本校は視覚障害の児童生徒が通う徳島県内唯一の盲学校である。幼稚部から高等部専攻科まで、幅広い年齢と様々な障害実態を有する児童生徒が在籍している。さらに、視覚障害のある教員も少なくないのが本校の特徴である。
本研究は、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師などの国家試験受験をめざす生徒を対象とした教育におけるICT活用がテーマである。年齢的には高校生段階から中途失明の60代の生徒まで、弱視や全盲の生徒が在籍している。残された視力の程度、明るさの調節など見え方の程度が一人ひとり異なっている。
個別の教育的ニーズに応じるのが特別支援教育でありそこに難しさがあるが、教材・教具や学習方法の個別化を可能にするためにも、ICT活用の意義がある。
テキストの拡大提示と、実物や模型の利用を有機的に連携させる指導が工夫されている。点字や拡大教科書の使用によって乏しい視覚情報を補いながら、触覚や運動と連携させることで、神経繊維、筋肉など身体の部位のイメージをつかみ、マッサージや鍼・灸などの手技の動きを会得していくのである。従来の視覚障害教育を超えた教育効果がICT活用によって可能となる。
本校の実践のもう一つの意義は、視覚障害教員によるICT活用を推進したことにある。視覚障害の生徒にとってのロールモデルを示すことによって、視覚障害生徒の社会的自立を促すとともに、生徒の中から理療科の教員資格取得をめざす者が出ることも視野に入れている点は重要である。
また、今回の研究発表会では、他校の教員向けにICT活用のワークショップをはさんでいたことは、本校の活用事例の普及という面で大きな成果であったと言える。今後は本校での事例をデータベースとして蓄積することで、さらなる波及効果を期待したい。