活動レポート
全国キャラバン 2014 in 熊本・出水南小 を開催
- 2014年11月18日
- キャラバン
今年度の全国キャラバンは、2013年度にこころを育む活動 全国大賞を受賞された「熊本市立出水南小学校」とともに、10月10日(金)に230名の参加者を迎え開催しました。来賓には熊本市議会議員、熊本市教育長をはじめ、多くの方々にお越しいただきました。
・・・出水南小学校は、隣接する熊本支援学校と子どもたちによる交流活動を学校設立以来34年間続けています。主な取り組みとしては4年生での1年間を通しての交流活動と、年2回の全校あげての交流集会です。子どもたちが交流活動後に書く「交流日記」での振り返り、支援学校のお友達のパートナー制などいろいろな工夫やしくみづくりがされ、相手を思いやるこころ、助け合うことを実際の体験から学び育む活動です。
(詳しい活動内容は「2013年度 こころを育む活動 全国大賞 受賞事例」をご覧ください。)
■開催テーマ 「みんなが笑顔で暮らせる社会のために ~手と手をとって 地域で取り組もう~」 ■当日プログラム 09:40 <交流集会> 熊本市立出水南小学校の校庭にて
ひきつづき、体育館に移動して、シンポジウムを開催しました。 開会のあいさつは、出水南小学校 橋口校長先生、当財団 遠山理事長よりいただきました。 そして、出水南小学校 三島先生より、交流活動の意義、いかに子どもたちの思いやりのこころや助け合いのこころが育まれているかについて実践発表をいただきました。 次に、5年生と6年生の児童による作文の発表です。4年生の時に1年間交流活動をおこない、5年生、6年生になった今、自分が思うこと、相手と気持ちが通じあうことの喜びや、自分のことばかり考えていたけれど、今は相手のことを考えて行動できるようになった、など交流活動を通して成長できたことを実感しています、と発表してくれました。
こころを育む総合フォーラム座長の山折哲雄先生(国際日本文化研究センター名誉教授)より、演題「こころを育むとは」の講演をいただきました。 「岡潔という数学者は、人間あるいは子どもというのは、成長のどの段階で数学的「1」を発見するかという問いにとりつかれた。ヘレン・ケラーさんは、熱病にかかって重要な身体機能を失ったとき、19カ月。1年と半年以上になっていた。彼女はそのとき、「1」と「全体」を発見していたんだと思いました。岡潔という天才的な数学者の情感が、人間の生命の根源をつかんだ。そのことを実証したのが、ヘレン・ケラー、サリヴァンの連係プレー。まさに根源的な人間と人間の交流の仕事の結果かもしれない。そういうことを考えましたとき、あのヘレン・ケラー、サリヴァンの奇跡の物語を、普通の小学校と支援学校との間の交流を通して、子どもたちの集団の遊びの世界を通して、日常的に行っているということの重要さ、重大さ。生命の力というのはすごい。心の全身運動、体の全身運動というものを、連関させて考えていく。そういう大きな問題があるなということを気づかせていただきました。」
パネルディスカッションでは、高原朗子先生(熊本大学教育学部附属特別支援学校長)をコーディネーターに、5名のパネリストをむかえて、交流活動のポイント、学校、家庭、地域でできること、さらにこの活動を深め、広げるためのポイントなどについてディスカッションをおこないました。 出水南小学校の柳瀬先生より「この交流活動が34年間続いている理由は、学校が隣同士という立地条件だけではない。交流の中心が、社会性が芽生え、多くのことを吸収し、高学年へつないでいく4年生の時期だったことも理由のひとつである。また、パートナーを決めたことにより、パートナーのために自分ができることを考えて行動できる、小さな変化に喜びを感じて、心豊かになる。交流後には「交流日記」を書いて振り返りをおこなう。日記をつけることで自分が変わってきたことに気づき、考え、学ぶことができる。」
今田PTA副会長より、交流活動を過ごしたご子息の話を交えて「交流活動を通して、3つの力が育った。1つ目は気づきの力。2つ目は行動する力。3つ目は伝える力。自分のことだけでなく、周りの人の気持ちを気づく。気づいたことについて勇気を出して行動に移したり、自分の考えを伝えてわかりあえるようになった。PTAでは出水中学校校区6校協議会等がある。子育てをする仲間として親も一緒に学んで、一緒にこころを育んでいきたい。」
熊本支援学校の高橋校長先生より「みずみずしい豊かな感性を持つ時期に交流を行うことの意義は、私たち大人が考えている以上に大きい。特に同世代の児童と1年間という長いスパンで交流できることは、何事にもかえがたい。一方で中途半端な交流は、誤解や偏見を生む可能性もある。交流回数が少なくなる学校は、十分な事前学習、事後学習をおこない丁寧な指導をしながら活動を充実させていただければと思う。熊本県が平成23年に制定した「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」の中に共生社会の実現がうたわれている。本校で交流された児童が、共生社会の実現に向けて、心強いパートナーとなっていただけるのではないかと思う。」
