広島市立藤の木小学校
第42回特別研究指定校研究課題
~授業過程に「かく活動」を位置付けて~
広島市立藤の木小学校の研究課題に関する内容
都道府県 学校名 | 広島県 広島市立藤の木小学校 |
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アドバイザー | 高橋純 東京学芸大学准教授 |
研究テーマ | ICTを効果的に活用した授業づくりの追究 ~授業過程に「かく活動」を位置付けて~ |
目的 | 児童の学力向上に繋がるICT活用を追究する。そのために、授業過程に「かく活動」(「書く」「描く」「TPCへの入力」等、文字や図表による表現活動)を効果的に位置付けその質を深め、ICT活用との関連を明確にし、ICT活用授業の充実・協働学習の充実を図る。 |
現状と課題 |
現状
<児童> 課題
<児童> |
学校情報化の現状 | 教科指導におけるICT活用に重点をおいて取組んでいる。校務の情報化は、広島市全体で整備されたシステムによる |
取り組み内容 |
<校内研修>
<公開研究会>
<授業記録の蓄積・授業モデルの深化・改善> かく活動を位置付けた授業実践の記録を蓄積する。かく活動を位置付けたICT活用授業モデルを作成する。 |
成果目標 |
<学力検査>
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助成金の使途 |
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研究代表者 | 島本 圭子 |
研究指定期間 | 平成28年度~29年度 |
学校HP | http://www.fujinoki-e.edu.city.hiroshima.jp/ |
公開研究会の予定 |
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研究課題と成果目標
研究課題 | ICTを効果的に活用した授業づくりの追究-授業過程に「かく活動」を位置付けて- |
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成果目標 | <学力検査> CRT学力検査において、国語の4観点(算数の3観点)評価が、全学年全国比100以上となる。(1月実施予定) <授業モデルの深化・改善> 「かく活動」を位置付けたICTを活用した授業モデルをもとに、何をかかせるのかを明確にした実践を積み重ね、深化・改善された授業モデルを作成し、実践例を蓄積する。 |
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(4~7月)の取り組み内容 |
本校は右図のような研修内容で研究を進めています。本期間中は、「かく活動」に関する理論研修をミニ研修として行いました。また、全体授業研究を3回行いました。そのうち2回は広島市教育センター主催「ICTを活用した授業づくり研修」-藤の木塾-として、広島市の先生方への研修講座として公開しました。それぞれ事前に行った模擬授業では、授業の流れや発問、ICT活用の効果、かく活動の位置付け等について、活発に協議を行いました。 <ミニ研修の様子> 「かく活動は考える活動・主体的な活動」ととらえて、日々の授業を行っています。6月21日のミニ研修では、日々の授業の板書を題材に、めあてとまとめの書き方の関係について考えました。めあての表現によって、まとめの書きぶりが変わってくることに改めて気付くことができました。 7月15日のミニ研修では、それぞれ4月~7月の「かく活動」の実践を振り返り、協議しました。ノートにめあてとまとめを書くことそのものは、どの児童もほぼできるようになっています。教科によって思考過程をかきやすいものとかきにくいものとがあるなどの意見が出されました。 <模擬授業と全体授業研究の様子> ○ 5月26日 3年生 算数 わり算 模擬授業では、電子黒板で本時の問題を提示する際、どのように提示すれば児童に解決への意欲もたせられるかということを話し合いました。 授業では、「同じ数ずつ分ける」という操作を一人ひとり確実に行うためにTPCを活用しました。どのように考えてその操作を行ったかもかかせておき、それをもとに全体で発表させました。 協議会では、梶本先生から、TPCにかいた自分の考えと友達の意見や友達の意見を聞いてわかったことを融合させてノートに書き残すことが大事であると教えていただきました。また本校の授業モデルに位置付けたかく活動のなかで、どこに重点をおけばよいかについても、示唆をいただきました。 ○ 6月23日 4年生 理科 電気のはたらき 指導者:T1 村中智彦教諭 模擬授業では、45分で理科の学習の流れに沿った活動を行うために、導入場面の時間の短縮が必要であることを話し合いました。電子黒板で本時の問題を提示する際、どのように提示すれば児童に解決への意欲もたせられるかということを話し合いました。 授業では、回路を正しくかくことができるように、毎時間、めあてに応じて直列・並列の回路をTPCにかかせました。簡単に書き直しのできるTPC活用が有効です。ノートには、実験の結果と結果から考えられるまとめを書き分けることができるように、発問を工夫しています。本時においても、児童はどちらもしっかりかくことができました。 ○ 6月23日 5年生 社会 あたたかい土地のくらし―沖縄県―
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※アドバイザーの助言と助言への対応 | 4月27日に行われた助成金贈呈式におけるグループディスカッションで、本校アドバイザーの高橋純先生(東京学芸大学 准教授)から、かく活動の評価について「記録を残しやすいというタブレットの特性を活かし、初期・中間・後半に書いたものの質や量の変化を評価していくのが、まっとうな流れだと思います」とアドバイスをいただきました。 そこでまず、本時のめあてに対してどんなまとめをかかせたいかをはっきりさせて授業を行うことからスタートしています。また、「かく活動」を位置付けた日々の授業実践を交流し、何のための「かく活動」か、「かく活動」を通して児童にどのような力を育てるのかについて、共通の認識をもつためのミニ研修を行っています。 |
裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
本期間の裏話 | 第1回校内全体授業研究 授業者 田中淳紀教諭 私は、昨年度新規採用教員として本校に着任した2年目の教員です。研究部に所属しており、今年度は最初の全体授業研の大役を担いました。今年度の研究テーマに迫るために、TPCでのかく活動を提案しました。そのためのデジタルワークシートをICT支援員の岡本先生と一緒に作成しました。
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成果
本期間の成果 | これまで、授業でどのようにICTを活用するかについて研究を進めてきましたが、今年度は「かく活動」を切り口に、児童の思考・表現の力を伸ばすためにICTをどのように活用するかという、一歩踏み込んだ視点で研究をスタートすることができました。また、「かく活動」を切り口に日々の実践を振り返り協議することで、授業の質を上げることに効果があると考えています。 |
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今後の課題
一人ひとりの教員が、明確な意図をもって「かく活動」を位置付けた授業を行うようになることです。それを通して、児童の思考・表現の力が伸び、かく内容の質が高まっていくことです。そのための効果的なICT活用のあり方について研究を深めていきたいと思います。
今後の計画
8月22日(月)に、アドバイザーである東京学芸大学准教授 高橋純先生を講師としてお招きして研修し、「かく活動」で本校が目指すものとICT活用との関連について、知見を深め、9月以降の実践に役立てていきたいと思います。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
学習過程を質的に高めるための「かく活動」とICT活用
広島市立藤の木小学校は,これまでに総務省のフューチャースクール実証研究事業や文部科学省の学びのイノベーション事業など研究指定を受けて,数多くの研究成果をあげてきている。全ての学年・学級においてタブレットPCを活用し,個別学習や協働学習などの充実を図ってきている。
今回,本校が取り組むテーマは,「ICTを効果的に活用した授業づくりの追究-授業過程に「かく活動」を位置付けて-」である。「かく活動」はあえて「ひらがな」であり「書く活動」とはしていない。文章を書くだけではなく,図を描いたり,表にまとめたり,場合によってはアンダーラインを引いたりすることも含めて「かく活動」としている。このような研究の経緯をたどった学校が,今回の研究テーマとして「かく活動」に着目したのは,大変に示唆的といえる。
本校のこれまでの取り組みが,大変な道のりであったことはいうまでもない。その際,タブレットPCの活用や協働学習といった成果は,まず「見た目」の変化として現れる。例えば,参観者が授業を撮影した写真一枚からでも,その変化は確認しやすい。さらにいうならば,本校は学習規律を整えたり,タブレットPCの使い方の指導を統一したりする取り組みが,まず基盤としてあった。こういった成果もまずは「見た目」に現れやすい。
