葛飾区立東金町小学校

第49回特別研究指定校

研究課題

探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育
~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~

2024年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
本時では、友達と交流しながらタブレット端末での自分たちの動きを振り返り......

アドバイザーコメント

北澤 武 先生
2023年度から実施してきた葛飾区立東金町小学校の「探究のプロセスを蓄積し......

葛飾区立東金町小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 東京都 葛飾区立東金町小学校
アドバイザー 北澤 武 東京学芸大学 教授
研究テーマ 探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育
~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~
目的 本校では、令和2~4年の3年間の研究の成果としてICTの利活用が日常化したことや課題に対して主体的に取り組めるようになった。一方、自分で課題を見付け、計画的に学習する力は弱いと感じている。そこで、課題や学び方を自分で選択し、他者と共に学び続けることができる子を目指す。教科・領域等のねらいとSDGsのねらいがリンクする課題設定を追究し、探求のプロセスである「課題を自ら設定し、解決するために主体的に情報を集め、思考し、伝えようをする力を高める学びとは?」をリサーチクエッションとし、ICTを最大限に利活用した事例研究の成果をスタンダード化し、外部へ発信し普及させていく。
現状と課題 3年間の研究の成果で、ICTの利活用が日常化し、課題に対して主体的に取り組み、進んで他者に関わり、自分の考えを伝えようとする児童が学級の9割以上となった。しかし、一方で教科の「知識・技能」の定着に課題が見られたり、資料の分析力や理解したことを相手や社会に表現する力をさらに高めていくことが必要と考えている。
学校情報化の現状 学校全体で指導計画を作成し、全教員がICTを活用できるように計画的にICT研修を行っている。情報教育はカリキュラムマネジメントを行い、体系化している。情報化の規則順守をより点検していきたい。情報化推進については役割分担をしている。
取り組み内容 「学習→成長→加速→変革→持続」の枠組みである「アジャイル教育(Moreira,2018)」を導入する。自分で課題を設定し、それに基づいて学習計画を立てていき、日本が目指すICTの利活用と協働的な学びを介して知識・技能を習得し(情報収集)、創造力や問題解決力を高めるSTEAM教育(整理・分析)とをベストミックスした教育実践を評価、改善を繰り返していく。教員も児童もふり返りを行い、学習計画を調整する自己調整力を育てていく。そしてスタンダード化した授業デザインを全国の学校へ発信したい。
成果目標 1人1台端末の下、カリキュラムマネジメントしたSTEAM教育や系統的にプログラミング的思考を働かせる授業を、教科・領域等のねらいを明確にして行い、主体的・対話的に探究していく学びを積み重ね、深い学びのスタンダード化を図る。そして、ICTを利活用した日本型教育実践とSTEAM型教育実践をベストミックスさせるアジャイル教育の在り方を全国の先生方に発信していく。
助成金の使途 ドローン、アームロボット、S4A自動運転キット、コラボノートDX登録料、 Embot回転モーター、 日本教育工学協会全国大会参加費、成果物印刷代等
研究代表者 成田 香穂里
研究指定期間 2023年度~2024年度
学校HP https://school.katsushika.ed.jp/swas/index.php?id=higashikanamachi_e
公開研究会の予定 2020年度より連携している東京学芸大学と協力しながら、積極的に学会や研究会での実践報告や研究成果の発表を行い、成果普及を通して得られたフィードバックを本研究の改善に役立てていく。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

〇研究授業 2本

・5年 総合「世界の果てまでイッテ東金!」

社会科で調べた国の特徴を「どのようにしたら4年生に分かりやすく伝えられるか」を考えながらscratchを使用して観光案内を作りました。文字の量は画像の大きさにも気を付けて取り組みました。

・4年 音楽「沖縄の音階をもとにしてまとまりのある音楽をつくろう」

 体育学習発表会で踊る「エイサー」から沖縄音階について学習を進め、Song Makerを使用して作曲作りを行いました。友達と協力しながらまとまりのある音楽について考え、進めました。

〇フレームワークによる授業

・6年 国語「防災ポスターを作ろう」
・6年 総合「フィリピンの高校生と交流しよう」
・5年 総合「わたしたちと海~岩井臨海学校に向けて~」
・3年 図工「海で見つけた!ふしぎな魚」

アドバイザーの助言と助言への対応

<5年生総合>

  • ・自己調整力のつけさせ方を身に着けさせる
  • ・自分の課題を見つけさせ、次につなげさせる→教師は誰のためなのかを明確にする
  • ・途中発表をする→意欲を出させる

