立野小学校では、学校教育目標を達成するために、「ともにかかわり合いながら自分づくりをすすめる子の育成」という研究テーマを設定し、「かかわり合う力を育てる働きかけ」の1つの手段として、ICT活用に取り組んでいる。
このアプローチは、先にすべての普通教室のICT環境整備を行い、ICT活用の日常化を実現するという方法とは異なっている。社会科の研究を通して、「かかわり合う力を育てる働きかけ」にICTを活用することを試み、有効に活用できる以下の2つの場面を見いだすという過程を経ているからである。
- 児童の話し合い活動が活性化するような資料・教材を教師が提示する場面
- 児童が自分の考えを表現する手段として実物投影機を活用する場面
最初は研究授業レベルでの活用が中心であったが、徐々に活用する教師が増え、活用の機会が増えていった。校内で頻繁に行われている授業研究の場で、ICT活用の実際を見て学び、活用場面での子どもたちの様子からその効果を実感することができた結果であろう。
「全国小学校社会科研究協議会神奈川大会」で公開された授業では、教師の発問や子どもたちの発言、それらを構造的にまとめた板書や、教室内のこれまでの学びに関するに掲示物、教材、資料が目立ち、ICTは脇役であった。しかし、それで良いのである。文部科学省「教育の情報化の手引」3章に、「ICTそのものが児童生徒の学力を向上させるのではなく,ICT活用が教員の指導力に組み込まれることによって児童生徒の学力向上につながる」という一節がある。授業研究を通して培われた授業力に徐々にICTの活用が組み込まれていく過程を参観者に見ていただくことができたのではないかと思っている。
向上目標である『自分づくり→人間力育成』は、一時間、一単元、一教科の取り組みで実現できるものではない。学校におけるすべての教育活動において、常に意識して指導することが必要である。社会科での研究成果を活かし、教育活動全般において、補正予算によって導入される大型デジタルテレビや実物投影機、電子黒板の活用が浸透していくことになる。
そして、ICT活用が日常化していく過程で、1、2の場面だけでなく、さらに活用場面は広がっていくに違いない。このような立野小学校の取り組みは、多くの学校で行われている教科指導の研究にICT活用を結びつけるアプローチとして参考になるだろう。
課題としてあげられている「人間力の育成」の成果をどのように示すかについては、計画段階から客観的な評価は難しいことが懸念されていた。発言分析や行動分析から事例を積み上げるという方向で考えたい。
電子黒板の機能については、「かかわり合う力を育てる働きかけ」に特定の機能が有効であるという実感を教師がもてなければ、無理に活用する必要はない。電子黒板を、大型ディスプレイとして活用しすることを定着させることが先であろう。