大阪市立東高等学校

第45回特別研究指定校

研究課題

ICTを活用した主体的な情報発信スキルを身につけさせる国際連携アクティブラーニング
~海外の仲間たちとつながり、共に学んだ成果を世界に発信する~

2020年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
*Asian Students Exchange Program ‘2020 オンライン開催......

アドバイザーコメント

影戸誠先生
2021年3月、現在、ミャンマーのクーデター軍事政権に対して、民主主義......

大阪市立東高等学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 大阪府 大阪市立東高等学校
アドバイザー 影戸 誠 日本福祉大学 客員教授
研究テーマ ICTを活用した主体的な情報発信スキルを身につけさせる国際連携アクティブラーニング
~海外の仲間たちとつながり、共に学んだ成果を世界に発信する~
目的 継続的な国際協働学習を通して、アウトカム・デザインとインターネット活用モデルを構築する。
グローバル人材の基礎力と、ICT活用能力を明らかにし、これらの力を育成するための広く活用できるモデルとして具体的な展開事例を示す。
現状と課題
  • 必要な予算と人材の確保
    主に対外提携校との交流コスト
  • フェイストゥフェイスの交流機会の充実
    一過性に終わらせない工夫を検討
  • 研究のための調査機会の設定
    実践研究の視座から機会の充実
学校情報化の現状 2018 学校情報化優良校(継続)
取り組み内容
  • 本助成を利用しての体制強化
    校内的にも継続性を持たせる
  • 国際交流イベントへの派遣
    WYMとASEPを柱として研究を展開
    事前・事後の継続的交流を図る
    先進的事例への派遣・調査
    新たな国際交流連携実践の模索
  • 学会等での発表による情報発信
成果目標  授業実践におけるプレゼンテーションと探求学習の体験を設定し、まとめ、提案までを繰り返し実践し、その継続性を求める
 生徒の研究活動として、海外連携校とWYMおよびASEPでテーマ策定して、研究活動をおこない探求学習による協働と共創の成果を発信させる
 校内研究協議会を随時実施し実践成果の報告・発表を行う。これらを踏まえて郊外の各種研究会等での発信を行い、本研究の知見の共有を図る
助成金の使途 タブレットPC、記念盾、国際研修プログラム等への派遣・参加費、印刷費他
研究代表者 池田 明
研究指定期間 2019年度~2020年度
学校HP http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=h523502
公開研究会の予定 日本教育工学協会全国大会など

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・二年間の実践研究のキックオフにあたって、アドバイザーの助言も受けながら、研究計画の詳細を検討しつつ、研究グループ内でのスケジュール感の共有を進めた。
  • ・4月16日(火)、実践研究の開始にあたって、アドバイザーの日本福祉大学影戸誠教授とパナソニック教育財団の関戸様に本校をご訪問いただいた。助成に関するさまざまなご説明をいただき今後の日程などの打ち合わせを行った。あわせて質疑応答にもご対応いただいて実践研究の計画の詳細な検討をすすめた。また、当日は、情報科において、国際交流に取り組む心構えや意義について説明し、今後の実践で取り入れていくための基本となるレクチャーを行う単元の授業を実施した。ご訪問において、この授業にもご参加いただいた。

    *授業で使用したワークシートとスライド抜粋

  • ・5月31日(金)、有明のパナソニックセンター東京で開催された第45回実践研究助成贈呈式に参加。第一部の贈呈式に続いて、第二部ではスタートアップセミナーが実施された。グループディスカッションで他の助成先の先生方との情報交換や交流が行えた。また、さまざまなアドバイスをいただき、今後の実践研究に反映していきたいと考えた。
  • ・6月3日(月)、アドバイザーの日本福祉大学影戸誠教授とパナソニック教育財団の関戸様による第一回目の訪問アドバイスを実施。英語科2年生を対象に講演会を実施した。
  • ・第一回目の訪問アドバイスの機会にあわせて、影戸教授に生徒向けのご講演をいただいた。本年度英語科2年生の全生徒対象で、本年度の集中ゼミナール(プレゼンテーション発表会)のテーマである「私たちが取り組むSDGs」に関連して、国際交流の視座から、企業や学校が様々な形でSDGsに取り組んでいる様子を、写真やビデオなどを用いて分かり易くお話しいただいた。また、カンボジアの学生とのネット会議システムでの交流を実施したり、カンボジア側からのプレゼンテーションをライブで視聴したりする中で、今や世界は様々な形でつながっている実感を生徒たちが経験できた。最後に、効果的なプレゼンテーションの手法についても学習し、生徒にとっても有意義な時間となった。

    *アドバイザー影戸教授の生徒向けレクチャー・カンボジアの学生とのネット交流の様子

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • ・教員がどのように学習機会を設定するがポイントなので、今までの実践経験を活かしつつ、より質の高い国際連携アクティブラーニングが実現できるように、さまざまな仕掛けと工夫を凝らしてほしい。
  • ・ICTとネットワーク活用して積極的に海外と繋いで実践を展開していくべきである。

〇助言への対応

  • ・具体的にアクティブラーニングの実践について、検討を開始した。
  • ・ICTを活用して海外と繋いで展開する授業プランの作成を始めた。授業時間中だけでなく、日常的に生徒がネットを利用して海外とつながりつつ学べる方策について考えていく。

本期間の裏話

  • ・実践のスタートにあたって、具体的な研究内容に関していろいろな角度から検討を行ったが、実際には実践を進めつつ臨機応変に対応していく必要があるようで、検討内容をまとめて共通理解し、結果としてこれらを公表するには至らなかった。
  • ・スケジュールという面で、さまざまなプロジェクトやその他の活動がある中で、特に先生方も生徒たちもスケジュールがバッティングしがちな校内的なスケジュール調整が意外と大変であることを再認識した。

本期間の成果

  • ・本実践研究のスタートアップの期間として、今後の研究にあたってのさまざま検討や調整が行われた。短期的、長期的の両面から今後の展開などを検討した。
  • ・実践に並行しての研究として、実践部分以外の取り組みについても検討がなされた。
  • ・これら成果にもとづく具体的な取組内容については、今後の進捗にともなって随時実施報告をしていく予定である。

今後の課題

  • ・実践については、またスタート段階で、夏休みの国際交流イベントへの生徒参加が、国際連携の実践としては最初の事例となる。この取り組みについて、より効果的な実践となるよう具体的な進め方について急ぎ検討して実践を推進せねばならない。
  • ・長期的展望として実践研究の成果をまとめる工程について十分配慮した研究の遂行が求められる。実践研究においては、どうしても生徒と向き合う実践部分に多くの時間と労力を割くことになるが、ランディングポイントを見据えての進捗管理が課題である。

今後の計画

  • ・8月5日(月)、6日(火)に開催される国際プレゼンテーション大会World Youth Meeting‘2019(WYM2019)に生徒チームを編成して参加予定。海外協力校とともに協働プレゼンテーションを実施する。
  • ・WYM2019に関連して、高雄市立瑞祥高級中學と高雄市立前鎮高級中學とともに協働学習をすすめて、その結果を生徒たちがプレゼンテーションで発信する。
  • ・10月18日(金)~19日(土) に開催される第45回 全日本教育工学研究協議会全国大会において、本実践研究に関連した研究発表を行う予定。

気付き・学び

国際協働学習においては、海外の仲間とリアルタイムで触れ合える場面をいかに効果的に設定できるかという点が重要なポイントであると感じた。文献やネットの検索によってさまざまな知識は手に入るが、学習者が本当の意味での気付きを得るためにはリアルタイムで交流することに意味がある。この部分についても、研究を通して考察を重ねて明らかにしていきたいと考えている。今後詳細に検討を行う。

成果目標

  1. ・二年間の実践研究の研究計画を精査し、研究をスタートさせる。平成29年度~30年度の一般実践研究で得られた知見を、本研究でさらに深めて、国際連携アクティブラーニングで得られる学びや育ちの実践方法の立案・実施とその成果研究の具体的手法について計画し実施に移す。
  2. ・さまざまな調査とその分析により、国際連携によって得られた成果が、その後の参加者のライフプランにどのように活かされているのかを考察する方法について検討する。
アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