これらを踏まえて,これまで以上に学習過程を質的に高め,児童に着実に力をつけることを,一層追究しようとした時に,「かく活動」に着目したのだと考える。しかし,「質的に高める」とは難しい。これまでのような一目見て分かるようなわかりやすさはないだろう。例えば,「かく活動」の充実とは,一人一人の児童が自ら学習課題に向き合い,思考を深めていき,適切にかく活動を行うことだとすれば,その充実は短期的にも見た目にも現れにくい。加えて「かく活動」そのものは,見たり,聞いたり,話したりするよりも,難易度が高いことが多い。写真をみて分かったつもりでも,友だち同士で話し合って分かったつもりでも,それらを文章にしようとすれば,分かっていないことに気がついたり,思ったように表現できなかったり,時間が不足してしまったりする。こういった困難さがある中で,ICTの手助けも借りながら,「かく活動」によって学習過程を質的に高めるには,どのような方法があるのか,まだ不明な点が多い。
中央教育審議会による「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)」によれば,「次期改訂が目指すのは,学習の内容と方法の両方を重視し,学習過程を質的に高めていくことである」と示されている。まさに本校の研究は,「かく活動」とICT活用を通して,これらに応えようとしている。積み重ねのある本校らしい,新しい時代に向けた取り組みであるし,チャレンジといえるだろう。
研究課題と成果目標
研究課題 | ICTを効果的に活用した授業づくりの追究~授業過程に「かく活動」を位置付けて~ |
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成果目標 |
<学力検査> CRT学力検査において、国語の4観点(算数の3観点)評価が、全学年全国比100以上となる。 <授業モデルの深化・改善> 「かく活動」を位置付けたICTを活用した授業モデルをもとに、何をかかせるのかを明確にした実践を積み重ね、深化・改善された授業モデルを作成し、実践例を蓄積する。 |
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
時期 | 取り組み内容 | 評価のための記録 |
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8月5日(金) | 「かく活動」校内全体研修会 「かく活動」を振り返り、「かく活動」の具体を協議し、今後の実践に生かす。 |
ワークショップによるグルーピング(教師) かく活動実践シート(実践者) |
8月22日(月) | 夏季校内全体研修会 (講師 東京学芸大学高橋 純 先生) |
講師の講話 教師の所感(アンケート) |
8月24日(水) | 教育センター講座 藤の木ICT塾 | アンケート(受講者) |
8月25日・26日 | 公開研究会 学習指導案検討 | 学習指導案(授業者) |
11月6日~11日 | 公開授業 模擬授業 | 学習指導案(授業者) |
11月25日(金) | 公開研究会 5提案授業 (講師 東京学芸大学 高橋 純 先生) |
アンケート(参観者) 協議会(協議会記録) |
8月5日(金)
8月22日(月)
8月24日(水)
8月25日・26日
11月6日~11日
11月25日(金)
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◇ 8月24日(水) 教育センター研修講座「藤の木ICT塾」
本校で、広島市教員を対象とした広島市教育センター研修「ICTを活用した授業づくり研修―藤の木塾―」が開催されました。60名を超える受講者の方々をお迎えし、全教職員―チーム藤の木―で、講義・演習を行いました。
午前中は、二つの研修を行いました。
1つは、フラッシュ型教材、デジタル教科書の研修、もう1つは、実物投影機・電子黒板の研修でした。受講者の先生方には12グループに分かれて、操作・実習をしていただきました。
午後は、タブレットパソコンを使った模擬授業研修です。1年生国語、6年生算数の模擬授業を行い、受講者の先生方には2グループに分かれ、両方の模擬授業を受けていただきました。
◇ 11月25日(金) パナソニック教育財団特別研究指定校・広島市学力推進事業「授業改善推進校」【ICT活用研究指定校】公開研究会
150名近くの参加者をお迎えし、公開研究会を行いました。5時間目に5つの公開授業・授業協議会を行い、広島市教育委員会指導主事の指導・助言をいただきました。その後の全体会で、研究提案の後、東京学芸大学准教授 高橋純先生に「豊かで深い学びとICT活用-藤の木小の実践を切り口に-」をテーマに講演をしていただきました。
<授業の様子>
【1年1組 音楽科 「おとでよびかけっこ」 白木 麻梨 教諭】
1年生は音楽科「おとでよびかけっこ」の授業を公開しました。問いのリズムに合う答えのリズムを、タブレットパソコンを使ってつくりました。「つくったリズムをかく活動」を行いました。作った後、お気に入りのリズムを発表しました。
参観した方から「1年生が拍の流れにのってリズムづくりをするのにICTがとても有効に活用されていて、発達段階によって読譜やさらなる音楽の表現活動の高まりにおおいに期待できると感じた。」と感想をいただきました。
【2年1組 国語科 「あなのやくわりを考えよう 「あなのやくわり」」中平 禎子 教諭】
2年1組は国語科「あなのやくわり」の授業を公開しました。電子黒板・デジタル教科書・タブレットパソコンを使って、筆者が説明する「あながある理由」を読み取り、メモの中の大事な言葉や文を使って、ワークシートに自分の考えを書く活動を取り入れました。
参観した方から「児童が最後のまとめの際に『一緒に考えたい』と言っており、日頃から教師と児童が一緒に考え、学ぶことができているのだと感心しました。」と感想をいただきました。
【4年1組 道徳の時間 「大きな絵はがき」 新田 徹 教諭】
4年生は道徳の時間で「大きな絵はがき」の授業を公開しました。電子黒板を使って題材を提示し、タブレットパソコンを使って自分の考えや感じたことを、デジタルワークシートにかく活動を取り入れました。
参観した方から「とても活発に意見が出ていた。仲間の意見を聞き、それに対しての意見(つぶやき)がたくさん出ていた。」と感想をいただきました。
【6年1組 社会科 「世界の未来と日本の役割」 有馬 朝路 教諭】
6年生は社会科「世界の未来と日本の役割」の授業を公開しました。電子黒板・タブレットパソコンを使って、国連の機関「ユニセフ」「ユネスコ」に関する情報を提示し、その情報をもとにグループで話し合い、各機関の役割をノートにまとめてかく活動を取り入れました。
参観した方からは「調べ学習を行い、グループでまとめ、プレゼンテーションをしたら、多大な時間がかかるところを1時間でスピーディーにしかも効率的に行うことができることに驚いた。6年生は力がついていますね。」と感想をいただきました。
【特別支援学級 「伝え方名人になろう」 T1 足立 美菜子 教諭 T2 教諭 山﨑諒平】
なかよし・さわやか学級は自立活動「伝え方名人になろう」の授業を公開しました。電子黒板を使って課題を提示したり、タブレットパソコンやワークシートを使って、課題に対する自分のセリフをかく活動を取り入れたりしていました。
参加した方から「学級の児童と先生がよい信頼関係をもたれているなと感じた。子供達が自分で考えるヒントが電子黒板にもたくさん盛り込まれていたので、”自分で考える”ができていたと思います。」と感想をいただきました。
本期間の成果
今まで行ってきた「授業過程モデル」を見直し、「かく活動」を位置付けた新たな「学習過程モデル」を構築することができました。
「かく活動」に役立つと思われるスキルを取り上げ、段階的に具体化したものを提示し、それらのスキルをかく活動を行う際に、意図的に取り入れていくことを確認できました。そうすることで、児童がかく活動に見通しをもって取り組めるようになり、指導者もスキルを意識して指導する準備が整いました。
今後の課題
- 児童の思考・判断・表現の充実につながるかく活動を、今後も一層追究していきたいです。
- かく活動に役立つスキルを一層明確にし、学年に応じたレベルを設けて、児童自身が見通しをもって進んでかくことができるようになってほしいと思います。
- 児童が豊かな言葉を使って思考・判断・表現できるように、まずは日々の授業で、教科の言葉の理解を図り、知識を広げていきたいと思います。
- かく活動とICTをより融合させる研究を今後も継続して推進していきます。
今後の計画
1月20日(金)に、アドバイザーである東京学芸大学准教授 高橋純先生を講師としてお招きして、研修を行います。今年度最後のまとめの授業研修となりますので、「かく活動」で本校が目指すものとICT活用との関連について、より知見を深め、来年度の研究推進に繋げていけるようにしていこうと思います。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
藤の木小学校では,児童の学習規律が整い,基本的なICT活用スキルの習得が済んでいる.さらに,教員もICTを活用した学習指導に習熟している.
