実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第35回特別研究指定校活動情報/第35回特別研究指定校

岐阜市立本荘小学校の活動報告/平成22年度4〜7月
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セールスポイント

 1月28日「岐阜市の学校教育」公表会にて、2年間の実践発表を行った。
 今年度は、授業改善の効果的な手立てとしてのICT活用の実践についても紹介した。
 学習活動については、教科書を活用した昨年度の実践からさらにステップアップし、学習のねらいによって、「学びあう時間」と「個の時間」の時間配分に軽重をつけたり学習形態を変えたりした。さらに、「個の時間」に移行する前に自己評価を行い、児童に確かな学力をつけることに力を注いだ。
 これらは、昨年度からの「無理、無駄、むら」のない取り組みから教師にゆとりができ、そのゆとりを「児童」に関わる時間に多く費やすことができるようになった結果、できたことだと考えている。

実践経過

1月上旬
    写真
  • 教科部会
    岩崎先生のご指導のもと、教科書活用について話し合いを行った。

  • 教科部会
    1月28日にむけての学習活動計画の最終確認と共通理解を行った。
 
1月28日
  • 平成22年度「岐阜市の学校教育」公表会
    平成21年度22年度「パナソニック教育財団
    実践研究助成特別研究指定校」学習活動発表会

    全学級で学習公開を実施した。
 
2月
    写真
  • 研究推進委員会
    来年度の方向について、学年で話し合い、意見を持ち寄り話し合い立案した。
 
3月
  • アンケート調査実施
    「算数学習状況」調査と「算数を学習する力」の調査を実施した。
 

成果と課題

●成果
  • 日常的に活用することによりICT機器は黒板と同様の道具になり、教師も児童も目的に応じてICT機器を活用し、話し合う姿 が見られるようになってきた。
  • 板書とICT機器を併用し、それぞれのよさを活かすことで、児童の話し合いが活発になり授業もよくわかるようになってきた。
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●課題
  • 評価が曖昧で、それをいかした指導が不十分である。児童が意欲的になる評価のあり方を研究する。
  • 教えるべきことと考えさせることを明確にし、学習活動の充実を図る。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 3学期は、岐阜市の学校教育の公表会を兼ねて、学習活動公開を行った。本校の研究を岐阜市の先生方に知っていただける機会になり、昨年度の公開とはひと味違ったものになった。全体会では、実践報告をするとともに鼎談では、宮崎大学大学院 新地教授、岐阜大学 益子教授、岐阜市教育研究所 松巾主査の三名の先生方にご助言をいただくとともに、今後の方向についても教えていただいた。
 教職員の多くが異動するなか、如何に研究内容を継続させるかが課題になったが、迷ったら「教科書」に立ち戻るという「教科書活用」と岐阜市が導入した「ICTの活用による授業」が、教職員が変わっても本荘小の研究がぶれない基になったと考える。
 

2年間(21・22年度)の実践を終えての感想

 平成19年度文部科学省からの3年間の「先導的教育情報化推進プログラム」の指定後、20年度からは、パナソニック教育財団からの実践研究助成をいただき22年度には「岐阜市の学校教育」公表会公開の場をいただいた。
 この間、飛躍的にICT環境等が整備され、教職員がそれらを有効的に活用するようになるとともに、児童も自分の考えを伝えるためや、学習に役立てるためにICT機器を活用する姿が見られるようになった。
 本荘小学校の研究推進の「手のこんだ豪華な料理ではなく、普段の食事」と例えられている毎日の学習活動に「教科書活用」や「ICT活用」を取り入れることが、児童の自主学習の継続と支援にむすびついてきたと自負している。
 

次年度(22年度)以降、今回の成果をどのように展開するのか(課題、目標など)

課題に挙げた下記の3点
  1. 評価が曖昧で、それをいかした指導が不十分である。児童が意欲的になる評価のあり方を研究する。
  2. 教えるべきことと考えさせることを明確にし、学習活動の充実を図る。
  3. ICTや教科書について、今後も有効な活用方法を究明していく。
これらについて、23年度の研究を行う方向であるが、さらに効果をめざすために23年度は、教科を先ずは算数にしぼり、「確かな学力をつけるための学習活動の改善」を行っていきたい。

解説と講評

コメント:宮崎大学 教授 新地辰朗 先生

学習の基準性:

 これからの学校教育には,デジタル教科書,電子黒板等,最新技術による新たな教材・教具の提案が予想される。その際,新しいテクノロジの導入だからといって,各教科の目標や望ましい教育内容と"かい離"した授業展開は許されない。本荘小学校での徹底した教科書活用は,積極的なICT活用を追求する中で,学習の基準性を明確にさせた。教師には行間を読み取る教科書(教材)研究が,子どもたちには適宜以前使った教科書で学びなおす主体的学習がみられた。教科書の内容,記述・表現から,教授・学習の方向性が,先生方はもちろんのこと,子ども達や家庭と共有できたことがポイントである。すべての教室で,教科書が投影された状態で,授業がスタートするのが本荘小学校である。

同僚性とリーダーシップ:

 ICT活用が進まない学校では,「若い教師は興味があるのですが,ベテランはちょっと・・」とよく聞く。当然のことだが,このような学校では,ICT活用による教育効果を共有することは難しい。本荘小学校の場合は,ベテラン教師こそ,教育経験を生かし,ICT活用を積極的に工夫していた。若手教師も決して受け身ではなく,臆することなく,自分の考えをぶつける。このような前向きな同僚性を,支えていたのが校長であり,研究主任であった。重点的に利用する機器や目指すべき授業を示し,日ごろから教室を回りながら,また子どもたちと接しながら,教師にメッセージを送りつづけた校長さん二人の姿が印象的であった。活気ある同僚性は,校長さんのリーダーシップと呼応し合うものと感じた。どうやら,校内研修以外にも,若手教師の授業力を高めるために,先輩教師の授業を参観するよう勧める雰囲気もある様子。岐阜市の先生方の,互いを高め合う姿勢を背景にした2年間だったように思える。

ムリせず,着実な教育改善:

 特別研究指定校として,研究テーマを深めていくのは当然だが,日常的な教育改善の延長としての教育実践研究を展開してほしい。この点,本荘小学校のICT活用は,着実に,また全員で深化したように感じる。教室前方の様子(機器配置)は,    (正面)プロジェクター投影

   (左側)デジタルテレビ+(正面)プロジェクター投影

   (左側)デジタルテレビ+(正面)黒板に学習の流れを整理
                     +(黒板右側)プロジェクター投影

と,変遷した。機器の新設に加えて,校長さん,先生方による,"教え方""学ばせ方"を追求する協議の積み重ねが反映された一例と言える。

自分で考える子ども:

 「子どもたちの変容としてどんなものがありますか?」とお聞きした際,養護教諭の先生から,「欠席者数が減りました」「大きなけがをする子どもが減りました」と教えていただいたことがある。自分自身で考えることを求め,自律的に生活できる,また主体的に学べる子どもを育成する中で,ICT活用が工夫されていたことがわかる。点数では捉えることのできない学力が向上している可能性が高い。

 
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