札幌市立星置東小学校

第48回特別研究指定校

研究課題

思考し自らの課題を解決する「文字学習」から掘り起こす国語の力
~文字の指導[知識・技能]の領域に、ICTをいかに活用していくべきか~

2023年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
本校は、国語科における「思考する文字学習」について研究を積み重ねてきた。......

アドバイザーコメント

姫野 完治 先生
札幌市立星置東小学校が、パナソニック教育財団の実践研究助成で特別研究指定を受け......

札幌市立星置東小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 札幌市立星置東小学校
アドバイザー 姫野 完治 北海道教育大学 教授
研究テーマ 思考し自らの課題を解決する「文字学習」から掘り起こす国語の力
~文字の指導[知識・技能]の領域に、ICTをいかに活用していくべきか~
目的
  1. 1.教師主導になりがちな文字指導の領域にICTを利活用し、「思考する文字の学習」を実現することで、国語科の学力、資質・能力を底上げすること。
  2. 2.言葉への興味、活用できる語彙を増加させていくとともに、言葉の豊かさに目を向けていく学習を構築すること、またそのための指導力を身に付けること。
現状と課題 これまでほとんど手つかずの領域であることから、児童の変容をどう考え、成果をどう測るかについてアドバイザーの助言を得て再構成し固めてからスタートしているところ。またこの研究推進の過程を、全職員で共通理解することが当面の課題。
学校情報化の現状 市の配備計画に基づいた整備(一人一台端末や各教室の wi-fi 環境等)が完了している。今後はこれらをどう活用していくかが問われるという認識で一致している一方、限られた学校予算でこれら多くのICT機器を維持・保守・更新をしていけるのかが不安である。教育活動に欠かせない他の消耗品に、手が回らなくならないか。
取り組み内容
  1. 1.1年次は、これまでの実践から、文字指導の指導過程やICT機器の使用状況を洗い出して課題を整理する。アドバイザーや民間教育団体等からの教示を得て、今後の研究計画を再構成していくための素材を多く抽出していく。
  2. 2.文字学習の汎用的指導方法「ホシオキスタイル」の完成に向け、試行、実践、精査、課題抽出等を重ねてパイロット版をつくり、2年次につなげる。
成果目標
  • ・子ども達に文字・漢字を正しく整えて書く力を付け、獲得する語彙の数を増やす。それにより、自己を表現する自信につなげ、表現力、コミュニケーション能力を向上させることで国語科の学力を示す指標を上げる。
  • ・画一的、受動的だった文字指導、文字の学習から脱却し、ICTを最大限活用した効果的な学習を創造していける授業構築の眼を養うなど、国語科の[知識及び技能]領域を柱とした指導力の向上。
助成金の使途 授業記録・教材提示用ビデオカメラ、移動用大画面モニター、移動用書画カメラ、共同研究者謝金、北海道書写書道教育研究大会(帯広大会)参加旅費、成果報告集(スタディレポート)印刷・製本他
研究代表者 佐々木 雅哉
研究指定期間 2022年度~2023年度
学校HP https://www.hoshiokihigashi-e.sapporo-c.ed.jp
公開研究会の予定 2年次に公開研究会を開催。また、北海道書写書道教育研究大会において、本研究について発表予定。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

●「ホシオキスタイル」のイメージを固めなければ!

・重点は…文字や漢字、言葉、書写などにかかわるカリキュラムの見直し→教科間、学年間の学習のつながりを明らかにし、国語科の学習に限定することなく学びを広げていくことができるように。

…ルーブリックを活用したデータの蓄積→年間を通じてルーブリックを活用し、データを蓄積する。また、保護者、児童の実態を分析することで、学習への意欲の変化(我々の取組と照らして)を見ていく。

…ICTの活用。効率化、最適化のために。目標、目的に合った機器、アプリの選択→アプリの開発ではなく、既存のものから使えそうなもので試行。

…課題設定と協働的な学びを。→子どもたちが主体的に学びに向かい、その活動を通して力を付けることができるような課題設定を工夫する。自分と他者の考えを比較したり、共有したりする場面を適切に設けることで、学びが深まっていくと考える。協働的な学習を通して、児童自身が思考しながら知識、技能を獲得していくことを目指す。ICT活用と関連。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ●ひとまず、今後進めることについては整理できたのかと思います。先生方に実践してもらうことは決まっていますので、それと並行して、まずはカリキュラムマップづくりになるのでしょうか。これが決まると、全体がはっきりしてくるのでは。
  • ●ルーブリックとありますが、私のイメージでは、「自己調整学習」の方が合っているかも。ルーブリックは、あくまでも教師側が設定する基準。それに併せて子どもが自己評価し、その変容過程を子ども自身がメタ認知して、次の課題を創り出そうっていうことですね。これについては、勉強会などするといいかも。

