実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第39回特別研究指定校(活動期間:平成25~26年)

福岡教育大学附属久留米小学校/平成25年度8~12月

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実践経過
実践経過

成果と課題
成果と課題

成果と課題
裏話

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Ⅰ〉各教科等における情報活用能力を育てる指導方法の構築と実践。

  • 各教科の学習において,『問題の把握』『学習活動の評価』において,ICTの効果的な活用など教科の特質に応じた指導の工夫を行うことで,各教科の内容を確かに捉えさせることができるとともに,情報活用能力(情報活用の実践力)を育むことができることが明らかになってきました。
    ※平成26年2月5日(水),6日(木)の本校の研究発表会で公開授業,研究協議会で提案させていただきます。
  • 各教科の授業実践を通して,各教科の特質に応じた目指す子どもの姿を明らかにするとともに,ICTの具体的な活用場面や方法が増え,日常的に用いることができるようになってきました。

Ⅱ〉情報機器(教師の活用,児童の活用)の一層の充実。

  • 各教室にタブレットPCを導入し,子どもが休み時間に自由に使用することができたり,実物投影機や電子黒板(1学期に導入)だけでなく授業において教師が活用することができるようにしたりすることができました。
  • 児童用タブレットPC40台(1学期に加えて30台追加)で学び合い学習をすることができるようなネットワークやサーバーの物的な環境が整いつつあります。 
    ※大学のサポートのお陰です。

Ⅲ〉教育課程における情報科との関連を明らかにしながら,各教科等において育てたい資質や能力及び態度の明確化。

  • 新設教科情報科の学習内容を明らかになってきました。 
    ※文部科学省の研究開発学校。

実践経過

 

8月

(1)情報科と各教科等との関連について明らかにする研修会

福岡教育大学附属久留米小学校活動報告イメージ

  • 新設教科である情報科と効果的に関連させることができるように,各教科等の学習の在り方を検討しました(右の資料)。担当している教科等と情報科との関連を,「情報科にいかすような各教科等の内容」と「各教科等に活用するための情報科の内容」といった2つの視点から明らかにしていきました。研修会の場では,情報科にいかすことができるような内容として,言葉,画像(静止画・動画→絵や写真など),数や式や表,音声といった情報の種類があることが明らかになりました。また,各教科の今後の在り方として,「問題をどのように持たせるのか。」や「問題を解決した後に,自分の学びをどのように実感させるのか。」,つまり【A:問題の持たせ方の工夫】や【B:学習活動の評価の在り方の工夫】を各教科等の学習にいかしていくことを確認することができました。
  • 情報科との関連を図ることができるような各教科等の授業づくりを研修会で検討しました。上記にあるように,【A:問題の持たせ方の工夫】や【B:学習活動の評価の在り方の工夫】の2点から各教科の特質に応じた手立てを位置付けた授業づくりを構想しました。夏季休業中に構想し,教員間で検討して2学期に入って実践することができるようにしました。教員間で検討し合うことで,自分が構想した教科での手立てと他教科での手立てを比較して考えることができ,共通した手立てや違った教科独自の位置付け方を知ることができました。2学期の実践において,検証する手立てを明らかにするとともに,授業に向けて付加・修正することができました。
 

(2)ICT機器の充実と機器に関する研修会

  • タブレットPC30台を購入し, 総数40台になりました。1クラス40名の学級において,新学期(2学期)より1人1台ずつ使用することができるようになりました。
  • 電子黒板やタブレットPC,パソコンルームにインストールしてあるソフト(ジャストスマイル)の操作方法や授業における活用方法を学ぶ研修会を開催しました。研修会には専門家(ジャストシステム)を招聘して,操作方法の説明を受けたり,実際に操作方法を試したりするとともに,2学期の実践にいかすことができるようにしました。

9月

(1)各部の研究構想に基づく検証授業

  • 夏季休業中に検討した各教科部の構想をもとに,実証授業を実施しました。ICT機器を用いながら子どもの動きや考えを画像や動画で撮影し,それをもとに話し合うことで思考を可視化できるようにしました。教科等の特質に応じた活用に心掛け,ICTを用いることだけが中心にならないように心掛けて実施しました。ICTを使って授業しやすい教科からはじめて効果を確認しながら授業を進めました。表現教科である,図画工作科や体育科まず使い始めました。図画工作科では,絵や工作などの作品を作り始める前の写真と,本時に表現した実際の作品を学習の終末段階に比較しました。鑑賞する活動にICTを活用することで,実際の写真(タブレット)と実際の作品を直接指し示しながら,表現の高まりを実感させることができました。
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    【体育:動きを撮影して,動きを確認する子ども】
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    【理科:教材の提示】 【図工:作品の変化の比較】
    また,体育科では,ゲーム領域における自分のチームの動きを動画で撮影して,「作戦どおりに1人1人が動くことができているのか。」についてチームで検討することができていました。事前の作戦は,学習プリントやホワイトボードに表した上で,実際のゲームの場面をタブレットで撮影しました。その後,撮影した動画をチームで見ることで,作戦どおりに動くことができたこととうまく動くことができなかったことに気付くことができたのです。そこで,うまくいかなかった動きについては,練習したり新たな作戦を立てたりして,次のゲームに向けて動きを高めていったのです。
  • 教師が実物を提示する場面が増えてきました。写真にもあるように,理科の学習においては,提示実験をする際に効果的に用いることができました。特に,実験の見せたい部分を焦点化させるために実験の様子をズームさせて見せることで,子どもにとって実験するポイントや観察する視点を明確にさせることができました。
 