<4年生音楽>

  • ・個々に自分たちのペースで聴く。
  • ・目的を達成するためにソフトウェアを吟味すべき。
  • ・蓄積して残すことができることが一人一端末の良さ。
  • ・多様な音楽に触れることができる。
  • ・視覚を含めて音楽に触れることができていた。

本期間の裏話

  • ・音楽の授業は今年本校に着任した初任の教員が行った。授業を始める前は、アジャイル教育とは何かを考える以前に、授業ってどんな風にやるの?という疑問があり、そこから一緒に考えていった。教員同士で何度も授業案について検討し、模擬授業を行って研究授業を行った結果、授業に自信がなかった教員が、自信をもって堂々とできるようになり、授業実践や検討が楽しいと思ってくれたことが研究主任としては嬉しかった。

本期間の成果

  • ・研究授業を2本行ったことで、どのような授業展開をしていけば良いのか見通しが立った。
  • ・高学年から授業を行えたことで目指す児童像が明確になった。
  • ・学習ログをyoutube等で共有したので、教員がいつでもどこでも視聴でき、確認が可能になった。

今後の課題

  • ・高学年での実践を中学年、低学年、あおば学級に広め、学校全体に浸透させていく。
  • ・ルーブリックも視野に入れて取り組んでいく。

今後の計画

  • ・1学期の研究のまとめ
  • ・夏休み中 2学期の授業の打ち合わせ(国際交流、S4A等の機器)

気付き・学び

  • ・今までやっていた授業もアジャイルに当てはめていくことで子ども主体の授業になって進めていくことができる

成果目標

1学期末のアンケート結果を集計し、夏休み中に検討していく

アドバイザーコメント
北澤 武 先生
東京学芸大学
教授 北澤 武 先生

 2022年度まで一般の研究助成を受けて研究に臨んできた葛飾区立東金町小学校では、2023年度から「探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~」の研究テーマで、特別研究指定校として取り組んでいます. 2023年度4月から7月では、児童を取り巻く環境と児童の実態を分析したり、教員に求められるICT活用指導力について調査したりしながら、エビデンスに基づく研究を実践してきました.

 児童の実態として、「児童自らが問いに対する課題を設定、計画し、計画を素早く(=アジャイル)修正しながら問題解決する力を身に付けること」が課題として挙げられました.そして、特に高学年では自身の意見や作品を皆に共有することを避けたがる「公的自己意識」が芽生え始めている実態が明らかになりました.これらを解決するために、授業におけるワークシートと1人1台端末の在り方について検討がなされました.ワークシートは全体の構成が理解しやすいというアナログの良さを活かし、計画やプログラムのフローチャートなどはワークシートに記述する方針になりました.そして、毎時間の振り返りの場面で、ワークシートに記載された計画を素早く修正し、実行する「アジャイル」の学習を実現する試みが行われました.

 一方、1人1台端末の活用はその利点を活かし、プログラミングの作成などアプリケーションの利活用、インターネット検索、他者との共有の位置づけで活用する方針となりました.他者との共有については児童の実態を鑑みて、自身の作品を共有したい児童のみ共有する方針にしました.そして、他者の作品を確認したい児童のみ自由に確認できるようにしました.その結果、例えばプログラミングが得意で自身の作品を見て欲しいと思った児童と、他者の作品を参考にしたいと思った児童の間で、有益な共有がなされました.まさに、エキスパート(専門家)の知識がインターネットを介して初学者の知識として素早く構築される「アジャイル」の学びが実現された場面でした.

 次に教員の実態として、東金町小学校に着任した1年目の教員と2年目以降の教員で、ICT活用指導力に差が生じていたことが明らかになり、この差を如何に縮めるかが課題となりました.差が生じている原因として、着任1年目の教員は「ICT活用」「STEAM教育」「プログラミング教育」などの概念や位置づけが理解できていないことや、学習者中心の授業がイメージしにくいこと、1人1台端末にインストールされているアプリの操作方法が分からないことが挙げられました.そこでミニ研修として、放課後にICTの操作に関する講習会が定期的に開催されました.また、教育用語の概念および学習者中心の授業について理解を向上させるために、具体的な実践事例を交えた専門家による講演を定期的に開催しました.また、授業づくりの際、これまでの学習指導案の形式を変え、授業の流れがイメージ化できる「本時フレームワーク」を開発しました.このフレームワークは「①課題設定」「②学習計画」「③情報収集」「④整理・分析」「⑤まとめ」「⑥振り返り」のサイクルを保ちながら、各々の先生が実践する授業に合わせて加筆修正されています.これまで、STEAM教育や海外との異文化理解教育、各教科等の実践でこのフレームワークが活用されています.

