大阪市立堀江小学校
第41回特別研究指定校研究課題
~総合的な学習の時間での協働学習を通して~
アドバイザーコメント
- 堀江小学校は,2年前にパナソニック教育財団の特別研究指定校となりました.
研究活動経過報告
大阪市立堀江小学校の研究課題に関する内容
学校名 | 大阪市立堀江小学校 |
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研究テーマ | ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造 ~総合的な学習の時間での協働学習を通して~ |
目的 | 本研究では、タブレットPC、IWB、OHCなどのICTを活用した協働学習を授業において展開し、児童の思考力・判断力・表現力の獲得を目指す。そのために総合的な学習の時間における情報活用能力を育む授業モデルの構築と授業実践を行い、児童の能力の変容や学習に対する意識の変容の分析を通して、その有効性を検証する。 |
現状と課題 |
●「平成25年度情報教育の推進等に関する調査研究」文部科学省 → 問題点
●本校のこれまでの研究 「ユビキタスネットワークスクール事業」
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取り組み内容 |
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予想される成果 |
総合的な学習の時間における情報活用能力を育む授業モデルの構築 ↓ ICTを活用した質の高い授業の継続的実践 ↓
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助成金の使途 |
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特別研究指定期間 | 平成27〜28年 |
都道府県 | 大阪府 |
研究代表者 | 中山大嘉俊(校長) |
学校HP | http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=e561156 |
アドバイザー | 永田 智子(兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 准教授) |
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
取り組み内容 |
[本期間(4~7月)の取り組み内容] 1. 校内研修・研究発表・先行研究
2.研究授業(学習指導案・参観・討議会のあるもの)
3.公開授業・討議会(平成28年7月2日土曜日) 大阪市をはじめ他府県からも含め、300名を超える教員・教育行政・教育関係者が、公開授業に参加
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アドバイザーの助言と助言への対応 |
●評価の観点を教科から総合的な学習のものに変更する必要がある
⇒これまでの関心・意欲態度・思考判断から、問題発見力・情報収集・将来展望の力・参画の力に変更。 ●単元の目標を明確にするために掲示を工夫する
⇒「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という探求的な学習の過程で、児童の学習はより深いものになる。その際、本時・単元を通しての課題を明確にするために、常に児童も指導者も意識できるように学習の過程を掲示した。 ●情報活用能力、探究活動の質の向上。
問題解決の活動である「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の各段階のサイクルを繰り返すことで、課題解決に向けて、意欲を継続させ、探究活動の質を高めることができる。 ⇒課題設定の場面の工夫 「違和感が生じるように統計資料を提示」「驚きの事実を印象的に提示し、必要感を高める」「体験活動での感覚とずれや矛盾を強調する」など課題を設定する場面の工夫により、児童一人ひとりに問題意識を持たせることができた。 |
裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ・公開授業当日は、300名を超える参加があった。予想を超える参会者数だったので、資料の準備や会場設定に少し戸惑ったが、今まで以上の活気のある公開授業となった。討議会やアンケートでも参会者から広く意見をいただくことができた。
- ・総合的な学習の時間における探究的な学習、問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の授業デザインをいかに児童主体で行うことができているのかを考え、計画・実践していくことに苦労した。また、毎日の授業から、「児童主体の学習スタイルに変える」「ルーブリックを子どもに立てさせて目標を明確にする」等、従来の教師主導の一斉指導から、子ども達に任せていく実践の難しさを感じた。
成果
- ・機器操作の研修やICT活用授業実践研修を通して、教職員のICTの指導技術や機器操作の習得と新たな教材開発、授業実践のデータを蓄積することができた。また、今年度着任した教員も積極的にICTを活用し、タブレットPCを中心に授業に活用できた。
