実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第35回特別研究指定校活動情報/第35回特別研究指定校

岐阜市立本荘小学校の活動報告/平成21年度8月〜12月
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セールスポイント

学習活動公開

 午前は全ての教師が2時間ずつ、学習活動を公開した。
 研究発表会にありがちな特別な授業ではなく、日常的な学習活動として、様々な教科や特別活動でICTを利用し、教科書を活用した学びの連続する学習の様子を公開した。
 午後は全体会を2部構成で行った。
 第1部では、「文部科学省指定先導的教育情報化推進プログラム」調査研究校の6校の3年間の取り組みの成果を報告した。
 第2部前半では、本荘小学校の取り組みとして、教科書を活用した学びの連続・児童が自ら考えて行動する力を育てる生徒指導・児童自らが学びに応じた問題を取り出せるiプリの活用・児童が自ら考えて行動することによる健康の増進・ICT導入の経費と消耗品費等の削減について、それぞれの担当者が発表した。
 第2部後半は、宮崎大学教授の新地辰朗氏をコーディネーターに、聖徳学園大学教授の石原一彦氏、元聖徳学園大学教授の岩崎潔氏、本荘小学校校長の井上志朗をパネリストとして、学習活動、情報教育、学校経営等についてパネルディスカッションを行った。

実践経過

8月
  • 校内研修
    11月の学習活動公開に向けて、岩崎潔氏、井上志朗校長のレクチャーを受けながら、学習活動計画を作成した。


9月
  • 学習活動の校内研究会
    1年英語「やさいであそぼう」


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(3回目)

10月
  • 学習活動の校内研究会
    4年音楽「ふしのとくちょうを感じ取ろう」
    4年国語「にた意味の言葉」
    6年学活「JFA『こころのプロジェクト』」
    5年国語「未確認飛行物体」
    1年国語「大きなかぶ」
    3年算数「三角形と角」
    特別支援学級「日なたと日かげをしらべよう」
    3年社会「くらしをまもる」


  • 全校研究会
    4年算数「分数」
    岐阜教育事務所より岩井隆司指導主事を招き、全校研究会を行った。


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(4回目)


  • 校内研修
    11月の学習活動公開に向けて、岩崎潔氏、井上志朗校長のレクチャーを受けながら、学習活動計画を見直し、修正した。


11月
  • 学習活動の校内研究会
    3年社会「火事がおきたら」


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(5回目)


  • 学習活動公開
    午前中に2時間の学習活動を公開した。午後からは全体会で、文部科学省指定先導的教育情報化推進プログラム調査研究校としての成果報告、本荘小学校の教育活動の取り組みについての発表、学習活動・情報教育・学校経営等についてのパネルディスカッションを行った。
 
12月
  • 研究推進委員会
    学習活動公開を振り返って、これからの研究の方向を探り始めた。


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(6回目)
 

成果と課題

●心機融合 学習活動公開で、プロジェクターやiプリ等を利用した日常的なICT活用について、多くの方々に公表することができた。
●学びの連続 学習活動公開で、児童の家庭での自主学習を前提とした学びの連続について、多くの方々に公表することができた。
高学年の児童でも、自主学習を進めようとする児童が増えてきた。
●教科書活用 学習活動公開で、教科書を活用した学習活動について、多くの方々に公表することができた。
学習活動公開にむけた学習活動計画作りを通して、教師に教科書の記述を分析して指導に活かす力が育ってきた。
●ICT活用 学習活動公開の全体会で石原一彦教授から「偉大なるワンパターン」の称されたように、どの学級・どの教科・どの教師でもパソコンとプロジェクターを活用した学習活動が展開されるようになった。
新しく配備された大型テレビの活用方法を研究していきたい。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

●学習活動公開にご参加いただいた皆さまへ
 11月28日の学習活動公開には、22都府県から640人もの参加者がありました。たいへん多くの方々に発表を見ていただけたことが一番の喜びです。土曜日にもかかわらず来校いただいた皆さまに、心から感謝しています。