 1学期初旬と1学期末に、児童および教員を対象に質問紙調査を行いました.その結果、児童の「自分で課題を決めることができますか」「自分で課題を解決する方法を決めることができますか」などの項目について、有意に向上が認められました.また、教員を対象に行ったICT活用指導力に関する質問紙調査では、1年目の教員の認識が高まったことが明らかになりました.

 夏休み中には2学期に実施する授業が計画され、更に研修が続けられています.今後の授業実践が楽しみです.

本期間(8月~12月)の取り組み内容

〇研究授業 3本

・2年 生活科「乳についてしらべよう」

 1年生に向けて、動物の乳に関する授業を行いました。
近隣の図書館や小学校からも動物にまつわる本を借りてクイズを作り、「どんなクイズにすれば1年生も楽しめるかな。」と友達と話し合いながら、よりよいクイズにしていきました。

・あおば高学年 総合「未来のためにできること」

 あおば学級では、SDGsの課題から、「学校の給食の食べ残しを減らそう。」と考え、苦手な食材を調査しました。また、克服するためのレシピをスライドにまとめて発表し、実際に給食のメニューに出してもらいました。

・3年 総合「安心安全な車を作ろう」

 マイクロビットを使い、未来に向けて安全な車を作りました。光や音を使って危険を知らせる、暗いところではライトが自動で付く、人や物をよける等、色々なミッションのプログラムを友達と協力して立てては、動かすの繰り返し、試行錯誤しながら取り組みました。

〇1人1授業

・4年 総合「心のバリアフリー」

 学習計画をクラスみんなで立てて学習を進めていきました。毎時間、自分が何をするのか確認しながら取り組みます。また、ゴールを意識できるようにルーブリックも示しています。

・3年 体育「跳び箱運動」

 タブレット端末を利用して、自分が跳び箱を跳んでいる様子を友達に撮影してもらい、自分で確認しながら次の課題を決めて挑戦します。自分でどこが出来ていて、どこが難しかったのか振り返ることができます。

・6年 家庭科「朝食から健康な1日を」

 自分の朝食を調べたデータをもとに、自分にとって必要な朝食を考えました。児童はタブレットから様々な情報をつかむことができます。データが多すぎると考えずらい部分もあるので、今後の課題として取り組んでいます。

アドバイザーの助言と助言への対応

<2年生生活科>

  • ・生活科の活動である、見つける・比べる・たとえる・見通すの展開ができている。
  • ・生活科の配慮事項として、児童の特質に応じて、生活科の内容を取り扱うが大切。
  • ・どこでルーブリックを見せれば、児童にとって効果が出るか今後、検討していく必要がある。
  • ・情報管理注意(著作権など)

<あおば高学年>

  • ・これほど、ルーブリックの指標を見ながら学習する特別支援教室はない。目標設定を意識して学習していくことは素晴らしい。
  • ・当初、ルーブリックが1展開であったが、より個別の目標達成ができるよう、をAタイプ、Bタイプ、Cタイプの3つ用意して児童がその日どのルーブリックで頑張るのか自己調整できるようにしたところが良かった。

<3年生>

  • ・ルーブリックの活用がよくできていた
  • ・プログラミングにつまずいた児童が他の班のヒントカードを見て素早く良いところを取り入れ改善していた。

本期間の裏話

  • ・2年生の生活科では、「理科読」と「地域人材の活用」に主眼を置いた指導案をもとに「アジャイル」との融合を目指し、研究を重ねた。授業では友だちと話し合い、自分のクイズよりよくしていく活動を取り入れることでそれらをミックスした授業にすることができた。
  • ・あおば高学年の総合では、個に合わせたルーブリックを活用することで、一人一人が達成感を感じることができる授業作りができた。また、最終的に栄養士の先生に紹介し、給食のメニューに取り入れてもらえることで、より自分事として学ぶことができた。

本期間の成果

  • ・学習ログをyoutube等で共有したので、教員がいつでもどこでも視聴でき、確認が可能になった。また、デジタル教材を教員同士が共有することで、教材研究をより協力しながらできるようになった。
  • ・ルーブリックを教員側が意識して行うことで、子どものゴールのイメージが持てた。