- ・ICTを活用した総合的な学習の時間での協働学習を進めてきたが、公開授業において実施した教員対象のアンケートにおいて、「思考を深めたり、広めたりすることに効果的か」という質問項目に対し、「とても思う」「少し思う」と回答したのが、91.2%という高い評価であった。
- ・公開授業では、参会者から「ICTや思考ツールを使い、友達と協働している姿を見ることができ、今後の授業の参考になった。フィールドワークも大切にしておられるからこそ、ICTもうまく生かすことができていると感じた。」「タブレットを効果的に活用することにより、児童の思考を深めて、目標にせまる授業であった。」「4年生でのエクセル活用、総合的な学習での協働学習、ルーブリック、黒板を子どもに渡そうなど、参考になることが多かったです。本校でも研究を進めていきたいと思います。」といった肯定的な意見をいただいた。
- ・ 先進的なICT活用の授業実践を行っている学校の取組から情報収集した。 ICT活用及び協働学習、ルーブリック、思考ツール等に関する先行研究を参考に、全教職員で本校の研究の方向性を共通理解できた。
- ・児童が自ら問題意識を持ち、タブレットを使ってフィールドワークに出かけ、調査活動を行った。また、集めた情報を、整理・分析しプレゼンにまとめた。更に全体交流を通じて考えを深めることにより、新たな問題意識を持つことができた。
- ・「児童が主体的に話し合い、聞き合い、説明し合いながら課題について考える場面」「付箋やカード、ホワイトボードや小黒板、黒板や模造紙に書きながら、情報について根拠を持って判断している場面」という児童のよりアクティブな状態をイメージした授業を教職員の共通理解のもと、全学年で組み立てることができた。
今後の課題
- ・ 児童が活躍する探究的な授業デザインの構築
黒板を子どもに渡すという児童主体のイメージを全教職員で共通理解する。総合的な学習の時間は勿論、教科での学習や特別活動の時間においても、児童主体の授業を計画・実践していく。 - ・ ルーブリックを児童に持たせる授業の展開
総合的な学習の時間の中で、ルーブリックを児童が設定し、評価していくための方法についての検討。 - ・ ICTを効果的に活用した授業の探求
ICTの特長(瞬時の可視化・瞬時の共有化・思考の繰り返し)を的確に捉え、総合的な学習の時間及び各教科等での協働学習において、効果的にICTを活用する授業を校内の研修部を中心に全教職員で探求し、授業を実践していく。堀江小『総合学習とICT活用、探求学習モデル図』を作成する。 - ・ 情報活用能力のさらなる育成
児童の情報活用力をさらに高める取組を実施。各教科等を通じて、情報モラルを身に付け、コンピューターなどの情報手段を適切に活用できるようにする学習活動を設定する。 - ・ 研究成果の発信
より積極的な研究成果の発信のために、学会発表等を見据えたデータの蓄積と分析。
公開研究会の計画
- ・平成28年8月9-10日 … 大阪市ICT活用実技研修会(大阪市教育センターと共催)
- ・平成28年10月14-15日…全日本教育工学研究協議会全国大会佐賀大会研究発表(予定)
- ・平成28年11月19日 … 公開授業・学習参観(ICT・総合・防災・防犯・SPS等)
- ・11月公開授業に向けての学習指導案検討(全学年)
- ・2月公開授業に向けての学習指導案検討・研究授業の実施(全学年)
- ・平成29年2月上旬 … 平成28年度公開授業・研究発表(ICT・教科・総合)
- ・2月研究発表会に向けての学習指導案・研究のまとめ検討
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
特別研究指定校としての堀江小学校の取組みも1年を過ぎました. 7月の公開研究会では,これまでの実践をさらにパワーアップさせた授業が公開されました.また,たくさんの方からの意見をもらえるようにと,公開授業後の討議会は体育館でのポスター発表スタイルにするなど工夫が凝らされました.
何度も書いているような気がしますが,ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業づくり,という点について,堀江小学校は全国トップクラスです.いつも全学年授業公開をされるのですが,どの学年を見てもICTを活用した効果的な授業が行われており,どの学校・学年の先生でも参考にしてもらえるものとなっています.ぜひこれからの公開授業にも多くの先生方に参観にきていただきたいと思います.
さて,安定の堀江小学校ですが,そこで満足はしていません.ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造-総合的な学習の時間での協働学習を通して-という研究課題は変わりませんが,2016年度になり,「黒板を子どもに渡そう」というキャッチコピーが加わりました.堀江小学校では,総合的な学習の時間をよりレベルの高いものにしようと挑戦し続けています.最終目標は,子どもたちが主体となり探究する授業モデルの構想です.チーム堀江のラストスパートを期待します.