今回,今まで行ってきた「授業過程モデル」を見直し,「かく活動」を位置付けた新たな「学習過程モデル」を構築した.あえてひらがなで表現した「かく活動」には,指でなぞる,線を引くといった基本的なスキルに相当する部分から,教科の言葉をつかってかくまでがある.かく活動は,一人一人が能動的にならないと行えない学習活動であり,好ましいといえる.一方で,活動自体に時間を要することから,前提として,児童にかくための基本的なスキルの習得が要求される.例えば,考えたことをスラスラと文字等で表現できるといったスキルの習得はもちろんのこと,そもそもかくべきことを考えるためのスキルの習得も重要となる.さらに,文章となれば,かくべき事項の取捨選択やその構成など,児童が身に付けるべきことは多様である.「授業過程モデル」は,こういった「かく活動」の効果的な指導法を明らかにする取り組みの一つの成果になる.
そして,ICTを取り入れた「かく活動」とはいかなるものか,今回も数多くの実践が行われた.低学年では,定型的なかく活動を中心として基本的なスキルも含め習得を図り,高学年になるにつれて,徐々に非定型的なかく活動として思考力の育成にもつながるように取り組んでいる.一度やれば身につく簡単な力ではない.繰り返したり,振り返って修正したりすることが必要であり,こういった際にうまくICTを活用することを試みている.
児童1人1台PCの様々な可能性の追究を終えた学校が,その中で特に本質的だと考えた「かく活動」を取り出し,さらなる高みを目指している.
研究課題と成果目標
研究課題 | ICTを効果的に活用した授業づくりの追究-授業過程に「かく活動」を位置付けて- |
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成果目標 |
<学力検査> CRT学力検査において、国語の4観点の評価が、全学年全国比100以上となる。(実施済) <授業モデルの深化・改善> 「かく活動」を位置付けたICTを活用した授業モデルをもとに、何をかかせるのかを明確にした実践を積み重ね、深化・改善された授業モデルを作成し、実践例を蓄積する。 |
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
<校内全体授業研究会>
○ 1月20日 1年1組 図画工作科 題材 でこぼこ はっけん! 指導者 錦織礼教諭
指導助言:東京学芸大学教育学部 高橋 純教授
本年度の研究のまとめとして、校内全体授業研究会を行いました。
校内で見付けた「でこぼこ」を、紙粘土で写し取り、それに色を塗って作った紙粘土ペンダントの鑑賞を通して、「でこぼこ」のおもしろさや楽しさを感じ取る授業でした。鑑賞のポイントをしっかり理解して、まず隣の友達の作品を鑑賞し、感じたことをTPCにかき込みました。次に実際の場所にも行き、多くの友達の作品紹介を聞いて鑑賞しました。
「見て・さわって・かんじて・つたえる」という鑑賞の仕方に沿って、上手に感じたことをかいて、友達に伝えることができました。
協議会では、「学習規律」「基礎・基本の徹底」「思考・判断・表現の充実」の3観点の中で、「かく活動」及び「ICT活用」について3つのグループに分かれて協議しました。個々の気付きを模造紙にまとめ、グルーピングし発表して共有しました。
「ICT活用」については、本校が長年取り組んできたノウハウが生かされ、入学してまだ1年間の1年生がTPCを上手に扱っている姿は、成果として評価されました。
本時の「かく活動」は、友達の作品を鑑賞して、感じたことや気付いたことなどをかくこととし、かいたことをもとに伝え合いました。伝え合う様子から、日頃から感じたことを表すことばを集めておくなど、基礎・基本となるスキルを訓練しておくと、本時の授業で一層発揮できるのではないかということが課題として挙げられました。
高橋 純先生には、「鍛えて・発揮する かく活動」というテーマでご講話頂きました。来年度に向けて、「かく活動」をより一層充実していくために、「かくためのスキル」を「鍛え」、それを授業の中で「発揮する」場面を設けていく必要があるという内容でした。
<CRT学力検査 実施>
成果の検証のために、CRT学力検査を国語科について全学年1月26日(木)に実施しました。「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語についての知識・理解・技能」の4観点のうち、「書くこと」の評価は全国比100以上となりました。また、高学年で「読むこと」「言語についての知識・理解・技能」が高い結果となりました。
<本年度のまとめ>
2月から3月にかけて、本年度の研究の成果と課題を整理しています。来年度の研究を方向付けることができつつあります。( 今後の計画に詳細を記述しています。)
アドバイザーの助言と助言への対応
「鍛えて・発揮する」というキーワードを示していただいたことから、まずはこれまで本校で継続して行っているICT活用スキルの指導内容を学年毎に整理しました。また、「かく活動」についても、日常的な指導も含めてこれまで継続して行っている取組を取り出し、そのモデル化に着手しています。(下図参照)来年度は、意図をもって取組めるよう、引き続き実践研究を進めていきます。
本期間の裏話
本校で継続して行っているICT活用スキルの指導の中でも大切にしているのが、キーボード入力の指導です。3年生でローマ字を学習し始める時期に合わせて指導を開始し、6年生まで継続します。児童の意欲を高めるために、年に3回キーボード選手権を行っています。3年生以上の児童が参加します。1分間の入力文字数は、3年生の児童で最高24文字、6年生の児童で最高約42単語(120文字程度以上)です。1人1台環境の成果だとも言えます。
そこで本期間中に、保護者・地域の方々を交えた「キーボード選手権ファイナル&情報モラルUPに挑戦!!」イベントを初めて開催しました。土曜日の開催でしたが、高学年児童22名、保護者・地域の方々が18名参加してくださいました。情報モラルの指導と合わせて一層充実させたいと考えています。
本期間の成果
教師が日々の指導の中で「かく活動」を意図をもって確実に位置付けていることです。 授業におけるICT活用と組み合わせたかく活動についても、イメージをもって指導できるようになってきました。