→研究部での侃々諤々

本期間の裏話

  • ●アドバイザーの姫野先生には、微に入り細かく相談させていただいています。迷いながら進んでいる我らに、明確な羅針盤を与えてくださっています。そんな姫野先生から嬉しいメールの一言が。
    「…さっそく研究部で検討されていたとのこと、さすが若い先生方のパワーは素晴らしいですね…」
    我々のモチベーションはますます上がりました。

本期間の成果

  • ●ICTの活用が、より積極的に。何より子どもたちは何の抵抗もなく。
  • ●抵抗がある、どころか、使いやすいように自分なりにカスタマイズを。
  • ●「ことば」を大切にするとは何かが、学習を重ねる度になんとなくわかってきた。子どもたちにも、先生方にも。

→言葉の学習へのICTの刺さり方。教師が考えるより、子どもたちは親和させている。

今後の課題

  • ●研究内容をさらに絞ろう。ゴールをクリアにしていこう。
  • ●その上で、地道に実践していこう。
  • ●使えそうなアプリを探っていこう。

今後の計画

【1年目=今年度】

[研究部として]

  • ・学びの地図(カリキュラムマップ)の作成
  • ・さらなるICTの活用
  • ・アンケート分析
  • ・ホシオキスタイル(全体像)の共有
  • ・全校研、実践研究発表会に向けて

[教職員]

  • ・作成したマップによる授業構築
  • ・ルーブリックの活用

気付き・学び

  • ●研究内容を絞っていくほど、実践をやりやすくなる。
  • ●教員の数が集まれば集まるほど、文殊の知恵となる。本校は、それに最適な学校の規模と、先生方の勢いがある。

成果目標

  • ・子どもたちに文字・漢字を正しく整えて書く力を付け、獲得する語彙の数を増やしたい。
  • ・画一的、受動的だった文字指導、文字の学習から脱却し、ICTを最大限に活用した効果的な学習を創造していける授業構築の眼を養い、指導力を向上させる。
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 札幌市立星置東小学校は、児童数730名、学級数25学級、教職員数40名の、札幌市内では比較的規模の大きな小学校で、今回初めてパナソニック教育財団による特別研究指定校に採択された。

 国語科における漢字の定着や活用できる語彙の不足に対して問題意識を持ち、文字や漢字を自分のものとして自由に操り表現し、語彙として活動できる子どもを育てたいと考え、そこにICTを利活用できないかと2年間の研究計画を立てている。文字の定着というと、ともするとICTを活用したドリル学習に偏りがちになるところを、そうではなく「思考し自らの課題を解決する」ことに重点を置いているところに星置東小学校の独自性がある。

 4月の打ち合わせ、7月11日の授業公開を参観すると、子どもたちは日常的にタブレットを教育活動に使い、特に抵抗なく使用できている。ここに、どのような形で本研究の取組みを組み込めるかが、今後の研究を進める上でカギになる。2年目に提案予定のホシオキスタイルを明確にすることは今後の課題と言えるが、そこに向けて、すでにカリキュラム・マップや自己評価表の作成に取り組み始めていることは、今後の研究を進める上で基盤となると考える。若手教師が揃う研究部と、それをまとめる管理職が一緒になって研究を進めている様子から、これからのさらなる研究推進が期待される。

 特別研究指定校の場合、2年間という中長期で研究を進められる良さがある。当初の計画を基盤としつつ、新しいことにもぜひチャレンジして、他校でも生かせる学びのモデルが作成されることを期待したい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ・3つのグループ(言葉、漢字、書写)に分かれて授業づくりを行い全学年が授業実践を行った。学習の目標とする知識・技能を身に付けるための手立てとして、ICTだからこそできること(ICTの特性)をどのように活用していくべきか授業検討を重ねてきた。
  • ・3年生(書写グループ)、4年生(漢字グループ)はパナソニック教育財団、アドバイザーの姫野先生を招いて全校研を行った。
  • ・全校研後、今後の方向性、来年度に向けて整えていきたいと考えているカリキュラム・マネジメントの方向性、自己調整学習につながるルーブリックの質問項目を中心にご助言をいただいた。

→ ICTの特性を見極めながらの書写学習(書写グループ)

