実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

坂出市立府中小学校の活動報告/平成20年度8〜12月
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セールスポイント

  1. ICT機器の環境作りをする。
    ICT機器を活用するには、使いたいときに使える機器がなければ!

  2. ICT機器を活用した研究授業を実施する。
    実践してみて良さや課題を教職員で話し合い、よりよいものにしていく

  3. ICT機器を子どもが活用する方法を研究する。
    教師だけでなく、子どもも活用できるICTへ

実践経過

ICT機器の環境作り

夏休みまでにプロジェクタを3台、書画カメラも3台整備してその効果を実感してもらった。夏休みから現在までにPTAへの協力もいただきプロジェクタ8台(うち期限付き無料貸し出し1台)、書画カメラ7台、書画カメラ付きプロジェクタを1台整備した。各クラスまでとはいかないが、各学年が「普通の教室」で「普通の授業中」に「普通に使える」ようになってきた。
しかし、ICTが苦手な人にもすぐ使えるようにすべてのプロジェクタと書画カメラを常に接続状態にして、しかも移動が簡単にできるようにワゴンに乗せた。学年によってはビデオデッキも設置し、より利便性の高いICTワゴンにした。
使えば使うほどICTワゴンの利用価値は高くなってきているので、少しでもクラスに一台ずつ設置できさらに効果的な活用へと進んでいけるようにしたい。

ICT機器を活用した研究授業を実施する。

ICTを活用した研究授業を行い,授業討議を重ねながらICTのより効果的な活用について研究を深めてきた。
<実践例1 第6学年 社会>
「明治維新をつくりあげた人々」−解放令と本当の平等を求める人々−

(1) ICTの活用
1)方法

「学習中の思考の過程が分かり,自分の考えが残せるノート作り」を目指す本学級の歴史学習では,1時間の中で読み取りたい数枚の写真や地図・文章資料などを載せた資料を配付している。子どもたちは,その中から自分で資料を選択し,ノート作りに生かしている。 子どもに配布した資料と同様の資料を全体での話し合いの際にプロジェクタで黒板に拡大して投影し,印を付けたり書き込みをしたりしながら,思考を深めるために活用 した。本時では,「5万日の日延べ」「地租改正」「学校へ行けない子ども」等の資料を用意し,活用した。

2)実践の様子
写真1 写真2
<多くの資料をプロジェクタで映す> <資料からの読み取りを話し合う>

<実践例2 第6学年 理科> 「大地のつくりと変化」

(1) ICTの活用
1)方法

単元全体の中で,インターネットを活用して,地層の様子や化石の名前を調べた。地震や火山のふん火で土地の様子が変化することを調べる過程でも,必要な情報を獲得するためにインターネットを活用し,地震のしくみや火山のふん火による大地の変化の様子について調べた。
デジタルカメラと投影機の活用を図り,今までの府中町内の見学地の様子や地層の中の粒の状況などを提示したりして,経験を想起させるようにした。

2)実践の様子
写真3 写真4
<自分のノートを拡大して> <提示された資料をめぐって考える>

<実践例3 第5学年 算数> 「面積の求め方を考えよう」

(1) ICTの活用
1)方法

<発展コース>
本時でも2つの場面で活用した。まず,1つは導入時である。そして,2つ目は,みんなで考え方を話し合う場面である。ここは,自分の考えを説明するという表現力と,みんなの考えから一般化をはかるという判断力や思考力を育てる大切な活動であった。自分の考えを伝え,みんなで話し合う場合には,教材提示装置とプロジェクターを使って,子ども個人のノートを大きく映し出した。発表者は,相手を意識しながら,自分の考えを伝えていく。もちろん,大きな声ではっきり発言することや,アイコンタクトをとるなどの表現力が求められることはいうまでもないが,自分の考えをより分かりやすく伝えるために,ICTが効果的であった。また,底辺(横)と高さ(縦)がおなじということは,三角形の面積が長方形の面積の半分になっているということを視覚的にとらえさせる場面でも,パソコン上で色を付けてICT活用を考えた。
<応用コース>
授業の導入で,平行四辺形の面積を求めた時に図形の一部を移動して既習の図形に変形したことを思い出せるように,コンピュータソフトを使って復習した。また,学習活動3でみんなに自分の考えを発表する際にワークシートをそのまま拡大提示装置とプロジェクタで提示し,よく分かるように説明する時の補助資料として活用した。
<基礎基本コース>
前時までの学習で学んだ,三角形の面積の公式を確実にしておくため,コンピュータソフトを使って復習をした。また,児童の書いたノートを実物投影機とプロジェクタを使って映し出しながら,より理解を深めることができるようにした。