今後の課題

  • ・高学年での実践を中学年、低学年、あおば学級に広め、学校全体に浸透させていく。
  • ・学習計画やルーブリックをどの授業でも取り組めるようにしていく。

今後の計画

  • ・今年度の研究のまとめ
  • ・来年度の研究に向けての計画

気付き・学び

  • ・研究授業だけではなく、どの教科でもアジャイルして授業展開ができるようになってきた。
  • ・安心して自由に発言、発想できる授業展開にしていくことによって、子供達がどんどん主体的に問題を解決していく授業作りができるようになってきた。

成果目標

2学期末のアンケート結果を集計し、検討していく。

アドバイザーコメント
北澤 武 先生
東京学芸大学
教授 北澤 武 先生

 2023年度から「探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~」の研究テーマで、特別研究指定校として取り組んでいる東金町小学校の活動報告についてコメントします. 2023年9月から12月は、1学期の授業実践の反省と夏休みの教員研修での学びを活かした授業が,数多く実施されました.

 第一の取り組みとして,単元の冒頭に教員が課題設定と取り組み時間を示した後,児童は自身の「学習計画」を立てる取り組みを行いました.そして,毎時間の振り返りで,自身の学習計画を修正し,次の実践に活かしていくことを「アジャイル」として行いました.これは,1学期に開発した「本時フレームワーク」の「①課題設定」「②学習計画」「③情報収集」の部分に相当します.

 児童自身で「学習計画」を立てる方法は,発達段階に応じて様々な工夫が見られました.例えば,2年生の生活科「乳についてしらべよう」の授業では,動物の乳に関する情報収集を,近隣の図書館や小学校の図書室,インターネットなど,どのメディアを活用するか自分で考え,実行することを支援しました.4年生の総合的な学習の時間「心のバリアフリー」では,情報収集のメディアの選択に加えて,どのように共有,表現,発表についても取り扱われていました.6年生の家庭科「朝食から健康な1日を」では,自分の朝食を調べたデータをもとに、自分にとって必要な朝食を考案し,計画的に摂取する方法を計画しました.特別支援の高学年の子供達は,「学校の給食の食べ残しを減らそう」という課題設定のもと,児童が苦手な食材をどのように調査,分析,まとめていくかを自分達で計画し,実行しました.

 質問紙調査の結果,「自分で課題を決めることができますか」「自分で課題を解決する方法を決めることができますか」「学んだことを振り返り,次の課題を決めることができますか」の児童の認識が実践後に高まり,自己調整学習の支援につなげることができました.

 第二の取り組みとして,「ルーブリック評価」を取り入れました.これは,1学期に開発した「本時フレームワーク」の「④整理・分析」「⑤まとめ」「⑥振り返り」に相当します.

 例えば,特別支援学級の児童に,「写真やイラストを使うことで言いたいことがわかる」をS評価,「関係する写真を使っている」をA評価,「関係ない写真を使っている」をB評価,「関係ない写真をたくさんつかっている」をC評価としたルーブリック評価を提示したところ,S評価を得るために集めた情報を「整理・分析」し,言いたいことがわかるような資料にしようとする児童の姿が見られるようになりました.同様に「友達と伝え合う」というルーブリック評価を導入することで,主体的に自分の考えを伝え合ったり,相談しに言ったりする児童の姿が見られるようになりました.このように,ルーブリック評価は「主体的な学び」と「協働的な学び」を支援するツールとなることに,教員も児童も気づいたことが,本研究の成果の一つと言えます.

 第三の取り組みとして,授業実践の記録を録画し,ネットワークを介して教員がいつでも確認したり,コメントしたりできる環境を構築しました.これにより,自分の授業の振り返りを行ったり,自身の授業実践の前に他の教員の実践を参考にしたりする教員が増え,特に東金町小学校に勤務して1年目の教員のICT活用指導力の向上に繋がりました.このような環境の構築は,ICT活用指導力を向上させる校内研修の在り方として,他校の参考になる事例です.

 3学期と次年度に向けた,さらなる授業実践の蓄積と研究成果が期待されます.

