実践研究の継続・発展に向けての努力と工夫
平成21年4月,広島県三次市立三和小学校は,教職員異動によって,新しいメンバーを迎えた。13人中の6人にも及ぶ。しかも,その中には,研究の主柱を成す,ICT活用については,「さわったことがない」「初めて見た」という状況にある教師さえいたようである。そのような状況で,果たして,実践研究を継続・発展させることができるのか――。アドバイザーたる,筆者も不安であった。
幸い,筆者の心配は杞憂に終わった。三和小学校の実践研究は,実に順調に進展している。例えば,それは,授業研究の量と質において,確認される。まず,はや4月17日に,授業研究がスタートしている。それは,5月にも,6月にも,実施され,1学期中に,全学年の教師が指導案を作成し,授業を公開し,そして事後協議会に臨んでいる。しかも,事後協議会のデザインにも工夫がこらされ,平成20年度とは違ったスタイルのものに,教師たちはチャレンジしている。
もちろん,提案される授業のデザインについても,その発展を確認できる。三和小学校の教師たちが,実物提示装置や学校放送番組の利用を継続するとともに,電子情報ボードやデジタルコンテンツの利用については,新しい利用場面を構想し,実施しているからだ。
さらに,研究のPDCAサイクルを尊重する姿勢が堅持されている点にも,注目してもらいたい。三和小学校の教師たちは,6月には,「プレ研究会」を催し,他校の教師たちの参加を得て,授業や研究の構想・枠組みに関する「外部評価」を試み,その妥当性と課題を確認している。それを,1学期の研究のまとめに役立てている。
特別研究指定校の実践研究は,2年間に及ぶ。それゆえ,研究を進める条件が変わる場合も少なくない。それでもなお,実践研究の継続・発展に向けて,教師たちが努力と工夫を重ねているか。それが,授業の改善やカリキュラムの進展に結実しているか。そうした指標で三和小学校の本年度の取り組みを点検・評価してもらいたい。さすれば,同校から学ぶものがさらに増えるに違いなかろう。