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横浜市立立野小学校の活動報告/平成22年度1〜3月
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研究発表会を振り返って

昨年の10月29日、全国より300人を超える参加者を招き、研究発表会を行った。概要については、前回報告したが、本期間ではその振り返りを行った。

参観者アンケートから

  • 「子どもたちの話し合いがよくできていて、友達の考えを共有し、理解を深めている様子がよく分かりました。そのための1つの手段としてICT機器の活用がとても効果的だったと思います。」
  • 「実物投影機の画面にきらきらした目で見入る子どもの姿が印象的でした。」
  • 「2年生が机の中から自分で撮ってきた写真を大切に出し、実物投影機を操作し『山手はかっこいい。』といっている姿、自分の地域を好きになっていく姿、素晴らしかったです。」
  • 「手元が大きく写る機材の活用がとても良かったです。」
  • 「子どもたちも進んで動かしたり、映像を使って説明したり等、ICTが深く浸透していることが分かりました。」
  • 「ICT活用に興味があり、電子黒板を利用した授業を期待してきましたが、実物投影機がメインの授業が多く、参考になりましたが少し残念な気持ちもありました。」
 

参観者アンケートを受けて(研究のまとめから抜粋)
 パナソニック教育財団の中田さんから「立野スタイル」と話を頂いたことがありました。その言葉を聞いたとき、私たちは、どのクラスもパターン化された、あるいはモデル化された授業展開を想像したでしょうか。私はそうではなかったと思います。中田さんが話された「立野スタイル」、私たちが考える「立野スタイル」とは、研究テーマに迫るために皆で共通理解した、子どもが生き生きと活躍する姿、それに向かって我々授業者一人一人が様々に試行錯誤を繰り返しながら授業を創り上げるスタイル。それこそが「立野スタイル」と呼べるべき「かたち」なのかもしれません。「ICT活用」の迫り方において、授業者が主張をもち取り組んだからこそ、参観者が子どもの姿から研究を語って頂いたのだと言えます。
 これからも、子どもが動き出す授業、子どもが前のめりになる授業、子どもを沸かせる授業、そんな授業に向かって授業者が主張をもって取り組んでいく、そしてそこに「ICTの活用」が必要感とともに自然とある。そんな授業を目指し、さらに研究に取り組んで いきたいと考えます。

実践経過

1月 5日  重点研究全体会(発表会振り返り)
    重点研究カリキュラム作成部会
11日 重点研究カリキュラム作成部会
    第9・10回授業研(1/25・2/1)の指導案検討
19日 横浜市中区視聴覚研究会公開授業研(本校)
   第10回授業研(1/31)の指導案検討
25日 第9回授業研究会(道徳・体育)
27日 重点研究カリキュラム作成部会
31日 第10回授業研究会(図工・国語)
2月 1日  第11回授業研究会(国語・理科)
10日 重点研究カリキュラム作成部会全体会
3月 8日  重点研究全体会(次年度へ向けて)
16日 重点研究カリキュラム作成部会
23日 重点研究カリキュラム作成部会
25日 重点研究全体会(次年度に向けて)
 

成果と課題

●成果
  • 効果的なICT活用場面を単元計画の中に随時位置付けてきたことにより、以下のような支援を行えるようになってきた。
    「授業の中で、子どもが実体験を行うのが難しい場合、ICTを活用しながら、調査活動を行えるよう支援ができるようになってきた。」
    「ICTを活用して材や資料を分かりやすく提示することで、それらが共有され、『かかわり合い』が深まり、話し合いが活発になってきた。」
  • ICT活用の観点を取り入れた、教科のカリキュラムを作成
    教科のカリキュラムの中にICT活用の観点を盛り込むことにより、単元の中、どの授業場面でICTを用いるとより効果的に学びを進めることができるのか、整理することができた。
 