児童も「かく」ことに慣れてきており、進んでかこうとする児童が増えてきました。高学年児童は書き直しが簡単であるという理由で、タブレットにキーボード入力でかくことを好む傾向があります。
かいたことをもとに発表するということも日常の授業で行われており、1月の校内研究授業においても、1年生がしっかりと自分の考えを発表していました。
今後の課題
児童が意欲をもってかき、より質の高い思考・判断・表現を行うようになるには、授業の質をあげることが大切です。教材分析、発問の精選、効果的なICT活用とかく活動の追究につながる校内研修を充実させ、教師一人ひとりの授業力を一層高めていくことが課題です。
今後の計画
来年度は、以下のように研究を進めていきたいと考えています。
豊かな言葉で 学び合う子どもの育成
「ICTを効果的に活用した授業づくりの追究 -鍛えて発揮する「かく活動」を目指して-
今年度と研究主題は変わりませんが、副題の「授業過程に「かく活動」を位置付けて」を「鍛えて発揮する「かく活動」を目指して」に変更します。
昨年度の研究で、「かく活動」を位置付けた「学習過程モデル」を作成することができました。提案された授業や日々の実践の中でも、この「学習過程モデル」に沿って、1授業の中に3回程度の「かく活動」を取り入れ、実践を重ねてきました。
来年度もこの「学習過程モデル」をもとに実践を進めていきますが、「かく活動」を手立てに思考を深めるには、まず「かく活動」に役立つスキルを鍛える必要があると考えます。また、そのスキルを鍛えることで「かいて考える力」が伸びると考えられ、それが協働学習やより深いまとめ・考察につながり、「知の更新」につながるのではないかと考えています。また、「かく活動」に役立つスキルを子供たちが自由自在に使えるようになれば、様々な場面で効果的なスキルを適切に選択できるようになり、自ら思考を整理・分析し、考察、まとめることが可能となり、主体的な学びとなると考えます。
以上のことをふまえ、来年度は、「かく活動」に役立つスキルを厳選し、どの学年でも身に付けさせたいスキルを選択し、鍛える時間を設け、計画的に身に付けさせていこうと考えています。
また同時に、本年度実践した「MY教科」を再度設定し、教科の特性に応じたスキルの定着も図らせたいと考えます。
加えて、「かく活動」に役立つスキルを鍛える際に、読み取る力・聴く力も同時に鍛えたいと考えます。「かく」ことと読むこと・聴くことは連動しています。例えば、正確に聴き取ったことから考えて「かく」。読み取った情報を整理して「かく」などです。「かく」ことだけにとらわれず、かくことにつながる多様なスキルを身に付けさせたいと考えます。
1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い
1年間継続して東京学芸大学高橋純先生に御指導いただいたことで、本校の研究の方向性が定まり、深まりました。「かく活動」に視点を当てた研究が価値ある研究であることを自覚して、次年度も一層充実させていきたいと思います。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
フューチャースクール推進事業の実証校であった本校は,これまでも,1人1台PCをフルに活かして,例えば観察記録などをお互いに見合って意見を述べまとめていくといった協働学習を積極的に行ってきた.
今回,パナソニック教育財団の特別研究指定校として,より深まりのある授業を実施し,確実に資質・能力を育むために「かく活動」に着目することとした.加えて「授業過程」に位置づけることで,単発の活動としてではなく,授業過程の中で意図的・計画的に「かく活動」を行うことにした.
初年度,様々なチャレンジを行ったが,特に,授業で行うべき「かく活動」を抽出してモデル化を図ったことが成果であろう.成果の一つである表をみると,文章を読みながら線を引く,黒板を写すといった基本的なことから,メモをかく,文をかく,数直線をかくなど,様々な「かく活動」に発展していくことが一覧できる.これらに基づいて実践が始まっている.
次年度に向けて,本モデルに基づき「鍛えて,発揮する」観点が重要となるだろう.
1人1台PCを活用した授業は全国各地で行われている.しかし,紙と鉛筆と黒板で行った授業よりも深まっている授業ばかりではない.子供の考えが大画面で共有できるのはよいが,画面の切り替えに時間がかかったり,そもそも自分の考えをかくのに時間がかかったり,ファイルの保存や呼び出しにつまずいたりもする.
つまり,「鍛えずに,発揮させる」授業であったり,「鍛えながら,発揮させる」授業だったりする問題がある.換言すれば,素振りもできないのにテニスの試合をするとか,試合をし続ければテニスの腕が上がるという考え方に近い.しかし,鍛えるべきことはしっかりと鍛え,その上で発揮する,或いは,鍛えると発揮するを相互に意図的・計画的に実施するといった基本に立ち戻る必要がある.
鍛えるべき事項には,本校がテーマにしている「かく活動」がある.そもそもスラスラと書くことができるからこそ,PC上にも表現できる.かけるようになるためには,かくことそのものを鍛える必要はもちろん,例えば,かく題材を得るために,しっかりと観察して読み取れることも重要になる.このように体系的に鍛える必要があるからこそ,初年度に取り組んだ「かく活動」のモデル化が重要となる.また,さらなる前提として,キーボードやファイルなどのPCの操作スキルの習得も欠かせない.PCの操作に不慣れであれば,かく活動よりも,操作そのものに頭がいっぱいになってしまう.
児童は教えなくても操作できるようになる,といった意見もあるが,これは誤りが多分に含まれている.写真を撮る時,シャッターを切るといった低レベルのことは教えなくてもできるようになるが,意図を表すように撮影するといった高レベルになると,鍛えないとできるようにはならない.文字入力操作であれば,試行錯誤しながらではなく,ストレスなく入力できる必要がある.それには一定の鍛えと時間が必要である.本校の児童は既に基本的な操作スキルはもっている.この操作スキルを鍛えるカリキュラムが既にあることで,続いて「かく活動」に取り組めるともいえる.
いよいよ2年目である.1人1台PC活用の先駆者である本校が,さらなる成果を挙げることを期待したい.