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・どの授業もICTのよさを生かした授業になっていた。
  • ・授業後の検討が活発に行われる教職員の雰囲気が素晴らしい。
  • ・自己調整学習を進めていくためには、今までの学びを蓄積しておき子どもたちがいつでもそれをふりかえることができるような仕組みを作っておくのも方法の一つである。
  • ・カリキュラム・マネジメントの形式を見直したほうがよい。文字学習を通して本研究で目指す目標を明確にし、それに焦点を当てていくと目標の系統性、6年間のつながりが分かりやすくなる。

本期間の裏話

  • ・どの学年も初めての研究内容に試行錯誤しながら、授業づくりを進めている。「なぜそこをデジタルで行うのか、アナログではだめか」子どもにとってプラスになる活用方法を模索した。
  • ・カリキュラム・マネジメントの整備に苦労した。一度整えたが、研究内容に沿わず、何度か作り直している。姫野先生からアドバイスをもらった後、作り直すとメールに「ばっちり」の言葉があった。研究部の皆、とても喜ぶ。

本期間の成果

  • ・ICTの効果的な活用の仕方について、授業づくり、授業実践、全校研を通して教職員全体で知識を深め、共有することができた。
  • ・カリキュラム・マネジメントなど、今後の研究の方向性を確認することができた。

→ 研究部のまとめ/成果まとめと今後の方針

今後の課題

  • ・文字学習で目指す目標を明確化、子どもの姿とつなげるための方法を考察
  • ・教育課題に沿った(本研究の趣旨に則った)カリキュラム・マネジメントの整備をいかにしていくか

今後の計画

  • ・今年度の実践から成果と課題を出し、ホシオキスタイルにつながる学習方法、ICTの活用方法の提案
  • ・児童アンケート、保護者アンケートの実施、前回アンケート結果との比較
  • ・教職員アンケートを実施、結果を受けて来年度の研究推進の方法を改善

気付き・学び

  • ・ICTの手立てを有効なものにするためには、これまで同様に実態に合わせた課題の設定や教材化が重要なことを改めて実感

↑ 言葉グループの全校研

成果目標

  • ①本校の独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成
  • ②目標①を全校で実践することを通して、研究課題の解決、文字学習がめざすところの「ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字など正しく書くことができる。書く際の原理・原則を理解することができる」「言葉の力をつけることができる(言葉を使いこなす)」児童の育成(子どもの姿で体現?)

●グループ内(言葉・書写・漢字)研修の様子

↑ 漢字グループ

↑ 書写グループ

アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 特別研究指定校として活動を開始してから半年が経過し、若手教師が中心となって運営する研究部を核として、学校全体で実践研究に取り組む様子が垣間見られる。11月に行われた公開研究会では、文字学習にどのようにICTを活用するかについて各学年で検討してきた成果が授業実践として提案された。ICTを活用することにより、子どもが自主的に自己の学びとモデルを比較し、違う方法を試すなど、一斉指導でありながら、個々の子どもが自分の課題に応じた学びを探索する様子が見られた。そこでは、個々の学びのプロセスや特性をふまえたユニバーサルデザイン化された授業が実現されていた。授業後の検討会では、それぞれの授業の目標に向けた検討のみならず、思考し自らの課題を解決する上で、ICTがどのように機能していたのかが、活発に協議された。

 その一方で、研究会後に行われた話し合いの場では、研究部が創造したカリキュラム・マネジメントがコンテンツ・ベースとなっており、せっかくの「思考し自らの課題を解決する力の育成」とうまく接続しておらず、カリキュラムの体系が明確化されていないことがわかった。その点についてアドバイスを行ったところ、研究部の先生方の目の色が変わり、形式的なカリキュラム・マネジメントではなく、真にホシオキスタイルの開発につながるカリキュラム・マネジメントを創造したいと再検討の場がもたれた。しかも、研究部が作成したカリキュラム・マネジメントの枠組みを骨格として、さらに各学年・教科で細部を作り上げていくことになった。2年間の計画の中で、1年目の後半にカリキュラムの基盤が完成したのは、次年度に向けてとても大きい。思考し自らの課題を解決する力を育成するための文字学習の具体的実践が蓄積され、多くの学校のモデルとしてホシオキスタイルが明示化されることを、今後も期待したい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • ・各学年で行った授業実践の成果と課題を集約し、そこから来年度に全校で取り組む活動、学習内容を考えた。
  • ・児童・保護者アンケート(2回目)を実施。実践を通して児童がどのように変容したかを分析した。
  • ・ルーブリックの分析を行い、年間を通して行った実践の効果を調べた。
  • ・「学びのマップ」の原案を作成。
  • ・今年度の学校研究について教職員にアンケートを行い、来年度の研究体制の原案を作成した。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・「学びのマップ」について、文字学習に他教科を関連させることが本研究の独自性につながることをアドバイスいただいたため、学びのマップを再構築していくことにした。
  • ・児童、保護者に行うアンケート、授業実践後のルーブリックの実施方法についてアドバイスをいただいたものを来年度に生かす。