●課題
  • ICTを活用する技能を子どもにどのようにつけていくのか。
    技能を一人一人の子どもに確実に身に付けさせるため、各教科のどこでどのような力を育てていくのか、学校の実態に合わせたカリキュラムの見直しが必要。
  • 授業の中で何を見せていくのか。
    本校がICTを教科の中で活用するためにこだわってきた部分である。見せる内容の吟味こそが、ICTを本当の意味で活用していくことに繋がると考える。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 2年間の研究をまとめ、次年度の研究に向けて準備・計画をしていく時期となった。来年度から教科としては、理科・生活科・生活単元学習を窓口として研究を行っていく。既に数回の授業研究を行っているが、授業の中でICTを活用する場面が見られた。研究をまとめたから終わりでなく、自然な形でICTの活用がなされていることは、担当者としての喜びである。これは、子どもや教師が必要感をもっているからこそ継続されているのだと思う。研究の方向性が間違ってはなかったと実感できたうれしい出来事である。
 
 

2年間の実践を終えての感想

 先日、横浜市中区の視聴覚研究会主催の公開研究授業を本校で行った。これまでの研究の噂を聞き付けてか、例年より多くの参加者に恵まれ、充実した研究会を行うことができた。この研究会の中でも、子どもが生き生きと目を輝かせる場面を参加者から評価いただいた。「子どもが生き生きと活躍する場面」教師なら皆が願っている子どもの姿の一つである。このような場面に出くわすと教師は労をいとわず、そこを目指す。管理が煩雑なICT機器を取り扱う担当者も、機器操作が苦手な教員も、皆が一生懸命、そして日常の中でICT活用を行うことができるようになった。
 今回、研究の機会を与えてくださったパナソニック教育財団様、担当してくださった中田様、そしていつも前向きに暖かくご指導いただいた野中先生、本当にありがとうございました。
 

次年度以降、今回の成果をどのように展開するのか

今回の実践の大きな成果の一つが、ICT活用の観点を取り込んだ教科のカリキュラムを作成したことである。現在、社会科・生活科・生活単元学習では、大変細かいICT活用の観点を記すことができた。今後、他の教科にも細かいICT活用の観点を記していき、日常の授業の中で、効果的なICT活用ができるようにしていきたいと思う。

解説と講評

コメント:横浜国立大学 准教授 野中陽一 先生

 既に前回のコメントで,立野小学校の取り組みについては総括したので,今回は,私自身も振り返りを行なってみたい。

 ICTが日常の授業で活用されるようになるためには,普通教室のICT環境整備が不可欠である。ICT活用が授業改善に寄与するためには,ICT機器の操作スキルの向上と同時に,板書,指示,発問といった基本的な授業技術とICT活用を組み合わせた総合的な授業力の向上が必要となる。

 これらを短期間で実現したのが立野小学校である。その背景には,学校教育目標や研究テーマの共通理解があり,授業研究を積み重ねる学校文化があり,授業者一人ひとりの熱意と創造的な取り組みがあった。

 私の役割は,ICT機器の活用をどうやって授業に溶け込ませるか,の1点だけだったかもしれない。ICTへの過剰な期待を排除し,準備等に手間のかかる活用ではなく実物投影機の普段使いを通してその効果を実感してもらい,研究授業におけるICT活用を分析的にみる視点を提供して,共通理解を図ることが私の行なったすべてだったように思う。

 活用を通してその効果を実感し,授業研究を通してICT活用の意義について納得することで,向上心に満ちあふれた先生方の授業にICT活用が浸透していくのに時間はかからなかった。

 ただ,残念ながら,私一人の働きかけだけでは難しく,多くの研究者の方々にもご協力いただいた。多様な観点からのコメントで補強,裏付け,新たな気付きを生じさせていただき,やっとのことで,立野小学校の先生方に納得してもらったというのが実際のところだろう。

 ICT活用の観点を取り入れた教科のカリキュラムが研究成果としてまとめられたことで,授業に溶け込んだICT活用が整理され,継承されやすくなった。今後は,課題として示されているICT活用のスキルだけでなく,ICT活用を含む情報活用能力の育成を各教科の中で行なっていくためのカリキュラム開発と持続的な実践に期待したい。

 
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