実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第35回特別研究指定校活動情報/第35回特別研究指定校

日野市立平山小学校の活動報告/平成21年度8月〜12月
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セールスポイント

 本研究の指導者である信州大学の東原教授に加え、パナソニック教育財団からも担当指導者として放送大学の中川教授にかかわっていただき、「子供達に学力を付ける」ことを目指してより実践を深めることができた。
 8月から12月に行った4本の研究授業で提案された概要は、以下の2点。
  • 基礎基本を確実に定着させる個に応じた授業
    →自作教材の提示、「カブリ」ソフト操作による思考活動
  • 学び合い、思考を深める授業
    →モニタ(実物投影機や書画カメラ)による発表、「カブリ」ソフト操作による思考活動

実践経過

8月 "学力向上を目指して"
◇研修『学力向上とICT活用のツボ』中川教授ご指導
≪ご講演ポイント≫
【ICTの活用効果】
  • 意欲・関心の拡充・・・イメージ化、集中力の高まり
  • 知識・理解の補完・・・体験できないことの提示・繰り返し・想起・焦点化
  • 技能の習得・・・「わかる」から「できる」へ、モデル化
  • 思考の深化・拡大・・・思考の可視化

◇『学力向上プランの作成』東原教授ご指導
≪平山小学力向上プランのポイント≫
学力テストなどの客観的なデータに基づき、補充すべき内容や、その単元と関連する他の単元の学習のために補充すべき内容を吟味し、完全習得が実現できるようICTの活用も考慮しながら作成した。日々の授業に確実に位置づけ、継続することに重点をおいた。
9月 "かかわりあい&モニター大作戦"
◇研究授業 『第1学年 どちらがながい』
≪大きく写して見せることで、他の子供のやり方をお互いに知り、共通理解を深める≫
自分たちのグループで考えたことを発表しあう場面において、児童が机上でやっている方法をビデオカメラから大型モニタへ映して全体発表を行った。このICTの活用の効果は以下の通り。
  • 言葉や、図式では伝えられない考え(自ら考えた操作活動)を、クラス全員に、実際に見せる(視覚的に表現する)ことができる。これにより、みんなにわかりやすく伝えることができた。また、堂々と発表できた。
10月 "ICT活用による基礎基本の完全習得+「カブリ」ソフト操作による思考活動"
◇研究授業 『第5学年 図形の角のひみつを調べよう』
≪知識として理解&体験・操作をする中での定着≫
 基礎基本と思考力は分けられるものではない。そこで、2クラスの進度を変え(1組の次時が2組)、次のような視点で、基礎基本の習得と思考活動を行う授業を展開した。
  • 書画カメラを使用して自分の考えをわかりやすく発表し、考えを共有することによって、三角形の内角の和が180°になることを確実におさえる。(1組)
  • 児童が紙で操作する場と同時に、カブリソフトを(1)一斉学習(1組)、(2)個別学習(2組)で操作する場を設定し、操作しながら三角形の内角の和が180°になることの考えを深めるようにする。


11月
上旬
"つまずきの見られる児童に自作教材でミニ授業"
◇研究授業 『第4学年「考える力をのばそう『ちがいに目をつけて』」
≪習熟度4分割〜問題への迫らせ方の工夫&自作教材でのミニ授業〜≫
習熟度別の少人数学習において、次のような視点で個に応じた学習を展開し、基礎基本を習得を図った。
  • 一人一人への個別指導
    →教室における人間インタラクティブスタディ(○つけ法)の取り入れ
  • つまずきの見られる児童を集めてミニ授業
    →プレゼンテーションソフトによる自作教材の提示


11月
下旬
"視覚的にわかりやすく"
◇研究授業 『わかくさ学級「お金の学習をしよう」
≪学習内容の共有を図るために、操作活動を実物投影機で提示≫
特別支援学級では、子どもの実態に応じて、その子なりの目標を明確にして指導にあたることが大切であるが、次のようなICTの効果を取り入れた。
  • 手順を随時提示することで、活動に見通しがもてる。
  • 視覚的に分かりやすくなり、確実な理解を図ることができる。
  • 操作活動を拡大して見ることができるので(実物投影機)、実感できる。
 

成果と課題

 本研究の目的は、「算数科における学力向上(基礎基本の完全習得と数学的な思考力の向上)」にある。その基盤となる「学力向上プラン」を作成することで、日々の授業に確実に位置づけ、継続できるようにした。
 2学期は、1学期に続いて3学年+わかくさ学級の研究授業を行い、今年度のすべての学年の研究授業を終えた。ICTをいくら活用しても、子どもの力が付かなければ意味がない。全ての学年の研究授業を通して、やっと、学力向上+ICT活用の関係が見え始めたところである。今後は研究発表会に向けて成果をまとめていく。

 *公開に関する情報:平成22年2月4日(木)研究発表会開催
  平山小Webサイトにて案内をダウンロード可 http://www.e-hirayama.hino-tky.ed.jp/
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

事前指導、協議会が学びの場
 それぞれの研究授業において、新たなICT活用に挑戦する授業実践を行った。講師の先生には、校内研究日に直接来ていただくだけでなく、事前にテレビ会議システムを通して、授業の組み立てから指導をいただいた。そこでは、ICTの活用よりは、むしろ、授業の本質にかかることの指導を多くいただいた。この事前指導の機会が、実践者(実践学年)の学び(研修)の場となった。
 研究授業後の協議会でも、まずは「実践者(実践学年)から学ぶ」というスタンスをとった。そこでの話題も、ICTの活用に関することはもとより、教師の発問、子供の意見の取り上げ、一人一人の子供の学習状況把握、子供に付いた力など、授業の本質に関する内容が多かった。

学力をあげるために
 「学力」を支える基盤として、「基本的な生活習慣」がある。これを定着させるためには、家庭・地域の大きな協力が必要である。本校はコミュニティ・スクールであるため、学校運営協議会とPTAの協力により、日常の生活習慣を見直す「親子はなまる週間」の取組を実施することができた。これは大きな成果であると思う。
 今後も、学校では、「学力向上」という重点目標に向けて、本研究を推進していくと同時に、家庭・地域の三者が互いに連携して、それぞれの立場でうまく機能することが本研究の成果につながると考えている。
 

解説と講評

コメント:放送大学 教授 中川一史 先生

実践研究の外部評価へのチャレンジ

 平山小学校のICT活用のポイントは、従来の指導方法と効果的なICT 活用の相乗効果を実践的に研究していることにある。年間を通して、基礎・基本の習得の徹底と、思考力・表現力の向上の両輪で授業研究を行っている。校内授業研究では、いつもソフトやコンテンツ、提示装置などのICTと授業設計の関係について、具体的に検討している。
 担当指導・助言者として、この両者の選択、組み合わせに関して、そのポイントや授業場面での教師のふるまいに言及し、授業改善を促している。特に、発表場面での活用では、ICT活用場面だけではなく、考えを深めるための試行錯誤などの時間の保証など、そこに至る授業でのねりあげを、あたりまえのようにとても大事にしていることは注目に値する。ともすると、このねりあげが薄くなってしまい、ICT活用場面のみに注目が集まることに陥ってしまう。
 平山小学校の教員は、いつも前向きでその姿勢もすばらしい。今後は、日常性と子どものみとりについて、さらに研究を深めていくことが重要であると考える。
 また、平山小学校は学校・家庭・地域の三者の関係性について、地道にその成果を積み上げていっているので、その積み上げが、本校の研究にどのようにからんで相乗効果をあげているのか、さらにその検証をのぞみたい。
 
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