解説と講評 |
コメント:宮崎大学 教授 新地辰朗 先生 |
学習の基準性: これからの学校教育には,デジタル教科書,電子黒板等,最新技術による新たな教材・教具の提案が予想される。その際,新しいテクノロジの導入だからといって,各教科の目標や望ましい教育内容と"かい離"した授業展開は許されない。本荘小学校での徹底した教科書活用は,積極的なICT活用を追求する中で,学習の基準性を明確にさせた。教師には行間を読み取る教科書(教材)研究が,子どもたちには適宜以前使った教科書で学びなおす主体的学習がみられた。教科書の内容,記述・表現から,教授・学習の方向性が,先生方はもちろんのこと,子ども達や家庭と共有できたことがポイントである。すべての教室で,教科書が投影された状態で,授業がスタートするのが本荘小学校である。 同僚性とリーダーシップ: ICT活用が進まない学校では,「若い教師は興味があるのですが,ベテランはちょっと・・」とよく聞く。当然のことだが,このような学校では,ICT活用による教育効果を共有することは難しい。本荘小学校の場合は,ベテラン教師こそ,教育経験を生かし,ICT活用を積極的に工夫していた。若手教師も決して受け身ではなく,臆することなく,自分の考えをぶつける。このような前向きな同僚性を,支えていたのが校長であり,研究主任であった。重点的に利用する機器や目指すべき授業を示し,日ごろから教室を回りながら,また子どもたちと接しながら,教師にメッセージを送りつづけた校長さん二人の姿が印象的であった。活気ある同僚性は,校長さんのリーダーシップと呼応し合うものと感じた。どうやら,校内研修以外にも,若手教師の授業力を高めるために,先輩教師の授業を参観するよう勧める雰囲気もある様子。岐阜市の先生方の,互いを高め合う姿勢を背景にした2年間だったように思える。 ムリせず,着実な教育改善: 特別研究指定校として,研究テーマを深めていくのは当然だが,日常的な教育改善の延長としての教育実践研究を展開してほしい。この点,本荘小学校のICT活用は,着実に,また全員で深化したように感じる。教室前方の様子(機器配置)は,
(正面)プロジェクター投影 自分で考える子ども: 「子どもたちの変容としてどんなものがありますか?」とお聞きした際,養護教諭の先生から,「欠席者数が減りました」「大きなけがをする子どもが減りました」と教えていただいたことがある。自分自身で考えることを求め,自律的に生活できる,また主体的に学べる子どもを育成する中で,ICT活用が工夫されていたことがわかる。点数では捉えることのできない学力が向上している可能性が高い。 |