1.研究課題

ICTを活用した主体的な情報発信スキルを身につけさせる国際連携アクティブラーニング~海外の仲間たちとつながり、共に学んだ成果を世界に発信する~

2.6月3日 カンボジアとZOOM

 東高校はこれまでのたゆまない国際交流活動の中で、台湾高雄市教育局との連携を深めている。

 日本側19校と連携し、今年度は台湾、カンボジア、ベトナムはじめ海外35校と交流をベースに幹事校としてWYMを牽引している。

 6月3日では、テレビ会議システムを活用したカンボジア教員研修センターのM君との交流を開催した。M君はこの夏のワールドユースミーティング(WYM)に参加するカンボジア代表の一人である。

 国際的なテーマとなっているSDGsの学習と合わせてカンボジアにとってのSDSsの意味もともに考えた。「途上国にとってのSDGsにどんな意味があるのか」といった基本的な「質問」「探求の視点」からのテレビ会議である。

  • ・国際連携は面と面で、国内での交流も大切
  • ・探求の視点=学習者中心

3.言語レベルとSDGs

 使用言語は英語。カンボジア学生のプレゼンテーションが20分、質疑応答が10分間であった。東高校の実践は Inquiry based Learningの理論をベースとしている。このテレビ会議で、「カンボジアという国における教育の意味」(途上国における教育の意味、人口ピラミッドから見た国の将来)という課題から展開した。

 高校2年生の平均的な英語レベルを考え、1,300-2,000語レベルの単語を使い、わかりやすい英語の活用を学生に依頼した。単語レベルが高く、何を話したかわからないテレビ会議では、英語嫌いを作り出すだけである。高校2年生では「わかった、使いたい」英語との出会いをICTはサポートできる。

「More than 50 percent of the whole population is 24 years old and younger. 」人口の50パーセント以上が24歳以下であること。

 SDG goal4に視点から、「These young people will be active as future workers.」もしトヨタなどの日本企業が、工場誘致と若者のトレーニングを実現すれば豊かな社会の形成につながると話してくれた。

  • ・海外とのテレビ会議では、課題をもって臨めるようテーマを絞る
  • ・英語の活用場面では、単語レベルを下げ、確実な情報交換とする
  • ・ともに8月にイベントに臨むという関係性をいかし、活動への意欲を高める

4.SEE FEEL Internalize(知ること 感じる事 世界への感覚を身に付ける事)

 国際交流、連携は一過性で終わることが多い。「こんにちわ」に始まり、手を振って「さようなら」と数回やって終わってしまう。

 国内の98パーセントが日本人で日本語を使い、英語使う機会がほとんどない日本では仕方ないことかもしれない。しかし、世界の動きは即時に日本に伝達され、経済も平和も世界的な流れに取り込まれている。

 東高校の取り組みは、まず相手を知る(SEE)ことから始まり、テレビ会議やLINEというICTを活用しつつ、相手との対話に心をこめ(Feel)、交流を続けていく。協働的活動(対面での協働プレゼンテーション作成)を通して、世界を意識ししつ(Internalize)、最終的な学習成果・協働英語プレゼンテーションを獲得している。Leaner-Centeredであり、対面、協働作業というダイナミックな時間の共有、実際の活動(Tangible action)に支えられている。

  • ・日本の特性、English as a Foreign Countryの環境
  • ・See Feel Internalizeの展開
  • ・<Society5.0に向けて取り組むべき教育政策の方向性>
    「実際に体験することが重要」

5.最も大切な連携校との時間

 ネットワーク上での準備のあと、台湾の高校2校とチームを作りWYMに向けてプレゼンテーションを制作していく。

 打ち合わせ、考え方の違いを乗り越えるときの言語は何であろうか?

 もちろん 英語である。協議のために英語を活用する学習場面がこれまで、教室での学びの中にはなかなかみられない風景である。

 論議を行い、誤解を乗り越え、「conflict Resolution」を必然的に乗り越え、最終プレゼンテーションへの繋がっていった。当日、これまでの教訓をいかし、連携したプレゼンテーションを、WYMの会場びわこくさつキャンパス(立命館大学)で発表していた。

 https://youtu.be/b1wzynkm1Jk
(台湾連携校との協働プレゼンテーション)

共有すべき プレゼンテーションのポイント

  • ・ゆっくりとした聞きやすいスピード
  • ・短文で一つの文章には一つの意味
  • ・シンプルで分かりやすいスライド、スライドはあくまでプレゼンターの支援を目的

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ・当初のスケジュールに従って実践研究の核となる国際交流実践を中心に推進した。実践を展開しつつ、アドバイザーの助言も受けながら、研究グループメンバーそれぞれの指導実践を進め、互いの経過・成果の情報共有を進めた。
  • ・8月5日(月)、6日(火)
     国際プレゼンテーション大会World Youth Meeting’2019 (WYM2019)に生徒チーム2チームを参加させた。従前の交流相手校である台湾高雄市立前鎮高級中學と高雄市立瑞祥高級中學の二校から計6名の生徒をホストファミリーが受け入れ、ホームステイプログラムを実施。それぞれの交流校とチーム編成を行い、2チームに分かれて協働作業によって制作したプレゼンテーションを大会本番第一日目に大会会場の立命館大学びわこくさつキャンパスのホールで発表した。大会二日目には、アクティブラーニングセッションが実施され、第一日目に発表したプレゼンテーションチームがいくつかの教室に分散して、それぞれでフロアとやり取りをしながらのセッションを行った。

    *校内での共同作業と大会当日の会場の様子

  • ・10月18日(金)、19日(土)
     第45回全日本教育工学研究協議会全国大会-島根大会-に研究代表者が発表参加。「主体的な情報発信スキル習得を目指す国際協働学習の実践」というタイトルでの研究発表を実施した。オーディエンスからは質疑に応答したり、発表に対するコメントをいただいたり、有意義な情報発信ができた。さらに、全国から参加した多くの研究者・実践者との交流もでき、大変貴重な情報交流の場とすることができた。

    *研究発表で使用したスライド抜粋

  • ・11月28日(木)
     第二回目の訪問指導として、アドバイザーの日本福祉大学影戸誠教授とパナソニック教育財団の則常様に本校をご訪問いただいた。本校管理職、プロジェクトメンバー教員とのローカルな研修会と国際交流活動参加生徒の活動の様子をご覧いただいた。生徒の活動では、影戸教授から直接生徒たちに国際交流活動の意義とそれを取り巻く様々な環境についてレクチャーもいただいた。

    *影戸教授がレクチャーで使用されたスライド抜粋

    ・12月27日(金)
    台湾高雄市で開催される国際プレゼンテーション大会Asian Student Exchange Program ‘2019(ASEP2019)に生徒チームを編成して参加2チームで参加

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • ・質の高い国際連携アクティブラーニングが実現できるように、さらにさまざまな工夫を凝らしてほしい。
  • ・ICTとネットワーク活用して積極的に海外と繋いだ実践の成果を共有し、広めていくべきである。

〇助言への対応

  • ・2月10日に公開研究会の形で、生徒発表会を全校的に実施する予定で、その内容について検討中である。
  • ・ICTを活用して海外と繋いで展開する授業プランの実践を始めた。授業時間中だけでなく、日常的に生徒がネットを利用して海外とつながりつつ学ぶ方法と効果についてさらに検討していく。

本期間の裏話

  • ・実践スタートから約半年経過して、具体的な実践研究が軌道に乗り始めた。
  • ・やはりスケジュール面の、さまざま調整が難しく、バッティングしがちな校内的なスケジュール調整が大変である。国際交流の柱となる取り組みは、有志参加の形式をとっているが、志高い生徒はほかにもいろいろな案件を抱えており、ことさらスケジュール調整に苦慮せねばならない場面に多く遭遇した。

本期間の成果

  • ・本実践研究の本格的な始動にともなって、さまざまな検討や調整が行われつつの実践となった短期的な成果の検証ができる実践成果があがってきている。今後それらを取りまとめていく段階も進める。
  • ・夏休みの国際交流イベント、ワールドユースミーテイングへの参加が、生徒による国際連携の最初の実践事例となった。
  • ・国際交流行事に参加した生徒たちは直接的な国際交流の経験値を得るばかりでなく、国語のさまざまな場面で活用できるスキルを身につけることができている。これらを具体的に検証して、示していく段階に移したい。

