既に前回のコメントで,立野小学校の取り組みについては総括したので,今回は,私自身も振り返りを行なってみたい。
ICTが日常の授業で活用されるようになるためには,普通教室のICT環境整備が不可欠である。ICT活用が授業改善に寄与するためには,ICT機器の操作スキルの向上と同時に,板書,指示,発問といった基本的な授業技術とICT活用を組み合わせた総合的な授業力の向上が必要となる。
これらを短期間で実現したのが立野小学校である。その背景には,学校教育目標や研究テーマの共通理解があり,授業研究を積み重ねる学校文化があり,授業者一人ひとりの熱意と創造的な取り組みがあった。
私の役割は,ICT機器の活用をどうやって授業に溶け込ませるか,の1点だけだったかもしれない。ICTへの過剰な期待を排除し,準備等に手間のかかる活用ではなく実物投影機の普段使いを通してその効果を実感してもらい,研究授業におけるICT活用を分析的にみる視点を提供して,共通理解を図ることが私の行なったすべてだったように思う。
活用を通してその効果を実感し,授業研究を通してICT活用の意義について納得することで,向上心に満ちあふれた先生方の授業にICT活用が浸透していくのに時間はかからなかった。
ただ,残念ながら,私一人の働きかけだけでは難しく,多くの研究者の方々にもご協力いただいた。多様な観点からのコメントで補強,裏付け,新たな気付きを生じさせていただき,やっとのことで,立野小学校の先生方に納得してもらったというのが実際のところだろう。
ICT活用の観点を取り入れた教科のカリキュラムが研究成果としてまとめられたことで,授業に溶け込んだICT活用が整理され,継承されやすくなった。今後は,課題として示されているICT活用のスキルだけでなく,ICT活用を含む情報活用能力の育成を各教科の中で行なっていくためのカリキュラム開発と持続的な実践に期待したい。