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
取り組み内容 |
1. 研究発表
2. 研究授業等
3. 公開授業・討議会(平成27年10月2日)
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アドバイザーの助言と助言への対応 |
公開授業 第3学年 ・総合的な学習の時間におけるICT活用はかなりできていた。
・総合的な学習の時間でのICTを活用した、より探究的な学習の構築が課題 →学習指導案検討時に、問題解決的な流れになっているかを重点的に検討する。 |
裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ・ルーブリックについて、指導案検討会や授業実践、討議会、研修の中で、設定したルーブリックの整合性について、何度も議論を交わしてきた結果、教師作成のルーブリックの精度が高まってきた。
- ・協働学習の中で、新たなICT活用のスキルを創造することに苦労したが、ICT機器の活用を複雑化して、奇をてらうのではなく、協働学習を推進させるために有効な活用方法を心掛けた。
成果
- ・ICT活用の授業実践の積み重ねにより、教員のICTスキルの向上と協働学習を推進するための授業力の向上が図られた。児童のアンケートにおいて、「タブレットを使った授業は楽しい」「授業の中で話し合いがよく行われている」といった項目について、高い評価が得られている。
- ・公開授業では、「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造」について、参会者から「小学校におけるタブレットの使い方がよく分かった」「タブレットPCとIWBを組み合わせることによって、活発な意見交換ができている」といった肯定的な意見をいただいた。
今後の課題
- ・総合的な学習の時間の中で、ルーブリックを児童が設定し、評価していくための方法についての検討
- ・より積極的な研究成果の発信のために、学会発表等を見据えたデータの蓄積と分析
今後の計画
- ・1月研究発表会に向けての学習指導案検討
- ・研究授業(第2学年、第5学年)の実施
公開研究会の計画
- ・平成28年1月29日(金)平成27年度研究発表会
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
10月に総合的な学習での取り組みが公開されました。本校では教科学習での蓄積もあり、総合的な学習においても、ICT活用は本質を外れることなく行われていました。例えば、【情報の収集】においては、子どもたちはタブレットPCのカメラ機能を使って直接情報を収集したり、インターネットでの間接的な情報収集を行っていました。また収集した情報をデジタルワークシートで分類するなど【整理・分析】をし、最終的な【まとめ・表現】の段階では、パワーポイントにまとめてクラスで発表していました。つまり、総合的な学習における探究の過程ごとに適切なICT活用が行われていたわけです。
今後は子どもたちの情報活用能力をさらに高めることに取り組んでもらいたいと思います。例えばインターネットでの情報収集では、複数のウェブページから目的に応じて特定の情報を見つけ出して関連付けることに課題があるとされています。情報収集の仕方ひとつとっても、より高度な情報処理ができるような力をつけることが求められています。今後、本校での情報活用能力の育成の充実に期待します。
また本校では、先生方が学会等で研究発表をされています。学会等での研究発表は志を同じくする学校・教員との情報交換や大学教員らからの指導助言が得られる絶好の機会です。いきなり発表は敷居が高いでしょうから、まずは参観するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
取り組み内容 |
1. 先行研究
公開授業 第4学年体育 2. 研究授業
3. 公開授業・討議会
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アドバイザーの助言 |
総合的な学習の時間と国語科との連動
授業モデルの構築について、再現可能なレベルの設定
公開授業 第6学年社会 エビデンス…学力調査B問題の正答率を点数化、エピソードの記録、ポートフォリオの活用
他校への積極的な発信
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ・ルーブリックについて、共通理解を図るのが難しかった。指導案検討会や授業実践、討議会の中で、設定したルーブリックの整合性について、何度も議論を交わし、修正に修正を重ねていった。
- ・協働学習の中で、新たなICT活用のスキルを創造することに苦労したが、今後も新しい使い方を開発していかなければならない。
- ・総合的な学習の時間でのICT活用がまだまだ不十分である。次回の公開授業に向けて、開発中である。
成果
- ・ICT活用の授業実践の積み重ねにより、教員のICTスキルの向上が図られた。今年度着任した教員も積極的にICTを活用し、タブレットPCを中心に授業に活用できた。
- ・公開授業では、「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造」について、参会者から「一人ひとりの児童の思考を深めるために、効果的なタブレットの活用をしていた」「考える力、共に学ぶ力を育成するのにTPCはかなり有効」といった肯定的な意見をいただいた。
今後の課題
- ・総合的な学習の時間におけるICT活用の開発
- ・総合的な学習の時間の中で、ルーブリックをどのように設定し、評価していくかについての検討
- ・パフォーマンス評価など、複合的に児童を評価することの必要性
- ・より積極的な研究成果の発信(HP)
公開研究会の計画
- ・平成27年10月2日(金)第2回公開授業・授業討議会
- ・平成28年1月29日(金)平成27年度研究発表会
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
本校の研究課題は「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造-総合的な学習の時間での協働学習を通して-」となっている.実は本校は,大阪市の学校教育ICT活用事業モデル校として2年間の実績があり,教科教育を中心に「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造」に取り組んできた.これから2年間かけて「総合的な学習の時間」での「協働学習」における授業づくりに挑戦しようとするものである.
ただ,2年間の実績があるとはいえ,小学校は教員の入れ替えが激しい.2年間ICT活用研修に取り組んできた教員は,すぐにでも次の課題に取り組むことは可能だろうが,新しく赴任した教員は,ICT活用スキルも考え方も十分とは言えず,いきなり発展的な課題に取り組むことは難しい.そのためにはまずICT活用スキルを習得してもらうことや,ICT活用の考え方について共通理解を図る必要がある.そのための取り組みとして,本校では各学年1名のICT担当からなるICT部会を編成し,定期的に研修を行い,全教員に対してICT通信を発行するなどしてICT活用のスキルを高めようとしている.こうした取り組みは他校でもぜひ参考になるだろう.
他にも若手中心の会を組織したり,各学年団でも研究授業を行うなど様々な機会をとらえて1学期から研究授業を繰り返している.このような取り組みの甲斐もあり,6月30日に実施された公開授業では,全学年でICTを効果的な活用した授業が行われた.
