実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

三次市立三和小学校の活動報告/平成20年度1〜3月
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研究推進リーダー研修会の実施

2月6日(金)に,研究推進リーダー研修会を実施しました。当日は市内の研究推進担当の先生方,県外からの参加者,パナソニック教育財団・大学関係者,指導講師,教育事務所・市教委の指導主事の先生方,総勢37名の先生方にご参加いただくことができました。

プログラム

◆授業公開
 1年国語科「じゃんけん」
 2年算数科「10000までの数」
 5年国語科「身近な生活について討論しよう(コース別学習)」

◆グループ別研究協議

◆ワークショップ研修
「次年度研究計画の充実をめざして」
  ・三和小学校の取り組み
  ・研究計画見直し・改善のポイントについて
(木原 俊行先生)
  ・グループ協議(各校の研究活動の交流)
  ・研究計画を改善させるポイントの考察
  ・全体協議

◆閉会挨拶 
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 グループ別研究協議では,参加者の皆様に熱心に議論していただき,授業でねらいとする思考力・表現力を指導者が明確につかんだ上で指導することが,ICTのさらなる効果的活用につながることなど,本校の今後の課題,方向性についてのご意見を多く得ることができました。
 また,木原教授のコーディネートによるワークショップ研修では,それぞれの学校における研究推進の工夫を交流でき,その改善点を確認することができました。
写真3
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研究紀要・リーフレットの作成

全教職員が研究紀要の作成に携わった。特に算数科・国語科の章は,各研究部会で執筆担当者を分担し,原稿のチェックをした後,さらに全員で校正作業を行うことで,内容を共有することができた。研究紀要の中から,特にICT活用に関する内容をコンパクトにまとめ,リーフレット版として作成・配布した。他地域から「取り寄せたい」という申し込みもあった。

実践経過

1月
  • 研究全体会
    • 3学期研究日程について 研修会準備・役割分担
  • 研究部会活動
    • 指導案検討・模擬授業の実施
2月
  • 研究推進リーダー研修会の開催
  • 研究全体会
    • 研修会の反省
  • 研究授業のまとめ作成(各授業者)
3月
  • 研究部会
    • 1年間の研究部会活動のふりかえり 次年度に向けた協議
  • 研究全体会
    • 研究部会活動の報告 次年度に向けた協議
  • 研究紀要増補版の発行
 

成果と課題

●成果
 研究推進リーダー研修会を実施し,市内外から多くの先生方に参加していただくことができました。ワークショップ研修を通して,それぞれの学校の研究推進上の取り組み,工夫などを交流することができ,参考になることが多くありました。
 今回は担当教科を交換して研究授業を行いました。他方の研究部会の取り組みを振り返り,指導案作成・模擬授業・研究授業を行うことで,研究内容の一層の共有化を図ることができました。
 また3月末には,公開研究会以降の授業研究会のまとめ,1年間の研究部会活動のまとめ,研究全体の総括などを整理し,研究紀要増補版として発行しました。11月に配布した研究紀要とあわせて,次年度転任してくる先生に配布し,新しいメンバーになっても研究が継続・発展できるようにしたいと思います。
●課題
 2月,3月は年度末で大変忙しい時期です。さらに今年度は新学習指導要領の移行に備え,年間指導計画等を全面的に見直す作業があり,スケジュールがかなり厳しい面がありました。しっかりと見通しを持って計画を立てることが大きな課題です。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 2月の本校研修会に,特別研究指定校の坂出市立府中小学校の先生にご参加いただきました。また,富山市立山室中部小学校の先生にも別の機会にお会いすることができ,指定校同士で交流できました。次年度は助成金を活用し,研究会に参加できればと計画しています。
 