本期間(1月~3月)の取り組み内容

〇1・2学期の授業を終えて

「アジャイル教育の開発と評価~日本型教育実践とSTEAM教育のベストミックス~」を研究課題とし、教職員一丸となって日々の授業改善に取り組み、研究授業5本に取り組みました。また、研究推進委員や管理職を中心に先行的に研究を行っている学校に行き、授業実践の仕方や学習への考え方を学んできました。その中で私たちがたどり着いたのは、アジャイル学習は方法学習であったということです。

 この1年間、児童は学習課題を立てることや、それに沿って1時間を振り返ること、学習計画を調整していくこと、このサイクルに慣れていきました。続けていくと、自分から課題を立てられる児童が高学年を中心に増えてきました。また、目標設定(ルーブリック)を明確にし、児童に共有することで、児童自ら何をもう少し頑張ればよいのかが分かるようになり、活動に主体的に取り組むことができました。教員もルーブリックを考えて授業設計をすることでどんなことを児童に身に付けさせたいかを再度考えることで、学習過程も明確になり、教員同士の話し合いも活発になりました。

 そこで、アジャイル学習を教科の方法論として取り組みながら、探究学習を行っていくことにしました。総合の時間の中で「教科学習からより深めたいもの」を子供と相談しながら共有し、課題を決め自分で計画を立てて取り組んでいく「教科に沿った探究学習」に挑戦しました。初めての学習に教員の方が手探りで行っていきましたが児童は自分の知りたいこと、好きなことに夢中で取り組む様子が見られました。また教員も得意分野をそれぞれ活かすことができました。

〇研究授業 1本 

・5年 探究学習「東金explorer」

 2月8日(木)に6時間計画の中の4時間目を行いました。

まずは学年全体で集まり、学習計画の進み具合やルーブリックの確認を行います。時間を意識させ、今日の課題を確認しました。

 その後、自分の探究したい課題に向けて活動場所を移動します。絵の具を使用したい児童は図工室、理科の実験を行う児童は理科室、ボールを使用したい児童は体育館など各場所で活動していきます。

自分の活動に合った場所でそれぞれ課題解決に向けて真剣に取り組む様子が見られました。困ったことは、友達は見に来ている先生に相談します。先生方もここでは相談相手です。教えるのではなく、一緒に課題解決に向けて考えていきます。それぞれの得意分野にそって教員を配置することにより、持ち味も行かせて取り組めました。

 最後はまた全体で集まり、今日のルーブリックを記入していきます。

 このような形で児童の成果物を教員同士で共有します。次の時間までに教員もコメントし、アドバイス等を行います。

先生方にも授業を見た感想を記入していただきました。初めての授業形態だったため、疑問も含めて共有していきました。探究学習に期待している教員がほとんどでした。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・東金explorerの取り組みはとても良かった。
  • ・各学年のアンケートを見ても児童の意識が高まっていることが読み取れる。4年生から他者の目を気にする傾向があるため、ヒントの手立てに工夫が必要である。そのために1学期実践を行ったような名前を公開せずにヒントカードを作ることは手立てとして有効である。

本期間の裏話

  • ・児童が生き生きと学習に取り組む姿が見られた。普段の学習では自信がない児童も好きな学習には積極的に取り組むことができた。
  • ・教員も各得意分野を生かすことができたため、楽しそうな様子が見られた。教員の自信にも繋がったと感じる。
  • ・保護者の皆様にも入っていただき、学習を進めることができた。保護者も関わりながら学習できていたので、児童も嬉しそうだった。

本期間の成果

  • ・1・2学期に行ったアジャイル学習が方法論であったことを教職員が理解することができた。そして探究学習を進めることができた。

今後の課題

  • ・探究的学習を計画的に進めていく。
  • ・学習計画やルーブリックを教員同士で確認しながら進めていく時間や方法を確立していく。

今後の計画

  • ・来年度の研究に向けての計画

気付き・学び

  • ・他校の実践を見ることで学びが深まった。意見交換をする場はとても大事だと感じた。

成果目標

学期末のアンケート結果を集計し、来年度に向けて検討していく。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

アジャイル教育の開発と評価

~日本型教育実践とSTEAM教育のベストミックス~アジャイル

 今年度は新しい先生方7名をむかえてのスタートでした。昨年と合わせてこの2年間で17名の先生が新しくなったことになります。その中で、アジャイルやらSTEAMという耳慣れない言葉の中、34名の先生方がお互いに協力して研究を進めてきました。「学習の主体を児童にする」ことへの挑戦の方法として、アジャイル教育に取り組んだ1年でした。

 皆、しゃべるのが大好き、教えるのが大好きで教員になったのに、教えない、しゃべらないことを要求する授業の形態に最初は戸惑いながらも手探りで授業を進めていきました。ファシリテーターという言葉を聞いたことはあっても、経験したことがなかった先生方でしたが、目の前の児童が黙々と学習に取り組む姿を目の当たりにし、やった・できたと喜ぶ笑顔に背中を押されて、自分ながら理解したアジャイル型の授業に取り組んだ1年だったといえます。