初年度の1学期は各教科においてICTを効果的に活用することに重きを置いたこともありベースは整ったように思われる.すでに「総合的な学習の時間」「協働学習」についての情報収集を始めているようだが,2学期以降,収集した情報をもとに「総合的な学習の時間における協働学習」についての検討がさらに進むことを期待する.
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
取り組み内容 |
1. 研究発表等
2. 研究授業等
3. 公開授業・討議会(平成28年1月29日)
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アドバイザーの助言 |
公開授業 第6学年 3Dソフトを活用 総合的な学習の時間におけるICT活用はできている。
総合的な学習の時間の活動としては、教師が活動の前面に出すぎで、板書が多い。
学習指導案における本時案の目標の見直しが必要。
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ・ICT活用授業の研究過程で、同じ特別研究指定校である北海道札幌市立厚別東小学校の先生方と交流ができ、情報交換できたことは、研究を進展させるうえで大きな価値であった。
- ・総合的な学習の時間での協働学習を構築するために、内容知と方法知を子どもが主体となって獲得していく授業実践を、より進展させていくことが必要である。
成果
- ・ICTを活用した総合的な学習の時間での協働学習を進めてきたが、公開授業において実施した教員対象のアンケートにおいて、「思考を深めたり、広めたりすることに効果的か」という質問項目に対し、「とても思う」「少し思う」と回答したのが94.6%という高い評価であった。
- ・公開授業では、「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造」について、参会者から「タブレットで作られた資料の提示がすばらしかった」(川崎市)「ICT機器の効果的な使い方がよく研究され、効果的に活用されていた」(大阪市)「子どもたちはとても慣れていて上手に使い、効果的な活用をしていて驚いた」(美郷町)といった肯定的な意見をいただいた。
今後の課題
- ・総合的な学習の時間の中で、ルーブリックを児童が設定し、評価していく実践の推進。
- ・個別・協働型の総合的な学習の時間の構築をより進めていく。
今後の計画
- ・平成28年7月2日(土)公開授業に向けて、学習指導案検討、授業モデルの検討等を行う。
- ・平成28年8月2日(火)の中間報告会に向けて、研究の中間まとめを行う。
1年間を振り返って・次年度への思い
これまで平成20・21年度の2箇年で大阪市「ユビキタスネットワークスクール事業」のモデル校指定、平成25・26年度の2箇年で大阪市「学校教育ICT活用事業」のモデル校指定をそれぞれ受け、教科を中心に、学校教育におけるICTを活用した協働学習の実践的研究を行ってきた。教科教育におけるICTを活用した授業はそれまでの研究の中で十分に深められ、ICT活用の類型化を可能にした 。しかし、教科以外の領域では十分にチャレンジできていなかった事実がある。
この一年間、総合的な学習の時間と向き合い、その中で堀江の子どもたちの問題解決力、とりわけ思考力、判断力、表現力を高めるにはどのような授業を展開すればよいのか、協働的な学習展開とはどのようにすればよいのか、正面からぶつかってきた。そこで明らかになったのは、子どもが学習の真の主体となり、真正の評価がなされることによって、子どもたちがより生き生きと活動できる総合的な学習の時間が展開できるということである。その中では、ICT機器は子どもたちの手によって、より創造的に活用がなされ、その結果として深まりある知識が獲得されていった。そうした授業が展開された時、子どもたちが必ず言う言葉がある。「先生、もっとこの授業したい。」
子どもたちがもっとしたいと言う総合的な学習の時間をより展開するために、我々がなすべきことは山積している。一番の課題は、子どもたちにしっかりとした内容を獲得させたいと思えば思うほど、教師主導の総合的な学習の時間になってしまうというジレンマである。私たちは、方法知も大切ということはわかっている。したがって、内容と方法をバランスよく配置しようとするのだが、結局その授業構築の手法が教師主体となっているのである。きっと私たちは子どもたちが持つ暗黙知を信頼し、適切な学習問題を設定した上で、子どもたちがICT機器を駆使しながら、問題を主体的に解決する場の設定をもっと行わなければならないのだろう。そして、私たちがなすべきことは、ああしろ、こうしろと指示するのではなく、真正の評価を行って、指導と評価の一体化を具現化することにあるのではないだろうか。
あと一年しかない限られた研究の時間を有意義に使い、そして結果を残すために、しっかりと今後も目の前の子どもと向き合っていきたいと思う。
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
