実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第36回特別研究指定校(活動期間:平成22〜23年)

練馬区立中村西小学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

2本の柱で、授業をつくる

 本校の研究主題である「表現する楽しさを味わう子の育成」に迫るために、授業の組み立てを考えることにした。
 そこで、授業を大きく2つの柱に分けて進めることとした。一つは「分かる授業」。もう一つは「表現する授業」である。どちらも授業の中には出てくるが、そのうちのどちらを中心に進めるかを授業者が意識して授業を行うようにした。

学習の基本の共通理解を通して授業力の向上を図る
 ☆ 学校全体として取り組む課題を考えた。

  1. 分かる授業の充実

@授業の目標の提示と明確な見通しが見える板書の工夫
Aノート指導の充実
見やすく、学習の流れや自分の考えが分かるノートをつくり、書いたことを生かして表現できるようにした。

B話すときの視点の統一

「話すとき」、児童に何を意識させるかをはっきりとするために、教師が話し方の視点をもつこととした。

大きな声で
はっきりと
最後まで
分かりやすく

分かりやすくの中には、「指をさしながら」、「分かる言葉で」「絵や図を見せながら」「実物を見せながら」「相手を見て」などが含まれる。
教師が視点を意識することで、子供たちの話す態度を評価し、価値付けることができると考えた。

授業実践を増やす
 ☆ 実践報告書を作成し、ICT活用の実践例を増やす。

  作ったものは、印刷室に掲示し、印刷の合間に見られるようにした。

 

 

 



 ☆ 研究授業の実施

今年度の研究授業の数は、一人当たり少なくとも3本を予定している。

実践経過

4月
 

★昨年度までの経過と今年度の方向性を確認
★児童の実態調査 
★実物投影機の使い方の説明(今年度着任者向け)

5月
 

★校内研究会 講師 玉川大学教職大学院 教授 堀田龍也先生
☆研究授業

3年 赤津弓恵:国語「よい聞き手になろう」
情報の共有 前時のリハーサルの様子を映し、めあてを意識させる。
 


   
  5年 榧木理恵:図工「おいでよ夢のへや」
思考の視覚化 設計図と作品を映し、自分が工夫した点を発表する。

 
   
  6年 大島伸之:理科「からだのつくりとはたらき」
説明の補助 実験の手順を知らせるために教科書の写真を映す。
   
   
 

1年 嶋原 純:国語「ふたりでおはなし」
情報の共有 対話の様子がよく分かるように、教科書の挿絵とカードを映す。

 
   
 

2年 本橋教子:算数「ひき算のしかたを考えよう」
説明の補助 児童と同じノートを提示し、問題を書く。

 
   
 

4年 福田純子:道徳「きまりを破ると」   
説明の補助 場面絵をスクリーンに映しながら、範読及び発問をする。

 
   
  6年 曽我 泉:社会「天皇中心の国づくり」
情報の共有 自分が活用した資料を提示し、自分が調べたことを発表する。
 
   
 

5年 坂藤正代:音楽「音の重なりとひびき」
繰り返し習得 音楽用語の習得のために音楽記号を映し、練習する。

 
 

情報の共有 前回の演奏の様子を映し、工夫する点を確認する。

 

グループごとに確認した工夫点をもとに、練習をする。
グループ内で活発な意見交換が行われていた。

 
   
 

☆お役立ちコーナー
今回のお役立ちは、実物投影機を使ったフラッシュ型教材の活用について

 
 

☆講師講評 堀田先生からのご指導

  パート毎の指導では、ほとんど先生が話して聞かせていたが、児童はまるで自分が気付いたように感じていた。待っていても無理なことは教えてしまわないと授業時間が足りなくなる。
表現力に関して、昨年の研究から、指示の確実性・動作化・マスキング・ICTの置き方は、先生方が身に付けることができた。次は、発表の仕方・子供の目線・ノートの取り方の徹底に視点を置いて表現力を鍛えていくことで、「これを見せたい・伝えたい」という児童を育てていく。また、学習指導要領では、「効率のよい勉強法」と「習得したことを活用する」ことが重要とされている。
   