 その間、関西ICT展やJAET青森、瀬戸ソラン小学校の研究会には2回も行かせていただきとても楽しく刺激になりました。GIGAスクール構想の推進とともに、タブレット端末を使った授業の推進をしながら、教員が当たり前にやってきた教科指導がなかなかベストミックスできず悩んでいたのですが、これらの研究会に参加させていただき、基礎基本があってのタブレット端末の学習、そして探究型の学習なのだということに気づかされ、アジャイル教育は目的ではなく、学び方のツールであることに気付いた今年度の研究でした。これは、研究していた私たちにとっても驚きであると同時に、自己調整しながらの学習への児童たちの食いつきの良さ、学習の楽しさにも改めて気付かされました。

 来年度、パナソニック教育財団特別研究指定校として2年目を迎えるにあたり、瀬戸ソラン小学校さんの言葉を使わせていただくと、帆脳の場合、まずは基礎基本の力を学ぶ、「習得」を大切にすること、これは教師主導型の学習でもよく、質より量、がっつり学習をさせる時間。そして、次は「活用」、学んだことを使って課題解決型の学習をする学習。算数、理科、社会科で主に取り組んでいます。そして「プロジェクト学習」本校の場合は下学年に発表することを目的とし、ICTの力を使いながら、自分で課題を立て、児童と教員で一緒に学習計画、ルーブリックを作り、学んでいく学習。本校の特徴的な学習です。1年生は幼保小連携の一環で、幼稚園、保育園の子たちに学校紹介を作成し、演技とともに見せる。2年生は1年生に対してタブレット端末の学習ルールやタブレット端末を学習で使う基本的な方法を教える。3年生は2年生にマイクロビットを使った信号機の学習を発表し、マイクロビットについて教える。4年生は、都道府県の学習をし、3年生にスクラッチで都道府県の紹介をする「都道府県大使」、5年生は世界について学ぶので、スクラッチで世界の紹介を作り4年生に紹介する「世界の果てまでイッテ東金」、6年生は地域、保護者からアンケートを取り、金町の良さをデータからまとめ、5年生に伝えるデータサイエンス。この、学習をもとに次年度は探究学習「東金explorer」に挑戦し、本校のアジャイル教育の成果を探求型学習として発表したいと考えています。

アドバイザーコメント
北澤 武 先生
東京学芸大学
教授 北澤 武 先生

 2023年度から「探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~」の研究テーマで、特別研究指定校として取り組んでいる東金町小学校の活動報告についてコメントします.

 2024年1月から3月は、1、2学期の取り組みを通じて、より児童一人ひとりが学びたいと思う学習内容を取り入れた授業デザインを考案し、実践してきました.その先導的な授業実践が、5年生の探究学習「東金explorer」です.総合的な学習の時間の位置づけとして、「教科学習からより深めたいもの」を児童が選択し、自身で目標と計画を立て、実践していく授業スタイルでした.公立小学校における、教科を軸にした個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させた探究活動の在り方に示唆を与える授業実践でした.児童が記録したルーブリックや振り返りは、クラウド上のスプレッドシートに共有されました.どの教員も校内のどこからでも児童の学びの成果を確認したり、児童に即時フィードバックしたりできるようになりました.

 また、3学期は教員一人ひとりが本研究の意義を理解しながら授業実践に取り組んでいました.そのような教員の意識向上が認められた背景として、第一に、研究推進の教員が他校の実践事例等の情報収集の機会を積極的に設け、校内研修で周知していたことが挙げられます.第二に、子供達がICT端末を活用することで情報活用能力を素早く習得し、学びに活かすことができることを教員が目の当たりにしたことが挙げられます.具体的には、2年生の児童が、1年生にICT端末の使い方を教える授業をデザインし、2年生の児童に「どのような内容を教えたらよいか」、「どのように教えたらよいか」を計画させ、実践しました.その結果、低学年であっても主体的に教え合いながら情報活用能力を高めることができることを教員は学ぶことができました.

 1年間の研究を経て、子供達の情報活用能力とICT端末を活用する利点を見出しながら、教科を軸にした探究的な学びにICT端末を活用した授業を実践することが定着してきました.その結果、特に本年度東金町小学校に着任された教員のICT活用指導力が向上しました.そして、児童が学習計画を立て、ルーブリックによる目標設定に即しながら、毎時間の学習を振り返り、次の学習を調整する学習者中心の授業がどの教員も確実に実施できるようになりました.