2016年1月29日に、2015年度3回目の公開授業が行われました。本校では、年3回行われる公開授業で、全学年が公開授業を行っているところが特筆すべき点の一つです。全教師が授業におけるICT活用指導力を持っているということであり、一部教師だけががんばっているのではないということがわかります。またICTの活用の仕方も、やむをえず使っているということはなく、思考力・判断力・表現力を育むための効果的な活用の仕方がなされています。
また、精力的に研究発表を行っていることも特筆すべき点です。発表することで、本校での取り組みを広く知ってもらえることができます。また、研究発表の場で、他校の教師たちと交流することで新たな情報を得ることもできます。それ以上に大切なことは、実践を振り返りまとめることです。日々の忙しさに、実践するだけに終わりがちですが、研究発表しようとすれば、まず自分たちの取組みをきちんと評価せねばなりません。評価活動をきちんと行うことで、冷静に取り組みをみつめることになり、次への発展・改善へとつなげることができるでしょう。
特別研究指定校としての1年目が終わり、折り返し点となりました。次の課題は、本校でも課題であると自覚されているとおり、教師主導の総合的な学習の時間からの脱却です。児童がICTを活用しながら主体的に創造的に共働的に学ぶような学習の場づくりがなされることを期待します。
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(8~12月)の取り組み内容 |
1. 校内研修・研究発表・先行研究
1学年
2学年
3学年
4学年
5学年
6学年
2. 研究授業(学習指導案・参観・討議会のあるもの)
3. 公開授業・討議会(平成28年11月19日土曜日) ≪大阪市をはじめ他府県の教員・教育行政・教育関係者が、公開授業に参加≫
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ○2学期よりタブレット対応授業支援システム「Sky Menu Class2015」が全タブレットに導入された。システムが変わる不安もあったが、考えをグループや全体で共有しやすく、協働学習を進める上で便利になった。
成果
- ○1年生は、自分が見つけた秋をタブレットの写真で撮影し、班やクラス全体で発表を行った。発表に対して良かったところを交流することで、「見つけた秋の写真を、友達がわかりやすかったよと言ってくれた」「見つけた秋について、一生懸命に発表することができた。また、みんなに聞いてもらえて楽しかった」等、達成感や自己肯定感が育った。
- ○2年生は、考えたおもちゃを作成し、幼稚園の園児をおもちゃランドに招待した。タブレットで撮影したおもちゃの制作過程を事前に交流し、園児により楽しんでもらうことができるおもちゃになるようにアイディアを交流した。園児を招待することを通して、より相手意識が明確になり、「わかりやすい写真はどれか」「伝わりやすい発表になっているか」と何度も話合って深めることができた。
- ○3年生は、タブレットを活用し、安全な所や危険な所はないか、地域を探検して町のセーフティースポットマップを作成した。4年生は、様々な想定の災害シュミレーションから、安全で正しい行動について必要な情報を選択して調べ、考えをプレゼンにまとめた。その成果を防災フォーラムで保護者や地域、区役所の方々に発表した。また、被災地の方にもスカイプを活用し考えを聞かせてもらい、意見をいただいた。1学期からの総合的な学習の時間での地震(災害)に対して「遊びに行った時も安全な場所や危険かなと思う所を一度探してみたい」「地域の方や保護者の方に発表を聞いてもらって、一緒に減災について考えたことで、地域の力の少しでもなれたかなと思う。」「もし、この地域で地震が起こった時に、考えてすぐに行動に移せるように、これからも防災学習を続けていきたい。」等、自分事としてとらえることができる児童が育った。
- ○5年生では、3学期に町づくりデザインについて区長に提案をすることを予定している。1台のタブレットを囲み、それぞれが意見を出し合った。プレゼンテーションを作成する児童、アイデアをノートにまとめる児童、話し合いを中心になって進める児童等、役割分担をして協働的に学習を進めることができるようになってきている。
- ○6年生では、これまで深めてきた防災学習について、児童から「私たちの思い・考え」をデータベース内に残し、下級生に伝えたいという意見が出てきた。自分たちが学校を「支える」「変える」という気持ちが出てきた。また、児童同士で「思いを託そう」とする、「つながりを作ろう」とする主体的な姿・気持ちが生まれてきた。ICTに関するスキルの上達をはじめ、必要な情報を選択する力や自分たちが作った情報を見る人がどう思うか、何を望むか等、相手の「ニーズ」を意識したプレゼンを作成することができるようになってきた。
- ○1学期の活動を教職員で振り返り、2学期はこれまで以上に児童主体の学習になるよう「黒板を子どもに渡そう」を強く意識して研究を進めてきた。教師主導の活動ではではなく、自主的な児童同士の学び合いを大切にした活動は、はじめは多少時間がかかることがあった。しかし、子どもたちは従来の「勉強している」感覚ではなく、自分たちで問題を発見し、探究し続けるので、45分枠に収まらず、「あと少し時間をください」「明日の総合の時間でやることを話し合おう」「家に帰って各自調べ、まとめてこよう」など、学習計画そのものをデザインする姿が見られるようになってきた。
