○第3回ゼミ(1月11日)オンラインにて開催
・内容
個の学びの中間報告会および意見交換をWeb会議システムを活用して実施した(図1)。ゼミは,1~3年の生徒が各2名ずついることを基本としているが,今回は日程の関係上,3年生を除いた1,2年生と教師,大学生で開催した(図2)。
・活動のようすおよび考察
3年生が不在のため,2年生が司会を行い,ゼミを開催した。第2回と比べると,1次データを活用して発表する生徒が多く,自らの学びを広げたり,深めたりしながら進めているようすがうかがえた。質疑応答の時間も中間報告の内容や発表の仕方等,さまざまな意見が出て,充実した時間となった。また,発表するためにプレゼンテーションソフトを活用したり,聴衆に問いかけたりしながら発表する生徒もおり,さまざまな表現方法を駆使していた。ゼミに参加した大学生も積極的に質問や意見を述べており,生徒の個の学びを進めていくためには重要な要素になっている。
その結果,図3のようなアンケートの変容が見られた。特に第2回(11月)と比べて大きな変化としては,表現に関するアンケート項目の結果である。11月では,自分の個の学びを上手く表現できずにいたが,個の学びを進めていくうちに,探究内容が整理され,自分の言葉として表現できるようになったからではないかと考えられる。その一方で,個の学びに教科で学んだ内容を活用することができていると感じる生徒が減少した(図3)。これは,個の学びが教科と直接的な関係でないため,実感しにくいのではないかと考えられる。実際,生徒の中間報告を聞いていると,さまざまな教科で学んでいることを活用しながら進めている生徒が多い。しかし,それを整理,表出できていない可能性があると考えられる。今後は,その方法を検討していく必要がある。
・アンケート結果(全校生302名 N=300)
図3 第3回ゼミを終えてのアンケート結果
(1年:11月N=97 1月N=99,2年:11月N=94 1月N=95)
○3年 個の学び発表会(2月7日)
・内容
3年生の1年間の個の学びの成果を発表する発表会を開催した(図4,5,8,9)。それにあたり,生徒一人ひとりに個の学び発表会の発表資料を作成させ,提出させた(図6)。1,2年生は,自分の個の学びを進めていくための参考になると思い,参観させるとともに,印象に残った先輩の発表を記録させた(図7)。
図7 3年生の発表を聞いてよかった点,参考にすること(1,2年生徒2名分)
図8 生徒の個の学び発表会のプレゼン資料(一部抜粋)
図9 生徒の個の学び発表会のプレゼン資料(一部抜粋)
・活動のようすおよび考察
3年生は,自らの個の学びの内容を整理してまとめ,聴衆にわかりやすく伝えたり,疑問を投げかけるように発表したりすることができた。また,1,2年生もその発表を聞き,疑問に思ったことは質問し,活発に議論する場面が見られた。3年生の保護者も参加していたため,保護者からの質問や意見もあり,生徒にとっては多面的・多角的な見方や考え方に触れる機会となった。
図10のアンケート結果を見ても個の学びに関して肯定的に考える生徒が多い。特に「個の学びは,自分の成長につながると感じる」や「個の学びは,将来に必要な力を身に付けるのに有効である」と考える生徒が約85%おり,個の学びを実施してよかったと感じる。その意味を生徒に聞いてみると,「自分の調べたいことをインターネットで調べたり,自分のペースで探究を進めたりしていくスタイルは,将来に必要な力をつけていくにも有効だと思うから」や「相手に伝わりやすいように説明できるようになり,自分の考えの広がりを感じられたから」という内容があった。個の学びを進めていくに当たり,生徒は大変さを感じながらも楽しみながら活動するようすが見られ,以前の教育活動では見られなかった前向きな姿を多く見られることができた。その一方で,「個の学びを意欲的に活動することができた」や「個の学びで,実社会とつながりながら調査,交流,探究等ができた」という質問項目では思ったような成果が得られなかった。これは,個の学びの調査,探究の時間を教育課程の中に位置づけられなかったことが大きな要因だと考えられる。生徒は,学校外の時間(放課後や休日,長期休業日)に活動を行っていた。そのため,「個の学びを広げたり,深めたりする時間がなかった」という意見があった。来年度は,その課題を解決するために教育課程を編成していく必要があると感じた。
また,個の学び発表会を参観した保護者にもアンケートを依頼した(図11)。その結果,個の学びに対して肯定的に捉えている保護者が多く,図12のような意見や感想があった。
図11 個の学びに関する保護者アンケート結果(N=25,2月実施)
個の学び発表会に参加してのご意見やご感想
- ・プレゼンテーションソフトを使ってのプレゼンテーション。私の中学時代では,考えもしなかった能力の育成です。今の中学生の情報収集能力や,集めた情報を基に,実生活で検証していき,その経験から発表できる能力には,本当に感心しました。下級生の質問内容も,良い質問が多く,実りある時間だったと思います。楽しく拝見出来ました。ありがとうございました。
- ・それぞれ個性のでる発表で,見るのを楽しませてもらいました。
- 自分で調べること,まとめること,伝えることをICTを活用しながら行うことは,大学や社会にでたときにたちまち役に立つと思うので,こどもたちにとっていい経験だと思いました。ありがとうございます。見ている側も質疑応答を活発にしていて,生徒たちが何を見るのか聞くのかをよく考え能動的に参加しているのがすてきでした。
- ・受験生,皆,大変な時期だと思いますが,各々の見つけた課題に対し,真剣に取り組んでいる姿を見る事が出来ました。私事にはなりますが,ここまで自分で作成する事が出来るようになった事,正直驚かされ,感動しました。
- ・授業での学び,PCの操作,自分の考えを人前で話すなど,学校で習得したことを総合的に見ることが出来て良かったです。深める事には個人差があるかもしれませんが,先生が強制することなく,肯定的にサポート下さっていて,発表では出ていなかったところ(個人で調べていた内容など)も知れて理解が深まりました。
図12 保護者アンケートの自由記述(2月実施)
○3年 個の学びの振り返り(2月中旬)
・内容
PCにある個の学びの軌跡やプレゼンテーション資料,発表会のようすをもとに,1年間の個の学びの振り返りを生徒に行わせた(図13)。
・活動のようすおよび考察
どの生徒も自らの個の学びについて俯瞰的に振り返り,個の学びを通して,できたことと改善したいことをまとめることができた。3年生の記述内容を整理してみると,自分の良さを再認識したり,これからの生活で必要なことを見いだしたりする内容が多くあった。これは,本校の教育目標にある「自ら立ちつつ」を実現するために,重要な要素となる。自己理解の推進やアイデンティティの確立,将来のキャリアを展望する基盤にもつながる。特に3年生は,個の学びが今年度で最後になるため,この経験をぜひとも今後の学び(高校生活)にいかして欲しい。