実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

富山市立山室小学校の活動報告/平成21年度4〜7月
前へ 次へ

セールスポイント

新体制でスタート! 各教室で生活規律(生活習慣・学習習慣)の確立を!

 新年度が始まり、いよいよ2年次の研究がスタートした。まず、全体研修会において、研究の目的や内容、方法などを共通理解する機会をもった。そうすることで、今年度加わった教員だけでなく、昨年度から研究に取り組んでいる教員も改めて本校の研究を見直すことができた。
 今年度、25の通常学級のうち、15学級は担任が替わった。4月は、まず担任と子どもたちとの信頼関係を築き、統制のとれた学級づくりが優先だ。細かな決まりやルールは、モジュール学習(基礎学力の時間)や日々の学習の中で確立していくようにする。新任の教員は、持ち上がり学級で行われているモジュール学習や授業を参観し、指導法のノウハウを学ぶ。学んだ指導法を基に自分の学級の子どもたちとともに、自級の決まりやリズムをつくりあげていく。他の学級でできていたことが、必ずしも自分の学級でできるとは限らないし、決して同じようにはできない。子どもたちとともに確立していくしかないのである。
 本校の研究は学級経営が基盤となっている。今後は、年度当初に確立した生活規律をしっかりと継続し、工夫・改善を繰り返して、よりよいものにしていく努力が必要である。

実践経過

研究の目的を再確認し、2年次の研究の方向を探る!

4月
  • 昨年度までの研究の概要及び今年度の研究の方向について 共通理解
  • 三部会研修(研究内容の確認・研究計画作成)
    「生活規律確立部会」「基礎学力定着部会」「授業力向上部会」
  • 校内授業研究の年間計画作成
5月
  • 外部講師による訪問アドバイス(堀田龍也先生・高橋純先生)
    ・授業公開(モジュール学習「基礎学力の時間」全学級・授業公開3学級)
    ・ワークショップ型研修
     「モジュール学習15分間の指導法及び指導内容について」
     「習得型の学習の指導法について」
    ・講師からの指導助言
     「ICTを活用した授業・指導法について」
     「今年度の研究の方向について」
  • 第2回公開研究会一次案内を各関係機関へ送付
6月
  • 学校訪問研修(本校の研究主題に基づいた授業研修)
7月
  • 公開研究会配付予定の紀要の内容検討
 

成果と課題

授業研究から指導法を再確認し、見直す!!

三部会からの提案授業を基に指導法について研究を進めた。
 
●成果
  • 生活規律確立のための指導は、発達段階に応じた内容を数回に分けてスモールステップで指導し、指導後も継続的に見届けることで定着を図ることができる。
    【4年「机中の整理整頓」・1年「よい姿勢」の指導実践を通して】
  • 15分間のモジュール学習は、5分ずつ3コマに分け、多様な内容を組み入れ、指導のバリエーションを工夫することでマンネリ化を防ぎ、集中力を高めることができる。また、フラッシュ型教材を活用する際は、一人一人答えさせるなど、全ての子どもができるようになっているか確かめる手立てを講ずる必要がある。音読指導の最後に、音読教材を視写する時間を取り入れることで、1時間目の学習の構えをもたせやすくなる。
    【2年音読指導・2年計算指導・6年音読指導の指導実践を通して】
  • 習得型の学習は、単元や題材、子どもの実態に応じて、基本的な指導のパターンを工夫・改善して指導していくことで確実な習得につなげることができる。
    【2年国語科、2年・4年・5年算数科の指導実践を通して】
●課題
  • 活用型の学習の授業イメージを具体的な実践に結び付けていくことができなかった。夏季の校内研修を通して、活用型の学習の指導場面について検討し、2学期の授業研究に生かしていく。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

子どもの立場で体験して分かる指導の善し悪し!

 昨年度から、研究授業の事前研修に模擬授業を取り入れ、より具体的な研修となるように研修スタイルを工夫してきた。15分間のモジュール学習の提案では、事前研修に参加した教員が子ども役となり、大きな声で音読したり、フラッシュ型教材の問題に答えたりする。
 子ども役になって長時間音読を続けていると、これがなかなか大変!「大きな声で!しっかり!」と言われても限界がある。立ったり座ったりしながら音読するのも大変!(「年だから」と言う声も聞こえてきましたが・・・)また、フラッシュ型教材のスピードについていけなかったり、どう答えていいか分からない指示があったりする。テンポが悪く、気持ちがちぐはぐすることもある。

「子どもにさせる前に、自ら体験せよ!」

 その後の研修では、内容だけでなく、音読させる時間や声の大きさ、テンポの取り方やリズムなども重要な指導のポイントである事を認識し、指導法を考えていった。また、フラッシュ型教材は、習熟を目的とした「全ての子どもが分かる」内容を吟味し、より効果的な活用法を探った。日々、試行錯誤、工夫・改善の繰り返しである。
 

解説と講評

コメント:玉川大学 准教授 堀田龍也先生

 本校の研究は,ICT活用による指導法の改善の研究に位置づく研究である。ICT活用に よって改善される指導法として,以下の(1)から(4)を研究の射程としている。
  1. しっかりとした生活習慣の確立のための生活指導
  2. それを前提とした訓練・習熟による基礎的な学力の徹底
  3. これらの基礎的な学力の上に立つ教科書レベルの基礎・基本の学力の習得
  4. さらにその先にある活用型の学習活動および探究型の学力の育成
 このうち,第1年次の2008年度は,特に(1)から(3)までを中心として研究範囲を定めていた。第2年次の2009年度は,(1)から(3)までの研究を定式化し,確実な形で広めることと,(4)について研究を着手することとなっている。
 以上より,2年次の2009年度当初の本校の研究上の課題は以下の2点となった。
 1点目は,上記(1)の組み立て直しである。本校では人事異動もあって6割もの学級担任が変更となった。そうなると担任教師と新しい学級の子どもたちによる学級の組み立て直しが不可欠となる。(1)は生活指導にも拡張されている指導であることから,4月当初はどうしても組み立て直しに時間がかかってしまう。さらに転入者への研修なども行われたため,研究体制が本格的になるまでにタイムラグが生じた。
 2点目は,(4)への挑戦である。知識や技能を習得させる授業と,児童が習得した力を活用していく授業は,当然ながら授業設計が異なる。新しい研究内容に対し,そのモデルを求めるためには,しばらくの間,まずは実践を重ねていくしか方法はない。よって,活用型の学習指導における試行錯誤がこの時期の課題であった。
 しかしながら,昨年度の蓄積によって,1学期中には1点目はほぼ解決した。2点目については,今後しばらくかかって研究が進められていくことになる。秋に予定されている公開研では,その途上の研究成果が報告されることを期待している。
 
前へ 次へ
富山市立山室中部小学校の基本情報へ