 年度末に実施した瀬戸SOLAN小学校との研究成果の中間報告会では、本研究について、将来的に「キャリア教育」に繋げることや、アジャイル教育について、単元のサイクルと1コマの授業時間内のサイクルで、どのような違いがあるか明確にすることが課題として挙げられました.また、次年度の実践に向けて、教職員の異動に伴う体制づくりや、新たに着任した教員に対するICT活用指導力の向上と学習者中心の授業展開をどのように支援していくかもまた課題となっています.本研究に取り組んだ1年目の実践と成果を振り返りながら、更に飛躍した2年目になることを期待しています.

本期間(4月~7月)の取り組み内容

〇研究授業 6本

・5年 活用 体育「体つくり運動」

 本時では、友達と交流しながらタブレット端末での自分たちの動きを振り返り、「なりたい自分」にいかに近付けるかという学習に挑戦しました。毎時間の学習の振り返りで課題が達成できたかを確認し、学習計画を見直すことで、自己調整できる力を養いました。

・あおば学級中学年 プロジェクト 総合的な学習の時間「アンケートをとろう」

 本時では、生活単元学習「おみせやさんをひらこう」の一連の活動の一つとして、総合的な学習の時間で情報活用能力の育成を目指し、Google Formsを使い、アンケートを作成する活動を行いました。 他者意識をもつことで、その後の活動が深まりました。また、ルーブリックを活用することでそれぞれの学習の課題が明確化しました。

ルーブリックを黒板に貼りだれがどこまで到達したのかを視覚化した。

交流の場をつくり友達同士でアドバイスし合う様子が見られた。

・3年 プロジェクト 総合的な学習の時間「葛飾区じまん」

 1、2年生に向けて、「葛飾区のじまん」を紹介しました。また、分かりやすく伝えるために必要な情報を整理させたり、見出しや図を活用したりする手立てとして、ルーブリックを活用しました。

ラーニングマウンテンを用い、到達点を視覚化した。

・3年 活用「海のそこのひみつ」

 ビジュアルプログラミング教材のViscuitを使って、「海のそこのひみつ」を表す活動に取り組みました。どのように形や色、動きを生かして表すか考えたり、共有機能を使って他者の作品やプログラムを見たりして、新しい表し方に出会いながら制作を進めました。

アドバイザーの助言と助言への対応

<5年生 体育>

  • ・抽象的な表現から具体的な表現になることを目指すために、教員が表現を引き出すことが大事。
    →構造化して蓄積することが必要。
  • ・認知学習をICTでいかに引き出すかが大事になってくる。
    音楽をかけるデメリット→声が通りにくくなる。
          メリット→曲調で行う動きがわかる。

<あおば中学年 総合的な学習の時間>

  • ・ルーブリックを使うことで、児童は評価を見ながら学習をすることができた。また、あおば学級ではルーブリックに名前の磁石を移動させながら授業を行うことで、評価が上がることを楽しみながら活動する児童が多くいた。

<3年生 総合的な学習の時間 金町じまん>

  • ・ラーニングマウンテンに今まで学習したコツが詰まっている。

<3年生 図工>

  • ・アイデアシートにアイデアと学習計画をかいてから学習を進めたことで、児童が見通しをもつことができ、確認及び修正しながら活動に取り組んでいた。
  • ・共有機能を活用することで、制作途中でも他者の作品やプログラムを見ることができ、新しい表し方の工夫等に気付いたり出会ったり、ヒントにしながら活動を進められた。

本期間の裏話

  • ・探究学習を行っていく上で、学習ログやルーブリック作成の不慣れさがあった。また、“自分の好きを追求していく探究”ということでマインドマップを書くことからはじめたところ、児童の興味関心のある事柄を引き出すことができた。
  • ・5月28日 東京学芸大学教職大学院とのコラボレーションを実施した。本校が日常的に行っているタブレット端末を使った学習を見学していただいた。また、6年生の国語科では、生成AIを使った国語の授業を実践した。
  • ・7月12日 オープンデイとして、学生向け授業公開を行った。教員のなり手が少なくなってきた昨今、少しでも教職の魅力を伝えていければと、企画し実施した。

本期間の成果

  • ・ルーブリックを使用することで、それぞれの児童が達成すべきレベルが明確になり、改善点が分かりやすくなった。また、ふりかえり(フィードバック)も自分で行えるようになり、反省点を生かして次の課題に意欲的に取り組める児童も増えた。
  • ・同学年だけではなく、他学年への発表を多く行っていったため、学年越えた交流、他者意識『いつでも どこでも だれとでも』意識が向上した。
  • ・集中する「もくもくタイム」話し合う「もしもしタイム」だけではなく、話し合いも収集して作業も行える「もしもくタイム」を新たに作ることで、児童がより学びの形態を選べるようになった。
  • ・生成AIを活用した国語の授業を行った。
  • ・中、高学年学級での自己調整学習の取り組み

