既存設備…PC室にパソコン、電子黒板1台、書画カメラ1台、普通教室に大型テレビを設置。
新設設備…LAN回線(普通教室)敷設工事完了。「ワンダースクール応援プロジェクト」から、タブレット端末40台、書画カメラ1台、電子黒板1台、ぼうけんくん6台、アクセスポイントの提供を受ける。
実践校 | 奈良市立佐保小学校 |
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アドバイザー | 奈良教育大学大学院 教育学研究科 小柳 和喜雄 教授 |
既存設備…PC室にパソコン、電子黒板1台、書画カメラ1台、普通教室に大型テレビを設置。
新設設備…LAN回線(普通教室)敷設工事完了。「ワンダースクール応援プロジェクト」から、タブレット端末40台、書画カメラ1台、電子黒板1台、ぼうけんくん6台、アクセスポイントの提供を受ける。
教育系(児童・生徒 まなびかがやきネット)と校務系(教職員)の2系統
※それぞれに専用サーバーを教育センター内に設置。校務系は書類提出、中学校区や教育協議会での情報共有に活用。
(研究組織)
全体研修、学年部、プロジェクトチーム(環境開発、指導法開発)
(研究の目的)
月 | 研究概要 |
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4-5月 |
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6月 |
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7月 |
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8月 |
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9月 |
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10月 |
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11月 |
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12月 |
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1年国語「じゅんじょよくかこう」
本時のめあて
○秋の遠足で経験したことや、感じたことについて思い出し、適切な順序や文のまとまりについて考えながら文章を書く。
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
◎秋の遠足について振り返る。 児童は、導入での教師が遠足時の服装を着用したこと、思い出を写真で掲示したことで、遠足の流れを整理しながら想起しやすくなったようで、細かな思い出まで発表していた。 たのしかったことをおもい出して、 |
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展開 |
◎書き出しを考える。 ◎写真を順番に並び替える。 ◎大型テレビの画面を見ながら、経験したことを詳しく思い出す。 子どもたちの意見を基に写真を並び替えながら、書く順番を確認。その後、それぞれの場面の様子を詳しく思い出すが、写真で活動をふり返ることで、意見が出しやすくなった。 |
タブレット端末 大型テレビ デジタルカメラ |
まとめ |
◎思い出したことをもとに作文を書く。 ◎画像を見ながら作文を書いてみた感想を共有する。 ◎次時以降の学習の見通しを知る。 1年生は、まだ漢字の学習が始まったばかりで、長文を書くことは大変なことである。 しかし、ICTを活用することで、児童は集中し、意欲的に作文を書くことができた。 |
3年算数「三角形のなかまを調べよう」
本時のめあて
○三角形のなかま分けを、友だちと比較・共有しながら、辺の長さに着目して考えることができる。
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
◎三角形の3つのパターンを見つけよう
1人1台のタブレットにいろいろな三角形を自由に描いてみる。紙と違い、すぐに消すことできるので、繰り返し作図することが容易であり、課題に対する考えを表すことに集中できた。 |
タブレット端末 電子黒板 |
展開 |
◎自分の描いた三角形を基にグループで話し合う。
1人1台のタブレット端末で自力解決を図り、それらを班で話合い、班用のタブレット端末へ書き込み、意見をまとめた。自分の意見と友達の意見を練り合う中で、一つの考えを導くことができた。 |
タブレット端末(個人) タブレット端末(グループのまとめ用) 電子黒板 |
まとめ |
◎グループの意見をまとめ、それぞれの三角形の特徴と名前を知る。