本期間の裏話

  • ・姫野先生から、「研究部がいきいきと研究実践していて素晴らしい」とほめていただくことが何よりうれしく励みになっている。
  • ・野のものとも山のものともならず焦っていた「スタイル」が徐々に形になっていくことも、大きな喜び。
  • ・物置のような狭小スペースで侃々諤々とやっている研究部が頼もしい。

研究部の構想跡

本期間の成果

  • ・(ひとことですが)今年度の成果と課題が明らかになり、来年度の方向性が見えてきたこと
  • ・視界がはっきりしてきたこと

今後の課題

  • ・「学びのマップ」完成
  • ・特別研究指定校の2年目として、4月からスムーズに研究をスタートできるように教職員全体でホシオキスタイルを理解、共有し実践できるようにすること
  • ・公開研究会の計画

今後の計画

  • ・3月…来年度の学校研究について職員に提案、共有
  • ・4月…2年目の研究スタート
       年間計画作成
       ホシオキスタイル本格始動

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

  • ・文字学習×ICTという未知の世界に飛び込み、研究部、教職員一同で手探りの状態からスタートした1年だった。
  • ・慣れないことも多く、悪戦苦闘していたが、姫野先生からのアドバイスのおかげでここまでやってこれた。
  • ・星置東の子どもたちにとってよりよい学びになるよう教職員が互いにアイデアを出し合いながら授業づくりを行うことができた。
  • ・年間の取組を通じて、子どもたちには「主体的な文字学習」の種をまくことができたのではないかと感じている。
  • ・来年は、ついにホシオキスタイルが本格的に動き出す。子どもの育ちにつながる研究を引き続き行っていく。

漢字グループ

書写グループ

ことばグループ

成果目標

  • ・本校独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成「ホシオキスタイル」の全体像を構築
  • ・全校での実践を通して、文字学習が目指すところに向けての児童の育成「正しく書く」、「文字を書くための原理・原則を理解する」、「言葉を使いこなすための素地を体得する」
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 札幌市立星置東小学校では、国語を始めとする文字学習におけるICT活用を中心的な研究テーマとして位置づけている。採択当初は、申請の中心的な役割を担った校長と、実際に研究を推進する研究部の間で、研究テーマについて認識に若干差があり、どのように進めるか喧々諤々協議を行う場面もあったが、若くやる気のある研究部を中心として、改めて研究の進め方や中心テーマを検討し、具体的な研究活動が推進され始めた。文字学習におけるICT活用というと、ともすると国語の授業、しかも新出漢字の学習のみに限定されてしまうことも想定されるが、星置東小学校では、国語や書写の授業はもとより、他教科との関連も見据えて、カリキュラム・マネジメントの視点で学習を進めようとしている。11月に行われた公開研究会に向けて、研究の主眼となっているホシオキスタイルの原型を構想し、それを授業実践として具現化したことにより、授業後の協議会はとても活発な議論が行われた。3学期に児童と保護者を対象として行ったアンケート調査においても、こういった取組が成果に表れてきている。

 次年度に向けて、研究の主題にもなっている「思考し自らの課題を解決する」を、文字学習の中で実現するための手立てのモデル化が重要になってくると考える。1年目に作り上げたホシオキスタイルをさらに具体化し、教材データやICTを活用した授業づくりを、各学年で推進、蓄積し、その関連を見える化することによって、他校への波及効果にもつながる。そのためにも、2年目を迎えるこの時期に、いかに研究を進める仕組みと仕掛けを構築し、共有するかが重要となる。星置東小学校の研究の原動力である若手研究部を中心として、ますます研究を深め、子どもたちの学びにつながっていくことを期待している。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・研究実践発表会(11月)に向けた、研究内容の精査と全教職員での共有化。
  • ・モデル授業づくりを通した研究内容の具現化。
  • ・校内ICT環境の充実。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・学級全員が一斉にタブレット端末を使うのではなく、それを選択し、個別最適な学びを構築できる学習スタイルをとるとよい。
  • ・語彙の充実など子どもが学習した成果を実感させるためにICTをどのように活用できるかを探っていけるとよい。

