実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

酒田市立飛鳥中学校の活動報告/平成24年度8月〜12月
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セールスポイント

11月13日(火)公開研究発表会が行われました。
公開授業:<学びの良さを捉え、伝え、広げる>をキーワードに全学級の授業を
公開しました。
国語 2年 単元(平家物語)      池田聡子教諭
数学 3年 単元(相似)        畔上 大教諭
社会 3年 単元(私たちのくらしと経済)加藤浩昭教諭
英語 2年 単元(ユニット6)      櫻井 伸教諭
保健体育1年男子 単元(器械体操)   大場雅久教諭
1年女子 単元(ダンス)         山岸夕佳教諭

公開BUタイム:BUノートで今日の授業を振り返り、家庭での学習計画を立案。
飛鳥中独自のノートです。自分自身を振り返り、計画を立てられ、
担任の先生との交流もはかられるものです。

全体会:会場 ひらたタウンセンターホール<オズ>
研究発表 (研究主任)
しゃべり場飛鳥 生徒8名・教師3名
司会:教頭 コメンテーター:後藤准教授
事前練習も台本もなく、生徒は自分たちの感じていることを堂々と
発表することができました。どこかの付属中の生徒かと思うほど
しっかりしていたそうです。

実践経過

・夏休み中 職員会議で研究についての話し合い
新潟大学後藤先生・パナソニック教育財団桐井さんと共に

・毎週金曜日 研究推進委員会で話し合い

  1. 各システムの進行状況
  2. 公開研究会の準備・分担
  3. 研究紀要の編集
  4. 授業について・指導案について
  5. 当日の日程・役割分担

・PTA評議員の協力要請アンケート
・授業の指導案についての指導助言 
 庄内教育事務所指導課 酒田市教育委員会 酒田市教育研究所
・連日のように、校長室で研究について話し合いを行い、当日を迎えることができた。

 

成果と課題

11月13日(火)午後 公開研究発表を開催。 参加者 110名
 
2学期の成果と課題<職員アンケートより>

<授業改善>

○教師側は意識して授業改善に取り組んでいる。
○生徒の学習については概ね意欲的で、協同学習の取り組みも良好である。
▲生徒の積極性も学力も、さらに向上させる必要がある。

<学習評価システム>

○生徒にもシステムは受容されている。
▲教師側の共通理解や確認が今後も必要である。

<支援システム>

○支援システムは、十分機能している。
▲BUノートの活用について、教師側の研究が必要である。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • 多忙な学校現場にあって、研究会の多い時期に設定したため参加希望の申し込み の出足が鈍く、大変心配した。当日は、合計110名(東京都・秋田県など県外からも参加があった)
  • 当日は土砂降りの雨の中にもかかわらず、校舎改修中のために遠い駐車場から、参加者の皆さんが歩いて来て下さったことに感謝します。また、保護者の評議員の方や校務員さんが雨の中駐車係をして下さっていました。みなさまの熱い心に頭が下がります。
  • 当日の感想の中に、遠くから来てこの研究が刺激になったという声があり、うれしかった。
  • 近隣の小学校でもBUノート改良版を使用しているところがあるという。感謝。
  • しゃべり場飛鳥で、生徒がステージに登場し、堂々と意見を発表してくれた。
  • 事前の練習や台本もない中、臆することなく感想や意見を述べる生徒に、参加
    した先生方から賛辞の声が多かった。中には、横浜国立大付属中の生徒かと思ったという方まで。校長先生も感動して涙ぐんでいたとか。
  • とにもかくにも、嵐のような忙しさの中で公開研究発表会も終了。研究主任のストレスも解消し、校長室にも平穏な日々が戻りました。しかし、校舎改築の騒音に悩まされる日々。一難去ってまた一難です。統合しても、残すべきものは残していきたいもの。新春から、話し合いを進めていきます。
 

解説と講評

コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生

 自己教育力や自己学習力の育成は,教育者にとっては究極のテーマといってよいだろう。このテーマに取り組んで,飛鳥中学校の研究は公開研究会という形でひとつの通過点に達した。公開研究会は全学級の公開である。国語,数学,社会,英語,保健体育,そしてBUタイムも公開。さらに生徒参加のシンポジウムと,まさに「どこからでも飛鳥中の生徒を見てください」という自信にあふれた企画であった。飛鳥中の研究は,授業の方法やメディア利用を工夫したというものではない。学習評価,学習支援,授業改善をスパイラルで向上させながら,生徒も教師も成長していくという研究である。それが伝わるような配慮,工夫,そしてそれをやり遂げる熱意にあふれた生徒たち,先生方の手作りの公開研究会であった。
一つの通過点であるので,個々の授業についてコメントするのではなく,大きな視点から,次への問いを3つ,問いかけてみたい。

(1)研究の原点に立ち返り求める生徒像を問う
 「これまでの卒業生で『自らの学習状況を捉え、深化・改善のために努力する生徒』に最も当てはまる生徒を1人あげると誰ですか?」と問うたとしよう。10人教員がいたとして,ほぼ1人の生徒に収束するものなのか,それとも若干ばらつくものなのか。名前が挙がった生徒のどういう側面が「学習状況を捉え,深化・改善」していると考えたのか。テストで点が取れる子なのか,苦手克服のために学習方法を工夫している子なのか。この問題は,前期中等教育だけで完成するものでなく,高等教育,生涯学習まで見越して語るべきであり,その一部分を担うものであるはずだ。研究の原点を確認する意味でも是非,問うてみたい。

(2)「自らの学習状況を捉える」力をいつ・どうやって育むのか?
 「自らの学習状況を捉える」ということをお題目でなく,実際に検討可能なレベルまで具体化したのは飛鳥中の「学習マップ」である。注目したいのは学習マップの自己評価欄である。どうとでも自己評価できてしまう学習マップは何の役にも立たない。学習課題が「〜をまとめよう」で,自己評価が「十分理解した」では本当は困るはずである。「この項目では自己評価出来ません」と異議を申し立てる生徒こそ,本研究で育てたい生徒ではないだろうか。
飛鳥中学校の研究の素晴らしいところは,大まかな目標を示し,方法は個々の先生の工夫に任せているところである。学習マップの自己評価欄やその活用も然りである。専門職たる教師に必要なのは細かい指示なのではなく,自分なりのやり方を工夫し創造的に仕事できる裁量権であろう。アンケートでは学習マップの充実に期待している生徒が多かったことから,今後の展開に期待したい。

(3)ICTを活用して研究をステップアップできないか
 じっくり取り組みたい子どもにはじっくりと,理解の早い子どもにはそれに応じて学ぶことや,個々の興味・関心に対応した課題や情報を提供することは,ICTで実現できる部分もある。飛鳥中の教育が生徒と先生方の信頼関係をベースとしており,BUノート/タイムに代表される一人一人の学びに対する温かい眼差しであるからこそ,ICTの本物の使い方のニーズを問うてみたい。
ICT活用の範囲は広い。例えば,フェニックスタイムで発展的な内容に触れたい生徒や,学び直しがしたくとも躊躇してしまう生徒に対して,ICTを活用すれば,個の状態に応じた課題を課すことができよう。学習履歴を生徒自身が見直すことで,自分自身の学びを省察し,何かに気づいて学習の方法を変えていくきっかけとなるかも知れない。こうした教育メディアの活用は学校だけでできるものではなく,研究者や企業関係者のコラボによって成し遂げられるはずであり,是非,声をあげていってほしい。

 
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