(2)検証授業にもとづく授業整理会

  • 検証授業する際に授業者は,分析記録用紙を作成します。参観者はその記録用紙もとに,ICT機器などの手立てが有効であったかどうか検討します。授業を受けているどの子どもにとって理解が深まるような授業にするためにも,授業者の主観だけでなく,多くの参観者からの見方で手立ての有効性を図っていく必要があると考えたのです。

10月

(1)ICT機器を活用するための環境整備

  • タブレットPC40台がネットに接続することができる環境を構築していきました。ルーターの設置場所を検討したり,タブレットの保管場所を検討したりして,子どもが使用しやすい場所やネットへの接続の状況を確認していきました。本校では,大学の附属小学校ということもあり,大学の情報教育担当の方に協力していていただき環境整備を推進していきました。
  • 教師のPCに子どものPCが送受信できるように,ネットワークの構築も行いました。授業支援ソフトを活用して,子どものタブレットPCで作成した画像を教師のノートPCで集約して閲覧することができるように,ソフトのインストールやタブレットPC・ノートPCの設定 したり,互いの接続が容易にできるように調整したりしていきました。特に,40台のタブレットPCを一台の教師用ノートPCで管理するだけでなく,20台のタブレットPCの2つのグループに分けてそれぞれを別々の教師用PCで管理できるようにしました。そうすることで,一度に2つの学級で授業支援ソフトを活用した授業が実施できるようになりました。

(2)サーバーの再構築

  • これまで教師のデータ管理で用いていたサーバーを,子どもの作成したデータを一括管理することができるようにサーバーを再構築しました。教師の作業の効率化が図られるとともに子どもが作成した様々なデータを管理することができるようになりました。
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【タブレットを使って自分の考えをつくる子ども】
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【タブレットもとに考えを出し合う子ども】
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【子どもの考えノートをもとに
学習をまとめる様子】

11月

(1)タブレット用いた学び合い学習の実践の積み重ね

  • 算数科の授業,特に図形の学習においてタブレットに自分の考えを表して,互いの考えを比較したり,説明し合ったり する学習を行っていきました。問題に対する自分の考えをノートに記入して自分の考えを明確にしてから,自分の考えを発表するためにタブレットに表現して説明し合う活動を仕組みました。学び合いの教師支援ソフトを用いることで,学級40名の考えが一斉に大きな画面に提示することができました。そうすることで,自分の考えと同じ考えや違う考えを比較しながら画面を見ることができました。その上,代表児の画面を選択して大きな画面に映し出して,タブレットにの図形に書き込んだ線や式を指し示したりタッチペンのマーカー(電子黒板の機能)で囲んだり書き加えたりして説明することができました。つまり,自分や友達の数学的な思考を可視化することで,図形の構成や測定への理解を深めることに効果的でした。
 

(2)「情報活用能力」を育む各教科等の実践の評価の計画作成

  • 情報活用能力の中で,小学校段階で重点的に育てる能力としてA情報活用の実践力があがっています。 この実践力をさらに3つの能力で規定してあります。それは,①課題や目的に応じた情報手段の適切な活用,②必要な情報の主体的な収集・判断・表現・処理・創造,③受け手の状況などを踏まえた発信・伝達,の3つです。これら3つの能力を,次の3つの場面で育てることとして考えました。それは,①課題解決活動において,②自分の考えを構築する場面,③交流して新たな考えを構築する場面の3つです。この3つ場面ごとに,下の表にあるように育てたい学力を明らかにしました。これを評価の観点として,今後3学期に向けて,評価計画を作成することができました。

福岡教育大学附属久留米小学校の「情報活用能力」を育む各教科等の実践の評価の計画

12月

(1)研究発表会(平成26年2月5日,6日)に向けて,授業づくり・研究構想・研究紀要の作成

  • これまでの実践を振り返り,研究の有効性を研究発表会の参観者にアピールすることができるように授業づくりを中心に研究発表会の準備を進めている。
 

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成果と課題

 

<成果>

  • ICTの活用によって,協同的な学び合いや言語活動(これまでの本校の取り組みである)と組み合わせることができ,効果的に学びを高めることが期待できた。 
    ※児童のICTの活用,教師の効果的な教材提示 など。
  • ICT機器のネットワークやサーバーなどの環境が整いつつあり,日常的にICTを用いることができるようになった。