各グループで練り上げられた意見を電子黒板で示しながら発表した。各グループの考えを示すことで比較でき、児童の気付きや考えを深めることにつながった。 |
タブレット端末 電子黒板 ノート |
5年算数「面積の求め方を考えよう」
本時のめあて
○既習の面積の求め方を使って、台形の面積の求め方を考えることができる。
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
◎台形の面積の求め方を考えよう
平行四辺形、三角形の面積の公式をタブレット端末で振り返る。 |
タブレット端末 電子黒板 |
展開 |
◎各自ワークシートに考えを書きこむ。 ◎ペアで考えを出し合う。 ◎タブレットを使って全体で考え合う。 タブレット端末とワークシート、デジタルとアナログをバランスよく学習の取り入れることで、より多くのパターンの考えを出し、それをもとに話合うペアやグループ学習が深まった。授業の活動場面でのデジタルとアナログの使い分けの大切さも確認できた。 |
タブレット端末 電子黒板 |
まとめ |
◎本時の学習でわかったことをまとめる。
タブレット端末とアナログによる学習活動で、児童は次時の学習課題解決のヒントを得て学習を終えることができたようである。教材を実際に操作しながら考えることや友達の意見が大きなヒントとなったようである。 |
学力向上におけるICT活用へ組織的に実証的に取り組む文化作り
―奈良市立佐保小学校の取り組みの経過から学べること―
本取り組みが始まりかけた8月22日に佐保小学校を訪問した。その時、最初の全体研修で、これまで学校研究として大切にしてきた「学び合いと言語活動の充実」と「ICTの活用」の関係を丁寧に考えようとする姿が見られた。環境が整ってくる中で、新たな機器などをどのように活用できるかを知ることは不可欠であるが、その前に、なぜ学力向上の取り組みにICTが活かせるのか、今まで大切にしてきた取り組みや自分たちがよく行ってきた取り組みとどのようにつながるのか、つながらないのかを明確にすることは、学校研究として組織的取り組みを築いていく上で重要なことである。今まで取り組んできたこととは全く別な取り組みとして、ICT活用が外から入ってくる場合、職員には負担感が感じられ、合意を得た全体的な取り組みにはなりにくい。
それに対して初めの段階から、学校の財産とうまくICT活用を連動させていくことをしっかりと職員で振り返り、思っていること考えていることを視覚化して語り合う姿と遭遇した。このような手続きを1つ1つ経ていくことで、それぞれの教員の思いや大切にしていること、今段階で疑問に思っていることなどをわかり合える。こういった「活用してみよう、活用場面を見極めようとするような」雰囲気づくりの取り組みが最初に重要となることを感じさせていただいた。
次に、実践が始まった10月1日以降訪問をすると、算数でのICTの活用を、1時間単位でその活用場面(①既習事項の復習や想起、②課題の提示、③個人思考、④ペアでの学び合い、⑤学級全体での学び、⑥学びの整理と振り返り)について、ICTを活用する場合と活用しない場合を設定し、学年で丁寧に実践をし、授業のねらいと子どもの姿からその効果を見極めていこうとする姿が、実践の中で、また事前事後の検討会を通じて見られた。ICTを活用することで、子どもたちにどのような新たな学びの機会を与えることができるのか、誰にとって有効となるのか、どのような場面で有効となるのか、などを考えていこうとする文化を築いていこうとする姿が見られた。
また、10月中旬以降の取り組みでも、算数を要としながらも、各学年で、また他の教科(例えば国語など)でも実践が行われ、学校研究として大切にしてきた「学び合いと言語活動の充実とICTの活用」の関係を見ていこうとする姿が見られた。学力向上における効果的な道具としての活用の可能性と共に、それを活かしていくために、子どもたち自身に情報活用能力を培っていくことが、授業のねらい(例えば、問題を解かし考えさせることと、数学的な見方・考え方と関わって説明力をつけること)に近づく上で必要であることなど、授業研究を通じて確認されている姿も垣間見られた。
このように始まったばかりの佐保小学校の取り組みの経過から学べることとして言えることは、学力向上におけるICT活用へ組織的に取り組む最初の仕掛けがあること(雰囲気づくり)、また手ごたえを感じていくために、どのような場面で、誰にとって有効か、などを実証的に取り組む専門集団のとしての仕掛け(文化づくり)が、スタートを切るうえで重要なことだと学ばせていただいた。
佐保小学校のこれからの取り組みの中で、学力向上における効果的なICT活用場面、ICT活用へ組織的に取り組む手法、などがより明らかにされていくことを期待したい。
月 | 研究概要 |
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1月 |
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2月 |