1年間(20年度)の実践を終えての感想

 特別研究指定校として,多大なご支援・ご協力を頂き,研究を推進することができました。それだけに,この1年間は,そのご支援に答えうるだけの研究になっているか,子どもたちに本当に学力をつけることができているのかと,いつも自分たちに問いながら取り組んできたように思います。
 今年度は計3回,小規模ながら公開研究会・研修会を実施することができ,参加していただいた先生方,指導者の先生方から多くのご意見・ご指導を得ることができました。その中で,授業で子どもたちにつけさせたい思考力・表現力を,指導者が明確にもち,ねらいにそった学習活動,道具,教材,場を準備することの大切さを改めて感じました。しっかりとした授業デザインがあってこそのICT活用であるということを,これからの授業改善の大きな視点として持ち続けていきたいと思います。
 本校研究に対し熱心にご指導いただいた木原俊行先生,ご支援いただいたパナソニック教育財団の皆様,研究会にご参加いただいた皆様,本当にありがとうございました。21年度も引き続きよろしくお願いいたします。
 最後になりましたが,本校の取り組みにご興味をお持ちの先生方,ぜひ本校研究会にご参加ください。一緒にこれからのICT活用のあり方,授業のポイントについて考えていきましょう。ご参加をお待ちしております。

次年度(21年度)への思い(課題・目標など)

 次年度は研究指定最終年度ということで,これまでの取り組みをさらに充実させるとともに,それらを整理し、実践事例集として発行し,研究成果を広く発信できるようにしたいと考えています。これからICTを活用しようと考えている方,ICT活用にすでに取り組んでいる方,思考力や表現力を育てる新たな方法を探している方など,いろいろな方に読んでいただけるようなものにしていきたいと思います。
 また,学期に1回ずつ公開研究会を実施し,ICTを活用した授業のあり方について,参加者の皆様とともに考えていきたいと思います。21年度は6月,11月,2月に研究会を行います。

解説と講評

コメント:大阪教育大学 教授 木原俊行先生

特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性

 3学期,広島県三次市立三和小学校は,三次市教育委員会と協力して,市内の小学校の研究推進リーダーを対象とする研修会を開催している。地域の学校との連係プレーたる,この「研究推進リーダー研修会」の企画・運営は,特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性を示すものであろう。というのも,同校のレポートに確認できるように,この研修会のプログラムには,当日公開された3つの授業に関する協議だけでなく,「次年度研究計画の充実をめざして」というワークショップが用意されているからだ(11月に公開研究発表会を催しているのに,2月になって,一日に2コマ,全部で3つの授業が学校外に公開されていることも,すばらしいのではあるが――三和小学校は全学年単学級で6クラスしかない)。
 このワークショップでは,まず,三和小学校の研究主任が,平成20年度の研究活動の全体像をレポートする。次いで,各学校の研究推進リーダーは,それを材料や鏡にして,自校の平成20年度の研究活動を点検・評価し,次年度の研究活動の改善点を洗い出していく。その際,小グループでの話し合い,全体での意見交換などの場面が設けられ,参加者間の情報・意見交換も豊かに繰り広げられる。
 他校の研究推進リーダーから,例えば,「うちの学校でも,(三和小学校のように)4月に授業研究会を催してみたい」「環境整備が進めば授業も変わるので,そのためのアクション(例えば実践研究助成への応募)を起こしたい」といった声が出てきた。これらのコメントに象徴されるが,この集いの開催によって,三和小学校の教師たちは,すぐれた授業モデルを提示するだけでなく,他の学校の研究推進リーダーが自校に必要とされる授業像を開拓するための方法論を示唆したり,それを考えるための機会を提供したりしていることになろう。学校が異なれば,求められる授業像が変わることからすれば,授業の公開以上に,このワークショップは,地域の他の学校における学力向上アプローチの充実に資すると言えよう。
 その他にも,3学期に,三和小学校の教師たちは,研究部会・全体会を開催したり,研究紀要の増補版を作成したりして,研究の成果と課題を明らかにしている。その厚みもまた,秀逸である。学校における実践研究には,完璧はない。だから,授業づくりと同じく,点検と評価,改善案の作成という過程が極めて重要である。三和小学校が確立している,PDCAサイクルに基づく,実践研究のマネージメントにも,ぜひ学んでいただきたい。
 
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