教師たちの学ぶ姿勢−広島県三原市立幸崎中学校の取り組みの特長−
広島県三原市立幸崎中学校は,瀬戸内海に面した,風光明媚な土地に位置する小さな学校である。3学年とも単学級である。そんな規模では,どうも学校に活気が生まれにくかろうと,読者は,危惧するかもしれない。筆者も,同校を訪問する前は,なんとなく,そんなイメージを抱いていた。
けれども,実際に学校を訪れ,授業を見学し,子どもたちの学びを目にすると,それは払拭された。ICT活用については,小規模校であることは,その基盤となる環境整備の点からすれば,必ずしも,マイナスには働かない。訪問した日には3つの授業(理科・保健体育・社会)が異なるスペースで繰り広げられたが,それらのいずれにも,常設ないしはそれに準ずるICT環境が構築されていた。そして,子どもたちが,そうした環境を生かして,いきいきと活動していた。
それ以上に注目すべきは,子どもたちの学びとICT活用の接点を探究している,同校の教師たちの姿である。少ないスタッフは皆,実践アイデアを出し合い,思考力・表現力を高める授業を創造しようと工夫を重ねている。同校のホームページにアクセスして,校内研修の
計画をご確認いただきたい。同校では,研究テーマに即して,授業研究が積み重ねられている。しかも,筆者を含む,学校外の多様なアドバイザーを招聘し,研究的実践の第三者評価に厚みを持たせようとしている。それらの機会を他校の教師にもオープンにして研究交流を図っていることにも,好感が持てる。苦労が増えるであろうが,その分,同校の教師たちは,自校の取り組みを進展させるリソースを得られるに違いない。
同校の教師たちが自省しているように,確かに,ICT活用のレパートリーが不足しているきらいはある。けれども,上述したような,教師たちの学ぶ姿勢,その熱の高さ,その方法論の多様性は,やがて同校に,ICT活用の成熟をもたらすと,筆者は確信している。