研究課題と成果目標
研究課題 | 豊かな言葉で 主体的・対話的で深い学びに向かう子どもの育成 「ICTを効果的に活用した授業づくりの追究-鍛えて発揮する「かく活動」を通して-」 |
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成果目標 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
<昨年度までの取り組み>
昨年度は教師それぞれが「My教科」を設定し,それぞれの教科で「かく活動」を取り入れる実践を行いました。
実践や研修を深める中で,「かく活動」とは思考活動であり,自分の考えなどを表に表現するため(アウトプット)の活動であることを確認しました。
その「かく活動」を明確な意図をもって授業過程に位置付け,「かく活動」が充実するよう,授業でICTを活用することとしました。それにより、個の学びや、学び合いの質が深まり、学力向上を目指していけると考えました。
藤の木小 学習過程モデル
そこで,本校でこれまでどのように「かく活動」を行ってきたか整理しました。
すると,大体の授業で,「自分の考えをもつ場面」「友達と考えを伝え合う場面」「考えをまとめる場面」で「かく活動」を位置付けていることが明らかになりました。そこで,それをモデルとすることとしました。「かく活動」を学習の中に定期的に位置付けるため,藤の木小学校独自の「学習過程モデル」を構築することとしました。
この学習過程モデルをもとにして,1年間の研究を進めていきました。
<今年度の取り組み>
昨年度の成果と課題を踏まえて,本年度はテーマを,
豊かな言葉で 主体的・対話的で深い学びに向かう子どもの育成
「ICTを効果的に活用した授業づくりの追究-鍛えて発揮する「かく活動」を通して-」
として研究をスタートしました。
本年度の研究の方法は,以下の3つのことを重点的に行っていきます。
1つ目は,昨年度度実践した「MY教科」を再度設定し,教科の特性に応じたスキルの定着も図ること。
2つ目は,「かく活動」に役立つスキルを厳選し,どの学年でも身に付けさせたいスキルを選択し,鍛える時間(スキルアップタイム)を設け,計画的に身に付けさせていくこと。
3つ目は,「かく活動」に役立つスキルを鍛える際に,読み取る力・聴く力も同時に鍛える。かくことにつながる多様なスキルを身に付けさせたいこと。
<授業公開・授業研究>
6月22日(木) 広島市教育センター研修藤の木塾
広島市教育の情報化推進拠点校として、平成25年度から毎年、教育センター主催藤の木塾が開催されています。6月22日は、その第1日ICTを活用した授業研究を、約60名の受講者のみなさんと、本校教職員とともに行いました。公開したのは、3年1組社会、5年1組理科です。
社会では、タブレットを資料集として活用しました。多様な情報を比較しながら思考するのに役立ちました。
理科では、タブレットをワークシートとして活用しました。自分の考えを見える化し、グループや全体で瞬時に共有して思考を深めるのに役立ちました。
7月6日(木) 2年1組 算数科 水のかさ
高橋先生を本校にお招きし,本年度第1回目の校内全体研修会として2年1組の算数科の授業を見ていただきました。
大きな水のかさをはかる際に,既習のdlだけでははかることが難しいことを具体物操作を通して児童に感じさせ,新たなLという単位量のよさを学びとる学習でした。
自分たちで測った水の量を写真に撮り,IWBに映し出して量を説明するなど,主体的な学びとなるための手立てを講じました。どの児童も意欲的に学習に取り組み,課題を解決しようとしていました。
アドバイザーの助言と助言への対応
本校アドバイザーの高橋純先生(東京学芸大学准教授)から,本年度の取り組みとして,「かく活動」を授業の中で主体的に行うために,スキルを鍛える必要があること,また,そのスキルを用いて「かいて考えた」自分の考えを表現し,対話することで,深い学びにつながるご示唆を頂きました。今後は,児童が自ら進んで「かく」ことができるよう,「藤の木小 かくためスキル」の構築を目指していこうと思います。
本期間の裏話
5年 理科 村中教諭
6月22日に,「ふりこ」の単元で,仮説実証実験の授業を試みました。最終目標を「ふりこが1往復する時間が,1秒のふりこを作ろう。」とし,その目標に向かって,「何が1往復する時間に関係しているか。」を課題として,仮説を立て,実験方法を児童自ら考え,実証し考察することとしました。
理科の学習では,本来は上記のことを繰り返し行うべきだと思いますが,仮説をもとに児童自ら実験方法を考えることは,非常に難しく,かなりの鍛錬が必要です。4月から取り組んできたものの,すぐに身に付く力ではありません。
しかしながら,今回の授業では「条件制御」の考えは敢えて指示せず授業を進めたのですが,児童は「条件制御」の考えをしっかりもち,意欲的に取り組んでいました。
今までの取り組みが発揮された瞬間が見られ,とてもうれしく感じました。
理科の学習は,より主体的に,対話的に進めていける教科だと思いますし,そうしないと問題は解決できません。今後もこの取り組みを継続して続けていこうと思います。
本期間の成果
成果として,本年度は昨年度からの「かく活動」をさらに充実させるために,「鍛える」・「発揮する」の2つの取り組みを充実させること,その中でICTをどう効果的に活用していくかということを明確にして研究をスタートできたことです。児童が主体的に,対話的に学習に進んで取り組み,その中でより深い学びを実現できるよう授業研究に取り組んでいきます。
今後の課題
児童に身に付けさせたい「かくためのスキル」を11項目厳選し,夏休み明けから,児童に指導したり,掲示したりして,鍛えていけるようにしたいと思います。
また,この取り組みを通して,児童が目標をもって「かくスキル」を身に付け,
そのスキルを活用して,かいたものをもとに意見交流したり,説明したりし,対話的な場面を導入・工夫することで,より主体的に学習に取り組むことができ,深い学びを創造することができると考えます。
今後も継続的に「かく活動」について研究を深めていこうと思います。
今後の計画
「身につけようかくスキル11」を夏休み明けから児童に意識させて日常的に取り組み,10月の校内研修,12月の公開研究会に向けて,授業研究していく予定です。次期学習指導要領が目指す学びとなるよう,研究を積み重ねていきたいと考えます。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
この間,新学習指導要領や同解説が示された.学習指導要領総則によれば,言語能力,情報活用能力等は,学習の基盤となる資質・能力とされ,教科等横断的な視点からの育成が図られることとなった.まさに,本校が,かく活動やICT活用を研究テーマの主軸としていることと一致する.ますます新学習指導要領の完全実施に向けて,本校の研究成果が期待されるところである.
また,新学習指導要領では,思考力や言語能力など,こういった高次な能力の育成をどのように行っていくべきか,これまで以上に詳細に示されている.例えば「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」や,その際に「見方・考え方」を働かせるといったことである.もう一つの重要な観点が,「学びの過程」といえるだろう.例えば,国語科においては,「思考力,判断力,表現力等」の3つの構成に「B書くこと」がある.「書くこと」は,「題材の設定」「情報の収集」「内容の検討」「構成の検討」「考えの形成」「記述」「推敲」「共有」の学びの過程を通して学ぶとされている.つまり,単に言われたことが書けるだけではなく,生きて働く力として,かく力を機能させようと思えば,文脈の中で学んでいく必要があるといえるだろう.こういった考え方も,本校が「授業過程」として取り組んできたことと一致度が高い.新学習指導要領において「学びの過程」は,教科によっては「学習過程」「プロセス」などいくつかの表記があり,様々なパターンが示されている.教科横断的に取り組んでいる本校においては,これらを参照しつつ,昨年度の成果をさらにブラッシュアップしていく必要があるだろう.
とはいえ,「学びの過程」の中で「かく活動」を行うためには,かくスキルが備わっていることが大前提である.特に新年度が始まったばかりの4月~7月までは,一旦,新しい研究的な取組は休止して,学級づくり,学習規律,学習習慣づくりといった基盤づくりを重視しつつ,まずはかくスキルをしっかりと鍛えていく必要がある.さらに,ICT活用スキルも鍛えていく必要もある.本校のように積み重ねのある学校においても,こういった基本的なことを丁寧に積み重ねていることが確認できたのが,4月~7月期であった.それでも「藤の木塾」などを通して,いくつかの先端的な事例の積み重ねも行っている.