本期間の裏話

  • ・授業づくりは煮詰まるというよりも、多くの手立てが出され、充実したものだった。教師自身が、子どもの思考の流れを想定することを楽しみながら授業をつくれるようになると、子どもにとっても楽しい授業になっていくと考える。

本期間の成果

  • ・研究の視点を授業レベルで具体的に考えることで、授業づくりにおける教職員間の困りや新たな展望など、前向きに授業づくりに向かう風土をつくることができた。
  • ・本校の学校教育目標「生活を創る力をもった子どもの育成」の重点目標「ほほえみとかがやきに満ちたたのしい学校」に基づき、授業の中に「またたく」(問いをもつ)、「かがやく」(子どもが協働して学ぶ)、「ほほえむ」(子どもが自己の学びを実感する)ための手立てを位置付けることを共通理解し、より本時における教師の手立てと子どもの具体的な学ぶ姿を想定できるようになったと考える。

今後の課題

  • ・本時の目標やゴールをより具体的に想定する必要がある。そのためには、本時においてどのような国語(言葉)の力を大切にするのか、また、どのような手立てで評価するのかをより具体的にしていく。
  • ・星置東小で目指す子どもの姿や研究における文言をより具体的かつ、分かりやすく説明できるようにしていく。

今後の計画

  • ・9月14日(木)指導案締め切り
  • ・10月11日(水)姫野教授を招き、指導案検討会を開催し、ご助言をいただく。
  • ・11月22日(水)研究実践発表会
    (市内の先生方をお招きし、本校の実践に御意見・ご助言をいただく。)

成果目標

  • ・本校独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成「ホシオキスタイル」の全体像を構築する。
  • ・全校の実践を通して、文字学習が目指すところに向けての児童の育成「正しく書く」、「文字を書くための原理・原則を理解する。」、「言葉を使いこなすための素地を体得する。」
  • ・研究の視点である「主体性を生む教材化」、「学びを促すICTの活用」について実践を通して具体化し、意味のあるICTの活用についての実践例を積み上げていく。
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 申請段階から研究をリードしてきた校長と教務主任が異動になり、またそれ以外にも多くの教員が入れ替わったこともあり、4月~7月にかけては、1年目の研究をふまえ、いかに研究を継続発展していくかを重点的に検討してきた。新たに発足した研究チームが中心となり、改めて当初の研究課題に立ち返り、文字の指導におけるICT活用の可能性を探った。

 6月28日に行われた校内授業研究会では、6年生を対象とした短歌の授業を行い、全教員で協議会を行った。2つの短歌モデルの比較をもとに、読み手がより一層楽しさを想像できる言葉の選択や組み合わせがあること、その視点から自分が作成した短歌を見直す活動を行った。Jamboardを使い、作成した短歌の言葉を入れ替える子ども、修正前後の短歌を見比べる子どもなど、それぞれの考えのもとで試行錯誤を続けた。授業後の協議会では、忌憚のない意見や感想が出され、本時の授業改善に終始することなく、研究課題である「思考し自らの課題を解決する『文字学習』から掘り起こす国語の力~文字の指導【知識・技能】の領域に、ICTをいかに活用していくべきか~」の観点から、活発な意見交換が行われた。

 多くの教員の異動により、研究をいかに継続・発展していくかに不安もあったが、この校内研究会を経て、研究の目指す方向性や具体的な進め方が共有され、今後の10月の指導案検討会や11月の教育実践発表会に向けて取り組む体制が整った。日々の実践を積み重ねるとともに、若き挑戦者たちが集う研究チームを中心に、ホシオキスタイルのモデル化を目指して研究を推進することを期待している。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

 本期間は、11月22日の教育実践発表会に向けた準備を中心に行った。

(1)10月11日(水)研究全体会【第2回アドバイザー訪問】

 研究全体会では、パナソニック教育財団の方々と姫野教授にお越しいただき授業検討を行った。4つの部会ごとに分かれて、指導案検討や教材準備、板書案の作成などを進めていき、最後には、以下のようなご助言を姫野教授よりいただいた。

 次年度の発表に向けて、授業を発信するだけではなく、検証を行っていくことが必要となる。授業の紹介で終わるのではなく、検証とセットにしていくことが大切である。

  • ・あらためて研究テーマを大切にして、授業作りを進めてほしい。
  • ・ホシオキスタイルを再検討していきたい。ICTの活用を具体的に考えていくことが大切。可視化や共有など機能を明確にして打ち出していかなくてはならない。
  • ・知識・技能に特化した本校の研究テーマ。ドリルだけではなく他にどんなことができるのか、非常に挑戦的なテーマなので、難しい分野に光を与えてほしい。