今後の課題

  • ・夏休みの国際交流イベント、ワールドユースミーテイングの参加生徒たちが中心となって、冬休みの国際交流イベント、ASEP2019の生徒チームを編成する。その際には、より効果的な実践となるようファシリテーションの観点から検討して実践を推進させたい。
  • ・前回報告でもあげた、ランディングポイントを見据えての進捗管理がまだ十分に検証できておらず、引き続きの課題である。

今後の計画

  • ・12月27日(月)に開催される国際プレゼンテーション大会Asian Student Exchange Program ‘2019(ASEP2019)に生徒チームを編成して参加予定。海外協力校とともに協働プレゼンテーションを実施する。(本活動報告の期間に該当するが報告書提出期限後の実施となるため次回報告書で詳報を記載予定)
  • ・2月10日(月) に開催予定の生徒研究発表大会(仮)を、公開研究会の形式にして、中間報告的に本研究実践についての情報発信を行う予定。

気付き・学び

国際協働学習において、海外の仲間とリアルタイムで触れ合える場面を迎え、参加生徒はその感激を胸に刻むことができた。これにより、学習者が本当の意味での気付きを得られた実感と深い学びの経験を得られたと感じられた。今後も、本研究を通して考察を重ねてより具体的にしていきたいと考えている。

成果目標

  1. ・二年間の実践研究の研究計画を精査し、研究をスタートさせる。平成29年度~30年度の一般実践研究で得られた知見を、本研究でさらに深めて、国際連携アクティブラーニングで得られる学びや育ちの実践方法の立案・実施とその成果研究の具体的手法について計画し実施に移す。
  2. ・さまざまな調査とその分析により、国際連携によって得られた成果が、その後の参加者のライフプランにどのように活かされているのかを考察する方法について検討する。
アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

概要

 大阪市立東高校、池田教諭をコアメンバーとする文部科学省後援行事ワールドユースミーティング(以後 WYM)は日本福祉大学東海キャンパスと立命館大学びわこ・くさつキャンパスで同時開催され、今年度で21回目を迎えた。

 高校生、大学生が、福井、兵庫、大阪、奈良、京都、名古屋各地から2日間で約1,000名参加した。国内19 校、海外8か国から35校参加し合計54校の参加となった。

 参加国は日本、ベトナム、中国、インド、台湾、カンボジア、マレーシア、韓国、フィリピンであり、大会テーマは「A Sense of Inclusiveness」(あなたの眼に映る私の姿)とした。

 98パーセントが日本人という日本で、英語プレゼンテーションの協働制作、発表を通して、異なる文化が引き起こす「衝突」「課題」に直面し、英語で論議し、問題解決していく。その中で、国際的な協議力を身に着けるところに東高校の企画の特色があり、単なるプレゼンテーション大会とは異なる特徴でもある。

1.東高校の活動

図1.海外生徒と協働で取り組む英語プレゼンテーション(https://youtu.be/b1wzynkm1Jk

1-1 グローバル人材育成 発信型英語コミュニケーションのデザイン

事前(Preparatory Online Stage):インターネットを活用し、台湾とのテレビ会議での論議を踏まえ、プレゼンテーションを完成する。「いくつかの違い、相違」に気づき、乗り越えて完成できる。

当日(Face to Face Stage):チームで多くの聴衆の前に立ち、プレゼンテーションを行う。Intelligibility(わかりやすさ)に重点を置く、メッセージの残せるプレゼンテーションをチームで実施する。

事後:(Post Event Stage):プレゼンテーション動画をwebサイトアップロードし、相互評価に活用するとともに、改善点を探る。参加教員、生徒、学生はレポート作成を行う。

2.東高校の活動と実践成果の普及

 台湾高雄市高雄市立前鎮高級中学との協働プレゼンテーションに取組んだ。当日の発表までに、ホームステイの受け入れ、生徒の自由な英語で論議、葛藤、完成、大会での発表というタスクが設定されており、これらはTask-based Learningとして学習者中心のグローバル人材育成の実践となっている。

 世界9か国の参加の中での発表であり、各グループのプレゼンテーション自体が相互の学び合いとなる。お互いがそのスキル(話し方、立ち方、スライドデザインなど)も共有していく。

 とりわけアジア地域は多くの国がEFL(English as a foreign Language)として英語を学び、日本のように国内で英語を活用する場面がない国が多い。その中でどう発話力を高めていくかは、英語学習だけでなく、グローバル人材の育成の面からも需要である。英語プレゼンテーションという総合英語力を発揮にはスキルとして踏まえるべき事項もあり、東高校はこれまでこの大会の中で学んできた。

 これらの成果は、一校では作り出すことのできない成果であり、ICTを活用し、連携した国際協働プレゼンテーションの持つ力である。

表1 ICT英語プレゼンテーションにおける基本スキル

英語発話力 130語/分のスピード
Google 翻訳 AI語を活用 AI語=(×私はうどんです、〇私はうどんが好きです。)
AIが正しく変換できる言葉  ×I am Udon.
スクリプト 話しやすい短文は 同時に 聞きやすい短文
ファイル
ICT活用ファイル作成
Visual Firstなデザイン 画像は国境を超える
1スライドに力ある1枚の写真
負荷の分散
クラウドサービス活用
グループで取り組み 全体を見ながら 個々の負荷を減らす
最終的には個人ですべてできるまで高める
スマートフォン録画
立ち位置の記録
位置を変える トピックを変える効果を使う
協議は英語で
振り返り録画
グループ内の協議は英語で行う

3.校内との連携

 校内で、プレゼンテーション担当の生徒だけでなく、ホームステイ、市内観光のグループも組織され、英語を介して様々なアクティビティが実施される。

 プレゼンテーションに焦点を当てるならばWYMへの取り組みは校内全体のロールモデルとなり「校内ファイル共有システム」で共有される。これらのモデルは、表1で述べた基本スキルを含むものである。これらは校内のパナソニック教育財団助成実施委員会の教員で積極的に英語の授業、情報の授業の教材として活用される。

 この実践は、何よりも、「自由な英語の発話」環境をもたらし「学習者中心」の実践を可能としている。主体的な取り組みによって、海外参加国に対する「国」意識も変わり、自分の人生を考える上での貴重なデータとなる。School knowledge(テキスト型知識)からActive Knowledge(活用型体験)へと変わっていく時でもある。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • ・当初のスケジュールに従って核となる国際交流実践を中心に実践研究を引き続き推進した。実践を展開しつつ、アドバイザーの助言も受けながら、台湾高雄市での国際プレゼンテーション大会への生徒引率参加を柱として、研究グループメンバーそれぞれの指導実践を進め、互いの経過・成果の情報共有をさらに進めた。
  • ・12月25日~30日、=前回活動報告の詳細補足
     台湾高雄市で開催された国際プレゼンテーション大会Asian Student Exchange Program ‘2019(ASEP2019)に生徒チームを編成し、台湾高雄市立前鎮高級中學、高雄市立瑞祥高級中學をそれぞれホスト校として2チームに分割、各6名で計12名の生徒が現地4泊5日の日程で参加した。
     プレゼンテーションでは、今回の大会テーマである”SDG’s for students”にもとづいて協働プレゼンテーションをそれぞれ行った。前鎮高中チームは”No plastic, fantastic!”、瑞祥高中チームは”Let’s go ZERO – working towards 4 goals by achieving Zero Waste”というタイトルのプレゼンテーションを作成し発表、プラチナ賞とゴールド賞を受賞した。
     また、高雄滞在中の生徒はそれぞれのホスト校においてホームステイプログラムで受け入れてもらった。活動の中心であるプレゼンテーションの作成・実施のほかに、市内観光や授業体験などで滞在を満喫していた。
     参加にあたっては、事前交流で、参加者相互の自己紹介から始まり、出発直前までプレゼンテーションの作成に向けた打ち合わせ中心としたやり取りが続いた。従前の国際交流活動では教員が設定したテレビ会議などの場面を活用しつつ、担当教員同士がメールで連絡を取り合いながら進めるスタイルが一般的であった。しかし、近年のネットワーク環境の進化にともなって、双方の生徒同士がSNSで直接情報交換していくスタイルに変わってきた。参加した生徒たちは事後の交流も続けており、いつでも連絡ができる海外の仲間ができたという声が多く聞かれる。
  • ・2月10日(月) 生徒研究発表大会(公開研究会)
     学校行事として毎年実施している生徒研究発表大会で、本実践研究の対象である国際交流活動に参加した生徒によるポスター発表を実施。全校的には主に二年生の研究成果を発表する目的で実施しており、ポスター発表69本、ゲスト校も含むオーラル発表25本が実施された。  生徒の発表終了後、本実践研究の公開研究会を実施し、財団からのごあいさつに続き、本研究のアドバイザー、日本福祉大学影戸誠教授による「国際交流を超えるTask-Based Learning」のレクチャーを拝聴した。その後、本研究の中間報告を兼ねて台湾との交流実践の様子を紹介した。
  • ・2月13日(木) ルワンダと国際交流授業
     台湾との交流活動実践を柱としながらも、校内においては研究メンバーによるさまざまな取り組みも行われている。2月13日には2年生英語科の授業において、ネット会議システムを利用して、ルワンダの高校生と交流授業を実践した。