いよいよ2年間の研究も最終段階である.今後の成果に期待したい.
本期間(8月~12月)の取り組み内容
時期 | 取り組み内容 | 指導助言者等 |
---|---|---|
8月23日(木) | 教育センター研修 藤の木ICT塾リハーサル | |
8月24日(金) | 教育センター研修 藤の木ICT塾 (約70名参加) |
全ての教職員が研修講師となった。 |
8月25日・26日 | 公開研究会 学習指導案検討 | |
10月19日(木) | 校内全体研修 全学級授業参観 講話 | 新見公立短期大学 梶本佳照教授 東京学芸大学 高橋純准教授 |
11月1日~13日 | 公開研究会のための事前の模擬授業 | |
11月21日(火) | 中学校区公開授業研究会 授業提案・・・4年図工 (約20名参加) |
広島市教育委員会指導主事 |
12月1日(金) | The 16th 広島市立藤の木小学校 ICT活用公開研究会 since2010 研究提案・授業提案・・・1年国語 3年算数6年社会 講師による対談 (約150名参加) |
新見公立短期大学 梶本佳照教授 東京学芸大学 高橋純准教授 広島市教育委員会指導主事 |
8月23日(木)
8月24日(金)
8月25日・26日
10月19日(木)
11月1日~11月13日
11月21日(火)
12月1日(金)
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アドバイザーの助言と助言への対応
学び方について
能動的に学ぶ人を育てるためのキーワード「全ての子供の頭がフル回転する」を示してくださいました。そのためには、子供自身が学び方を知っていること(例 かき方を知っている、調べ方を知っている、比べ方を知っているなど)が前提であり、それらは型として教えて身につけさせる必要があります。そのための手立てとして、本校では以下のことに取り組みました。
- かくスキル11を定め、スキルアップタイムで取り立てて練習する。授業で意識して使わせながら、身に付けさせる。
- 課題把握の場面で、教師の指示なしに情報収集ができるよう、すべきことを教え、練習し、ルール化、自動化する。その際に、かくスキルを使わせ、確かな情報収集ができるようにする。
- その他の場面でも、学び方を教え、パターン化、ルール化、自動化を図るようにする。
深い学びについて
「見方・考え方」が働いた時に、深い学びが実現するので、日頃から「見方・考え方」を意識するとよいとアドバイスをいただきました。授業においては、単元全体で見方・考え方が育まれるととらえ、まずは、教材研究をしっかり行い、教師自身が見方・考え方を的確に把握して授業に臨むよう心がけましたが、まだ十分とはいえません。
ICT活用について
ICTは情報を取り扱う道具で、増やすも減らすも、見せたい情報だけをしぼって見せることを心がけるとよい、一方で、タブレットにかいた自分の考えを全体で発表する時間を多くとりすぎると、「ひま」になる児童が生まれるので注意する必要があるとアドバイスをいただきました。
ICT活用とかく活動をどうつなげていくかを試行錯誤していますが、以下のような2種類のつなげ方を行うことが多くなりました。
その1
TPC上でのかく活動は、TPCの「操作が容易」「かきやすく、消しやすい」というよさとつなげ、操作に基づく試行錯誤、グループでの話し合いを受けて考えを修正する活動で、複数回行われる。
その2
TPC上でのかく活動は、TPCの「多様な情報を提示できる」「情報を絞って提示できる」「情報を自分で探すことができる」というよさとつなげ、短時間で必要な情報を的確に収集し、分析・整理する活動である。
本期間の裏話
公開研究会から2週間後、6年1組で起きたうれしいできことです。担任は、うれしさのあまり、翌日の学級通信で紹介しました。
★衝撃だった、14日の3時間目の授業
めあてを確認した後、情報収集のためのページを言い残し、「ごめん、すぐ帰ってきます。」とだけ言い残し、教室から出た担任の先生。ところがすぐには帰らず、戻ってきたのは授業が終わる20分前……。そこにはとんでもない光景が。なんと、学級代表が先生をしていたのである。しかも黒板への整理・分析は、くまで図を使い、発表者多数の意見を、つなげ、まとめ、学級代表が書き方に迷っていると、「あーじゃないか、こーじゃないか。」とみんなが活躍している。そして、まとめに入る。〇〇君の「キーワード言っていこうや。」の声かけで、まとめが完成したのであった。聞くところによると、先生が来るまでにペアトークも2分とったとか。恐るべし、チーム6の1。これからのラスト4ヶ月が、本当に楽しみだよ。
みんなで作った板書
本期間の成果
<「身につけようかくスキル11」>の設定
1年目は、日常的に取り組んでいる「かく活動」を、探究的な学習のプロセス(課題の設定―情報収集―整理・分析―まとめ・表現)に関連付けて整理しました。(図1)
図1かく活動に役立つスキル
図2「身につけようかくスキル11」
研究2年目に入り、学習過程に「かく活動」を位置付けることには慣れ、「かく活動」を充実させるには、「かくスキル」を鍛えることが必要であることを誰もが理解し、スキルアップタイムでスキルを取り出して練習することにも取り組みました。しかし、このままでは教員一人一人の取組の域を出にくいのではないか,子供たちが意識しにくいのではないかと考え,かくスキルを厳選すること、児童にも分かりやすく表現し「見える化」を図ることにしました。研究部でモデルを作り、全体で検討しました。そこでできあがったものが図2です。1・2・3・4・5は、主に情報収集に役立つスキル、6・8・9・10は主に整理・分析に役立つスキル、7・8・9・10・11は、主にまとめ・表現に役立つスキルと考えました。
夏休み明けの学校朝会で紹介し、児童全員が毎日目にできるよう、1階廊下に掲示しています。各教室にも掲示し、学習中に「どのスキルを使おうか。」などと問いかけ,児童に意識させています。児童も身に付けたいと意識し、進んでかく姿が見られるようになりました。また、教員自身も使うスキルを考えることで、学習のプロセスを意識した授業を行うようになりました。
<12月1日 公開研究会より>
6年1組 社会科 「新しい日本 平和な日本」 授業者:川崎 悠 教諭
本時のめあて:1964年の東京オリンピックに関するAB2種類の資料から、東京オリンピックが大成功と評価された理由を考える。(ICT活用はその2)
学級全体のまとめとして、「国民の努力による」「復興・発展のきっかけ」といったキーワードを、児童から引き出すことができ、本時のねらいを達成することができたといえます。本時の板書は、教師と児童で考えためあて、班でかいた図、教師と児童で考えたまとめで構成されました。授業づくりのキーワード「全ての子供の頭がフル回転する」授業に近づいたと感じています。
本時は、まず、「多様な情報を提示できる」「情報を絞って提示できる」というTPCのよさと、情報収集のためのかく活動をつなげました。学級全体としては、8種類の資料を36人で手分けして調べたということになりますが、TPCで提示したことにより、一つの資料を調べる人数が増えました。延べ回数も増えました。一人ひとりの着眼点が違うので、同じ資料から多様な情報が得られました。一人で複数の資料を短時間で調べることができるうえに、それらを関連付けて見ようとすることで、得られる情報の質が深まりました。
その後、ペアで、TPCやノートにかいたことを根拠に、自分の考えた理由を説明しますが、根拠を示しながらの説明は、互いに分かりやすいものとなりました。また、相手の説明を聞いて、自分の情報収集、整理・分析を振り返るとともに、見方を広げたり、考えを深めたりすることができました。そのような学習過程を経て、グループで図をかいてまとめました。グループで図をかいてまとめる活動にICTは活用していませんが、グループの一人ひとりがそれまでにTPCを使って良質の学習をしていることで、グループでの話し合い活動が、主体的・対話的で深い学びに向かう活動になり得たと考えます。
