実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

三好市立三和小学校の活動報告/平成20年度4〜7月
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セールスポイント

研究構想の共有化

4月初旬に,今年度の研究構想等について研究主任がプレゼンテーションを実施し,研究内容の共有化を図った。また,早い時期に授業研究会を実施することで,今年度赴任した教員に,研究の実践イメージをつかんでもらうようにした。

ワークショップ型協議会の実施

授業後の研究協議では,小グループに分かれ,模造紙と付箋を使ったワークショップを行った。全員が活発に発言し,焦点化した協議となった。

外部評価の取り入れ

大学講師,教育事務所・委員会指導主事,中学校教員,他校教員を校内授業研究会に招聘し,授業実践や研究推進に対する外部評価を受けることができた。

実践経過

4月
  • 研究推進計画の提案 研究組織の発足
  • 校内授業研究会(6年算数科「立体」4年国語科「ヤドカリとイソギンチャク」)
5月
  • 校内授業研究会
    ◆ 5年算数科「垂直・平行と四角形」
    • 成果:実物投影機によって,平行四辺形の性質を調べる視点が提示され,自力解決の手助けとなっていた。
    • 課題:TTの意図・役割を明確にする必要がある。
    ◆ 2年国語科「たんぽぽ」
    • 成果:電子情報ボードに教材文を映し,重要語句に線や囲みをすることにより,時間や事柄の順序を表す語句を,全員で確認できた。
    • 課題:児童が発表する際に,重要語句を指で示したり,児童自身がペンで囲んだりすると,より文章を根拠とした読み取りや発表の力がつくのではないか。
6月
  • 校内授業研究会
    ◆1年算数科「いろいろなかたち」 写真2
    • 成果:算数的活動が工夫され,児童が活動を通して立体の機能や性質を体感できた。
    • 課題:生活の中にある立体に目を向けさせるために,ICTを効果的に活用できると,さらに良かったのではないか
    ◆3年国語科「しぜんのかくし絵」 写真3
    • 成果:書くための資料(教材文,モデル作文,集めた資料など)が豊富に準備され,効果的であった。実物投影機を使い児童の作品の良い点をたくさん見つけることができた。
    • 課題:電子情報ボードの書き込み機能を活用し,根拠を基にした発表をさせたり,文章の良い点を視覚的に捉えさせたりすれば,さらに効果的だった。
7月
  • 1学期研究のまとめ(全体・各研究部会・個人)
 

成果と課題

●成果
  • 授業研究会ではICTと思考力・表現力育成の関連性について具体的な協議ができた。それぞれの授業研究会が単発にならず,連続性や発展性のある授業提案がなされた。
  • 外部講師・参加者を多く招聘でき,研究に関する外部評価を得られた。
  • 実物投影機を6台借りることができ,日々の実践に活用することができた。
●課題
  • プロジェクタの購入が予定より遅くなった。ICT環境を早く整備したい。
  • 各研究部会の活動が,計画よりも進んでいない。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

付箋紙を使った小グループ協議やグループ発表などを行い,協議の活性化,焦点化を図ったが,ワークショップの内容が複雑になってしまった。また,外部講師に多数参加してもらうことができたが,短い協議時間の中で十分コメントをもらうことができなかった。協議会の企画・進行を綿密に計画し,シンプルかつ充実した協議会ができるよう工夫していきたい。
 

解説と講評

コメント:大阪教育大学教授 木原俊行先生

小さな学校の実践研究に対する大きな期待
  −広島県三次市立三和小学校の取り組みの特長−

 広島県三次市立三和小学校は,山間に位置する,小さな学校である。児童数は,150人にも満たない。教員数も,10人をわずかに上回るだけである。しかし,この小さな学校の実践研究は,1年間に何十という学校を訪れる筆者が,今もっとも注目し,そして大きな期待を寄せている取り組みである。その特長は幾重にも及ぶが,代表的なものを挙げるとすれば,次のようになろう。
 まず,そのテーマや授業デザインが先進的である。三和小学校が掲げる研究テーマは,「論理的に考え表現する力を育てる授業の創造〜ICTを活用した国語科・算数科の授業改善を通して〜」である。思考力や表現力といった,いわゆる高次な学力は,反復・繰り返しの原理を満たすだけでは育成できない。そのためには,例えば活動のモデル,思考のためのツール,振り返りの機会の提供等,教師の間接的な指導,その精錬が必要とされる。同校の教師たちは,それを実現する道具や環境として,電子情報ボードをはじめとするICTを授業に導入しているが,その姿は,我が国の小学校における授業づくりの近未来のスタンダードを体現していると言えよう。
 次いで,校内研修のメニューや活動に工夫が凝らされている。同校の「実践経過」を再度ご覧いただきたい。既に,4月には,いわゆる研究授業が実施されている。これは,先のテーマをしっかりと,しかも具体的に検討したい,そのためには授業研究の回数を増やしたいとする同校のチャレンジ精神の現れである(ちなみに,同校では,すべての教師が1年間に3回以上研究授業を実施する)。
 各授業研究会の企画・運営上の工夫にも注目したい。それは,ワークショップ型協議会の実施であり,そのスタイルの多様化である。特に,後者は,秀逸である。例えば,ある授業研究会では参加者が付箋紙に授業を見学して気づいた事項を書き出すスタイルが採用されているが,別の授業研究会ではあらかじめ定められた観点に従って授業を評価する仕組みが導入されている(授業評価シートの活用)。要するに,同校では,参加者間の意見交換を活性化するための技がたくさん蓄積されており,それらが,授業研究会の開催時期や授業者のねらい,参加者の属性等に応じて使い分けられているのである。それによって,同校の授業研究は,マンネリとは対極に位置するものとなっている。
 さらに,同校の実践研究におけるオープンマインドには,いつも感心させられる。いわゆる公開研究会は,その規模を変えつつ,1年間に3度も催される(それ以外の授業研究会についても,基本的には学校外からの参加が歓迎されている)。他校の教師,教育行政関係者が授業を見学し,研究発表を聞き,研究協議に参加して,三和小学校の取り組みの外部評価を繰り広げている。それが,同校の取り組みを発展させるための,よき刺激にも,豊かな栄養源にもなっている。
 三和小学校の実践研究を参考にすれば,おそらく,なんらかの点において,学校における実践研究の改革,その具体化を図られよう。同校の研究発表会に参加して,あるいは,同校の研究紀要を手にとって,さらには同校のホームページ(http://www.miyoshi-miwa-e.hiroshima-c.ed.jp/)にアクセスして,その取り組みにふれていただきたい。
 
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