実践研究の外部評価へのチャレンジ
2学期,広島県三次市立三和小学校の教師たちは,実践研究の内容等に関する「外部評価」の企画・運営,その充実を図っている。彼らのチャレンジは,次のような側面に象徴される。
まず,11月の研究大会の開催である。この日,全クラスで,ICT活用の授業が公開された。また,その前には,研究主任による研究発表や全授業者による公開授業アピールの機会が設定された。そして,公開授業後には,ポスター発表形式での事後検討会が準備された。授業ごとにポスターが作成され,その前に当該授業の実践者が位置し,聞き手からの質問に応じていくというスタイルである。短い時間で,三和小学校の教師たちと他校からの参加者の密なコミュニケーションが繰り広げられていたが,それは,このような形での協議に同校の教師たちが挑戦したから実現したことである。他校の教師たちの実践報告やパネルディスカッションの時間も確保されている。こうした点から,三和小学校の研究大会のメニューは,参加者が豊かな実践情報を獲得できる,よきプログラムであったと言えよう。
次いで,研究大会時に配布された,研究紀要の内容や構成が見事である。研究紀要では,同校の実践研究の軌跡や枠組みが,分かりやすく,また構造的に描かれている。取り組みの成果を示すデータも,豊富に載せられている。もちろん,授業の実際も見事にレポートされている。加えて,それらをコンパクトにまとめた,「リーフレット版」までもが,作成されている。筆者はこれまで,学校が作成する研究紀要を何百と目にしてきたが,その経験からしても,同校のものが秀逸であると言える。同校の研究紀要は,多くの教師たちにとって,すぐれたモデルになりうるものだ。と同時に,その内容や構成が工夫に富んでおり,同校の実践研究の特徴,実際,課題をあますところなく表現しているので,研究大会に参加できなかった教師たちが評価的コメントを同校に届けてくれる可能性を高めているとも言えよう。
さらに,同校の外部評価が連続的・発展的であることにも注目したい。9月にも,「プレ公開研究会」なる,他校の教師が参加できる機会を有していた(21年2月にも,やはり他校の教師が参加する授業研究会が開催される予定である)。また,ホームページでは11月の研究大会の様子や反省が述べられている。
筆者は,同校の教師たちから,11月の研究大会終了後の慰労会で早くも,「2月の授業研究会で,木原先生や他校の先生に,授業を見てもらいたいんです」という声を聞かせてもらった。それは,同校の実践研究において,上述したような外部評価が十全に機能していることを雄弁に物語っていよう。