今後の課題
- ○児童が活躍する探究的な授業デザインの構築
「黒板を子どもに渡す」という児童主体の姿の実現に向けて、総合的な学習の時間は勿論、教科での学習や特別活動の時間においても、児童主体の学習を進める。 - ○ルーブリックを児童に持たせる授業の展開
総合的な学習の時間や教科学習の中で、ルーブリックを児童が設定し、評価していくための方法や、設定したルーブリックが適切であったどうかについての検討。 - ○ICTを効果的に活用した授業の探求
ICTの特長(瞬時の可視化・瞬時の共有化・思考の繰り返し)を的確に捉え、総合的な学習の時間及び各教科等での協働学習において、効果的にICTを活用する授業を校内の研修部を中心に全教職員で探求し、授業を実践していく。堀江小『総合学習とICT活用、探求学習モデル図』を作成する。また、これまでの実践事例を整理して年間学習予定に反映させる。 - ○情報活用能力のさらなる育成
児童の情報活用力をさらに高める取組を継続実施。各教科等を通じて、情報モラルやスキルを身に付け、コンピューターなどの情報手段を適切に活用できるようにする学習活動を設定する。また、これまでの児童の変容を見取り、次年度の課題設定と計画を立てる。 - ○研究成果の発信
より積極的な研究成果の発信のために、学会発表・研究成果のまとめ等を見据えたデータの蓄積と分析。
今後の計画
- ○2月公開授業に向けての学習指導案検討・研究授業の実施(全学年)
- ○平成29年2月15日(水)…平成28年度公開授業・研究発表(ICT・教科・総合)
- ○2月研究発表会に向けての学習指導案・研究のまとめ検討
- ○研究のまとめ(紀要)の作成
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
特別研究指定校としての堀江小学校の研究テーマは「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造-総合的な学習の時間での協働学習を通して-」です.教科学習においてICT活用や協働学習を効果的に組み立てた授業をすることは得意な堀江小学校ですが,真に児童が主体となる総合的な学習の時間の授業づくりには苦労されているようでした.
2年目の2学期には伺うことができなかったのですが,活動報告によると,次第に児童自身で問題を発見し探究し続ける姿や学習計画そのものをデザインする姿が見られるようになったそうです.児童が主体となる学びは,はじめは時間も手もかかるし,任せるのは不安もあったことでしょうが,これまで以上に児童主体の学習になるよう「黒板を子どもに渡そう」というキー概念を強く意識し,研究を継続されたことによる成果といえます.そういえばある研究(日本電信電話株式会社(2014)“教育スクェア×ICT”フィールドトライアルレポート)では,継続的にICTを活用することによって思考力や表現力の効果実感は高まるという調査結果が示されています.思考力や表現力の効果はすぐにはでないのです.堀江小学校も1年目は実感できなかったけれども,継続して取り組んでこられた結果,2年目も半ばを過ぎ,ようやく実感できるようになったのかもしれません.
児童が主体となり,協働的に,ICTを活用し,思考・判断・表現する学習は,次期学習指導要領で目指ざされているところのアクティブ・ラーニング(主体的で,対話的で,深い学び)そのものです.2月15日に公開授業が行われます.2年間の集大成です.他校の先生にはぜひ参観に来ていただき,今後の参考にしていただきたいと思います.
本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応
本期間(1月~3月)の取り組み内容 |
1. 校内研修・研究発表・先行研究
2. 研究授業(学習指導案・参観・討議会のあるもの)
3. 公開授業・討議会(平成29年2月15日水曜日) |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
- ・2年間計6回の公開授業を終えて、多くの参会者が公開授業に参加いただき、ご意見をたくさんいただいたこと。
以下、2月実施の公開授業の参会者のアンケート記述。(一部)
- ○ICTを有効的に活用されているすばらしい授業だと感じました。子供の思考を表現し、グループで共有することを通して、さらに学びを深めていくことができており、子どもたちがとても充実した学習ができていると思いました。とても勉強になり、今後の実践に活用していきたいと思います。
- ○2年生と5年生を拝見させていただきました。とてもICT、タブレットを児童はもちろん教員も使い慣れており、よく文部科学省が出しているアンケートで見る情報機器への教員の不慣れを全く感じなかったです。不慣れな方も多くいらっしゃるであろうから、校内研修などを積極的に取り組まれたのだろうなぁと尊敬しております。大阪市のICT教育はもちろん、全国にも堀江小の組織エネルギー等などを広めていっていただければ、望ましいと思っています。今後も継続して取り組まれることを楽しみにしています。