 

★実践報告書作成

 

各自で実践したICTの活用についてまとめた。
まとめたものは印刷室に掲示コーナーを作り、いつでも見られるようにした。

 
 
6月
 

★学習の基本の共通理解

 

板書のための共通カードを配布
発表のときに、注意させたいこと
ノートの基本的な使い方について

 
7月
 

★校内研究会(練馬区教育委員会 ICT研究会を兼ねる)
講師 玉川大学 教職大学院教授  堀田 龍也先生

 

☆研究授業
4年 磯部理恵 花井めぐみ 関口浩孝:
算数(少人数指導)「変わり方をグラフに表そう(折れ線グラフ)」

説明の補助 枠組みの決まったグラフを映し、必要な事柄をかきこんでいく。

 
 

思考の視覚化 2つの重なった折れ線グラフを映し、児童が読み取ったことを説明していく。

 
 

情報の共有 児童が自力解決している様子をデジタルカメラで撮った映像を見せ、かき方を全体で確認する。

 
   
 

5年 伊藤治郎:道徳「いじめについて考える」
情報の共有 場面絵を映しながら、範読する。

 
   
 

3年 鈴木 真:理科「植物を育てよう(2)」
情報の共有 前時までの資料を提示し、根・茎・葉を確認する。

 
   
 

1年 嶋原 純:算数「のこりはいくつ ちがいはいくつ」
思考の視覚化 ブロックを映しながら自分の考えを発表する。

 
   
 

1年 吉川陽子:生活「おおきくなあれ」
思考の視覚化 児童がかいた観察カードを映し、見付けたものを発表する。

 
   
 

6年 大島伸之:社会「武士の世の中へ」
繰り返し習得 鎌倉時代前後の人物をフラッシュ型教材で映し、前時までの学習内容を確認する。

 
   
 

5年 馬場美桃:国語「きくことについて考えよう」
興味関心の喚起 前回の感想をまとめたものを映し、振り返りをする。

 
 

説明の補助 質問内容と返答予想が明確になるように、ノートのマス目を映し、書き方を説明する。

 
 

6年生にインタビューすることをグループごとに考える

 
   
 

6年 曽我 泉:算数「比と比の値」
思考の視覚化 児童がノートにかいた考えを映しだし、別の児童が説明をする。

 
 

2人組で、自分の考えを説明する

 
   
 

☆お役立ちコーナー
実物投影機や電子黒板のよく使われる使い方について紹介した。

 
   
 

☆協議会  他校の先生からもご意見をいただいた。

 
   
 

☆講師講評 堀田先生からのご指導

 

1 今年度より学習指導要領が完全実施
2 教科で習得と活用を。基礎基本を効率よく習得→
  習得したことをどう活用していくか。
3 教科書が厚くなった。
4 授業展開の見直しが必要。
5 時数は限られているので何かを妥協する。
  授業をどう効率よく教えていくか、学んだことを活用していくかが大切。
  だからこそ全国的にはICTの普及が進んでいる。
  ICTは情報の共有がしやすい。

  ★パナソニック教育財団 成果報告会で1年次の活動を報告
1年間の活動の様子を成果報告会で発表した。
プレゼンテーションで発表すると共に、ポスターセッションやアピールタイムでも活動の報告をする場があり、本校の活動について、見つめなおし、本年度の進め方について考えるよい機会となった。
 
 

成果と課題

 
成果

☆今年度の方向性を確認
☆学習の中で、指導者が共通して意識していくことを確認
☆ICTと板書の連携の意識化
☆少しずつ児童の活用が始まっている。

課題

★さらに、児童がICTを活用する手だてを考えていきたい。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