<課題>

  • 教科ごとに効果的なICTの活用の仕方を明らかにして,本年度の成果を明らかにする。
  • 情報教育部を中心にICTを活用した授業の推進を一層行う。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

◇これまで本校で取り組んできた「協同的な学び」「言語活動」の大切さを実感することができたこと・・・。

  • 本校では,これまで「協同的な学び」をつくる言語活動の研究を各教科の特質に応じた授業づくりを中心に行ってきました。そのベースに立ってICTを効果的に活用することで,一層の言語活動を旺盛にするとともに学び合いを質の高いものにしていきました。つまり,ICTの活用だけでは学びは高まることはありません。ICTの活用によって,組み合わせる言語活動や学び合いの必要性を改めて感じることができたのです。

◇授業の中で,ICTを使って嬉しかったこと・・・。

  • ICTを使った授業をはじめた頃は,タブレットPCを使うことが楽しかった子どもたちが,学習内容に応じてタブレットPCと学習ノートやカードなどを使い分けたり,時にはタブレットPCを使わずに学習ノートに自分たちの考えを表しながら話し合ったりする姿を見ることが多くなりました。
  • タブレットPCを2人に1台にして自分の考えを表現させたり,教師支援ソフトを用いて全員の考えを1つの大きな画面に映し出したりすることで,互いの考えに興味を持ったり,学び合いが必然的に行われるようになってきました。
  • 一番嬉しい姿は,「わかった!」や「なるほど。」「やっぱりね。」といったつぶやきの言葉がよく聞かれるようになりました。学びを実感する姿であると思います。これからもたくさん味わわせてあげたいと思っています。

◇ICT機器を授業に活用する際に困ったこと・・・

  • 「やっぱり機械だな!」と思ったことがありました。それは2つありました。ひとつは,機械なので使っているうちに壊れてしまったり,動かなくなったりしてしまうことがあることです。「さあ,使って子どもに見せよう。」「やっと,子どもに使わせられる。」と思ったときに壊れたり動かなくなったりするのです。そんな時,子どもの落胆した顔を見ると・・・・。残念で,残念で仕方がありません。そのためにも,持ち運びができても,持ち運ばずにある程度決まった場所で保管・管理・使用が望ましいと思いました。また,壊れたり動かなくなったりすることを教師も子どもも恐れないようにすることも感じました。「そんなこともあるかもしれない。」という気持ちで,余分の台数のICTを準備したり,使わせる際も使えなくなることを考えて他の方法を考えておいたりすることが大切だと思いました。まず,使ってみる,使わせてみることなのかもしれませんね。ふたつは,ICTを使わせることが学習の目的になってはいけないことです。これまで学習の際に用いてきた,黒板・ノート,プリント・カード・ホワイトボードなどと組み合わせることが大切だと感じました。どうしてもICTを使っていると,それだけに一生懸命になったりそれがメインなったりしまいます。しかも,それだけで満足してしまうことがあります。そうではなく,学習の効果をあげるための一つのツールであることを改めて感じました。

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アドバイザーコメント

宮崎大学大学院 教育学研究科 教授 新地 辰朗 先生

 

特別研究指定を受けてからこれまで,ICT環境を充実させながら,効果的なICT活用について,先生方が一丸となって模索されている印象を受けます。そのような時間や取組は,教育活動の充実にICT活用をしっかり機能させるために不可欠であり,文部科学省の研究開発学校としての研究と特別研究指定校としての研究を相乗させる教育効果を目指すコンセプトの具体化・明確化に役立っていると思います。

本校の研究のキーワードが“情報編集力”や“情報活用能力”であることをふまえると,教科等の学習活動における児童のICT活用に焦点をあて,研究を深める必要があります。本校の平成24年度研究発表会要録 ~「協同的学び合い」をつくる言語活動~ には,「学び合い」へ高める言語活動を位置付けた授業づくりが,各教科毎に整理されています。このような優れた研究成果を,児童によるICT活用のヒントにすることで,本校ならではの優れた成果に到達するものと感じています。

先日,算数の授業を参観した際,手書描画を含む児童の学習や思考のプロセスを,電子黒板に投影することで,前時までの学習を短時間で整理し,じっくり考えさせる時間を確保させる工夫,図形ピースによる操作活動や立体模型の観察などと組み合わせたICT活用など,担当された先生の綿密な授業構想力や優れた指導力を目にすることができました。また,児童も,電子黒板やタブレットPCを活用しながら,それぞれの考えや他者との意見の違いを表明していました。このような教育実践を積み重ねながら,児童にICT活用や情報活用を振り返らせる方法やタイミングについて検討を深めることで,“情報編集力”や“情報活用能力”を育てていくことが可能になると期待しています。

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