2)実践の様子
写真5 写真6
<ソフトを使って考え方の確認を視覚的に行う>
写真7 写真8
<ノートを映して考えを説明する>

3)ICT機器を子どもが活用する場の設定
<先生がICT機器を使って授業するのは?>
図1
<ICT機器を使うと学習がわかりやすい?>
図2
<ICT機器を使うと友達の考えがよくわかる?>
図3
ICT活用を児童の意識調査を通しても評価していきたいと考えた。そこで児童の7月に児童にICTに関するアンケートを実施した。
「先生がICTを使って行う授業が好きである。」という児童が8割近くを占め,学習にICTを使った学習に関心があることがわかる。また、7割以上の児童が、コンピュータやプロジェクタを使わないときよりも学習がわかりやすいという結果も出た。本校においてもICTを活用した学習が効果を上げることができると考えられた。
さらに、「どんなときにICT機器を活用すれば学習がよくわかるか。」という質問に対して、下記のような記述などがあった。
[国語]
・文章を示すとき ・漢字の学習 ・ノートを映して説明
[算数]
・教科書を大きくして説明 ・ノートを使って説明 ・計算の仕方・答え合わせ ・100ます計算 ・グラフを映す・図形の勉強
[理科]
・植物などの画像 ・用具の使い方 ・小さいものを大きく ・実験の説明のとき
[社会]
・地図を見るとき ・ビデオを見るとき ・資料を見るとき

このことをふまえながら効果的なICT機器の活用の実践に取り組んできた。

また、本校では、「学び合い」にも力を入れている。学び合いにもICT機器の活用は有効な手段と考えている。「ICT機器を使うと自分の考えがうまく伝えられたり、友達の考えがよくわかったりしますか。」という質問にも伝えられたり、わかったりする、という回答が6割以上を占めた。
そこで、夏休みまでは教師がまず使ってみることを率先して取り組んできたが、9月からはそれに加え、児童が自分の考えを発表する手段としても効果的に使うことを目的としての実践にも取り組んでいった。
写真9 写真10
<国語・写真を見せながら
自分の考えを発表>
<書写・書き方の手本を友達にみせる>

 

成果と課題

●成果
  • 研究授業実践でICT機器を活用することで,子どもたちは自分の意見を伝える方法を増やし,子どもの思考すること・表現することへの意欲が高まった。
  • 友だちの操作活動を生で分かりやすく見ることができるので,学び合いに集中して真剣に取り組む姿勢が育ってきた。
●課題
  • 残す資料・消す資料をどのように取り扱えば,子どもの思考の流れとうまく関連させられるのかという点である。今後,ICT機器の活用をどのタイミングで行うのかと併せて,実践の積み重ねの中で研究していく必要がある。
引き続き、児童が活用し互いに学び合う方法を考えながら、動画を活かした授業にも取り組んでいきたいと考える。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • この地域の公立学校では、プロジェクタや実物投影機が一番充実してきたのではないかと思う。うらやましがられるようになった。
  • せっかくの公開授業。本校の別の研究公開が、都合で当初の予定と変更になり、パナソニック特別指定の公開授業と日程が近くなってしまい、参加者が少なかったのが残念。
 

解説と講評

コメント:京都教育大学教授 浅井和行先生

「着実な歩み」

本校の本期間(8〜12月)のセールスポイントに沿ってコメントする。

(1) ICT機器の環境作りをする。
このことについては、着実な歩みをしていると思われる。前期間に学校を訪問したときには、真新しいICT機器に備品シールが貼られていたが、12月の訪問時には、各学年が「普通の教室」で「普通の授業中」に「普通に使える」ようになっていてICT機器が目立たなくなってきた。

(2) ICT機器を活用した研究授業を実施する。
研究授業も着実に進められている。教師も子どもも無理をすることなく、使える教育用ソフトを活用し、どうしても適当なものが見あたらない場合には、プレゼンテーションソフトを使って自作を模索するまでになった。

(3) ICT機器を子どもが活用する方法を研究する。
教師が教材の提示用にICT機器を活用することに加えて、子どもたちが自分のノートを拡大して提示しながら発表する等、ICT機器を子どもたち自身が学習の道具として使えるようになった。
これらセールスポイントに加えられる本校の特長は、研究授業で議論したことをすぐに実践に生かすということである。授業の研究協議後、遅くまで残って授業のあり方、研究の進め方について議論した。そこで、議論したことが必ず次の訪問時には実現しているのである。今回の場合は、子どもがICT機器を活用するということであった。次回の訪問のために私にも課題が課せられている。私に課せられた課題は、「映像の教育特性について分かりやすく話すこと」である。
全体として「着実な歩み」を見せている。自ら学ぶ子どもたちの姿に自然と寄り添って学び続ける教師が見える。
 
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