先行研究から学ぶ

ICTの活用が手になじんできたところで、さまざまな先行研究を見る機会を作った。
一つは、回覧。もう一つは、掲示。
昨年度も回覧しているので、今までに少なくとも3回は回覧しているが、見るたびに新しい発見がある。
回覧が終わると職員室後ろに作ってある資料コーナーに置く。いくつかは、目に入りやすいように、提示する。
いつでも手にとってみられるので、ちょっとした時間に振り返ることができる。先行研究を参考にすることで、「これをやってみよう。」「これは、次に使えるのではないか。」と活用の方法を広げている。

おめでたい話題がたくさん

結婚した人、娘が生まれた人、孫が生まれた人…おめでたい話題がたくさんの本校です。
 

年度末、年度初めの教職員大異動

校長先生をはじめ、教職員が大幅に異動しました。着任したみなさんは、すぐに実物投影機の活用をはじめ、いろいろな活用に挑戦しています。はやくも手になじんできました。4・5月で実践したことをもとに、全員が実践報告書を作成し、お互いの情報交換に役立てました。

他校に異動した先生方は、新しい勤務先で、実物投影機の便利さを広めています。
 

運動会練習でICT

自分たちがつくっているピラミッドの様子を映す。SDカードに記録してみせる。デジタルカメラで横から映した様子も見せる。自分たちが、大きなピラミッドを組み立てていることに気付いた。

 

子供たちの発表の方法に活用され始める

移動教室について6年生から5年生に伝える活動でも実物投影機やビデオが活用された。図書委員会の発表では、もはや定番。

 

お茶を片手に研究をおもう

職員室のお茶コーナー近くに研究掲示板を設置。
お茶を飲みながら、ホッと息つくひまを与えず、
眉間にしわを寄せつつ、研究のことを考える。

 

研究発表会 第1次案内 作成・配布

12月9日に予定している研究発表会の1次案内ができました。
中村西小のホームページからご覧いただけます。

 

成果報告会の準備

今回は、1年次の研究内容を報告した。
プレゼンテーションのほかに、ポスターセッション、アピールタイムといろいろとやることがあった。
準備がいろいろと多岐に及ぶ中、「なかよし 中西!」のパワーを集め、みんなが少しずつ準備を手伝った。
前日の8月3日には、最後の仕上げとしてアピールタイムの準備をした。出席できないメンバーも気持ちよく、お手伝い。
校長も自ら筆を握った。

解説と講評

コメント:玉川大学 教授 堀田龍也先生

特別研究指定校2年目の幕開けの時期を迎えた。学校長はじめ数名の教員の入れ替えがあり,4月は本校の1年目の研究の成果を端的に示すことと,2年目に取り組むべきことの焦点化に時間が割かれた。

本校の研究テーマは,児童の表現力の育成に重点がある。だからこそ,児童が表現したくなるような学習経験を重視し,そのためにしっかりとわかりやすい授業を提供したい。ICT活用でわかりやすい授業をという理由がここにある。これを1本目の柱と整理した。

その上で,2本目の柱として,児童が表現する際に必要となるスキルの習得や,表現する学習の場の設定を取り上げた。2本目の柱は,本校の本来の研究の中核であり,1本目の柱はそれを実現するための土台となる。また,1本目の柱がどちらかといえば教員によるICT活用を中心に語ってきたのに対し,2本目の柱は児童によるICTの活用となることから,普通教室に整備したICT環境の設置形態,発表時の児童の動線などにも着目されるようになった。

児童が表現する学習活動は,それ自体を行うことは容易である一方,しっかりとした表現ができる児童にするために必要な学習指導は多岐にわたる。話し方だけでなく,話形の指導,聞く側の指導,伝える側の工夫,伝わったかの評価,さらには話す活動だけでなく書く活動の連携,話す・書くなどのアウトプット活動と聞く・読むなどのインプットの活動との順序性,これらの学習活動の系列の中で児童がしっかり考えるようにする学習展開など,検討しなければならない課題は山積している。

5月以降,いくつかの研究授業を精力的に実施し,2本の研究の柱をしっかりと研修を重ねているところである。

 
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