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3月 |
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<ICT環境の構築>・・・全教職員が日常的に効果的なICT活用をするためにも、まだまだ未整備であるICT環境の整備を図る。
タブレットPCによるone to one授業だけでなく、どの教室でも、どの教師でもICTが有効的に活用できるための機器や環境について計画的に整備をおこなっている。
<校内研修>イブニング研修の充実
2年算数「1000より大きい数を調べよう」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
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導入 |
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タブレット端末(個人) 電子黒板 |
展開 |
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タブレット端末(個人) 電子黒板 |
まとめ |
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タブレット端末 電子黒板 |
4年算数「面積のはかり方と表し方」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
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導入 |
前時までの学習を振り返り。
本時の課題を知り、学習の見通しを持つ。
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タブレット端末 電子黒板 |
展開 |
自力解決を図る。
隣同士の友達と考えを説明し合う。(学び合い、伝え合う活動)
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タブレット端末(個人) 電子黒板 |
まとめ |
電子黒板で自分の考えを説明した後、協働学習用ホワイトボードに提示して、まとめる。 |
タブレット端末 電子黒板 協働学習用ホワイトボード |
6年道徳 自作教材「○○を伝えたい。どう違う?」(情報モラル)
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
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導入 |
本時の活動を知り、学習の見通しをもつ。
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展開 |
1人でAの特徴とBの特徴を考え、ワークシートに箇条書きをする。 グループで視点を定めながら協働学習用ホワイトボードにグループの意見をまとめる。 黒板のベン図にそれぞれの特徴を表す。 |
協働学習用ホワイトボード |
まとめ |
Bの「ネットに書きこんで伝える」に着目し、情報機器を扱っていくための基本的な態度について考える。 |
板書計画
ここに、平成26年度に実施した公開授業や、研究授業における教科・内容及び主な使用機器を再度まとめてみる。
奈良市がパナソニック教育財団からのワンダースクール応援事業の助成を受け、本校第5学年が中心となり、算数科において効果検証のための取組を進めた。習得したものを基に、伝え合う活動、学び合う活動といった活用型の授業を行い、その共有のためにタブレットPCを使用した。これは、昨年度まで取り組んだ「言語活動の充実」にも関連しており、本校の取組の基盤となるものであった。
その後、3年生、4年生と算数科でのOne to Oneタブレットを用いての取組を行い、それらの成果や課題を多く職員で共有できた。子どもたちの思考を伝え合い、学び合わせるためのツールとして、タブレットPCと電子黒板は大きな力を発揮できる。ICTの活用ポイントは思考を共有させるためには大変有効であり、「ICTがあってよかった」と言える活用型の授業であった。しかし、習得型の授業においては、ICTの有効性を十分に発揮できておらず、開発途上である。今後、授業の中でフラッシュ型やドリル型などの繰り返し知識や技能を習得させる授業の開発にも力を注いでいきたい。
4年生の授業検討で、ワークシートはどうあるべきかという議論がなされていた。面積の求め方を考える際に、タブレットにのせるワークシートについて一考した場面であった。「求め方」を考えるのであるのだから、方眼は必要であるのか、式を書く所は必要であるのか。思考の過程に重点を置き、それらを伝え合い、学び合う授業において、教師の与えるワークシートを検討するという姿は、授業そのものを見つめなおす姿であったと考える。
