助成校が全国から集まり、行われる「グループディスカッション」や意見交換会は、自校研究を深められる良い機会です。
助成先は地域別に20のグループに分かれ、実践研究の概要を互いに発表しグループディスカッションを行います。
今回、特別研究指定校と一般のグループディスカッションに密着してみました。
特別研究指定校【Bグループ】密着レポート
茨城県つくば市立
小中一貫校春日学園 毛利 先生
岐阜県揖斐川町立
揖斐小学校 横山先生
木原 俊行先生 大阪教育大学 教授
野中 陽一先生 横浜国立大学 教授
Scene 1 1校目の実践概要発表
[ 春日学園
つくば市立春日小学校・春日中学校]
ICTを活用した思考力・判断力・
表現力を育む授業づくり
〜協働学習ツールとタブレットを
活用した
論理的思考力の育成〜
小中一貫校として、9年間を第1段階から第3段階に分け、問題発見力や協働力などさまざまなな力を育む取り組みをしています。従来は、論理的思考力を養うために、紙とふせんを使っていましたが、内容の修正やクラスで共有するときに、思考が止まってしまうという課題がありました。今回、デジタル化によって、9年間の一体型の取り組みができ、さらに学校の枠を超えた、より深い学習ができると考えています。
つくば市は、文部科学省の教育課程特例校の指定を受け、つくば市ならではの9年間を貫く次世代カリキュラム「つくばスタイル科」を設けています。これに加えて、本校が取り組むのは、春日スタイルの授業です。「考える時間」を特設し、子どもたちが8種のスキルを身に付けられるようにします。
Scene 2 1校目の発表に対して、意見交換
「つくばスタイル科」は、9年間の連続した学び(各教科・つくばスタイル科・道徳・学級会活動)の中で、論理的に考える力や、人と豊かにかかわる力の育成を目的としたカリキュラムです。それに対して、春日スタイルの授業では、特設する「考える時間」を基盤に、全教科・全領域を通じて行われます。養う8つのスキルは、「比較する」「分類する」「関連付ける」「推論する」「多面的にみる」「分析する」「評価する」「構造化する」。これらのスキルを、考える道具となる「X・Yチャート」などのデジタルのシンキング・ツール12種を用いながら、子どもたちが使いこなすようになることが目標です。
つくばスタイルと春日スタイルの位置づけ、何を独自の取り組みとするかについての意見が多くありました。
取り組み全体の 整理が必要 発表時には、考える技(学校独自の取り組み)とつくばスタイル(筑波市の取り組み)との関係を整理すべきです。 |
助成対象の内容に 絞り、発表すべき 今回の助成は、つくばスタイルの研究ではないはず。春日スタイルの授業「考える時間」に説明を落とし込む必要があります。 |
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フォーカスして 伝えることが大切 市全体の取り組みと、学校の取り組みとをそれぞれ明確にして、わかりやすく伝えることが大切だと、よくわかりました。 |
研究の方向性が 見えてきた 本研究を体系化し、整理する必要性がわかってきました。専門委員の木原先生にご協力いただきながら、研究に取り組んでいきます。 |
Scene 3 2校目の実践概要発表
[ 岐阜県揖斐川町立 揖斐小学校 ]
ICT機器を活用し、
道徳と関連付けた情報モラル教育の推進
情報モラル教育と道徳とをどう関連づけるかに取り組みます。知識の習得と心の領域の課題があり、知識の習得は測定できますが、心の領域は測定が難しい。情報モラル検定を使って、授業の効果を調査したところ、知識の習得については効果を確認できたにもかかわらず、心の領域は変わらないことがわかりました。そこで、道徳的な場面に遭う事例を調査し、そのコミュニケーションの仕方について取り組みます。また、家で困ったとき誰に相談するかといった、家庭との関連についても取り組みます。
Scene 4 2校目の発表に対して、意見交換
情報モラル教育の目標として、『心を磨く領域』と『知恵を磨く領域』の二つの領域があります。『心の領域』の測定にまで、踏み込むとしたら、道徳の授業以外、他の活動を研究対象に含めないと難しいという話になりました。では、どんな調査方法が考えられるでしょうか。
子どもの自主活動 で評価してみては 子どもが自主的に活動を進める時、心の発達につながりやすいものです。 |
子どもの自宅での活動を調査したい 子どもたちが、タブレットを家に持ち帰った時のことを調査しようと考えています。 どのように使うのかで心の測定につながるかもしれません。 |
Scene 5 ディスカッションを終えて
春日学園 毛利先生
少人数でのディスカッションで
本校の課題について、しっかり議論できました
ディスカッションは、特別研究指定校の2校と、各校のアドバイザーが参加し、4人という少人数で話し合うスタイルでしたので、本校の課題についてしっかり議論ができました。議論する中で、本研究を体系化し、整理する必要性、学年に応じて実践結果の分析をする必要性がわかり、研究の方向性がはっきりしてきたと感じています。
揖斐小学校 横山先生
評価方法、カリキュラムのとらえ方など
研究の進め方について具体的に学ぶことができました
グループディスカッションは、他校で実施していること、課題などを具体的に聞くことができる良い機会です。 本校の課題に対しては、学校の実態に合わせて具体的に助言をいただけました。実践研究の評価方法、カリキュラムのとらえ方など、研究の進め方について、大変勉強になりました。
専門委員からメッセージ
わかりやすく伝えることが大切
特別指定校は、地域や他校への発信が求められる。良い実践研究をしていても、うまく説明しないと伝わりません。学校主催の研究発表会や、財団主催の中間報告(1年目)、成果報告(2年目)では、全体像と研究テーマとの関係を整理し、わかりやすく伝えることが必要となります。
木原 俊行 先生 大阪教育大学教育学部 教授(写真:右)
野中 陽一 先生 横浜国立大学 教授(写真:左)