解説と講評 |
コメント:白鴎大学 教授 赤堀侃司先生 |
1.ICTの活用について 始めに、ICTを、実に細やかに、そして、効果的に活用している実践に敬意を表したい。それぞれに、意味がある使い方になっている。例えば、以下のような実践である。 @ 振り返りということ 体育の跳び箱運動の様子をデジタルビデオで記録して再生することで、自分の姿を振り返ることが、容易にできる。 私たち大人でも、自分のことを知っているようでよく知らないというのは、経験的に知っているが、他人から指摘されると、微妙な感情が働く。しかし、そのままを映し出す機械であれば、誰でも素直に、自分を振り返ることができる。その良さが、よく出ている。ICTという道具は、なかなか思うように動いてくれないことがあると書かれているが、その通りで、人と道具の関わりは、まるで人のつきあいと同じで、相手のことをよく知ることで、コミュニケーションができる。異文化理解に似ているであろう。 A 使い方を見つけるということ 理科で振り子の実験を電子黒板を用いて行い、さらに平均値を出す試みは、高校の実験のような高度な印象を持った。実際に、このような実験が高校でよく実施されている。興味深いのは、このような使い方を、子供達が考えて実験したという事実で、それは子供達が、電子黒板から引き出したとも言える。バフチンというロシアの研究者は、それを対話と呼んでいる。人は他人だけと対話しているのではなく、物とも自分自身とも対話していると言う。子供達は、電子黒板と対話しながら、平均値を計算し、新しい使い方を見いだしたのであろう。今後も、子供達の発想に期待したい。 2.人間力の育成とICTの関わりについて 前回に、人間力についての基礎的な文献について紹介したが、今後は、さらにその関わりについて、議論を継続したい。PISAを代表とするような国際学力調査では、知識から能力に移行しつつある。そのような広い能力を含めて、学力と呼んでおり、 この意味では、学力の世界標準ができあがりつつある。アメリカの21世紀汎用スキルも、同じような能力や技能に注目しており、道具を使う能力、コミュニケーション能力、コアとなる教科の知識などを挙げているので、基礎基本の知識と、人間力ということになろう。 以上から、本研究では、ICTという道具を使う場合における、子供同士の対話の特徴や、教材や自分との対話の特徴など、その過程や知見を明らかにすればいいかもしれない。つまり、人間力とICT活用を切り離さなくても、自然に関連していくのではないかと思われる。 今後とも、このような実践の継続を期待したい。 |