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • ・国際交流に参加した生徒たちの気づきや学びが他の生徒たちと共有できるように工夫してほしい。
  • ・さまざまな場面をとらえて研究成果を知見として、広めていくことを積極的に行うようにしたい。

〇助言への対応

  • ・2月10日の公開研究会で、参加生徒によるポスター発表を実施、全校の生徒に向けて情報を発信した。ただし、聴衆の数は延べ数十名にとどまったので、次年度はさらに別の方法も検討したい。
  • ・次年度はより積極的にプロジェクトメンバーの教員による研究内容の発信活動にも取り組んでいきたい。

本期間の裏話

  • ・実践スタートから約1年が経過し、この間さまざまな実践研究が展開した。相変わらずスケジュールの調整や環境の整備には苦心する部分もあるが、何とか折り合いをつけつつ進めている。
  • ・従前の同様の活動では、生徒のリフレクションはいわゆる感想レポート形式の文書で作成させて回収していた。本実践研究において柱となった2つの国際交流イベントに参加した生徒のリフレクションは、今年度から本校で導入されているネット利用の教育プラットフォームであるClassiを利用して作成・提出させた。eポートフォリオへの反映も容易であり、一つのモデルケースとして今後このシステムの検証も続けたい。

本期間の成果

  • ・冬休みの国際交流イベント、Asian Students Exchange Programへの参加が、夏休みのワールドユースミーテイングにつづく国際連携実践事例となった。フェイストゥフェイスの交流の大切さを改めて感じた。
  • ・一連の国際交流行事に参加した生徒たちは国際交流の経験値を得て今後に活かすという良い流れが作れていると感じる。交流活動後にいろいろな場面で活用できる情報活用・発信スキルを身につけることができている。
  • ・国際交流ファシリテーションのモデルプランとなる一連のノウハウが明らかにできるように、この一年間の実践を振り返りつつ、次年度に再度取り組んでまとめていきたい。

今後の課題

  • ・夏休みの国際交流イベント、ワールドユースミーテイングと冬休みの国際交流イベント、Asian Students Exchange Programにそれぞれ生徒チームを編成して参加。一連の流れから大変効果的な国際交流活動が展開できたが、この実践ついての流れを再度次年度の実施で検証して、研究成果としてまとめていく必要がある。
  • ・次年度の最終報告に向けてまとめる成果を見据えて、次年度の進捗管理にあたらねばならない。
  • ・より積極的に研究成果の発信を行い、成果をより広める活動に今後も努めたい。
  • ・昨今の問題として新型ウイルスの感染拡大は国際交流活動にも影響することが想定されるので、臨機応変に適切な対応ができるように備えねばならない。

今後の計画

  • ・年度末に中間報告書をまとめて提出する。
  • ・今年度の成果を踏まえて、次年度の計画を確認・調整する。
  • ・3-4月実施の国際交流イベントの実行委員会打ち合わせにメンバーを派遣する予定。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

  • ・国際交流に関する実践に参加する生徒については、一様に積極的にかかわろうという姿勢がみられ、モチベーションが高いのが一般的であると思われる。本実践研究におけるさまざまな場面でもそれは見て取れる。しかし、その積極性が一次的な高まりに終わってしまっては実践の成果としては寂しい。そこで今回、年度末にあたって携わった生徒たちが他の生徒や先生方に対して自分の得た成果を報告する形式での発信活動を新たな試みとして行わせた。本当の意味で自ら学び考えた生徒たちは、その成果を発信することで再確認し、自信にも繋がったように見受けられた。与えられた内容だけを学ぶ学習活動ではなく、自ら考え学ぶ姿勢を育む実践の良さと大切さを改めて感じた。次年度も引き続き、効果的な実践となるよう研究を継続したい。

成果目標

  1. ・二年間の実践研究の折り返し点を迎えるにあたって、これまでの実践内容に基づいて、研究計画を再度精査し、次年度の実践研究につなげる。本研究での国際連携アクティブラーニングで得られる学びや育ちの実践方法の立案・実施とその成果研究の具体的手法について実施し、検証を続ける。
  2. ・さまざまな調査とその分析により、国際連携によって得られた成果が、その後の参加者のライフプランにどのように活かされているのかを考察する方法について引き続き検討する。
アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

参加したAsian Student Exchange Program (以下 ASEP)

 アジア学生交流計画(高雄市教育局主催)には、7ヵ国46チーム、約1,000人が参加した。ホームステイ、学校間交流など取り組まれるが、中でも現地校と日本の「協働プレゼンテーション」が主な活動となる。20年の歴史があり多くのタスクが埋め込まれ、先生のみならず、生徒、学生もその内容を掴み参加している。日本から教員も含め180余が参加した。

 夏から始まるプログラムの策定、ホームステイの対応、滞在時の練習場所、練習方法の検討など、現地の先生との共通理解と、「教員としてタスク」を明確にし、対応しているところに継続の鍵がある。

図1.ASEP プログラム部分

1.タスクベースド ラーニング(Task-Based Learning)

 Task-Basedとは小さな目標(タスク)を参加者である高校生・大学生が積み重ねながら、最終ゴールに至る一連の流れをデザインしたものである。アジア学生交流企画は学習者中心のタスクで組まれ、学習者が自由に英語を活用しながら、成果が出せるよう教師側からの働きかけ(Scaffolding)が行われ実施された。提示された枠組みの中で、自由な協議が展開される。 台湾側学校と日本の学校がペアーを作り、共にプレゼンテーションを実施する。そのためにはこれまで培われてきた手法、インターネットを活用した事前の交流、当日の交流、さらには事後の振り返りの学習などが継続的に取り入れられている。

2.新規性「行動中心外国語学習」

 外国語を学ぶということは、「入試などのアカデミックな能力」を測るだけでなく、時に自分の文脈で情報を英語で発信し、社会、組織、国際社会の中で責任をもって連携を作り上げることを意味する。この大会はそれを目的としている。ここ台湾にまでやってきて協働作業まで成し遂げようとする生徒たちであることから、動機付けは十分である。

 基本構文を教室で学習し、ある単語、あるいは動詞を入れ替え定着させていくオーディオリンガルの訓練を乗り越え、ここでは自由な感覚で発話し、自分たちで工夫し、最後までやり抜き、プレゼンテーションを実施することが求められる。答えなどない、自分たちが答えだとばかりに果敢に取り組む。

 教師は、“少しの無理をすればできそうな、枠組み、到達目標を与えながら”ファシリテーターとしての役割に徹する。

 今年度は香港の問題、アジアにおける民主主義のありかたなど大きな社会事象があったが、「話し合い、協議し、一致点を見つける」作業こそ「民主主義の根幹」であることを参加者はそれぞれに感じ、協働作業に取り組んでいた。「否定、競争、宥和、協働」の要素を持つ協働学習の場面であるが、最終的な「一致点」を求め、外国語である「英語」で話すことが中心となる国際協働の場面で、一致点をプレゼンテーションに見出すまで取り組まれた。

