1 本校教職員対象の研修
新型コロナウイルス感染症拡大予防の臨時休校のため、授業が再開できたのは、6月であった。それまでの間に、教職員対象に、本研究の概要やプログラミング的思考育成、主体的・対話的な学び、創造的な学びなどの研究骨子に関わる研修やPCやタブレット端末でのScratchやmicrobit makecodeの利用研修などを行ってきた。また授業再開後にICT利用をはじめとした教科の目標を達成する授業、教科と総合的な学習の時間を関連付けたPBL(プロジェクトベースドラーニング)の実践をスタートできるよう準備した。
しかし長期の休校により、児童の生活リズムが崩れ、学習に集中できない状況が続いたことから、まずは学級経営や生活指導、学習習慣の基本的な事項の定着などについて、時間を割くこととなった。実際に研究に関わる学習活動を行い始めたのは、7月になってからである。
プログラミング学習だけでなく、普段の授業から、研究のキーワードに関わる学習活動を進めながら、低学年では、生活科の学校探検や国語科、算数科で、中学年・高学年では、国語科や算数科、社会科、音楽科、図画工作科、総合的な学習の時間等、多くの教科でプログラミング学習を始めた。特に初等教育を始めたばかりの1年生は、Osmo社のOsmo Codingを使って、ブロックによる逐次処理を基本にした学習により、プログラミング学習の基本を学んだ。2年生以上の学年では、Scratch3.0やScratchJr.やプレゼンテーションソフトなどを使って、国語科で読み取ったことをクイズにして出題したり、算数科で「折れ線グラフ」をかいたりした。高学年では、JR四国のコラボノートを使った総合的な学習の時間のまとめなど、PCやタブレット端末を使った実践を各学級で進めてきた。
2 アドバイザー訪問授業(7月17日)
(1)第4学年 音楽科「いろいろな音のひびきを感じとろう」(5時間完了)
4年生の音楽科「いろいろな音のひびきを感じ取ろう」の学習では、曲「茶色の小びん」を、タブレット端末のアプリ、GarageBandを利用して、児童がテーマに合わせてアレンジを行った。音楽を形づくる要素である「音色」「旋律」「強弱」「音の重なり」「縦と横との関係」などを感じ取りながら、音楽を鑑賞した後、音楽を形づくる要素とそれが曲にもたらす効果とを結び付け、意図的に音楽づくりができるようになることをねらった。思いや意図を実現する手立てとして、GarageBandを使い、音色の特徴を自分の言葉で表すワークシート、図形カード、自分のつくりたい音楽の設計図を書くワークシートを利用し、協働的な学びとなるように2人1組のペア学習を行った。
2人1組で音楽づくりをする中で、順次処理、ループで広げる繰り返し処理、音を入れるタイミングによる分岐処理を行っていた。「お祭り」がテーマのグループは、にぎやかさを出すために音の重なりを意識して、音楽の縦と横の関係を確かめて音を足したり、日本の音階に着目して旋律の音程を変えたりして、創造的な音楽作りを行った。
どのグループも音楽的に質の高い作品作りを追究するためには、相互評価をもっと早い段階に行い、何がよいのか、どうすればよくなるかに気付かせたうえで、さらにテーマに合うように再修正できる時間を確保することが必要であると、協議の場で確認された。
(2)第6学年 理科・社会科・総合的な学習の時間「未来の交通システム」
(17時間完了 総合9時間、社会4時間、理科4時間)
6年生社会「グローバル化する世界と日本の役割」「平和への協力」から安心安全な交通システムの学習要素を抽出し、6年の理科「身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があること」の教科の学びを関連付けて、総合的な学習の時間の単元を組んだ。総合的な学習の時間では、「実社会や実生活の中から問題を見出し、積極的に社会参画しようとする態度を養うこと」を育てたい資質能力とした。micro:Maqueen Ver3.0 、タブレット端末、Makecode、AppleTV、信号機を利用した。交通事故の多さという自分達にとって身近な問題と、情報技術の発展との関連について考えることで、未来の社会を作っていける子供たちに育ってほしいという願いをもち、授業を計画した。
児童は、前時までの学習をよく理解しており、プログラミング学習に意欲的に取り組む姿勢が見られた。本時の授業では、導入で考えるためのヒントを黒板に掲示し、組みたいプログラムを言葉でワークシートに記入し、計画を立ててから活動に入った。児童には、プログラミング操作の技能が身に付いており、手が止まってしまうペアはいなかった。
究明段階では、席を離れての教え合いをしたが、「プログラムの内容に困っているのか」「プログラムの転送に困っているのか」を教師が見取って支援することが必要であった。どのブロックを使うかについての理解度に差があることから、活動の途中でうまくプログラムが作動しているグループの動きを全員で見て、工夫した内容を全体に広げたり、皆で解決したりする機会を設けることで、活動の質を高めていくことができたと、授業後の協議会で確認した。
また、課題は教師から与えられるものでなく、児童にとっての学習の価値付け、意欲付けができるよう進めていくことが望ましい。Microbit、micro:Maqueen Ver3.0には、センサーが豊富にあるので、距離センサーを使った衝突回避や、トンネルに入ったら速度が落ちる、街路灯とも連動するなど、システム同士の連携への理解を深めることができる。児童の願いを実現するわくわくした創造的な学びにつながることが可能である。
3 パフォーマンス検査の活用
研究のはじめとなる7月に、個人と学級の傾向を、自己と集団に分けて評価するパフォーマンス検査を全児童対象に行った。これにより、個人と学級の傾向をとらえることができた。QUテストのように、集団パフォーマンスを縦軸、個別パフォーマンスを横軸に取り、児童個々の状態を学級集団の座標軸上に表すことができた。これを生かし、不満足に位置する児童を支援すると同時に、学級集団を育てていく。研究を進める過程で評価の変化が見られれば、研究の成果の指針ととらえることができると考えている。次は検査項目の一部である。
羽根小学校研究パフォーマンス検査項目(一部抜粋) | |
---|---|
A自己肯定感 | あなたは、じぶんのことがすきですか |
A自己肯定感 | あなたは、ともだちにじまんできるような特技やしゅみがありますか |
A自己肯定感 | あなたは、しょうらい、やりたいとかなりたいなどの、ゆめがありますか |
B自己向上心 | 学校の学習で、できなかったことができるようになると、うれしいとおもいますか |
B自己向上心 | じゅぎょう中に、自分のかんがえやいけんをいうのは好きですか |
B自己向上心 | いい成績をとったり、学習が分かるようになったりするために、努力をしていますか |
C研究推進 | あなたは、計画を立てて、予想をしながら学習することは好きですか |
C研究推進 | あなたは、新しいものや新しいことなど、つくりだしていくことが好きですか |