今後の課題
2年間の研究の成果や課題を確実に分析・整理し、まとめ、次年度へつなげることです。
また、各自の実践を、ICT活用とかく活動のつながりで整理し直し、成果物として残したいと考えます。
今後の計画
12月下旬~1月初旬・・・・実践のまとめ作り
1月中旬~下旬・・・・・・CRT学力検査(国語)
「身につけようかくスキル11」に関する児童アンケート
「身につけようかくスキル11」に関する教員アンケート
2月・・・・・・・・・・・成果と課題の分析・整理とまとめ
成果目標
- 1年次に構築した学習過程モデルに沿って,授業に「かく活動」を位置付け,主体的に取り組んだり,かいたものをもとに意見交流や説明をしたりする場面を導入・工夫することで,深い学びを創造することができる。
- 教師がタブレットPCにかく内容と、ノートにかく内容を明確に区別して授業を行うようになり,タブレットPCを使うことでかく活動の質が高まる。結果,ICTを活用した授業の質が高まる。
- 教師が,「かく活動」を位置付けた授業の目標と評価の連動への見通しをもって授業を行い,児童がかいた内容を授業評価や児童評価に効果的に活用する。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
特別研究指定校の公開研究会として、2017年12月1日に「The 16th 広島市立藤の木小学校ICT活用公開研究会since2010」が開催された。総務省「フューチャースクール推進事業実証校」、文部科学省「学びのイノベーション事業実証研究校」として、児童1人1台環境が整ってから7年、16回目の研究会である。
これまでも度々述べているが、7年間続けているから分かることがある。その場にいないものには想像がしがたい数々の経験、ノウハウが蓄積されている。もちろん、教員は入れ替わっている。それでも続くのは、児童1人1台PC環境が学習に役立つ、目の前の児童には必要不可欠だという藤の木小の先生方の思いの強さが継承されているに他ならないと感じている。
今回の公開研では3つの授業が披露されたが、いずれも若手教員によるものであった。最も経験のある者でも6年目である。一般論として、若い教員はICTが得意であるから、自然と授業ができるといった考え方がある。しかし、仮に若手教員がICTの操作に長けていても、それがすぐさま良い授業につながらないことは周知のことである。むしろ、ICTの操作や機能を使いこなすことばかり気を取られて、肝心の本時の目標にたどり着かないことすらある。
基本となるのは、やはり授業を成立させる指導技術であろう。児童がPCを活用することは、単純に考えても授業における変数が一つ増える訳であるから、難易度が上がる。さらに、それがドリルといった自学自習が可能な教材の活用ではなく、ワープロや表計算といったツールの活用、さらにはこういったツールを用いてオープンエンドな課題に取り組むのであれば、授業成立の難易度は一層上がる。そもそもベテラン教員であっても、児童にPCを活用しなくても、こういった授業の成立は容易ではない。若手であれば未熟であるのは仕方がない面もある中で、発問や板書など学習指導の基本に忠実に、本時の目標に迫るべく、時間内に児童らに着実に力を付けるべく、努力を行っていた。こういったことが若手に継承されていたことが特筆すべき事であろう。こういった点について、我が国の児童1人1台PC環境の普及に向けて、藤の木小から学ぶ必要がある。
「かくスキル11」や「探究的な学習過程」といった学習指導の型を取り入れている。学校で統一された型があるからこそ、若手教員は指導法を身に付けやすくなり、児童は進級して担任が代わっても積み重ねられる。ベテラン教員の技を若手に継承しやすい。
学習規律や基礎基本に関する指導法といった型は広く普及している。さらに、その上位の型として、若手でも実施可能で、どのような教科等の授業でも共通する「かくスキル11」といった型を編み出し、学校全体に浸透させることは容易ではない。しかも、児童1人1台のPCの活用も前提としている。こういった型を明確にして、若手が授業を公開して証明した。ここに藤の木小の公開研から特に学ぶ点があったと思う。
本期間(1月~3月)の取り組み内容
<CRT学力検査 実施>
成果の検証のために、CRT学力検査を国語科について全学年1月26日(木)に実施しました。「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語についての知識・理解・技能」の4観点のうち、「書くこと」の評価は全国比100に近い数値となりました。
<「身に付けようかくスキル11」児童アンケート 実施>
夏休み明けから「身に付けようかくスキル11」の指導に取り組みました。指導を通して、「かくスキル」を意識させると、自分の考えを表現したり、発言したりすることが増え、児童が「かく」ことで考えたり、考えたことを「かく」ことで、発言したり、表現したりしやすくなっていると感じました。2月末に、「かくスキル11」がどの程度できるようになったかについて、<できる・少しできる・あまりできない・できない>の尺度で、全児童に自己評価によるアンケートを実施しました。
〈かくスキル1~5〉肯定的評価の割合
<考察>
「かくスキル」1~5は、探究的な学習過程の「情報収集」に当たります。どのスキルにおいても、肯定的な評価の平均が80%を超えており、全学年において、情報収集のスキルは身に付き始めているのではないかと考えます。
〈かくスキル6・8・9・10>肯定的評価の割合
<考察>
「かくスキル」6・8・9・10は、探究的な学習過程の「整理・分析」に当たります。6・8・10の肯定的評価が、学年が上がるにつれて上がっていることから、これらのスキルには難しさがあると考えます。一方で、図を使ってかくスキルは低学年においても高いことから、図の活用は取り組みやすいと考えます。
〈かくスキル7・8・9・10・11〉肯定的評価の割合
<考察>
「かくスキル」7~11は、探究的な学習過程の「まとめ・表現」にも当たります。スキル9以外は、肯定的評価が学年が上がるにつれて上がっています。今後は、学年段階に応じて、記号・表を使うスキルそのものを取り立てて鍛える必要があると考えます。
アドバイザーの助言と助言への対応
公開研究会の際には、「『身に付けようかくスキル11』や『探究的な学習過程』といった学習指導の型を、藤の木小学校は取り組んでいる。学校で統一された型があるからこそ、若手教員は指導法を身に付けやすくなり、児童は進級して担任が代わっても積み重ねられる。ベテラン教員の技を若手に継承しやすい。学習規律や基礎基本に関する指導法といった型は広く普及している。さらに、その上位の型として、若手でも実施可能で、どのような教科等の授業でも共通する「身に付けようかくスキル11」といった型を編み出し、学校全体に浸透させることは容易ではない。しかも、児童1人1台のPCの活用も前提としている」とのアドバイスをいただきました。今後は、「身に付けようかくスキル11」や「探究的な学習過程」という型を手がかりに、ICTを活用することで学びの質が深まるような授業づくりを追究したいと考えます。
本期間の裏話
昨年に引き続き、第2回「キーボード選手権〈番外編〉ICTスキルアップ!!&情報モラルUP!!に挑戦」を開催しました。今年は、藤の木学区青少年健全育成連絡協議会と協同で開催しました。
【学校HPより】第2回藤の木小学校キーボード選手権〈番外編〉 3月3日 (土)