 その後は、実践発表会に向けて、4部会ごとに授業作りを細部まで詰めていったり、同領域の学年で交流を行ったりしながら、準備を進めていった。

(2)11月22日(水)教育実践発表会

 実践発表会では、およそ60名の参加があった。3領域・4部会・7実践を公開し、どの実践でも、国語科の文字学習とICTをつなげた授業を行った。授業後の全体会では、星置東小の研究について説明を行った。その後の分科会では、授業を通して子どもの変容が見られたのか、ICTの活用は子どもの成長につながっていたのかなど、活発な意見交流が行われ、大変充実した話合いとなった。

【公開授業】

文字の原理領域

1年生「かん字の話」

4年生「文字の配列『白馬』」

ほほえみ学級「かたかな あつまれ」

語彙領域

2年生「かたかなでかくことば」

6年生「たのしみは」

表現領域

3年生「はんでいけんをまとめよう」

5年生「季節の言葉3 秋の夕暮れ」

全体会・分科会

 分科会の最後には、札幌市教育委員会の山口剛指導主事とアドバイザーの姫野完治教授から本校の研究と本日の授業についてご講評をいただいた。

山口指導主事より

 札幌市の学校教育について推進していく中で提案性が高い発表会だった。

  • ・子どもたちの机上にタブレットを学習道具として置いていた。デジタルとアナログの選択を子ども自身がしていくことが大切。
  • ・情報活用能力指標について、9年間でどのように成長させていくかを考えていく必要がある。
  • ・ホシオキスタイル、学びを促すとはどういうことか。子どもが主体的に学びを進めること、学びのコントローラーは子ども自身にある。教師ではなく、子どもがツールを探していくのが札幌市が目指すべき姿である。

姫野教授より

 研究の副主題について

  • ・個別最適な学びなどいろいろある中で、文字指導に特化した研究は初めてである。思考し自ら学びというテーマも、珍しく挑戦的だった。
  • ・ICTを活用するのは難しい。従来は、電子教科書等しかなかった。
  • ・ホシオキスタイルは、文字指導に沿っていたのかを考えていきたい。国語は体系的になっているわけではないが、ホシオキスタイルによって創ることができた。
  • ・デジタルとアナログの共有が大変よかった。

 今後について

  • ・人も変わり、年度も変わった中で、研究が継続されていた。
  • ・本校の研究は、今日で終わるわけではない。東京と大阪で発表があるので、検証していく必要がある。
  • ・子どもの学びがどのように変容したか、どういった子どもの学びにつながったのかを検証し、発表につなげていきたい。
研究紀要
星置東小の研究
学習指導案

本期間の裏話

  • ・人数や場所の制限がない実践発表会は、久しぶりであった。多くの先生方と一緒に授業を通して、討議を行うことができたのは、非常に感慨深いものがあった。感染症の流行なども懸念していたが、無事に開催することができたことを嬉しく感じた。

本期間の成果

  • ・研究主題「豊かな心で学び続ける子どもの育成」に迫っていくことができた。
  • ・授業を通して、主体性を生む教材化の具体が見えてきた。
  • ・子どもの学びを促すICTの活用法が広がった。

今後の課題

  • ・2か年の研究の成果と課題を整理し、ホシオキスタイルの見直しを行っていく。
  • ・来年度の研究発表に向けて、子どもの学びの深まりと変容を見取り、検証を行う。
  • ・これまでの研究を次年度につなげていき、新年度の校内研究の方向性を模索していく。

今後の計画

  • ・12月25日(月)【実践報告書 締め切り】
  • ・ 2月20日(火)【モデル授業②】本校の研究の成果を、授業を通して確かめる。
    【研究全体会】姫野教授を招き、研究の成果と課題についてご助言いただく。
  • ・ 3月 1日(水)研究全体会 新年度の研究の方向性を提案する。