3.ICTが支える協働作業「対決・対話・協働」

図 2.東高校 スライドデザインを協議

 台湾到着後、ホームステイなど体験しつつ、当日までに3つのトピックを含めたプレゼンテーションを自分たちで作り上げる必要がある。日本の高校生は英語を日常的に活用する環境にない。EFL(English as a Foreign Language)の国の生徒が論議する場合、いくつかの工夫が必要になる。ICTが大きくそれをサポートする。

 作成段階の様子を見ていると「どうおもう」「意見は?」などのやり取りでは抽象的な論議となり、かみ合わないことが多い。

 パワーポイント資料を見せながら、「どちらがいいか」と選択を積み重ね、合わせて内容も深めていく。このような時間の経過の中で「作品に自分たちの経験や考え」が反映され、発表への意欲も高まっていく。

4.新指導要領を実践する舞台 ASEP

図 3.タスクの共有

 新学習指導要領では、「外国語を使って何ができるようになるか」を問う。新教科も設定されている。

 「生徒自身が、自らの文脈で、ディスカッション等を行い、プレゼンテーション、ディベート」という活動を通して、一定多数に対して、ICT等を効果的に使い伝達する活動が新教科「論理・表現」である。

 自分の責任において、論議し、発信していくという活動は、同文化を持った友人とのディスカッションでは、深めることが困難であり、教室とは違った学習環境がより効果的である。文化が異なる時、コミュニケーションの方法は大きく異なる。日本語の通じない他国の人と、自律的に会話し、時に対立もしながら進めていくASEPの活動は世界と論議できるグローバル人材の貴重な体験となる。

5.現地滞在時での活動を支える

 現地では、教師のお手本に頼らず、台湾の高校生と自由に英語を活用し、作品を作り上げていく。自由に英語を活用とは、自分の経験や知識で作品を作り上げるということである。これまであったようなインターネットの情報を寄せ集め整理して発表することではない。つたないながらも、相手と話し合い、特に食い違いを是正しながら、発表の日に向けて完成をさせていく一連の協働作業である。作品の完成にはこれまで先輩たちが作り上げてきたモデルが、スライドの枚数、デザイン、スクリプト単語レベル、話すスピードなど多く取り入れる事柄があり、大変役立っている。現地でまずこの動画を見て、ゴールの基本的な理解を多くの高校生たちが共有している。

6.作品の共有

 イベント後はアンケート、レポートを通して活動を振り返る。英語でレポートを書き、知見の共有を行う。少し時間をおいて自分たちの発表をビデオで振り返り、客観的に評価する時間がネットワークで可能となっている。ホームページ上のレポートなどがそれである。英文を書く作業は大変ではあるが、自ら主体的に関わったことは書くことはできる。これらの作品の振り返りと、レポートの共有は、リフレクティブラーニング(振り返り学習)となり、覚える知識ではなく、使える知識として個々の参加者の中に定着する。

7.共有してほしいこと

図 4.「協働」を競い合う(南山国際高校+樹徳家商高校)

 大阪市立東高校の実践の中で次のことが明らかになった。

1「異文化を持った他国・他地域の生徒とのコラボレーション」には、今持っている英語力を活用しつつも、具体的なデータ、図を示しながら話しあうことが重要である。そのことによって、プレゼンテーション作成において、次の手順がおのずと明確になってくる。全体像とトピックの関係を「見える化」することが効果的である。

2「協働プレゼンテーションを支える要件」として「到達イメージ(ロールモデル)」が大変重要である。ネットワークの力を活用し、教員間で連携して周知すすべきである。

3 「国内の進学校、職業高校など様々な参加があるが、学校を超えた学び」として、それぞれのチームの工夫に学ぶことができる。マレーシアと台湾のチームは「演劇手法」であり、日本の高校チームも立ち位置、データのデザインなど年々工夫され、より効果的なプレゼンテーションが展開される。

 夏に行われた、World Youth Meeting、冬のASEP共にホームページが設置されており、生徒のレポートも掲載されている。どこまで今の高校生たちができるのか、そのプレゼンテーションを見れば一目瞭然である。

参考サイトなど

参考論文

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・二年間の実践研究の二年目の年度初めにあたって、アドバイザーの助言も受けながら、研究計画の推進方法を検討しつつ、緊急事態への対応についても検討を進めた。
  • ・新型コロナウイルスの感染拡大のため3月より実施されていた臨時休校措置は、4月7日、政府による新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出もあり、5月下旬までの長期にわたることになった。新年度にまたがる休校措置ということもあり、この間に予定していた今年度の実践に向けたキックオフ的な授業や有志生徒のプロジェクトチームを結成することができなかった。したがって、実践計画としては全体に3か月程度の遅れが生じている。7月になってようやく国際交流活動の実践に向けた準備を検討できる状態になりつつある。このような遅れの部分を補って実践を開始し、割愛や変更すべき内容も精査しながら実践計画を再構成する作業を進めている。
  • ・世界的に見ても、新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、感染拡大防止の水際対策として、いまだに多くの入国拒否対象地域の指定が継続されている。このため、これまで実施してきたようなフェイストゥフェイスの交流活動を含むアクティビティの実施は当面厳しい状況である。このような困難に直面しながらも、本校の研究テーマである「ICTを活用した主体的な情報発信スキルを身につけさせる国際連携アクティブラーニング~海外の仲間たちとつながり、共に学んだ成果を世界に発信する~」に基づいて、今までの知見をもとに、形を変えて、形式にとらわれず、交流が継続できるようにさまざまに手を尽くし努力している。
  • ・交流継続の具体的手法としては、オンラインでの交流を中心に検討することになる。過去の交流活動においてもフェイストゥフェイスのフェーズ以外の交流はオンラインで継続的に実施してきているので、これを拡大化して交流の柱となるプレゼンテーション大会もオンラインでの実施という方向性を関係各所で確認しつつ実現に向けて調整を行った。現状では、本実践研究の柱の一つであるワールドユースミーテイング国際プレゼンテーション大会を9月26日からの二日間にわたって、オンライン開催する方向で計画を調整して実践に取り組む予定となった。
  • ・本実践研究に関連した情報発信や研究発表については、状況を見ながら今後調整していく予定。当初の実践計画からの遅れも生じているので、できる範囲での対応になることは否めない。現状では主に学校公式ページでの情報発信のみにとどまっているが、今後実施可能な方策を練る。
  • ・本年度第1回目の訪問指導は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑みて、オンラインで実施となった。6月27日(土)、アドバイザーの日本福祉大学影戸誠教授とパナソニック教育財団の担当者も招いてオンライン会議システムZoomを利用して訪問指導の代替的な報告会を実施した。一部のプロジェクトメンバー教員もリモートで参加した。研究代表者から昨年末に開催されたAsianStudentsExcahngeProgram’2019の参加者事後アンケート結果の報告と考察などの報告を行い、今後の展開等について助言をいただいた。

*AsianStudentsExcahngeProgram2019の参加者事後アンケート結果集計グラフ

  • ・同6月27日(土)、訪問指導のオンラインセッション終了後、影戸教授の主催のカンボジアの学生とのネット会議システムでの交流に本年度の本校国際交流チームに参加予定の代表生徒3名が参加。カンボジア側からプレゼンテーションをライブで実施していただき、これを視聴して内容について討議を行う形式で進行された。本校の生徒は会の冒頭にカンボジアのゲストに対してのグリーティングを英語で行った。また、ライブ視聴したプレゼンテーションに対するコメントもオンラインで行ったりした。参加生徒にとっては良い意識付けとなった。

*アドバイザー影戸教授主催のレクチャー・カンボジアの学生とのネット交流の様子

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • ・緊急事態下においても、教員がどのように学習機会を設定するがポイントである。今までの実践経験を活かしつつ、国際連携アクティブラーニングを継続できるように、さらに工夫を凝らしてほしい。
  • ・一連の実践の中から、何を身につけ何に役立つのかを明示するようにしたい。

〇助言への対応

  • ・ICTを活用してオンラインで海外と繋いで展開する授業プランの検討を始めた。これまでの実戦で日常的に生徒がネットを利用して海外とつながりつつ学べる方策について考えきたのを活かして今後の方向性を見出していきたい。