今後の課題

  • ・ルーブリックのデータ管理の方法が学年、クラスの実態によって違う。また、ルーブリック作成にあたり時間を要してしまうので、慣れていく必要がある。
  • ・児童と教師の評価の差が発生してしまうので、何のために評価するのか、子供がどうしてその評価をしたか、子供の基準を明確に見取る必要がある。
  • ・見栄えのするスライドが作成できるようになったが、児童の情報収集力に弱さが見られたので、基礎的学習の段階で、資料の集め方や情報収集の方法などしっかりと行っていく必要があった。→4年生研究授業では、インターネットで調べてすぐに終わらすのではなく、資料集や教科書からの読み取りをしっかりと行った。
  • ・全学年での自由進度学習と自己調整学習の取り組み。

今後の計画

  • ・1学期の研究のまとめ
  • ・夏休み中 2学期の授業の打ち合わせ 研究発表に向けての準備

気付き・学び

  • ・「習得→活用→プロジェクト→探求」の授業がどの段階かを判断することで、系統性を立てて授業を行うことができるようになった。

成果目標

  • ・探究活動を1学期、教職員で取り組んだ。その結果をアンケートにとり分析していく。
アドバイザーコメント
北澤 武 先生
東京学芸大学
教授 北澤 武 先生

 2023年度から実施してきた葛飾区立東金町小学校の「探究のプロセスを蓄積し、自発的に未来を切り開く思考力・表現力を高める東金アジャイル教育~日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現~」の研究テーマは、2年目を迎えました.

 2024年4月から7月について、まず、異動等で新たに着任した教員が葛飾区のICT環境に素早く適応できるように、校内でOJTなどの研修が行われました.さらに、2023年度から東金町小学校に勤務している教員を中心に計6回の研究授業が実施されました.これにより、2024年度から東金町小学校に着任した教員がICTを活用する授業をどの様に実践すればよいか、児童の実態とともに理解することができました.

 研究授業では、教科等のICT活用のみならず、探究型の学習や自由進度学習を考慮した提案性のある授業が展開されました.具体的には、どの教科等においても個々に学習課題を設定し、課題を解決するためにICT端末を道具として活用しながら学習し、振り返る活動を行ってきました.さらに、児童1人ひとりの評価や見取りを行うために、ルーブリック評価を導入し、めあてから振り返りに至るまで、本時の評価項目を児童に意識化させる取り組みがなされました.特別支援のあおば学級のルーブリックは、全体で統一する項目(特に協働的な学びに関する項目)と、当該児童の実態に合わせた項目に分け、児童によって評価項目の数を増やしたり減らしたりする取り組みがなされました.その結果、児童全員が毎時間、友達と対話するなど、協働的な学びが展開される一方で、個々のレベルに応じて知識・技能を高めることができるようになりました.

 上記のような、授業展開が東金町小学校に定着してきた背景として、「習得→活用→探究」のプロセスの中に「プロジェクト」を導入し、「習得→活用→”プロジェクト”→探究」のサイクルを校内で掲げたことが挙げられます.教科等の中で実施されている「習得」「活用」では、「課題設定→学習計画→情報収集→整理・分析→まとめ(振り返り)」のサイクルを毎時間の授業で定着させています.特に、課題設定や学習計画は、毎時間の振り返りの中で、児童1人ひとりが素早く(アジャイル)修正する姿が見られるようになりました.「プロジェクト」は、教科等の学習内容を発展させ、「探究」に繋げるテーマを児童自身が設定する試みでした.2024年度は、マインドマップを活用しながらテーマを広げたり深めたりしながら決定しました.そして、7月にはテーマに関する報告会として、小学生のみならず、大学生を目の前にしながら自身の研究について発表したり質疑応答したりする試みをしました.まさに、「日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学び」の提案がなされました.

 今後の課題として、ルーブリックの作成時間を簡略化することが挙げられますが、これに生成AIを活用することが期待されます.加えて、教師が子供を見取ったり、評価したりする観点を明確にすることが課題として挙げられますが、教育データをどの様に活用しながら評価を行い、観点を明確にしていくかについて、議論がなされることを期待しています.

 今後、公立学校で探究型学習を展開する実践例がより多く蓄積され、2024年10月22日(火)に実施される研究会で発表がなされることを楽しみにしています.