3年生の授業では、学習課題について研究討議で話題となった。学習課題や主発問の文言一つで児童の学びは変化してくる。
ICTの活用ポイントを探っていく中で、教師は授業そのものを見つめ、児童のどのような力を付けたいのか、授業のねらいは何か、そのためにはどのような学習課題でどのように発問し、どのようなワークシートやノートにするのか、最も大切な所を再度全員で共有できたことは大きな成果であったと考える。
左はそれぞれの授業でのICT活用ポイントをまとめたものである。「とにかくまずは使ってみる」から始めた取組であったが、回を重ねる中で、ICTありきで取組や授業を考えるのではなく、授業におけるICTの活用ポイントを見極めることに重点が置かれつつあると考える。 今後多くの授業ケースを共有していく中で、有効な活用ポイントについても共有していき、どの教科の授業でも使えるように一般化もしたい。
どの学年の授業でも話題となったのは、アナログ(黒板・ノート)とデジタル(タブレットPC・電子黒板)の効果的な融合であった。また、タブレットPC上でワークシートを活用することは児童のノートに考えが残らず、学習過程が振り返ることができないという課題もあった。
先にも述べたが、5年生の授業が本校の基盤となった。思考を伝え合い、学び合わせるためにタブレットPCを活用した。児童に思考させるのはノートや紙のワークシートであり、その中の思考を同様のワークシートのあるタブレットPCに書きこませ、共有するという流れである。
この課題については、今回の取組をヒントにしながら、これからも試行錯誤を続けていきたい。
1年生の授業は、その後の提示型授業にも大きく影響を与えた授業であった。提示するためのパワーポイントも細やかに気を配られ、「誰が、誰に、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように(6W1H)」の意図が見てとれた。
ICT導入は授業そのものを見つめなおす機会にもなっていることとも関連するが、板書やワークシートと同様に、教師が児童に示すものについては意図があり、何を学ばせたいのか、どんな力を付けることをねらいとしているのかを常に心がけなければならないと考えさせられる取組であった。
活用法開発チームの示した系統性の表の中に、情報モラルについての項目がある。これらの先行研究も同時にリンクしてあり、またインターネットで「情報モラル」と検索すれば取組はたくさんヒットする。
「一般的にICTスキルの高い人に失敗が多い」と夏の情報モラルの研修で教わった。佐保小学校の取組は、児童のICTスキルを上げることが主目的ではないが、この言葉にはハッとさせられた。児童に恐怖心のみをうえつけるのではなく、これからの情報社会において、上手に情報とつきあっていくことを、発達段階に応じて学ばせることも課題である。
本校HPで学校長が日々の取組の発信を行った。これは、多くの方々の目にとまり、情報発信のメリットを被る場面が多々あったと考える。日々の写真撮影やHP更新への情熱は、私たちの取組への情熱の原動力の一つであった。「牛の歩みも千里」という言葉を心にとめ、今後も全員で取組を深めていきたい。
学力向上の取組においてICT 活用の判断力を組織で磨く
―奈良市立佐保小学校の取り組みの経過から学べること②―
1月から3月までの佐保小学校の取組では、現在、どのような点やどのような取組に関して手ごたえを感じ、またより熟考しながら、組織的に研究を進めているのだろうか?例えば、下記「図1」 の取組モデルを参照しながら、報告事例を読み解き、その取組分布を見ると以下の点が上げられる。
1つめは、「①一斉指導」(一斉学習)の場面で、「課題」を「学習者」である子どもたちに提示していく際に、教員は、デジタルコンテンツ等、様々なものを子どもたちに見せ、子どもに課題をつかませる、また考えを深め広げさせ、その定着を確認するためにICT を用いる取組について。
これに関しては、1年生からその活用の手応えを共有し、さらにどこでどのように見せることが子どもたちの課題把握や考えさせていく上で有効かを検討している様子が上記報告から読み取れる。
2つめは、「②児童生徒の学習の道具としての活用」(個別学習)場面で、教員は、既習事項と関わる練習問題や本時の課題を、一人一人のタブレットPC などで見せ、子どもたちは、それを見ながら解いたり、試行錯誤しながらアイディアを出したりする活動を行う。また、実験や観察や調査の手続きの説明を、子どもたちが何度も自分で確かめながらできるように、教員は一人一人のタブレットPC などにその画面を転送して見せ、子どもたちは、それを見ながら実験を進めたり、観察や調べ活動をしたりしている。そして子どもたちは、自らの実験や観察の記録、また調査したことを、タブレットPC の機能を使って写真やビデオに記録し、それを見ながら、学習の整理や考えたりする取組について。