本期間の裏話

  • ・本期間においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う指示や措置への対応に忙殺され、教員・生徒ともに本実践研究のまつわるさまざまなプロジェクト活動に十分な時間と労力を注げないことが最も悩ましい点であった。今後もこのような状況が早期に改善されることは難しいと思われるので、できる範囲での臨機応変な効率的な対応が必要である。

本期間の成果

  • ・緊急事態宣言下の臨時休校期間が長引いたため、多くの成果はあげられなかったが、困難な状況下において、オンラインを有効に活用した実践が数多く取り組まれているので、それらも参考にしながら、新たな形の国際交流実践について検討することができた。

今後の課題

  • ・いろいろな活動が制限される中ではあるが、この困難な状況を逆にチャンスととらえて、オンライン学習プロジェクトをメインとした交流学習についての実践研究を進めたい。
  • ・本実践研究終了の年度末までの展望として、緊急事態下においてもランディングポイントを見据えての進捗管理が課題である。

今後の計画

  • ・9月26日(土)、27日(日)にオンラインで開催される国際プレゼンテーション大会World Youth Meeting‘2020(WYM2020)に生徒チームを編成して参加。海外協力校とともに協働プレゼンテーションを実施する予定。

気付き・学び

  • ・このような緊急事態下においてこそ、国際協働学習の重要性を再認識した。海外の仲間とリアルタイムで触れ合える場面を設定できない状況下で、新たなスタイルの交流学習による成果をあげられるように研究を通して考察を重ねて明らかにしていきたいと考えている。

成果目標

  1. ・二年間の実践研究の研究計画を再検討し、研究を継続させる。国際連携アクティブラーニングで得られる学びや育ちの実践方法の再構成を考える。
  2. ・さまざまな調査とその分析により、国際連携によって得られた成果が、その後の参加者のライフプランにどのように活かされているのかを考察する方法について引き続き検討する。
アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

コロナがあっても国際連携プロジェクト

 東高校の取り組む国際連携には、国内外55校が参加する。自校の生徒の参加支援、教育効果を求めつつも、その母体である国内外の学校のサポートに東高校はまわる。

 4月から7月にわたる活動の中で、参加校との話し合いが続けられた。

2週間に一回の定期オンライン実行委員会の実行

 開催の形、オンラインで行うのか、あるいはハイブリット、または中止とするのか話し合われる。みんなで意見を出し合い、よりいい方向を出すのが、「対話的な学び」であり、実行委員会自体がそれを実践している。また合わせて、ZOOMの教育利用の在り方も話し合われた。その結果 9月下旬に55校参加で、ハイブリッド(一部対面)で国際連携プレゼンテーション大会(第22回ワールドユースミーティング)が開催されることとなった。

海外とつなぐ 週一回の国際「支援」

 ワールドユースミーティング(以下WYM)の目的の一つに、ICT教育の普及を行うことが含まれている。参加の国の一つであるカンボジアは、コロナによって大きな打撃を受けている。日本、韓国、シンガポールなどIT先進国においては、ステイホームであっても、オンライン活用で教育の継続が、それなりに実現されている。

 カンボジアは違う。在宅の児童、生徒へのケアができない。携帯電話は普及していても、それを教育的に活用する「情報教育」の歴史はない。

 東高校は位置じめWYM参加校は、大会参加を予定しているシェムリアップ教育養成校や、カンボジア初の4年大学プノンペン教育大学の学生約20名とつなぎ、ネットワークの教育利用の一方法として、英語プレゼンテーションセミナーなど開催している。

 東高校の生徒さんたちの情報はカンボジア学生、教員に、WYMとは何かを知らせ、ネットワークを活用し、世界と交わることの意味を、生徒さんの英語や態度の中に見い出したのではなかろうか。

島国日本での英語活用

 日常的に使うことのない「英語」外国語として学ぶ、日本の高校生、大学生たち。

 WYMはネットワーク通した活動である。英語活用を避けては通れない。これから、東高校はじめ、参加校55校は、時に戦いながら、当日の「協働プレゼンテーション」達成に向けて準備にはいる。

 ネットワーク型であっても、壁はある。台湾からの参加校は「Zoom禁止」であるし、中国からの参加校は「Google Meet」は禁止である。

 このような中で、教員が力を合わせ、「話し合いの場」をネットワーク上に形成していく。

ITでしかできないこと

図1 WYMサイト

 それを見せるのが、パナソニック教育財団支援校の責務ともいえる。

 ICTは協働英語プレゼンテーションを大きく支える。効果的な写真、図表は直観的な理解を促進する。メディア活用は言語の壁を打ち破る。

 世界と語ろうとする日本の高校が、シンプルで、わかりやすい、発表スピードを考えたプレゼンテーションを行う。それが、日本型発信のモデルとなるであろう。

 英語を覚え、テストする「加算的な恐怖」からのがれ、体験のなかから、「対話」への自信を育てていく。

 インストラクショナルデザインの視点では、「Task-Based Instruction」である。

 自由な英語活用で考えを戦わせ、作品(Task)を作りあげる。

 この作品が、他校のモデルとなり、少し頑張って、世界とつながり、世界を考える英語のモデルを示すこととなる。

 作品は、webに掲載され、毎年蓄積されつつある。

資料

WYMサイト http://www.japannet.gr.jp

Reigeluth :Instructional-Design Theories and Models, Volume IV:

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ・当初のスケジュールに従って実践研究の核となるWorld Youth Meeting’2020国際プレゼンテーション大会の国際交流実践を行った。その他の実践とともに、アドバイザーの助言も取り入れながら、研究指導実践を進め、メンバー相互の情報共有を進めた。また、一連の緊急事態への対応についても新たな実践展開方法を模索しつつ研究を進めた。
  • ・新型コロナウイルスの感染拡大のため1学期初めから5月下旬までにおよんだ臨時休校措置期間を経て、7月以降ようやくキックオフ的な授業から始めて、生徒たちのプロジェクトチームを結成する実践の展開を始めることができたことができた。実践計画としては引き続き全体に遅れが生じている。計画を再構成しながらできる範囲での実践が続いている。
  • ・世界的に新型コロナウイルスの感染終息が見通せないため、感染拡大防止の水際対策として、いまだに世界各国で多くの入国拒否対象地域の指定が継続されている。このため、本年度末まで、これまで実施してきたようなフェイストゥフェイスの交流活動を含むアクティビティの実施はできないと考えられる。このような状況下において、本校の研究テーマ「ICTを活用した主体的な情報発信スキルを身につけさせる国際連携アクティブラーニング~海外の仲間たちとつながり、共に学んだ成果を世界に発信する~」のなかでも、ICT活用部分で従来にない形態での交流実践の展開がみられた。まだまだ試行錯誤の段階であり、今年度末のまとめまでにどのような知見がどの程度明らかにできるかは未知数ではあるが、ひきつづき取り組みを進めていきたい。
  • ・9月26日(土)、27日(日)にオンライン開催された国際プレゼンテーション大会World Youth Meeting’2020 (WYM2020)に生徒チームを編成して参加。本校生徒12名と海外協力校である高雄市立前鎮高級中学の生徒3名の計15名での編成チームとなった。
    ” Education is a luxury”というテーマで協働プレゼンテーションを作成し発表した。

*World Youth Meeting’2020 生徒作成のスライド抜粋

  • ・本実践研究の実践報告を兼ねた研究発表として、第46回 全日本教育工学研究協議会 全国大会においての発表を計画していたが、オンライン開催となったため参加をキャンセルした。次年度の大会において成果報告としての実践研究発表を目指すことにした。学校の公式ページ等での経過や成果の報告は引き続き行った。
  • ・本年度第2回目の訪問指導は、新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて、第1回目に続きオンラインで実施となった。10月19日(月)、アドバイザーの日本福祉大学影戸誠教授とパナソニック教育財団の担当者にもご参加いただいたオンライン会議形式で実施。Zoomを利用して訪問指導の代替としての報告会を開催した。密を避ける観点からプロジェクトメンバー教員も校内各所からリモートで参加した。研究代表者から9月に開催されたWorld Youth Meeting’2020の参加者事後アンケート結果の報告と考察などの報告を行い、オンライン開催をベースとした新たなスタイルでの国際交流実践について助言をいただいた。

*World Youth Meeting’2020の参加者事後アンケート結果 (スライド抜粋)