熊本市教育委員会の城戸教育審議員より「交流及び共同学習の形態としては大きく4つあります。1.特別支援学校と幼稚園、小学校、中学校、高校などとの交流。2.学校内での特別支援学級と通常の学級の子どもたちとの交流。3.特別支援学校とその子どもたちが住む居住地の学校との居住地交流。4.特別支援学校・特別支援学級の子どもたちと地域住民との交流。大切にしたいことは、関係者の共通理解、組織づくり、指導計画の作成の3点。そして、交流を支える教師や大人の役割として、いいモデルになること。子どもと子どもをつなぐ通訳になること。すべての子どもたちの指導者、支援者になること。このような役割はすべての学校における交流において求められることではないかと思う。」
遠山理事長より「この交流活動は、学校教育が狙いとするこころの教育、徳育を完全な形でやっていただいていると思う。子どもたちにとって体験を通して身につけるということは大事なこと。小学校の子ども自身が主体性を持って、長期にわたっておこなう、その成果がすばらしい。自分たちで考え、手応えがあるということは自信につながっていく。かかわった子どもたち、先生方の人生にとって、どんなに力になっていくかということを再認識いただいて、今後もぜひ頑張っていただきたいと思う。」
コーディネータの熊本大学教育学部附属特別支援学校の高原校長先生より「出水南小の卒業生で教育実習に来た学生がいる。この交流を体験したから特別支援学校の先生になりたいという学生がいる。最初は子どもの遊びの中から、だんだん成長して、最後には支援者のプロになろうという子どもたちもいることを思い出しました。」
コメンテータの山折先生より、「学校創立以来34年間続けて取り組まれているこの素晴らしい活動をこれからも、ぜひ、続けてほしい。そして、小学校から、中学校、高校へとつながるような活動にさらに発展させていただきたい」とコメントをいただきました。
最後に原教頭先生より、本日会場にお越しいただいた皆様へ感謝を述べられ、閉会しました。
この交流活動を子どもたちが本当に楽しみにしていて、積極的におこなっていることが準備の段階や当日の様子からうかがえました。出水南小学校でこの貴重な体験をして過ごした生徒さんの中から、支援学校の先生の職に就かれた方もいらっしゃるなど、人材のサイクルができています。 そして、なにより両校の先生方の手厚いフォロー、PTAの皆様のご協力がこの活動を支えています。
(熊本市立出水南小学校の詳しい活動内容は 「2013年度 こころをはぐくむ活動 全国大賞 受賞事例」をご覧ください。)
■開催テーマ 「みんなが笑顔で暮らせる社会のために ~手と手をとって 地域で取り組もう~」 ■当日プログラム 09:40 <交流集会> 熊本市立出水南小学校の校庭にて
熊本市立出水南小学校と熊本支援学校の子どもたちの交流活動
10:30 <全国キャラバン 2014 in 熊本・出水南小> 体育館にて実践発表 児童による発表 講演 山折哲雄先生 パネルディスカッション
12:40 閉会 交流集会では、出水南小学校の校庭をいっぱいに使って、熊本支援学校の子どもたちとの交流活動をおこないました。交流学年の4年生が、支援学校のパートナーの似顔絵を描いてつくったお神輿を一緒にかついで入場しました。その後5,6年生が中心になり、支援学校のお友達が楽しくできて、体に負担がかからないように考えて作ったゲームを、支援学校のお友達や下級生を案内して一緒に遊び、ともに過ごしました。お手伝いが必要なお友達にはやさしく声をかけて、寄り添って手を貸してあげるなど、自然に手助けをしていました。ひきつづき、体育館に移動して、シンポジウムを開催しました。 開会のあいさつは、出水南小学校 橋口校長先生、当財団 遠山理事長よりいただきました。 そして、出水南小学校 三島先生より、交流活動の意義、いかに子どもたちの思いやりのこころや助け合いのこころが育まれているかについて実践発表をいただきました。 次に、5年生と6年生の児童による作文の発表です。4年生の時に1年間交流活動をおこない、5年生、6年生になった今、自分が思うこと、相手と気持ちが通じあうことの喜びや、自分のことばかり考えていたけれど、今は相手のことを考えて行動できるようになった、など交流活動を通して成長できたことを実感しています、と発表してくれました。
こころを育む総合フォーラム座長の山折哲雄先生(国際日本文化研究センター名誉教授)より、演題「こころを育むとは」の講演をいただきました。 「岡潔という数学者は、人間あるいは子どもというのは、成長のどの段階で数学的「1」を発見するかという問いにとりつかれた。ヘレン・ケラーさんは、熱病にかかって重要な身体機能を失ったとき、19カ月。1年と半年以上になっていた。彼女はそのとき、「1」と「全体」を発見していたんだと思いました。岡潔という天才的な数学者の情感が、人間の生命の根源をつかんだ。そのことを実証したのが、ヘレン・ケラー、サリヴァンの連係プレー。まさに根源的な人間と人間の交流の仕事の結果かもしれない。そういうことを考えましたとき、あのヘレン・ケラー、サリヴァンの奇跡の物語を、普通の小学校と支援学校との間の交流を通して、子どもたちの集団の遊びの世界を通して、日常的に行っているということの重要さ、重大さ。生命の力というのはすごい。心の全身運動、体の全身運動というものを、連関させて考えていく。そういう大きな問題があるなということを気づかせていただきました。」
