研究発表会の企画・運営を通じた,実践研究の進展
平成21年11月27日,広島県三次市立三和小学校は,研究発表会を開催した。その特徴は,学校からの報告中の「セールスポイント」に記されている。例えば,「バラエティ豊かな授業実践の公開(全学級公開)」「ポスターセッションによる事後協議会」等である。それらについて,筆者なりに解説したい。
まず,三和小学校の教師たちが有する,研究発表会の企画・運営に関する基本コンセプト,その確かさについて確認しよう。彼らは,研究発表会を,自校の実践研究の特徴と課題を学校外の教師等の評価言を得て詳細に検討する機会として理解している。だから,完璧な授業を披露する必要もないし,参加者数をいたずらに増やす必要もない。授業実践や研究発表を題材とする,他校の教師との意見交換が密になり,またそれが多面的であれば,それでよいのである。換言すれば,実践研究のR-PDCAサイクルの一環として研究発表会を性格づけるという,同校の教師たちの姿勢に,まずは注目していただきたいのだ。
それゆえに,他校の教師たちとの対話が豊かになるための仕組みを,三和小学校の教師たちは整えている。これにも,見るべきものがたくさんある。例えば,「ポスターセッションによる事後協議会」は,参加者,とりわけ若い教師や中学校の教師たちにとって,コメントが出しやすいスタイルの協議会であることは自明であろう。また,ICT活用に関するワークショップが企画・運営されており,そこでは,活動を介した,教師間の意見交換も実現している。さらに,三和小学校の教師たちは,研究紀要に加えて「ICT活用実践事例集」を作成し,参加者に配布しているが,これも,参加者から評価コメントを引き出すためのよきアプローチとして見事である。
もちろん,研究発表会をこのように企画・運営するのは,簡単なことではない。その準備に相当の時間が費やされたことは,容易に推察しうる。しかしながら,三和小学校の教師たちは,ここ数年間継続して研究発表会を実施してきて,上述したようなコンセプトとプロセスに基づく研究発表会であれば,自分たちにとっても,そして参加者にとっても,得るものが多いことを実感している。だからこそ,あえて,研究発表会のプログラムや準備に工夫を重ねるのである。その姿は,仲間や外部人材とともに問題解決的な学習に励む子どもの姿に,実によく似ている。
もし,読者が何のために研究発表会を催すのかが分からなくなったら,あるいはそのデザインや方法に関して迷いが生じたら,三和小学校のそれをもう一度じっくり眺めてみるとよろしかろう。そうすれば,研究発表会をやってみたい,その企画・運営を工夫してみようという気持ちがまた湧いてくるに違いないから。