3月3日(土)に、「キーボード選手権〈番外編〉ICTスキルアップ!!&情報モラルUP!!に挑戦」が、高学年の児童、保護者、地域の方に参加いただき盛大に開催されました。総数41名と、多くの方に参加いただきました。
始めにキーボード選手権を行いました。入力するタイピングの速さや文字数に会場から歓声があがっていました。
情報モラルについては、広島教販の方にお越しいただき、SNSの危険に関することを中心に教えていただきました。SNSへの投稿写真カードを見て、問題がありそうなカードをグループで相談して選び、どこが危険か理由を考え、ポイントを競いました。参加された、公民館の館長さんから「藤の木小はICTでは、日本一だということがわかりました。」といううれしい感想をいただきました。また、参加した児童からも「1分間に平均6文字が全国平均だと聞いて、ぼくたちはすごいんだと自信を持ちました。」いう力強い感想がありました。
本期間の成果
かくことを意識して指導することで、児童もかくことに前向きになってきました。授業のまとめを書くことに抵抗がなくなり、その時間に自分が考えたことや友達の意見をまとめられるようになりました。図や絵で考える良さが分かり、進んでかいて考えたり、まとめたりするようになっています。教師もノートをみる機会が増え、結果的に、児童の頑張りを評価する材料が増えました。教師が「かく活動」を位置付けた授業の目標と評価の連動への見通しをもって授業を行い,児童がかいた内容を授業評価や児童評価に効果的に活用できていることが分かりました。
また本年度は、TPCを主に資料の閲覧や、操作の場として活用し、TPCにかいて発表するということをあまりしないようにしました。TPCは、情報収集にとても有効でした。そして、自分の考えをノートに書くことを重視しました。その結果、TPC=情報収集、ノート=整理・分析という使い分けを、明確に行うことができました。一方で、国語や社会、総合的な学習の時間の学習の成果物は、TPCを活用して、作文、新聞、プレゼンテーション等で、表現することができました。それを支えるICTスキルは確実に身につけさせています。
2年間の成果
1年目は、「かく活動」は「考える活動・思考活動」であるとして、子供たちにしっかり考えさせたい場面に「かく活動」を位置付けました。そして、「かく活動」が充実するよう、効果的にICTを活用した授業を追究しました。また、それまでの授業過程モデルを見直し、新たな「かく活動を位置付けた学習過程モデル」を構築し、それをもとに実践しました。
2年目は、「かく活動」充実のためには、スキルを鍛える必要があると考え、探究的な学習のプロセス(課題の設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現)と関連付けた「身に付けようかくスキル11」を定め、学校全体で日常的に取り組みました。
その結果、児童がかく活動に進んで取り組むようになり、高学年においては探究的な学習のプロセスを意識して学習を進められるようになりました。また、ICTを探究的な学習のプロセスのどこで活用するかを意識して指導するようになり、よりねらいに迫ることができるようになったことが成果です。
今後の課題
探究的な学習のプロセスにおいて、情報収集や整理・分析がうまくいかなかったり、まとめ・表現が深まらなかったりした点は課題です。
こうしたことをもとに考えると、その学年で習得すべき言葉や知識を確実に習得させるとともに、整理・分析の仕方、まとめ・表現の仕方を取り立てて指導する必要があるのではないかと考えます。
平成30年度 研究主題
「情報活用能力育成のためのカリキュラム・マネジメント
-ICTを活用した、鍛えて発揮するかく活動を軸として-」
平成30年度は、ICT環境を生かし、児童の情報活用能力の育成を目指し、カリキュラム・マネジメントに視点を当てて研究を推進し、これまで取り組んできた研究をさらに継続・発展させることを目指したいと考えています。
- 1 探究的な学習過程の型を身に付けるために、「身に付けようかくスキル11」を通して行う時間として、国語科に「ロングスキルアップタイム(仮称)」を位置付け、ICTを活用した題材開発を行う。
- 2 情報活用の実践力育成のための「かく活動を位置付けた学習過程モデル」の改善を図る。
- 3 「身に付けようかくスキル11」の定着のため、年間・全教科通じた計画的な指導を行う。
【内容】
2年間を振り返って
2年間継続して東京学芸大学高橋純先生に御指導いただいたことで、本校が目指す方向が明確になり、深まりました。来年度は、情報活用能力育成に重点を置き、探究的な学習過程を意識した研究を進めていきたいと考えています。
- 東京学芸大学 教育学部 総合教育科学系 准教授 高橋純 先生
2018年1月~3月期は,既に研究発表会を終えていたこともあり,訪問をすることはできなかった.それでも,校長先生からは何度も熱心なメールをいただき,研究のまとめ等の相談を行った.こういった研究に対する真摯な姿勢が,フューチャースクール推進事業などから長きにわたり続く本校の特徴であろう.
2年間を振り返ってみると,本校では学習の型を大切にしていたと感じられる.
まずは何度も報告されている「身につけようかくスキル11」である.「見てかく」から「記号や図や表を使ってかく」に続く11つのスキルにまとめられている.これら一つひとつのスキルは,さほど珍しいものではない.しかし,一部の優れた教師のみならず,学校全体の取り組みとしていくために,型で示していく必要があるとし,それらを体系として,普及を図っていった.この「かくスキル」は,短い繰り返しによって鍛えやすい.児童がスラスラできるようになるまで何度も繰り返して鍛えていった.その成果は,報告書にも示されているとおりである.
しかし,いくら「かくスキル」を身につけても,児童自らが気付き,スキルを発揮すべき場面で発揮できるとは限らない.そこで,「探究的な学習の過程」という型を取り入れた.探究というと,まるで「総合」のみと誤解されがちであるが,この学習過程そのものは,あらゆる教科等における問題解決の学習場面でも活用可能なものである.もちろん現実社会における問題解決にも有効である.何か小さな問題でも課題が明確になったら,「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」の順に解決を試みる.これらの各ステップにおいて,必要に応じて「かくスキル」を発揮していく.また,児童は,こういった問題解決の順序が分かっているからこそ主体的になりやすく,活動の目的もハッキリしやすいので,協働的に行っても脱線しにくい.型に沿って,何度も繰り返し学習を行った.
「かくスキル」という短時間での繰り返しに加えて,「探究的な学習の過程」という少し長い時間での繰り返しも行う.型があるからこそ,繰り返しがしやすい.何事も,一度の学習だけで身につくことは,ほとんど無いと考えれば,こういった大小さまざまな繰り返しを可能とする型を作ることは,必須といえる.
藤の木小学校といえば,長きにわたり児童1人1台PCを活用した実践が有名である.この藤の木小学校が「かく活動」に着目して2年間にわたり取り組んだ.児童1人1台PCの時代だからこそ,「かく活動」が重要であるという先駆者のメッセージといえる.その際,PCは主に情報の収集やまとめ・表現の道具として使い,整理・分析には主にノートを使うことにするなどの使い分けも明確にしている.世間では,児童がICTを活用する事で魔法のような授業が実現できたり,たちまち児童に力がついたりすることを期待するようなメッセージをみることもある.しかし,1人1台PCの活用も,地道な取り組みに勝るものはないと改めて藤の木小学校の成果は訴えている.