特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性
3学期,広島県三次市立三和小学校は,三次市教育委員会と協力して,市内の小学校の研究推進リーダーを対象とする研修会を開催している。地域の学校との連係プレーたる,この「研究推進リーダー研修会」の企画・運営は,特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性を示すものであろう。というのも,同校のレポートに確認できるように,この研修会のプログラムには,当日公開された3つの授業に関する協議だけでなく,「次年度研究計画の充実をめざして」というワークショップが用意されているからだ(11月に公開研究発表会を催しているのに,2月になって,一日に2コマ,全部で3つの授業が学校外に公開されていることも,すばらしいのではあるが――三和小学校は全学年単学級で6クラスしかない)。
このワークショップでは,まず,三和小学校の研究主任が,平成20年度の研究活動の全体像をレポートする。次いで,各学校の研究推進リーダーは,それを材料や鏡にして,自校の平成20年度の研究活動を点検・評価し,次年度の研究活動の改善点を洗い出していく。その際,小グループでの話し合い,全体での意見交換などの場面が設けられ,参加者間の情報・意見交換も豊かに繰り広げられる。
他校の研究推進リーダーから,例えば,「うちの学校でも,(三和小学校のように)4月に授業研究会を催してみたい」「環境整備が進めば授業も変わるので,そのためのアクション(例えば実践研究助成への応募)を起こしたい」といった声が出てきた。これらのコメントに象徴されるが,この集いの開催によって,三和小学校の教師たちは,すぐれた授業モデルを提示するだけでなく,他の学校の研究推進リーダーが自校に必要とされる授業像を開拓するための方法論を示唆したり,それを考えるための機会を提供したりしていることになろう。学校が異なれば,求められる授業像が変わることからすれば,授業の公開以上に,このワークショップは,地域の他の学校における学力向上アプローチの充実に資すると言えよう。
その他にも,3学期に,三和小学校の教師たちは,研究部会・全体会を開催したり,研究紀要の増補版を作成したりして,研究の成果と課題を明らかにしている。その厚みもまた,秀逸である。学校における実践研究には,完璧はない。だから,授業づくりと同じく,点検と評価,改善案の作成という過程が極めて重要である。三和小学校が確立している,PDCAサイクルに基づく,実践研究のマネージメントにも,ぜひ学んでいただきたい。