整理をし、まとめの作業に入っている。
本期間の裏話
- ロイロノートスクールを利用する教員が増え、タブレットPCが不足する事態が起こった。
本期間の成果
- 2年間本校が取り組んできた活動と、21世紀型学習スキルの向上が結びついたモデル図が完成した。
- 教科を横断した問題解決型協働学習に関して、ICTを利活用して行う事ができた。
- ロイロノートスクールの導入で、総合的な学習の時間など、プレゼンテーションや留学生の招請授業でもICTを効果的に利活用した授業が展開できた。
- 最終報告書作成に向けた取り組みが、組織的に行われた。
今後の課題
- 21世紀型学習スキルの向上には、一人一台デバイスを持っていないと難しい部分がある。BYODの導入に向け、更なる研究が必要である。
- 引き続き、エビデンスを残すことと、その方法について考えていく必要がある。
- 最終報告書の作成に向け、アドバイザーや財団と連絡を取りながら、より良い報告書の完成を目指す。
今後の計画
- 最終報告書の完成。
- 平成30年度のBYOD導入に向け、1月に通信回線のテストを行い、その結果を受けて課題を検証していく。
- BYOD導入に向け、利用のガイドラインや保護者向け文書の作成に取り組む。
- パナソニック教育財団に提出する最終報告書とは別に、生田高校でのICT利活用の取り組みをまとめた、他の高校でも参考になるような詳細な報告書を作成する。
気付き・学び
G Suiteやロイロノートの導入拡大により、パワーポイントによる1場面でのICT利活用から、シンキングツールとしての利活用へと、前回報告書を作成したときよりも格段に深化している。今後も効果的な利用方法が期待できる。
成果目標
- 本校でこれまで取り組んできたICTを利活用した「問題解決型協働学習」の事例を、21世紀型スキルの育成と関連付けたモデルを作る。
- 申請書に書いた活動内容を再確認し、検証が不足する部分を補う内容の公開授業を行う。
- 最終報告書完成を目指し、実践事例の集約を行う。
- 横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 准教授 脇本 健弘 先生
研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」に向け、取り組みがさらに進み、まとめに入っている。その活動について、以下の3点にまとめる
1点目は、教科毎の利活用のさらなる進展である。これまでも理科や英語、数学など多様な科目で実践を進めてきたが、国語においてもジグソーメソッドなど協調学習に関する手法とICT活用が組み合わせて行われている。今年度から着任した教員も積極的にICTの利活用を進めており、校内での利用がさらに浸透してきた。指導案の共有など、これまでの地道な取り組みが実を結んできたといえる。今後、これらの蓄積が他校の教員にとっても参照できるようにまとめていくことが、研究の成果として期待される。
2つめは、21世紀型学習スキルに関する実践の進展である。生徒がICTを主体的に活用して問題解決に取り組む授業が増えてきた。例えば、物理においては、日常生活での現象の解明について、これまでの既習事項に加え、インターネットでの情報収集、分析を行い、発表する授業などが展開されており、生徒が自身の学習の道具としてタブレット端末、スマートフォンなど複数の端末を使いこなしている様子が伺えた。前回においても、部活動のスケジュール管理や、記録の分析など、教科外での活用も盛んであったが、その幅も広がっている。例えば、留学生との交流において、タブレット端末を表現のツールとして用いるなどの場面が見られた。研究もまとめの段階にはいり、各教科、教科外の取り組みの整理が進んでおり、高校ならでは21世紀型学習スキル獲得の知見が生み出されることが期待される。
3つめは、教科横断型の授業の展開である。各教科の知識を動員しないと取り組めない課題、特に正解のない課題について取り組む授業が行われている。例えば、ある地域における発電所の選定について生徒が検討していた。各グループで選挙に出馬するというシチュエーションのもと、地域の住民が納得できるマニフェスト(発電所の選定)を作成するという設定である。その地域の特性を考慮し(社会)、どの発電所が効果的なのか(理科)、これまで学んだ教科の知識をいかしつつ、インターネット等で、それぞれが、自身の選定を説明するための材料を調査・分析するなどの活動に、グループで取り組んでいる。
このように、研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」とあるように、今回はこれまでのICT活用に関する取り組みを生かし、21世紀型学習スキルに関する実践に積極的に挑戦しており、残りの期間で、これらの成果をまとめていくことが期待される。
本期間(1月~3月)の取り組み内容
- 12月27日に県立高校改革Ⅰ期指定校の学習成果発表会において、生田高校の生徒がICT利活用授業研究推進校として、横浜北東・川崎地区の教員・生徒に向け、3年間でICTをどのように利活用したか発表を行った。(12月の報告書には詳細が報告できなかったため、今回記載した。)
- 1年生全員が物理基礎の授業で、エネルギー問題を解決するためのプレゼンテーションを1グループ5人の班で行った。
- 生徒の持っているデバイスで学校のネットワークが利用できるように、民間業者によるWiFi環境を整備した。
- BYOD導入についてのガイドラインを作成した。
- 試験的に生徒のデバイスを学校のネットワークにつなげ、回線テストを行う中で端末登録を行った。現在400台以上の端末が登録されている。
ICT利活用推進校としての生徒発表
天井に設置されたアクセスポイント
アドバイザーの助言と助言への対応
- 最終報告書を作成するために、文科省の提示した「問題解決型協働学習モデル」に生田高校の事例を当てはめ、生田高校独自に絞ったモデルを定義し、検証を行うと良い。
⇒生田高校の今まで積み上げた事例を、文科省モデルに当てはめ、特にどの部分に力を入れてきたのか分析を行う。