これに関しては、教材の準備や子どもたちに活動をさせていく点が①に比べて必須になっていくため、壁が高く、取組においても場面精査や、課題設定の工夫、そして使う必然性との関連で現在検討がなされている様子が読み取れる。
3つめは、「③表現活動におけるICT の活用」場面で、子どもたちは、課題に関わって、タブレットPC など道具を用いて考え、そこで得られたものを表現し、その場で考えを交流する活動を行う取組について。
これに関して、佐保小学校では、①や②と連動する形で用いられ、自力解決後に全体で考えを交流したり、自分の考えを皆にわかってもらえるように言葉で表現していく力をつけていく(教科の言葉の活用、言語的表現力)取組をしている様子が読み取れる。
4つめは、「④協同学習」の場面で、そこでは、子どもたちが、課題にペアやグループで、あるルールに基づいて(時間制限、役割、整理の仕方ほか)取り組み(グループワーク)、そこで話し合いながら課題解決を行う。また5つめ「⑤協働学習」の場面で、そこでは、自分たちで、課題を見出し、その学習過程で、クラスのメンバーを越えて様々な人(背景知識や経験が異なる人)と交流しながら情報を集め、長い時間をかけて、一緒に課題解決を進めていく(チームワーク)。そこで、得られた情報を互いに「見せ合い」ながら、テレビ会議システム等も用いて、理解を深め、知識構築や問題解決に挑んでいく取組について。
これに関しては、従来から取り組んできた学び合いやそこでの言語活動の充実の取組とも関わるので、よくその取組が進められているのが読み取れる。ただし、そこでは、「協働学習用ホワイトボード」の活用など、学習目的や学習内容に即して子どもたちが考えを出しやすく、表現しやすい環境をICT 活用も含めて、吟味精査している様子が読み取れる。
やはり他の学校の取組でも見られるが、授業の目的や内容、これまでの指導法との接点が取りやすい①③の取組が進められやすく手ごたえも感じられている点が読み取れた。
そして、佐保小学校自身が26年度の取組全体を振り返ってまとめを書かれている点からも、①「習得型・活用型の授業におけるICT活用法の開発」にむけて、取組を丁寧に振り返り、目的と手段の関係を見つめる取組を大切にしていること、②情報モラルを含む、子どもたちの情報活用能力の育成を「習得型・活用型の授業」に取り組んでいく上でも必要な点とおさえ、その体系的な取組を考えようとしていること、③学校の取組を丁寧に広報し、学校全体でその成果や取組自体を共有し、語れるように努めている様子がうかがえた。
このように、学力向上、学力保証においてICT が効果的に機能する取組を探求していく 場合、職員組織によるその手応えの共有がまず重要であること。その上で、子どもにそこでつけたい力から、効果的なICT 活用の探求を組織で実践しながら考えていくこと。その経過を少しずつでも継続的に進めていくと、取組課題もより具体的な場面や個々の子どもに即して見えてくるようになること。そこでは学力向上におけるICT 活用場面の教員の判断力が求められてくるため、それを磨いていく教員の専門的な学びの世界(学習する組織)がより構築されてくること、などのプロセスが読み取れる。佐保小学校が今後さらに築いていく組織的な取組のプロセス(乗り越える壁との遭遇やそれへの挑戦の経過なども含めて)に注目していきたい。
本校はICTを道具としてとらえ、それらを指導方法の一つとして日々の授業に用い、授業の改善を図っていく。学習課題への興味・関心が高まったり、わかりやすい授業を実現したりすることは、子どもたちの確かな学力の育成につながっていくものと考える。具体的には、子どもたちが知識・技能を「習得」する学習活動にICTを用いたり、習得した知識・技能を「活用」し、協働的に学ぶ学習活動に用いたりする。日常的にICTを用いた授業が行えるように、パナソニック教育財団の教育助成を生かし、その有効的な活用法を全校体制で探っていきたい。
本年度は2年度の研究となる。昨年度取り組んできた成果と課題に基づき、研究主題にせまる視点として、次の3点を重視し、取組を進めていく。
月 | 研究概要 |
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4月 |
研究計画の共有 Plan
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5月 |
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6月 |
プロジェクトチームの公開授業① Check
推進委員会の実施 Act |
7月 |
プロジェクトチームの公開授業② Check
推進委員会の実施 Act |
2年 算数科 「100より大きい数をしらべよう」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
前時の学習を振り返る