パネルディスカッションでは、高原朗子先生(熊本大学教育学部附属特別支援学校長)をコーディネーターに、5名のパネリストをむかえて、交流活動のポイント、学校、家庭、地域でできること、さらにこの活動を深め、広げるためのポイントなどについてディスカッションをおこないました。 出水南小学校の柳瀬先生より「この交流活動が34年間続いている理由は、学校が隣同士という立地条件だけではない。交流の中心が、社会性が芽生え、多くのことを吸収し、高学年へつないでいく4年生の時期だったことも理由のひとつである。また、パートナーを決めたことにより、パートナーのために自分ができることを考えて行動できる、小さな変化に喜びを感じて、心豊かになる。交流後には「交流日記」を書いて振り返りをおこなう。日記をつけることで自分が変わってきたことに気づき、考え、学ぶことができる。」
今田PTA副会長より、交流活動を過ごしたご子息の話を交えて「交流活動を通して、3つの力が育った。1つ目は気づきの力。2つ目は行動する力。3つ目は伝える力。自分のことだけでなく、周りの人の気持ちを気づく。気づいたことについて勇気を出して行動に移したり、自分の考えを伝えてわかりあえるようになった。PTAでは出水中学校校区6校協議会等がある。子育てをする仲間として親も一緒に学んで、一緒にこころを育んでいきたい。」
熊本支援学校の高橋校長先生より「みずみずしい豊かな感性を持つ時期に交流を行うことの意義は、私たち大人が考えている以上に大きい。特に同世代の児童と1年間という長いスパンで交流できることは、何事にもかえがたい。一方で中途半端な交流は、誤解や偏見を生む可能性もある。交流回数が少なくなる学校は、十分な事前学習、事後学習をおこない丁寧な指導をしながら活動を充実させていただければと思う。熊本県が平成23年に制定した「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」の中に共生社会の実現がうたわれている。本校で交流された児童が、共生社会の実現に向けて、心強いパートナーとなっていただけるのではないかと思う。」
熊本市教育委員会の城戸教育審議員より「交流及び共同学習の形態としては大きく4つあります。1.特別支援学校と幼稚園、小学校、中学校、高校などとの交流。2.学校内での特別支援学級と通常の学級の子どもたちとの交流。3.特別支援学校とその子どもたちが住む居住地の学校との居住地交流。4.特別支援学校・特別支援学級の子どもたちと地域住民との交流。大切にしたいことは、関係者の共通理解、組織づくり、指導計画の作成の3点。そして、交流を支える教師や大人の役割として、いいモデルになること。子どもと子どもをつなぐ通訳になること。すべての子どもたちの指導者、支援者になること。このような役割はすべての学校における交流において求められることではないかと思う。」
遠山理事長より「この交流活動は、学校教育が狙いとするこころの教育、徳育を完全な形でやっていただいていると思う。子どもたちにとって体験を通して身につけるということは大事なこと。小学校の子ども自身が主体性を持って、長期にわたっておこなう、その成果がすばらしい。自分たちで考え、手応えがあるということは自信につながっていく。かかわった子どもたち、先生方の人生にとって、どんなに力になっていくかということを再認識いただいて、今後もぜひ頑張っていただきたいと思う。」
コーディネータの熊本大学教育学部附属特別支援学校の高原校長先生より「出水南小の卒業生で教育実習に来た学生がいる。この交流を体験したから特別支援学校の先生になりたいという学生がいる。最初は子どもの遊びの中から、だんだん成長して、最後には支援者のプロになろうという子どもたちもいることを思い出しました。」
コメンテータの山折先生より、「学校創立以来34年間続けて取り組まれているこの素晴らしい活動をこれからも、ぜひ、続けてほしい。そして、小学校から、中学校、高校へとつながるような活動にさらに発展させていただきたい」とコメントをいただきました。
最後に原教頭先生より、本日会場にお越しいただいた皆様へ感謝を述べられ、閉会しました。
この交流活動を子どもたちが本当に楽しみにしていて、積極的におこなっていることが準備の段階や当日の様子からうかがえました。出水南小学校でこの貴重な体験をして過ごした生徒さんの中から、支援学校の先生の職に就かれた方もいらっしゃるなど、人材のサイクルができています。 そして、なにより両校の先生方の手厚いフォロー、PTAの皆様のご協力がこの活動を支えています。
(熊本市立出水南小学校の詳しい活動内容は 「2013年度 こころをはぐくむ活動 全国大賞 受賞事例」をご覧ください。)
(高沢)