- ○タブレットや電子黒板などを効果的に活用されており、大変参考になりました。子どもたちがかねての学習から、よく活用していることがわかりました、何より、子どもたちがいきいきと自分の考えを述べ、コミュニケーションがしっかりと取れているのに驚きました。
- ○ルーブリックの活用という視点は、特に参考になりました。ICTを活用しながら、子どもたちが主体的に取り組む姿をたくさん見ることができました。
- ○私がつとめる小学校でもICT活用を進めたいと思い、参加させていただきました。ICT活用のヒントもたくさんありました。堀江小学校の研究として、思考力・判断力・表現力を育むというテーマが、しっかりと共有されて授業づくりができているのがいいなと思いました。また、学習の環境も学校全体・全学級でICTが利用しやすくなって学びのための環境づくりもまだまだ本校も課題があると感じた。子どもたちが自分自身で課題意識をもつという視点も、主体的な学習にはまず必要だと改めて確認できた。そのための手立てとして、ICTの利用について、私自身も今後学び実践につなげていきたいです。
本期間と2年間の成果と課題
- ①探究的な学習のプロセスの中で、児童のより主体的な姿が見られた。
3年生以上565名の児童対象の総合についてのアンケート結果(選択肢は4段階評定)で肯定的な回答(「1:あてはまる」)をした児童は以下の通りである。
◆「総合が好き」1学期61.1%→3学期は66.2%
◆「自分で目標を持ち、学習に取り組むことができる」1学期51.0%→3学期は61.9% - ②効果的なICT活用ができ、情報活用能力の向上が見られた。
○課題・問題の設定場面(課題・問題設定、発見) - ○カメラ機能を活用して地域探検や、インターネットを活用して情報収集する場面
- ○自分の考えを可視化し、友達と意見を共有する場面(思考の可視化、整理・分析)
- ○スカイプで瞬時に遠くの人と情報を共有化する場面(瞬時の共有化、情報収集、まとめ・表現)
- ○集めた情報をプレゼンソフトや表計算ソフトで整理・分析する場面(思考の繰り返し、整理・分析)
- ○わかったことを効果的に伝えるためにグラフやプレゼン資料を作成する場面(まとめ・表現)
- ③協働的に解決する力がついた。
児童の協働学習を成立させる手立てとして、5つの視点にそって授業実践を行った結果、児童が協働的に解決する力がついた。アンケートで肯定的な回答(「1:あてはまる」)をした児童は以下の通りである。
◆「友達と考えを交流することが好きだ」 44.3%→53.7%
◆「自分の考えを入れて友達に発表できる」 49.2%→55.5%
◆「様々な解決方法を考えることができる」 54.3%→64.4%
◆「情報を集めたり、まとめたりするのは好きだ」69.3%→73.4%
いずれも1学期から3学期にかけて上昇している。このことからも、児童の意識は変容し、協働的に学ぶことができるようになったといえる。 - 2.児童の自己肯定感・有用感が高揚
アンケートで肯定的な回答(「1:あてはまる」)をした児童は以下の通りである。
◆「よりよい解決ができるようになる。」51.4%→66.9%
◆「自分にできることを見付けて実行している」42.5%→55.7%
◆「自分にはよいところがある」55.3%→63.3%
◆「将来の夢を持っている」73.8%→76.3%
総合の学習がきっかけとなり、よりよい生活をしようと普段の行動が変わり、様々な体験活動から自分に自信を持てるようになった。また、地域の様々な方と触れ合う中で、自分の将来の姿を考える児童も出てきていることがわかる。このことから、児童の自己肯定感・有用感の高揚が見られることがわかる。 - 3.教職員の資質・授業力の向上
この2年間で計32回(学年内を入れると44回)研究授業を行い、教員の授業力向上に努めた。授業後には、討議会を行い授業の継続すべき点や改善点について話し合った。また、児童の思考力・表現力・判断力の向上に向けて、日々の授業においても研究授業に取り組んだ。新任、2年次研修とした授業研究を年63回。若手教員を中心にした授業研究を年22回実施した。また、授業参観等で保護者対象にICTを活用した授業は、のべ141学級公開した。
校内研修については、ICT関連で主なものは、年15回(週1回実施のICT部会は除く)。ICT以外は、年22回実施した。伝達研修(資料配布含む)については、101回実施した。
加えて、以下の表のように、多くの教員が様々な形で自身の実践をまとめて振り返る機会や研鑽を深める場を得た。資質向上や今後の授業改善に活かすことができた。
1.児童の主体的・協働的な姿の実現
△5年[コマーシャルを作ろう]
△3年[堀江のしぜんを見つけよう]
△4年[災害からくらしを守る]
△5年[堀江のくらしをよりよくするしくみ
を考えよう]
△3年[地域の名人調べ]
△6年[平和について考えよう]
△5年[くらしを支える情報]
△4年[発見!委員会のヒミツ]
△3年[堀江のしぜんを見つけよう]
△4年[災害からくらしを守る]
△5年[身の回りの外国文化を調べよう]
△6年[選挙の投票率を上げるには?]