本時のめあてを知る。 100より大きい数の読み方や書き方を知る |
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展開 |
3位数の読み方や書き方を練習する。
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まとめ |
練習問題をする。
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6年 算数科 「I can swim.」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
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導入 |
前時までに扱った表現を振り返る。カード 各班で本単元の使用表現を練習する。 グループ タブレット端末 全員でリズムに合わせて発音する。電子黒板 |
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展開 |
Activity1 「Wow! Converge.」
Activity2 「Get a character.」
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まとめ |
活動の振り返りを行う |
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児童に分かりやすい授業を構築することが、児童の学力向上につながると強く信じ、本年度は「習得の場面」・「活用の場面」と細分化し、「授業改善」のための一つのツールとしてICTの使い方を明らかにしようと取り組みを進めている。
1学期は「習得の場面」でのICTの使い方に焦点化した。プロジェクトチームから2つの授業の提供があり、全員で取り組みの共有を行った。
2年生の算数科では、児童が位取りの操作を確実に行えるようになることを目指した。書画カメラを使い、大型TVでモデルを示しながら、その読み方や書き方も習得できるように繰り返し問題に取り組んだ。発達段階上、2年生の「習得の場面」では、繰り返し丁寧に問題に取り組むことが大切である。まとめでは、タブレット端末を用いて類題を示し、本時に学んだものの確実な習得を図った。
6年生の外国語科では、表現を習得させる全体でのチャンツから、タブレット端末を用いてのグループでのチャンツに学びの形態を変えた。また、ルールの説明やデモンストレーションを電子黒板で行い、児童に視覚的に理解を促すとともに、指導者の説明や指示を簡単なClassroom Englishのみで行うことができた。タブレット端末や電子黒板を用いることで、子どもの活動時間を多く確保し、児童の発話する機会が多くなるとともに、机間巡視により指導者が個人やグループに適宜支援を行うことができた。
2学期は「活用」の場面におけるICTの使い方について取り組みを共有する。児童が分りやすい授業を築けているのか、何のためにICTを使うのか、「習得」と「活用」そして学びの発展を常に意識しながら取り組みを進めていきたい。
月 | 研究概要 |
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8月 |
|
9月 |
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10月 |
【校内研修】プロジェクトチームの提案授業③ Check
学年部の授業計画・実践報告 Do・Check 推進委員会の実施 Act |
11月 |
【校内研修】プロジェクトチームの提案授業④ Check
学年部の授業計画・実践報告 Do・Check 推進委員会の実施 Act |
12月 |
学年部の授業計画・実践報告 Do・Check |
1月 |
学年部の授業計画 Do |
2月 |
公開授業の実施 Check 推進委員会の実施 Act |
3月 |
総括・研究のまとめ |
佐保小学校は、1年目の研究の成果と課題から、PDCAサイクルを実践しながら研究主題へ迫る取組を行い、2年目の取組の視点を次のように3点定めている。①基礎的・基本的な知識・技能を「習得」する学習活動におけるICTの有効活用法の開発、②知識・技能を「活用」し、協働的に学ぶ学習活動におけるICTの有効活用法の開発、③ICTを活用するために、指導者と学習者が機器に関する基本的スキルを獲得すること、である。
この取組の視点は、学校全体の実践と関わり(「習得」「活用」「探究」はすべての学習活動と関わることであるため)、組織的な取組につながる、密接でユニークな課題設定と思われる。そして、そのために、研究運営組織も「習得」チームと「活用」チームに分け、それぞれ事前研究と授業研究を進め、互いの成果を学校全体のものにしていこうとする姿勢は、興味深く学校のチーム力を分散型で進め、それを統合していく(切磋琢磨する)取組体制と考えられる。