成果目標

  • ・本校独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成「ホシオキスタイル」の全体像を見直し、新たなスタイルを模索していく。
  • ・全校の実践を通して、文字学習が目指すところに向けての児童の育成「正しく書く」、「文字を書くための原理・原則を理解する。」、「言葉を使いこなすための素地を体得する。」
  • ・研究の視点である「主体性を生む教材化」、「学びを促すICTの活用」について実践を通して具体化し、意味のあるICTの活用についての実践例をまとめていく。
  • ・2か年の研究を通して、子どもの学びがどのように変容したかを検証し、次年度の実践発表を行う。
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 特別研究指定校2年目の後半を迎え、11月22日に予定されている教育実践発表会に向けて、研究のピッチが加速してきた。10月11日に開催された指導案検討会では、「主体性を生む教材化」と「学びを促すICTの活用」という2つの視点を設け、各学年部で提案する授業について喧々諤々と協議が行われた。授業者になる教師のみならず、学年みなで一つの授業を作り上げていく様子が見られ、改めて本校の協働性や同僚性の素晴らしさを感じた。しかしながら、たしかにICTをふんだんに用いた授業が構想されていたのだが、そもそもの研究テーマである「思考し自らの課題を解決する『文字学習』から掘り起こす国語の力」との関連が薄れ、また実施予定の授業の成果をいかに検証するかという視点もあまり感じられなかった。そこで、今一度特別研究指定校としての研究テーマを大切にしてほしいという点と、教育実践発表会をゴールとするのではなく、この成果を検証して次年度に発表することも見据えて研究を推進してほしいとの助言を行った。

 そして迎えた11月22日の教育実践発表会。札幌市内から多くの参観者が訪れ、参観授業やその後の協議会も盛会に終わった。ICTの活用が子どもの学びにどのように機能していたのかや、教材化の成果と課題など、多様な意見交換が行われた。「文字の指導【知識・技能】の領域に、ICTをいかに活用していくべきか」という研究の柱については、今後、これらの授業研究やアンケート調査をふまえて検証していくことになる。一般的な校内授業研究では、授業を提案して一段落してしまう場合が多いが、特別研究指定校には、授業やホシオキスタイルのモデル化と検証を行うことが期待されている。残りの研究期間は短いが、知識・技能領域で子どもたち自身が思考し課題を解決するICT活用のあり方を提案するため、今後も協力して取り組んでいきたい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • ・1月 研究実践発表会の実践を振り返り、報告書を作成した。
  • ・2月20日(火)研究全体会【第3回アドバイザー訪問】

モデル授業の公開

 本校は、国語科における「思考する文字学習」について研究を積み重ねてきた。ICTの活用法を探り、いかに子どもが主体的に学習に向かっていくか、実践を積み重ねながら模索してきた。これまでの研究の成果と課題を土台とし、国語科から研究教科の枠を広げて、理科の授業を公開した。

 子どもたちは生活経験や既習から、水は温度変化によって姿を変えることを知っている。しかし、「水を冷やしていくと氷になる」ことは知っていても、「水は何度で氷になるのか」ということについてはあまり分かっていない子が多い。単元の始めに、身近な存在である水についてどこまで分かっていて、どこがはっきりしていないのかなど、子どもの当たり前を引き出しながら、子どもが抱く疑問を束ねて、「水の姿と温度には、どのよな関係があるの だろうか?」という単元を貫く問いを設定した。

 本時では、根拠のある予想や仮説を発想するために、タブレット端末を用いて水を熱したときの実験の動画を繰り返し視聴する子どもの姿が見られた。子どもは、自分が見たい瞬間 に合わせて動画を止めることで、加熱した水のどこから泡が出てくるのかを確かめることができた。更に、実験動画をスロー再生することで、泡がはじける瞬間に湯気のようなものが出てくる様子に気付くこともできた。実際には見逃してしまいそうな場面をじっくりと観察したり、ICTを活用したりしながら学習を進めていく姿がたくさん見られた。

年度に向けた研究の方向性を探る研究全体会

 研究全体会では、パナソニック研究財団の特別研究指定校として2年間の学校研究を行 った成果と課題を報告した。

研究の目的
実践例
研究の成果
研究の課題

 本研究において、子どもが学習に向かおうとする意欲や学びに向かう主体性を高めることができた。しかし課題として、文字や言葉に関するアンケートから、学年が上がるにつれ て意欲の持続が難しいこと、学習を日常に生かそうとする意識を高めることの難しさが挙げられる。今後は、子どもの意欲が持続するための手立てや方策、さらに子どもの日常生活 につながるような学習展開の工夫が求められる。

アドバイザーの助言と助言への対応

北海道教育大学 姫野先生より

  • ○知識・技能を高める従来の方法から、思考する文字学習へと研究を進めていくのは大変難しい試みである。
  • ○6月の発表に向けて、成果を明らかにし、他校へ発信していく必要がある。ホシオキスタイルの見直しが必要である。思考し、自ら課題を見出すためにはICTの活用と従来のホシオキスタイルをつなげていくことが大切。
  • ○2か年で4回実施した児童・保護者アンケートの結果は、こちらが想定していたものよりも、結果が表れていなかった。アンケートの実施の仕方や設問を改めて見直し、成果を見える形にして検証してほしい。
  • ○新年度の研究は、2年間の積み重ねを土台として楽しみながら進めていってほしい。

