解説と講評 |
コメント:白鴎大学 教授 赤堀侃司先生 |
1.授業デザインについて 教材の工夫や授業デザインが優れており、さすが附属校という印象を持った。 算数の2年生の山川学級では、鳥を電子黒板に提示して数を数えさせ、それが100羽以上になると、単純な数え方では効率的でなく、かつ正確ではないことに気づかせ、あるまとまりで数えることが優れた方法であることに導く。その方法も、各自が自由な発想で試行錯誤して、それらの方法を提示して、共有化を図るという授業であった。デジタル教材なので、鳥の数をコピーすることが容易であり、教材作成手段として、きわめて優れた使い方であり、そのきめ細やかな工夫や指導法は、敬服に値する。 5年生の総合的学習(そうぞう)の平島学級の動物の分類の学習においても、子供の驚くべき発想の豊かさを、十分に引き出した授業であった。いろいろな動物の切り絵を自由に分類しなさいという指示で、大人の参観者も試みたが、そのほとんどは、魚類・両生類などの動物の分類学に基づく分類であったが、子供達は、大きさ、色、海や陸、羽などで、分類していった。子供の天分を見せつけられたような授業で、その発想を引き出す授業に感心するばかりであった。その中で、教材提示装置としての活用や教材ソフトの活用は、ICTの有効性を示した。 2.ICTの役割について 桃山小学校では、人間力の育成というテーマなので、ICTは道具としての活用であり、中心におかなくてもいいと思われる。授業とICTの関わりや、指導方法については、京都教育大学の先生方からもご指導をうけておられて、先生方からきわめて的確なコメントがあり、安心して参加できた。 3.人間力の育成とICTの関わりについて 人間力の育成について、少し文献調査が必要かもしれない。これについては、市川伸一先生(東京大学)の「学力から人間力へ」の単行本がよく知られているが、基本的な文献として、OECDのキーコンピテンシーがあろう。OECDでは、(1)道具を用いる力、(2)自律的に活動する力、(3)異質な集団で交流する力を上げているが、これらの力は、桃山小学校の、自立と共生の力、伝え合う力に、つながっている。(1)の道具には、ICTも言語も含まれている。この意味で、研究として深い内容に広がる可能性が高い。 また、ACT21Sは、21世紀に求められる汎用的な学力として、アメリカを中心に研究されており、ジェネリックスキルとして注目されている。そこでは、(1)基礎的スキル(教科学力)、(2)情報・メディアのスキル(ICTの活用)、(3)学習とイノベーションスキル(コミュニケーション、創造性など)、(4)生活・職業のスキル(適応性、チームワーク、リーダシップなど)に分類している。 我が国の生きる力は、OECDのキーコンピテンシーを基礎としていると言われているが、これらに共通する内容は、教科の学力に加えて、コミュニケーションやチームワークや道具を使うなどの、仕事をする上で必要とされる力であり、ICTが全面に出ると言うよりも、洗濯機や掃除機や車と同じ役割なので、汎用的な力を育成することを念頭におけばいいと思われる。 これについては、次回に議論(コメント)したい。 |