また、各教科などにおけるICTの活用が、その授業の目的の達成に向けて効果的にはたらくには、子どもたち自身のICTの活用力、情報活用能力も併せて意識的に導いていくことが重要であることをおさえ、その視点も3つ目の視点として明確においている点が興味深い。授業で子どもたちが協働的に学ぶ場合、教師が授業方法の一環としてICTの有効活用を行うことに加えて、子どもたち自身にその原体験や力を付けていくことの大切さを、本視点は明確に意識している姿勢が読み取れる。
ここに記されている「算数」と「外国語科」の取組に見られるように、どのような場面で、どの子に、どのようにグループで活用することが、授業の目的の達成に向けて効果的になるのかを、丁寧に学校全体で明らかにしていこうとする姿勢、及びその研究体制は、田の学校にも大変参考になることと思われる。
本校はICTを学習道具としてとらえ、それらを指導のための補助ツールの一つとして日々の授業で活用し、授業の改善を図っていくことを大きなねらいとしている。学習課題への興味・関心を高めたり、わかりやすい授業を実現したりすることは、子どもたちの確かな学力の育成につながると考える。
具体的には、子どもたちが知識・技能を「習得」する学習活動にICTを用いたり、習得した知識・技能を「活用」し、協働的に学ぶ学習活動に用いたりする。日常的にICTを用いた授業が行えるように、その有効的な活用法を全校体制で追究してきた。
本年度は2年次の研究となる。昨年度より取り組んできた成果と課題に基づき、研究主題にせまる視点として、次の3点を重視し、取り組みを進めている。
月 | 研究概要 |
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8月 |
全体研修 Plan
小中一貫合同研修会 実践発表 |
9月 |
プロジェクトチームの授業計画 Do |
10月 |
プロジェクトチームの公開授業③ Check
推進委員会の実施 Act |
11月 |
プロジェクトチームの公開授業② Check
推進委員会の実施 Act |
12月 |
学年部の授業計画② Do 実践事例集作成 Do・Check |
4年 理科 「閉じこめた空気と水」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
空気と水の性質について振り返る。
本時のめあてを確認する。 |
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展開 |
グループで実験結果を予想し、実験を行う
各グループから結果と考察を報告する。
|
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まとめ |
各グループの報告をまとめる。 学習の振り返りを行う。 |
6年 算数科 「速さの表し方を考えよう」
本時のめあて
学習の様子 | 使用コンテンツ | |
---|---|---|
導入 |
既習の問題に取り組み、これまでの学習を想起する。 本時の学習問題を知り、学習の見通しをもつ。 |
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展開 |
2台のプリンタの動画を見て、作業の速さのイメージをもつ。 既習事項と結びつけながら、自力解決を図る。 ペアやグループでタブレット端末を見せ合いながら、自分の考え方を説明する。 全体で考えを共有する。 |
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まとめ |
学習をまとめる。
学習の振り返りを行う。 |
本校では、全ての教育活動において児童が分かりやすい授業を構築することが、学力向上につながると仮説を立て、本年度は「習得の場面」・「活用の場面」に場面を分類し、「授業改善」のためのツールの一つとしてICTの効果的な活用法を明らかにすることをねらい、取組を進めてきた。
2学期は「活用の場面」でのICTの効果的な使い方に焦点化し、研究を進めた。プロジェクトチームから2つの授業の提供があり、全員で取組の成果と課題の共有を行った。
4年生の理科では、既習の知識で予想を立て、実験の結果と考察を報告する学習であった。この授業では、次のことが成果として挙げられる。
6年生の算数では、これまでの既習事項を活用し、作業の速さを求める問題に取り組んだ。演算を決定するまでの思考過程を図で表し、タブレット端末を用いて共有して練り合った。作業の速さもこれまでの学習と同様に、単位量あたりの考え方を用いて表すことができ、他の児童に自分の考え方を説明する学習を進められたことは、児童にとって大きな自信となった。