本期間の裏話

  • ・今回のモデル授業では、若い研究部員が予備実験を行ったり、指導案を作成したり、アイディアを出し合い切磋琢磨しながら授業作りを行っていた。若手教員の熱意とエネルギーがよい授業へとつながっていった。
  • ・研究全体会では、新年度の研究について先生方から多くの意見や質問が出た。全教職員で思いを伝え合いながら進めていくことができる職場環境が、本校の強みであると改めて 実感した。

本期間の成果

  • ・2か年研究の成果と課題を明らかにした。
  • ・新年度に向けて、本校の研究の方向性を全員で共有することができた。

2年間の成果

  • ・国語科文字学習における ICT の活用の仕方が広がった。
  • ・子どもが自ら ICT を活用しようとする意識が見られるようになった。

今後の課題(計画)

  • ・成果報告書の作成
  • ・6月の発表に向けて、準備を進めていく。

2年間を振り返って

 研究が始まった時、「国語科の知識・技能の育成」と「ICTの活用」は、非常に挑戦的なテーマであった。従来の文字学習を思い返してみても、子どもが思考しながら主体的に取り組む姿とはなかなかつながりにくいものであった。研究1年目は、目的を達成するための手だてを模索していった。子どもが何を見て、どのように感じるのか、子どもの目線に立ち授業作りを行うことで、少しずつ私たちが目指すべき方向性が見えてきた。

 本研究が目指す子どもの姿は、国語科における学力、資質・能力の育成をすることで、子ども自身が「国語の学習がよく分かるから、楽しい。」と感じ、言葉に興味関心を高め、自ら学びを積み重ねていく姿である。研究の成果と課題を他の教科・領域へと広げていき、「豊かな心で学び続ける子どもの育成」を目指していきたい。

成果目標

  • ・本校の文字学習に関するカリキュラムの作成「ホシオキスタイル」の全体像を構築する。
  • ・実践を通して、文字学習が目指す「正しく書く」、「文字を書くための原理・原則を理解する。」、「言葉を使いこなすための素地を体得する」ことを育てる。
  • ・研究の視点である「主体性を生む教材化」、「学びを促すICTの活用」について実践を通して具体化し、ICTの活用についての実践事例を積み上げていく。
  • ・2か年の研究の成果と課題を明らかにし、次年度に向けて本校の研究の方向性を探る。
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 札幌市立星置東小学校が、パナソニック教育財団の実践研究助成で特別研究指定を受け、研究を開始して2年が経過した。当初、研究課題が「思考し自らの課題を解決する『文字学習』から掘り起こす国語の力‐文字の指導[知識・技能]の領域に、ICTをいかに活用していくべきか」と聞いた際は、難しい課題にチャレンジすることに驚いたことを覚えている。

 コロナ禍真っ只中、かつGIGAスクール構想が始まったこの時期、巷では一人一台端末を用いて、個別最適な学び、協働的な学びを実現するため、ICTを活用したコミュニケーションの活性化や自己調整に取り組むことが時流であった。そのような中、国語における文字学習でICTをいかに活用するかに視点を当てた星置東小学校の取り組みは、異彩ともいえる。国語を始めとする文字学習におけるICT活用というと、ドリルなどを用いた反復学習が想起されるが、星置東小学校で目指したのは、「思考し自らの課題を解決する文字学習」であり、それは個別最適な学び、協働的な学びにつながるものである。

 2年間にわたった研究の集大成として行われた2月の校内研究では、採用2年目の若手教師が、これまでの国語科から理科へと拡張して提案授業を行った。小学4年生理科「水のすがたと温度」の授業では、水が沸騰すると水量が減ってしまう理由を考えるものであった。水を熱した時に泡が出ていたこと、その泡の正体をどのように確かめられるかなど、子どもたちは国語で習得した多様な表現を用いて意見を出していた。授業後の検討会では、ICTを活用したことの効果やさらに改善する方向性などが話し合われた。

 パナソニック教育財団による特別研究指定は3月で終了となるが、この2年間取り組んだことによる成果は、新年度さらに発展していくことが望まれる。先日の校内研究では、2年間取り組んだ「思考し自らの課題を解決する」ことをさらに深めるため、4月以降は「子ども自らの問い」に焦点を当てることが提案された。星置東小学校の教育実践がさらによりよいものとなり、またこの2年間取り組んだことが、他校へと拡がっていくことを期待している。