実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第35回特別研究指定校活動情報/第35回特別研究指定校

横浜市立本荘小学校の活動報告/平成21年度4〜7月
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セールスポイント

電子黒板を活用した授業の全クラス実施

 昨年度視聴覚室にスマートインフィルと呼ばれるプロジェクタ+電子黒板+実物投影機のシステムを導入した。この部屋に来れば、電子黒板や実物投影機を活用した授業を簡単に行うことができるようになった。3月には全学級が国語・算数・社会・英語など様々な活用を行った。新年度に入り、異動教員や新1年生学級が順次授業を行い、全校体制としての電子黒板活用の可能性を検討する下地が整った。

社会科全国大会研究テーマを受けたICT活用の検討

 11月に迎える「全国小学校社会科研究協議会神奈川大会」での授業公開に向けて、「自分づくり」「ともにかかわり合う」という「人間力」の育成に関わる研究テーマを設定し、社会科・生活科・生活単元学習の授業研究を行っている。そこでは、教科学習の本質を大切にした「人間力」の育成を外部講師の指導助言を受けながら進めている。その中で、大型ディスプレイ・実物投影機・電子黒板・大型印刷掲示物等ICTを効果的に活用した教材・資料提示やプレゼンテーションの可能性が見え始めている。本年11月の研究発表会では、学年1実践程度のICT活用場面公開を確認した。

自分づくり→人間力育成のための視点へのICT活用の位置づけの検討

 社会科において自分づくりをすすめる子を育成するために、「かかわり合う力を育てる働きかけ」という視点が設定されている。この働きかけの一つとしてICTの活用を意識していくことを共通理解した。このことは「コミュニケーション能力を高めるためのICTの活用」とも言い換えることができる。そこで、児童の話し合い活動が活性化するような資料・教材を教師が提示する場面、児童が自分の考えを表現する手段として実物投影機を活用する場面等を検討している。
 

実践経過

4月 本研究の主旨と2年間の活動計画について共通理解
  • 「自分づくり」→「人間力」の育成を支援するICT活用のあり方
  • 7月までに全学級全教員全児童がICT活用する場面の構成
5月 校内授業研究会でのICT活用の可能性検討
  • 授業研究会の指導案検討
  • 助言者野中准教授より全体説明会
6月 校内授業研究会を通してICT活用の実際について検討
  • 6月11日 4年6年でのICTを活用した社会科授業について研究会
    (外部講師による訪問アドバイス…野中准教授+パナソニック教育財団担当者)
7月 9月以降の研究体制の確認・購入物品の検討
  • 推進委員による実践体制の確認。全体会での説明
  • 参考実践の紹介・機器操作説明会・学年検討会
  • 学年体制としての機器配当計画の確認
 

成果と課題

●成果
  • 研究の第一段階として11月の全国発表会までの期間は、「自分づくり」→「人間力の育成」をめざした社会科・生活科・生活単元学習の実践研究の一環として、ICT活用ができる場面を検討し、学年1実践以上を公開していくことが確認された。
  • 社会科の研究内容「かかわり合う力を育てる働きかけ」という視点に応じたICTの活用を検討する体制が整った。
  • スクールニューディール計画の発表に伴って導入予定機器の再検討を行い、9月以降の学年1台電子黒板システムの導入と、それを中心活用するクラスの選定を行った。
  • 「人間力の育成」の成果として現れる児童の言動をリスト化し、ICT活用による効果を明確にする方法について検討を始めた。また、数値・文章化した検討を図る手段として、9月以降定期的に質問紙調査を行うことを決定した。
●課題
  • 電子黒板活用を2〜4階の各教室においても実践できるようにすることが急務。そのための機器選定・配置を進め、教職員研修等も教科研究と並行して進めことが必要となっている。
  • 「人間力の育成」の成果として現れる児童の姿についての具体的な検討を行わなければならない。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 春季運動会が終わった後の6月は、日曜授業参観があり、Y−150見学があり、7月の宿泊体験学習の準備があり・・・と学校行事が目白押し。そのような中で、3週連続で「自分づくり」をめざした社会科・生活科・生活単元学習の校内授業研究会が開催され、さらに11月の全国大会の紀要・指導案原稿の締め切りが迫るという状態で、教職員の頭の中と日程はパニックしていた。
 その真っ直中の6月11日に、1回目の訪問アドバイスが行われた。全6授業のうち2授業はICT活用を意識したものであったが、計画・準備不足は否めず、講師から厳しい指導をいただいく結果となった。ただ、単にICT機器を使うのではなく、「人間力の育成」のためにというテーマを再認識することとなった。
 同じ時期、スクールニューディールの予算が通り、教育委員会からも同等の学校配当計画が公表された。本助成で充当しようとしていた機器の一部も含まれていたため、予定よりも充実したものとなりそうだ。今年度内での配当ということだが、できる限り早い時期に、「やりたくても機器がないじゃん。」という声が減ること期待している。
 

解説と講評

コメント:横浜国立大学 准教授 野中陽一先生

 立野小学校の特別研究指定校としての取り組みは、学校の研究テーマである「ともにかかわり合いながら『自分づくり』を進めていく子の育成」のために、これまでの指導方法の工夫改善に加え、ICTを活用することである。文部科学省学力向上実践推進校、全国小学校社会科研究協議会会場校として、今年度は社会科・生活科を中心とした教科指導を通して、「自分づくり」=人間力育成という大きな目標に迫ろうとしている。
 「自分づくり」に必要な「かかわり合う力」=コミュニケーション能力を育むためには、話し合い活動を活性化させる働きかけが重要であると考え、資料・教材の吟味と共にICTによる提示方法を工夫すること、児童が自分の考えを表現する手段としてICTを活用すること等に着目して、授業研究を進めている。ICTの活用方法としてはオーソドックスなものであるが、授業の中で児童の「かかわり合う力」を高めることを意識してICTを活用する場面を設定し、活用の工夫を図るところにこの研究の特色があると言えるだろう。授業実践を積み重ねていく過程で、ICT活用に関する知見が蓄積されることに期待したい。
 本研究の課題は、人間力の育成という目標がどのように達成されたのかを成果として示すことであろう。児童の自己評価や期待される言動のチェックリストによって、客観的なデータを示すことにも取り組み始めているが、まずは、授業における話し合い活動の充実が図られ、参観者がそれを実感できることが望まれる。
 
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