3学期は2年間の取組を報告する「実践報告会」を行う。タブレット端末の活用だけではなく、みえるもん、書画カメラといったICT機器の活用方法も報告内容に取り入れ、2年間の研究のあゆみを報告する予定である。これからも、児童が分かりやすい授業を築けているのか、何のためにICTを使うのか、「習得」と「活用」そして学びの発展を常に意識しながら取組を進めていきたい。
月 | 研究概要 |
---|---|
1月 |
学年部の授業計画 Do |
2月 |
実践報告会の実施 Check 推進委員会の実施 Act |
3月 |
総括・研究のまとめ Check |
平成28年2月16日(火)実践報告会
佐保小学校の2年目の8月からの取組では、「知識・技能を「活用」し、協働的に学ぶ学習活動におけるICTの有効活用法の開発」「ICTを活用するために、指導者と学習者が機器に関する基本的スキルを獲得すること」に目を向けた取組がなされている。
まず「4年生 理科 閉じ込めた空気や水」の取組に関わっては、①前時までの振り返りから既習知識で予想を立てる(ワークシートに予想を絵と文章で説明させる)→②実験の進め方や道具の扱い方の説明(ICT機器である「ぼうけんくん」の使い方も説明し、今後他の実験でも、「ぼうけんくん」を扱えるように指導も入れる)→③予想を検証するために、実験では条件を変え、グループ間で相互に比較ができる経験を入れている(空気と水の量が異なる3群各2グループを設定し、水と空気の比較、縮み方の比較をさせる。その中で各個人がそれぞれ実験結果を読み取る)→④各個人はグループ内の活動で、実験結果を「ぼうけんくん」を使って撮影し、その記録を下に、結果を絵と文字を使ってワークシートに書き込む(実験結果の記録からわかったことをまとめ)→⑤クラス全体で、実験結果の画像を大型TVに映し、その考えの根拠を示しながらわかったことを共有し、気づいたことを話し合う→⑥話し合いの結果を個人でワークシートにまとめる、という流れで進められていた。
ICTの活用に関わっては、上記の流れの②で「ぼうけんくん」を用いて、実験前と実験後のメモリの様子を写真で撮影させ、変化を視覚化できるようにしていた。これは前後のデータを正確に読ませるために用いていることに加えて、⑤の全体での共有場面で明確になるが、写真による実験データの記録の仕方についても教えようとしていた(写真の撮影位置が正面からずれていると、正確なメモリの読みがしにくくなることに気づかせる工夫)。このように学習内容に則して、ICTを活用していく力の育成とそれにより正確にメモリを読み取り、条件が違っても同じ結果が出てくることの根拠から、既習知識も活用させて(理科的学習言語を用いさせながら)説明を求め、理解を導いている工夫が興味深い。
次に「6年生 算数 単位当たり量、速さ」の取組に関わっては、ゴールとして、単位量当たりの大きさの考え方を用いて、仕事の速さの比べ方をICTを用いて視覚化しながら考えさせ、説明させることを目指した取組であった。①タブレットに示された課題を見て、各自既習事項を想起する時間の設定→②電子黒板で、①の課題を提示しながら、既習事項ではまず何に着目していくことが重要か全体で確認→③各自で既習の方法を活用して、類似課題の解決を行う時間の確保(線分図を使いながら試行錯誤させるためタブレット上に考えを表現させる)→④数名の代表の子どもたちによって前面で電子黒板を使いながら、各自のタブレット上の解法について説明させ、多様なプローチや留意点を確認する(自分が大切と考える方法をノートに記録させる)。→⑤本時の課題の提示(今までの問題との類似点と差異を身近に見たことがある事に関する動画を見せながら問う。「速さ」「時間」「道のり」の言葉が一部変わることに加えて、時間と分の併用、やりやすい方にそろえる、など)→⑥1時間にそろえる考え、1時間単位だが分でそろえる考え、など、自分のやり方をタブレット上に表現させる。→⑦「単位をそろえて」「比べる」「計算が少ない」など全体で比較確認→⑧学んだことの整理、という流れで進められていた。
ICTの活用に関わっては、既習事項のうち、課題解決の方法に関わって、自分がやりやすい方法を選ばせ、それを活用して、視覚化しながら解法を試みさせる際に、タブレットを試行錯誤の道具として活用していた。また後の考えの共有(全体での学び合い)も見通して、授業時間全体の使い方も計算して活用しているところが興味深い。
以上の2つの取組から2学期の研究課題である「活用」と関わって見えてきたことは、(1)既習の知識・技能を課題解決する中で活用させ、その知識技能の確かな習得や習熟を目指すとき、思考の視覚化や考えの交流場面でICTを活用すること、(2) 既習の知識・技能を課題解決する中で活用させ、思考力や判断力や表現力を培うときに、ICTを試行錯誤の道具として活用し、様々なアプローチの選択根拠など考えさせていくこと、(3)次の学習活動でも応用できる情報活用能力を育成する視点からICTの活用スキルを培うこと、があげられる。
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