●普段の学習の様子を公開
 普段から本荘小学校では、教科書画像をスクリーンに大きく映すことで、特別な教材や教具の準備を少なくし、その分で教科書の分析や指導の計画に力を入れています。「手の込んだ豪華な料理ではなく、普段の食事」と例えているように、毎日の学習活動でできることを大切にして研究を進めています。
 学習活動公開でも、この日だけの特別な授業ではなく、普段の学習活動の様子を2時間見ていただこうと取り組んできました。これは、特別な授業を2時間公開するのはたいへんな事ですが、毎日の5・6時間のうちの2時間を公開する事は難しい事ではなく、他校の先生方も取り入れやすい、という考えからです。
 もちろん多くの参観者に児童のよいところを見ていただけるよう、丁寧な準備や教材研究はありましたが、公開前に夜遅くまで残ってプリントや掲示物を作ることもなく、公開当日は、全ての教師が2時間ずつ、普段どおりの学習の様子を見ていただくことができました。
 この学習活動公開は、本荘小学校にとって大きな財産になりましたが、これが特別な日ではなかったことは、次の日も公開当日と同じように、パソコンやプロジェクターが活用され、児童がiプリを取り出して学習する姿が、学校中で見られたことからも分かります。
 

解説と講評

コメント:宮崎大学 教授 新地辰朗 先生

4月〜7月の活動報告において,

    1. 「心機融合」と「学びの連続」を実現するための体制や仕組み
    2. 活動内容と子どもたちの変容との関係


の2点から,活動の一層の深まりを期待した。
 「特別研究指定校」の中間発表として開催された学習活動公開(11月28日)では,上の2点が明らかにされた。午前中に公開された児童の学ぶ姿にも活動の成果が認められたが,午後の全体会ではICT活用によるコスト削減,メディアを利用した学習活動(教科書活用)による主体性の向上,欠席者数の減少など,これまでの学習活動の成果や意義が具体的に解説された。
 特色ある教育の着実な実践にも,そのポイントについてのわかりやすい説明にも,教育課題に対して自律的に取り組む教師集団の専門性が必要となる。本荘小学校の8月〜12月の活動は,企画部,運営部に分かれ,学校長を中心に全職員がそれぞれに工夫を重ねた成果と言える。

 12月までに接した本荘小学校の特色を,次のように整理する。

特 色 内 容
1.
教育ビジョン
の構築・実現
学習計画表 児童の学習活動充実を目指した,教師側の計画(指導案に相当)。(1)〜(5)の流れに統一し,全授業で利用。
  1. 自主学習を確認する,
  2. 「学習のめあて」と「学習のしかた」を確認する,
  3. 自主学習の成果を交流し,成果を深め,拡大する,
  4. 教師の指導によって学習のめあてに到達する,
  5. 自分の学習をする
学習活動計画 単元毎に,児童が作成する,学びの計画表。
2.
指導力向上
協力者による指導コンサルテーション 校長や大学教授の経験のある岩崎潔先生が,教科書活用の意義や配慮すべき点を,先生方にアドバイス。週2回程度,学校を訪問し,児童にも積極的に声をかける。
3.
ICT活用
・全教室で教科書投影
・WEB利用
・教科書をコンテンツとすることで,遠回りしない,日常的かつ効果的ICT活用
・通知表
・ホームページ
・コラボノートによるペーパーレス職員会議や校外からの資料アクセス
4.
自律性のある
組織の形成
(リーダーシップの分散)
企画部・運営部による校内体制 運営部:担任教師は,学級の児童への指導・学習支援に専念。
企画部:校内全体に関わる内容は,担任教師以外全員で組織的に対応。

適材適所を目指し,学習活動中に教室を出た児童も企画部で対応するなど,役割分担をしながら児童を育む体制。企画部と運営部に上下関係があるのではなく,相互に協力。
 
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