  • ・12月28日(月)、29日(火)にオンラインで、Asian Student Exchange Program ‘2020(ASEP2020)に本校生徒が2チーム参加予定。

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • ・フェイストゥフェイスの交流学習ができない現状下で、国際交流に関する学習機会をオンラインベースでどのように設定するが重要である。今までの実践経験を活かして、国際連携アクティブラーニングの新たな形を探るような実践研究となるよう、また、年度末にはその成果を知見として示せるようにしてほしい。

〇助言への対応

  • ・ICTを活用してオンラインで海外と繋いで展開する授業実践をいくつか展開した。このような状況下で生徒がネットを利用して日常的に海外とつながりつつ学べるようになってきていることが実感できるようになった。

本期間の裏話

  • ・ひきつづき、新型コロナウイルスの感染状況に伴う指示や措置への対応に学校現場は忙殺されている。教員・生徒ともに国際交流活動に十分に時間が取れない状況ではあった。そんな中でも、ネット活用な様々な実践を展開し、大きなプレゼンテーション大会を実施することができた。
  • ・海外との交流の中で、双方のネット環境や利用するアプリケーションソフトウエアについて、さまざまな制限や指定があり、多くのパターンに対応する必要が出てきた。ある意味でよい機会であり、研究を通じてネットワーク利用のスキルアップにもつながった。

本期間の成果

  • ・このような困難で特殊な状況下において、新たな形でオンラインを活用した実践にとり組めた。

今後の課題

  • ・いろいろな活動が制限される中ではあるが、この状況をうまくきっかけとして、オンライン学習プロジェクトをメインとした交流学習についての実践研究をさらに進めたい。
  • ・本実践研究終了の年度末までの実践できる内容に限りが見えているので、成果報告を見据えてさらに進捗管理を精査していくことが喫緊の課題である。

今後の計画

  • ・12/28-29に台湾高雄市教育局が主催する国際プレゼンテーション大会Asian Student Exchange Program ‘2020(ASEP2020)に生徒チームを編成して参加2チームで参加予定。本報告書の締め切り後となるため、次の機会でこの実践の報告を予定。
  • ・二年間の研究のまとめを行う
  • ・三学期に実施予定であった公開研究会や研究報告回答は実施できない可能性が高い。引き続き、対応策や代替プランについて検討する。

気付き・学び

  • ・緊急事態下におけるオンラインを中心とした実践においてこそ、国際協働学習の重要性と有用性が認識できる点を改めて感じた。
     さまざまな手法によって交流活動を実施した結果、新たに多くのネットワークスキルを研究メンバーが習得した。一方で、国際交流学習における普遍的な学びの成果についても、再認識するに至った。

成果目標

  1. ・二年間の実践研究の研究計画を再検討し、研究を継続させ知見を示す。国際連携アクティブラーニングで得られる学びや育ちの実践方法の構成を考察する。
  2. ・さまざまな調査とその分析により、国際連携によって得られた成果が、その後の参加者のライフプランにどのように活かされているのかを考察する方法について事例を示す。
アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

さらに続く国際連携 台湾に舞台を変えて

12月28日実施
第21回アジア学生交流プロジェクト(Asian Student Exchange Program)

 文部科学省後援行事第22回ワールドユースミーティングが9月26日27日に開催された。継続的に学ぶことは物事の習得に必要不可欠である。東高校をはじめとするWYM参加校22校は現在、舞台を変えて12月28日に台湾高雄市教育局が主催するASEPに向けて準備を行っている。

 2つの国際連携プロジェクトは相互に学び会いながら、会を重ねてきている。
http://www2.csic.khc.edu.tw/11/1109/ASEP2020/index.htm

 次の図はプレゼンテーションの評価基準である。年々改訂され、WYMでもASEPでもほぼ同じものが使われる。教師間の連携が歴史を作り上げていく。国際連携で重要視しているものは、英語力の獲得よりも、「対面」「協働作業」という、“やりにくさ“こなすことである。プレゼンテーションという「成果物」を作り上げその過程で主体的な英語活用(Task-Based Learning)を行うことにある。異文化を持った生徒とのコミュニケーションは衝突を時にまねくが、これらを超えることで、大会参加が可能となる。相手国との付き合い方を知る学習でもある。大きく構えればアジア地域の民主主義に貢献する道でもある。

Mediaをどう使うか

 WYMに引き続きASEPもCOVID19の影響を受け、オンラインの協働学習となった。これまでオンラインでの準備は平時でも行われてきたため、準備は順調だったようである。

 高林(2020)は「自律的学習の続けるサイクルの一般モデル案」の中で、メディアとの強い連携を示唆している。積極的にイベントに立ち向かいながら、メディア切り替え方略(方略1)を生徒たちは使っている。その時間の中で国際協調力を獲得する。例えばGoogle翻訳のカメラ機能を使い、英文配布文章をスキャンし理解する。ネットワーク検索でこれまでのプレゼンテーション事例をダウンロードし、スクリプトも手に入れ、ファイルの作成方法、発話方法、大会で用いられる単語レベル、表現をチェックする。これらの学習は主に自力で行なわれる。

  • ・準備場面では、ZOOMを活用し、言葉ではなく、“表”“写真”を共有しながら、相互の理解を摺り寄せていく。(方略1)
  • ・英語プレゼンテーションの準備を進めるにあたり、参加大学の先生の講演を聞いたり、友達と話し合う。(方略2)
  • ・webでこれまでの作品を振り返り、評価基準などを確認する。(方略3)
  • ・年に2回積極的に国際連携プロジェクトに参加する。(方略4)
  • ・国外学生との協働作業では、自由に英語を活用し、一致点を調整し、最終的に作品を作り上げる。(方略5)
  • ・イベント後振り返りにより、達成感を得て、自らを褒める。また英語で感想を書き、他者から評価を得る。自分の成長を確認する。(方略6)

ASEP.、WYMにおける自律的学習要素をイメージを図にしてみた。

自律的学習者

1 メディアの切り替え方略 場面に応じて学習メディアを選ぶ
2 対人接触量方略 学習に関する話を人と沢山する
3 メディア環境方略 本や論文に手が届く準備をする
4 行動維持方略 やる気になり学習サイクルが続くような用意や計画をする
5 批判的思考方略 teach others "学習内容を自分なりに分析する
関連事項、応用や質問を自分で考える"
6 自己モニター方略 自分の理解を観察する
自分の目標や達成度を確認し、褒める

参考:自律的学習の「続けるサイクル」の一般モデル案(2020、「コミュニケーションとしての学び」を参照)
ASEP2020プレゼンテーション発表サイト 達學堂 (kh.edu.tw)

参考:2020、高林友美「コミュニケーションとしての学び」

本期間(1月~3月)の取り組み内容

*Asian Students Exchange Program ‘2020 オンライン開催

オンライン大会期間12月28日~29日(前回報告書締め切り後の実施のため今回分に収録)

ホスト2校 高雄市立瑞祥高級中學・高雄市立前鎮高級中學
各ホスト校と事前交流 テレビ会議・SNSなどネットワーク活用
校内での参加生徒対象事前研修、プレゼンテーションの動画パート撮影

各ホスト校へプレゼンテーションのデータを提出

大会当日、プレゼンテーション部分は事前収録で、FAQセッションのライブ実施

Asian Students Exchange Program’2020視聴風景

FAQライブセッションの様子

ASEP2020 主催者サイドによる参加者アンケート結果より抜粋

*成果報告を兼ねたオンライン公開研究会を開催 2月5日

オンライン公開研究会発表用スライドより抜粋

*生徒研究活動発表会 2月9日~

例年は公開形式で実施している発表会を本年はオンライン動画配信形式での実施に変更
限定公開の動画配信で生徒各班の研究発表を行い国際交流関係生徒も発信した

限定公開の動画データよりのキャプション画像

アドバイザーの助言と助言への対応

 2021年になり2年間の実践研究の終盤を迎えても引き続きコロナ禍が終息を見ることはなく、感染症対策の観点からフェイストゥフェイスの交流実践が全面的に実施できない状況が継続した。本研究の成果報告を兼ねた公開研究会も実施のめどが立たず、開催を断念する方向であったが、指導助言をいただき、何とかオンライン開催での公開研究会を実施することができた。