△5年[堀江のくらしをよりよくするしく
みを考えよう]
△4年[災害からくらしを守る]
△3年[見つけようほりえの名人]
△4年[災害からくらしを守る]
△6年[堀江のよさを伝えよう]
【研究・実践発表】平成27・28年度
【研究論文等表彰】
【派遣研修】
今後の展開
- ・来年度も、トップレベルの学力と志をもつグローバル人材の育成を学校教育目標に、学力(知)、心(徳)、健康(体)のそれぞれについて、児童が自分の才能を開花させ、将来様々な分野で活躍し自己実現していくこと。生涯にわたって人格形成を図り、社会に貢献する、日本の成長をけん引する大人になることという願いのもと、教育活動を行う。
- ・これまで積み上げてきた教育活動の質・水準の維持、発展をめざす。そのため、研修・研究を充実させて教職員個々の資質向上に努めるとともに、PDCAサイクルにおけるCAの機能強化や自律的・協働的な教職員組織の構築のため組織改革を進める。
- ・平成29年度は、引き続いてパナソニック教育財団の実践研究助成校としてご支援をいただくこととなっている。また、大阪市のこれまでのICTを活用した協働学習により培った思考力・判断力・表現力を生かして、未来を創る堀江ICTプログラミング教育プロジェクト【プログラミング学習】を進める。児童にはプログラミング学習をとおして、①論理的思考力②学びに向かう力や人間性③創造力の3つの力の獲得を目指す。また、教育関係者には、公開授業やホームページ等を通して、ICT×プログラミング教育の授業実践を発信する。
2年間を振り返って、自己評価・感想
- ・特別研究指定校の2年間で、研究部長をはじめ多くの教職員の入れ替わりがあった。また、10年目未満の教職員も3分の2を占める。しかし、その中で計6回の公開授業を実施(平成25年度からは通算12回)して、北海道から鹿児島まで日本全国から多くの教育関係者の方々に参会いただき、貴重なご意見をたくさんいただくことができたこと。
最後に
- 特別研究指定校としての2年間の取組を終え、児童の成長した姿が一番うれしく感じます。そして、私達教職員が、児童や多くの教育関係者から学ぶことができた。
- 研究の機会を与えてくださった公益財団法人パナソニック教育財団金村俊治様をはじめ、財団の皆様。そして、常に温かく、的確に指導をしていただいた兵庫教育大学大学院永田智子教授。
- また、指導案検討や研究授業に指導助言をいただいた大阪市教育センター授業づくり支援員柏原玲子先生、兵庫教育大学講師藤倉憲一先生、大阪市教育センター指導主事井上伸一先生、大阪市教育センター指導教諭坂口朋子先生に深く感謝を申し上げます。
- この2年間の研究は、本校の、そして教職員一人一人の財産です。本当にありがとうございました。
- 兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 教授 永田 智子 先生
2年間の活動を振り返り、本校の取り組みと成果についてコメント
堀江小学校は,2年前にパナソニック教育財団の特別研究指定校となりました.「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業の創造-総合的な学習の時間での協働学習を通して-」というテーマです.総合的な学習の時間における【情報の収集】【整理・分析】【まとめ・表現】といった「探究の過程」において,児童らがICTを活用し思考・判断・表現する授業づくりに精力的に取り組まれました.また,児童主体の学習のために【課題の設定】を大切にすること,児童もともにルーブリックを考え評価することなども取り入れられました.教科の学習に比べ,学習内容も方法も評価方法もゼロから考えねばならない総合的な学習の時間での取り組みは大変なことだったと思います.公立学校としては十分満足できる取り組みをされていたのですが,さらなる高みを目指してほしい外野(わたし)は「もっと児童主体の学習に!」と要請しました.そしてそれに応えようと,最後の研究授業まで考えぬいていただきました.研究授業の数は2年間で32回にも及んだそうです.そのほかにもたくさんの公開授業や研修に取り組まれました.驚きでの回数です.
こうして振り返ると,堀江小は,ピーターMセンゲ(2014年)が言うところの「学習する学校」なのではないかと思います.「学習する学校」の実現には5つのディシプリン(共有ビジョン,システム思考,チーム学習,メンタルモデル,自己マスタリー)が重要だと言われています.堀江小の場合は,「総合的な学習の時間における協働学習において,ICTを効果的に活用して,子どもたちの思考力・判断力・表現力を育もう」というビジョンを全教員で共有し,その目標を実現するための組織や研修のシステムを作り,学年団や研究部,若手の会など多様なチームで学び合うことで,根強く残る教師主導というメンタルモデルに対処したり,個々の教員が自己の授業力を高めておられたりした点が該当しています.
次年度からは未来を創る堀江ICTプログラミング教育プロジェクトを進める予定と聞いています.また新しいフェーズに突入されるのですが,きっとこれまで同様,「学習する堀江小学校」として,よりよい実践と成果を創り上げていかれることと期待しています.他校の方は,これからも堀江小学校に注目してください.公開される授業例や成果だけでなく,研究に取り組む学校の姿勢そのものが参考になると思います.