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実践研究助成
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横浜市立立野小学校の活動報告
平成21年度1〜3月
実践研究助成
(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)
活動情報/第35回特別研究指定校
セールスポイント
次年度研究体制・方向性の確認
今年度、最後の研究授業を2月4日に行った。1年・3年・5年の3授業ともに「人間力の育成」をめざしたICT活用で、これまで通り社会科・生活科の教科内容を中心とする研究会を、外部講師を招いて行った。この場で、次年度も同様に社会科・生活科の教科研究を続けることが確認された。また、2月8日には、同じ授業についてICT活用の視点から話し合う研究会を開催し、野中准教授のご指導を仰いだ。この場で、以下のことが確認された。
社会科・生活科を中心とした教科指導を通した人間力の育成を中核としながら
その中でのICT活用を検討していく。
その成果として、ICTの活用により、人間力がより育成されることを示す
実践経過
1月
今後の研究体制の確認・最終指導案検討
2月4日校内授業研究会の指導案検討。
補正予算による教育委員会配当機材の設置・活用開始。
推進委員会での次年度研究体制・発表会の持ち方について検討。
2月
校内授業研究会を通してICT活用について検討
2月4日 1年・3年・5年でのICTを活用した社会科・生活科授業研究会
2月8日 4日の授業をもとにしたICT活用の視点からの研究会。
(外部講師による訪問アドバイス…野中准教授+パナソニック教育財団担当者)
3月
次年度研究体制とICT活用についての共通理解
3月2日 遠山理事長の訪問に合わせ、スマートインフィル活用授業の実施。
同日、保護者向け授業参観において10クラスのICT授業公開。
スマートインフィルシステムの撤去(研究協力期間終了のため)
研究全体会において、次年度ICT活用を中心とした発表会を行うことの決定。
児童による資料印刷環境の拡充のため、プリンタ等の購入設置。
成果と課題
●成果
研究の第三段階として、2月4日・8日の校内授業研究会で、「自分づくり」→「人間力の育成」をめざした社会科・生活科・生活単元学習の実践研究の一環としてICT活用ができる場面を検討し、次年度はICT活用を前面に出して実践を続けることが確認できた。
平成21年度補正予算により大型ディスプレイ・パソコン・実物投影機等の配当が1月に行われ、これらのICT機器は、導入初日から各学年で活発に活用されている。特に、実物投影機やデジカメSDカードを直接テレビで表示させるといったパソコンを使わない形の活用事例が飛躍的に増えてきた。
補正予算によるICT機器の導入に伴い、本研究助成金の使途再検討を行い、印刷環境の拡充に計画変更を行い、プリンタの追加購入をした。
ICT活用による「人間力の育成」をめざす場面として、第二段階の成果を受けて野中准教授よりご指導をいただき、下記のような3場面にまとめることができた。
児童の話し合い活動が活性化するような資料・教材を教師が提示する場面
児童が収集した情報を共有化する場面
児童が自分の考えを表現する手段として実物投影機を活用する場面
●課題
各教室に電子黒板と同じ大きさのディスプレイが設置されたことにより、大型ディスプレイ+実物投影機の実践が飛躍的に増えた。これは、より手軽に活用できるメリットに多くの教員が取り組んだことによると思われる。しかし、このことにより、一時的に電子黒板の使用頻度が減ってしまった。
しばらくすると、パソコン操作に堪能な教員を中心に電子黒板を活用した実践が復活してきた。実物投影機が全クラスに配当されていないことと、電子黒板でなければできない機能が見直されてきたことによると考えられる。機器拡充とともに、教職員研修等も進めことが必要となっている。
「人間力の育成」の成果は数値では測れない部分が大きいため、通常の授業分析等の方法で、看取っていくこととした。それに伴い、成果として「ICT活用を盛り込んだカリキュラム開発」を行い、次年度にそれを形に表すことが確認された。しかし、現段階では内容・形式とも確定していないため、今後の検討課題として残った。
裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)
マスメディアを通しても話題となった補正予算「スクールニューディール政策」に振り回された3ヶ月であった。補正予算が執行されICT機器が拡充されたことは、本研究に関してもたいへん嬉しいことであったが、その機器類が12月〜2月の時期に一気に導入されることとなった。今まで「身近な場所にあれば…。」と言われていたものが、実際に身近な場所に来たのだが、置いただけでは活用はできない。担当者側は使いやすい環境を目指した設置計画や機器設定に追われることとなった。
本研究助成金において購入計画を立てていたものが、配当により不要になることが分かったものがある。使途の変更には、校長と財団の承認が必要であり、何度もメールや文書のやり取りを行う必要が生じてしまった。また、「配当されるのだったら本研究助成金で他のものを買いたかったのに…。」という事態も生じた。
今年度研究・会計・機器設定等の中心となっていた教員が人事異動対象となっていたため、引き継ぎ体制をつくり、2年間の助成金の大部分を今年度中に使い、機器設定済みの状態で次年度を迎える予定にしていた。しかし、実際には異動がなく次年度も研究に関われることとなった。そうなると逆に、助成金使途を次年度ゆっくり検討すればよかったと後悔することとなった。
1年間(21年度)の実践を終えての感想
学校としては、「全国小学校社会科研究協議会授業公開校」という看板が、「パナソニック教育財団特別研究指定校」という看板よりも重くのしかかった1年間であった。しかし、そうした学校事情の中でICTテーマを目指した実践を続け、11月13日の社会科全国大会の日に「ICTを活用した人間力育成」の成果も同時に発表することができたことは大きな成果と感じている。
残念ながら、この発表会の日にICT単独部会を設定しての研究会を開くことはできなかった。ただ、全体会や部会の中でICTに触れる場面もあり、多くの方にICT活用の可能性を感じていただけたものと思う。次年度はICT活用を前面に出した研究、そして発表会を目指していきたい。
次年度(22年度)への思い(課題、目標など)
21年度の社会科全国大会は終了したが、22年度は同時に研究指定を受けていた「文部科学省学力向上実践推進校」の最終年度となる。そのため、社会科・生活科の教科研究を継続して成果をまとめるとともに、本研究助成のまとめも行うこととなる。
年度末の校内研究会において、「人間力の育成のための単元・カリキュラム開発」という本研究助成テーマを受けたサブテーマを研究テーマの中に盛り込み、「自分づくり=人間力育成」「ICT活用」「社会科・生活科カリキュラム作成」を目指していくこととなった。10月29日に予定される研究発表会では、ICT活用場面を盛り込み人間力育成を目指した社会科・生活科カリキュラムを成果として発表できるよう全教職員で努力していきたい。
解説と講評
コメント:横浜国立大学 准教授 野中陽一 先生
立野小学校の研究授業は、話し合い活動の場面が中心である。「ともにかかわり合いながら自分づくりをすすめる子」の姿が、話し合い活動の充実という形で現れると考えられているからである。
しかしながらICTの活用は、話し合い活動の中だけで行われているわけではない。これまでも、限定的ではあったが、教師が説明する場面でも、子どもたちが調べ活動を行う場面でも、必要に応じて活用されてきた。
各教室に大型ディスプレイが、2教室に1台実物投影機が設置されたことによって、ICTを活用する場面はさらに増えた。「ICTの活用による人間力の育成」というテーマでの研究ではあるが、話し合い活動の中でのICT活用だけに焦点化する必要はない。むしろ、ICTを積極的に活用していく中で、「かかわり合う力を育てる働きかけ」に有効な方法を模索していくことをもっと試みてもよいだろう。
普通教室のICT環境が整った今、様々に活用を試みるためには、いつでも使えるようなICT機器の設置を机の配置の仕方に合わせて工夫する必要がある。
そして、ICTをどのように活用し、どのような指導を行うことが結果的に『自分づくり→人間力育成』につながるのかを、子どもたちの変容を看取りながら、明らかにしていくことを期待したい。