 また、研究成果の取りまとめに際しては、手法などさまざまなアドバイスをいただき、成果報告書をとりまとめることができた。

本期間の裏話

 本校を会場に予定していた公開研究会が予定通りには実施できない見込みとなり、研究会自体の中止も想定されたが、何とかオンライン開催という形式で実施できた。このようなオンラインイベントの配信側を初めて経験することになったが、さまざまな新たなスキルを知ることができた。また、学校開催では参加がむつかしい遠方の国内外からもリアルタイムで視聴参加していただき、実地開催とはまた違った可能性も感じられた。

 オンライン公開研究会で、アドバイザーからのコメントの中に「東高校の生徒はなんか楽しそうに見える」というご指摘があった。さまざまな学習活動の中には、多大な不断の努力が必要で、辛く厳しいものも多々ある。しかし、少なくとも国際協働学習などのアクティブラーニングにおいては、生徒が楽しく意欲的に取り組める仕掛けが大切であり、それが少しでも目に見える形で表れていることをよろこばしく感じた。モチベーションが持続することで、困難な課題でも解決できるような主体的情報活用能力が習得されるのではないかと改めて考えた。

本期間の成果

 本実践研究のまとめを行い、公開研究会と成果報告書で発信することができた。

 交流活動が引き続き制限され、実践計画が予定通り進められなかった部分も多いが、一方でオンラインでのさまざまな取り組みが進められ、最終的な成果報告の公開研究会もオンラインで実施できた。当初の計画にはなかったネット利用の実践ノウハウも獲得することができた。

2年間の成果

 実践研究の柱としてフェイストゥフェイスの交流が設定されていたが、2020年度になって、緊急事態対応のためさまざまな実践活動に制約がかけられたため、想定通りの実践が遂行できず、想定していた研究成果のすべてを予定通りに得るには至らなかった。その反面、ネット活用の実践が今まで以上に積極的に進められたので、想定外の成果をあげられた部分もある。

 継続的な学校間国際交流活動が取り組みの中心となる本実践研究の知見が、「距離」「意識」の隔たりを克服する教育効果の高い実践プランのモデルとして活用できることが見込まれる。参加者相互の将来的なキャリアにこの学びが生きる(Internalize)という本研究の成果が、交流校相互の教育方法の改善に広く活かされていくことが期待できる。成果の詳細については、成果報告書に取りまとめた。

今後の課題

 台湾高雄市との学校間交流を軸として実践研究を継続して展開していく。交流範囲を拡張しつつ実践研究を進めたい。また、今までの活動の改善を必要とする場合の知見として実践の成果を積極的に伝達し情報共有を図りたい。これらを遂行するための、人的・経済的裏付けが今後の課題である。

 また、コロナ禍が終息したのちには、なるべく早く人的交流を再開させ、今まで培ってきたヒューマンリレーションシップの再確認と、この間のネット利用による実践ノウハウの国際的な共有も検討したい。

2年間を振り返って

 特に後半の1年は、コロナ禍の影響が世界中に拡がり、本実践研究にも大きく影を落とした。単発的に、想定していた実践計画が変更になったり、実施結果が得られなかったりで、マイナーチェンジを余儀なくされることは実践研究においてはよくあることである。しかしながら、今回の状況は実践研究の根幹にかかわる事態で、世界的に人的交流が制限され、国際交流実践の柱ともいえる実際に会って語り合う活動が本研究期間の後半では全く実施できなかった。さらに、研修会や研究会も実地で開催されるものはほとんどなく、一部がオンラインで開催されたのみとなった。そんな中でも、今までの実践経験とヒューマンネットワークをもとに、何とか継続的な国際交流を推進し、成果をまとめるに至れたことは幸いであった。

 総じて、今回の助成によって、海外での交流実践活動を効果的に遂行することができた。しかし、特に日本の公立学校では海外での交流活動や実践研究活動について、コスト面のみならずさまざまな制約があり自由な実践研究活動が難しい現状は変わっていない。今回の成果や知見を積極的に発信し、国際交流活動の活性化につなげていくとともに、より多くの機会で海外での充実した活動が実現できるように、各方面に継続的に働きかけを続けていきたい。

参考サイト
・World Youth Meeting http://www.japannet.gr.jp/
・Asian Students Exchange Program http://www.kageto.jp/asep/2020/

成果目標

 この2年間の実践研究では、これまでの実践からの継続性を保ちつつ、生徒の深い理解を達成するために有効とされるInquiry Learning(探究学習)とCollaborative Learning(協働学習)の手法を用いて、国際連携アクティブラーニングに取り組み、夏・冬の二度にわたり国際プレゼンテーション大会での発表機会を設定し、対面協働作業を通じたConflict Resolutionの体験をさせる計画を推進してきた。「相手を知ること(See)・体験すること(Feel)」にとどまらず、生徒たちに「内面化・生活化(Internalize)」させる活動も実施し、授業での取組とすることで継続性を保障することをめざした。

 本期間においては、この実践研究のまとめを行うフェーズとして、実践に取り組みつつ成果報告の取りまとめを行うこととした。

アドバイザーコメント
影戸 誠 先生
日本福祉大学
客員教授 影戸 誠 先生

世界の中の国際交流、グローバル人材育成の視点から見る

 2021年3月、現在、ミャンマーのクーデター軍事政権に対して、民主主義を求める平和デモが続いている。

 軍の制圧、無差別射撃により、子供を含めた、多くの市民が殺害され、傷ついている。

 そのミャンマーの人たちがアジアの平和構築のリーダーとして期待しているのはどこの国なのか?アンケート結果からみると、それは日本であり(76.3%)、2位の米国T(39.7%)を押さえダントツである。長年の政府のアセアン外交の一つの成果といえる。国際的な信義を得ることの背後には、日常的な関係構築がある。

・教科書のあの国 から あの子の住んでいる国へ

 今回の助成で取り組んだ東高校の国際連携イベントは、相手国とともにタスクベースな協働プレゼンテーションの作成と発表を昨年12月28日、29日に実施し、コロナ禍の影響を受けてオンラインとして実施された。

 World Youth Meeting(WYM)は2回、Asian Students Exchange Program(ASEP)も2回、計画書に記載されていた。2019年は対面で2020年はオンラインでの実施であった。

 オンラインであっても、これまで通りZOOM、LINEというデジタルネイティブにとっては大変身近なツールを使い、見事これまでのものと比べて遜色のない作品をつくり上げ貢献している。

 英語プレゼンテーションに興味のある方であれば、その発話方法、構成、立ち姿、表情、コアメッセージなど見事なものであることに気づかれることと思う。

国際共感力

 今年は22回目の大会となったが、大会の継続によって、参加生徒たちはWeb上にある過去の先輩たちの作品に学び、難しいけどゴール・イメージを持ってパートナー校との英語の討論をこなした。ネットワーク上での論議は時間調整など難しかっただろう。最後にはオンラインで見事にプレゼンテーションを行った。

 感想文にも「満足のいく成果だった、でも会いたかった」という声があった。

 それはInternational Sympathy (インターナショナルシンバシィー・国際共感力)であろう。“会いたかった”一緒に作業をし、葛藤もし、意見の集約も作り上げる過程で、相手の国を知り、協働した相手を知る。そしてともにいた時間の中でInternational Sympathyを共有する。

 このことが、2020年度には十分に育て上げることができなかった。

図 2 2020年WYMアンケ―ト回答者270名 2020年9月調査

私たちの生徒学生の住むこのアジアで刻々と事件は起き、イベントも進む。

 ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ベトナム、台湾、香港、東京オリンピック、カーボンニュートラル、中国、韓国

 いくつものテーマがある。学生、生徒たちはつながり、対話を反芻しながら「あの人たちの国の、平和と、民主主義の実践」を願っている。

 日本はすでに島国ではなく、インターネットとメディアが周りの海を埋めている。メディア活用が視界の広さと、連帯の厚さをもたらす。

 今回の実践はグローバル人材に必要な、スキル、英語での交渉力、自己教育力、国際共感力を育むケーススタディとなったように思う。

資料:
アセアン対日世論調査
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000434060.pdf
WYM プレゼンテーション ビデオクリップ
http://www.japannet.gr.jp/w2020/w2020-presentation.html