- パナソニック教育財団に提出する報告書とは別に、他の高校の参考になる事例をまとめた冊子を作成する。
⇒今までの取り組みや公開授業で用いた指導案を冊子の形にまとめ、県立高校に配布し、Webページで公開することを検討している。
本期間の裏話
- 計画では11月に回線テストを予定していたが、トラブル続きで、やっとこの3月に回線テストが実現した。
本期間の成果
- 2年間本校が取り組んできた活動と、21世紀型学習スキルの向上が結びついたモデル図が完成した。
- 見方によっては全ての学習活動が「問題解決型協働学習」であると言えるが、アドバイスを受けて文科省のモデルに当てはめてみると、生田高校では特に「対話的な深い学び」の部分に当てはまる学習活動が多いことが分析できた。
- 物理基礎の授業で、地形や気候の特性を考慮したエネルギー問題を解決し、発表を行ったことで、教科を横断した問題解決型協働学習を行う事ができた。
- BYOD導入に向け、利用のガイドラインや保護者向け文書を作成できた。
- 最終報告書作成に向けた取り組みが、組織的に行われた。
今後の課題
- BYODの導入にあたり、具体的な利用方法やトラブルの対処法など、更なる研究が必要である。
今後の計画
- 最終報告書の完成。
- 平成30年度のBYOD導入に向け、3月に行った通信回線のテストの結果を踏まえ、課題を検証していく。
- 横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 准教授 脇本 健弘 先生
生田高校は、研究課題「21世紀型学習スキルの育成と実践~社会が求めるICTスキル獲得を目指して~」に向け、実践を行ってきた。ICTの活用について、教員の活用から生徒の活用まで、段階を経て、着実に取り組み、成果を挙げてきた。生徒がICTを活用して「問題解決型協働学習」をどのように行うべきか研究を進めていくことはもちろんのこと、学校組織として、ICTの活用を展開していく際にも、様々な工夫を行う事で、課題を乗り越えてきた。高校は、小学校・中学校と比較し、教員数が多く、文化も異なる。その中で、各教科から教科を横断した取り組み、また、部活動など生徒の学校での様々な活動にまで視野にいれ、学校組織全体で実践に取り組もうとしてきたことは、今後他校で同様の実践に取り組む際に、貴重な事例になると考えられる。以下に、上記、研究、学校組織での取り組みについて、それぞれの詳細を述べる。
「問題解決型協働学習」の研究について、生田高校は、21世紀型学習スキルの中で、特に生徒がICTを道具として、主体的に利用できるようになることを目指して研究に取り組んできた。まず、各教科でどのように活用すればよいのか、教科の特性に応じてその利用方法を検討してきた。高校という実践事例が少ない中で、各教科の特性を生かした事例の蓄積は、貴重なものである。例えば数学では、シミュレーションソフトを活用することで、様々な数式を、教師が一方向的に説明するのではなく、生徒が試行錯誤しながら理解していく様子が確認できた。化学では、実験の記録を紙媒体のみならず、Googleのツールなどを利用することで、グループや教室全体での学びのプロセスの共有が容易になり、紙媒体よりも議論に注力できるようになった。地理や日本史の授業では、情報収集ツールとしてICT活用がなされていた。資料集なども活用しつつ、インターネットの検索を活用し、様々な情報を集め、それらを批判検討しながら課題に取り組む姿が見られた。教科横断型の授業では、これらの蓄積をもとに、各教科の知識を動員しないと取り組めない課題、特に正解のない課題について取り組んできた。このように、生徒は、インターネットを活用して情報を集めつつ、それらを整理し、パワーポイントやロイロノートなど様々なツールを活用して、自己表現できるようになっていった。これらICTの活用は、生徒の高校生活に浸透しており、部活動のスケジュール管理や記録の分析をコンピュータで行ったり、留学生との交流においてもタブレット端末が用いられるなど、生田高校が掲げる「ICTを利活用して仕事をする」能力が着実に育っていることがわかる。生田高校が上記の取り組みを成功させた秘訣として、急がず着実に進めていったことが挙げられる。まずは各教科で活用、検討を繰り返し、その中で教員や生徒がその価値を理解し、さらに実践の質が高まり、それにより真正な学びへ、そして日常につながったといえる。
学校組織での取り組みに関して、いくつもの工夫が見られた。例えば、各教科の取り組みの成果が、その教科の中や個人で留まってしまわないように、情報の共有に力を入れてきた。具体的には、ICT活用について、その活用の仕方を詳細に指導案に残すようにしている。これらの活動は、教員にとって負担ではあるものの、元々校内にいる教員はもちろんのこと、新たに生田高校に異動してきた、これまでICT活用をしてこなかった教員にとって特に有効であった。異動したての教員も、これらの情報を参考にすることで、様々な実践に取り組んでいた。例えば、タブレット端末を用いてジグソーメソッドに挑戦するなど、これまでの生田高校の蓄積を生かして、挑戦的な課題に取り組んでいた。また、校内の研究授業のみならず、若手の教員を中心としたICT活用に関する授業の研修が開かれるなど、学び続ける組織としての仕掛けも見られた。その他にも、ICT機器の台数が限られる中において、例えばGoogleのツールを活用することで、機器の利用を効率的に行うなど、教員間でも様々な試みが行われてきた。このように、授業に注力できるよう工夫がなされてきたことも、校内でICTの活用が進んだ理由の1つであると考えられる。
今後の期待として、公立高校として、一人一台の端末を用意することが難しい中で、より日常的にICT活用を進めていくための取り組みを進めていくことが挙げられる。授業中における携帯端末の利用を禁止する学校も多い中で、学びの道具として、生徒所有の携帯端末を活用した実践を進め、その成果を示すことで、予算が少ない中でも、ICT活用ができることを示していくことが期待される。