ICT活用のレパートリーを増やす
−広島県三原市立幸崎中学校の取り組みの特長−
広島県三原市立幸崎中学校の教師たちは,3学期にも,実践研究の充実に,その努力を傾注している。平成22年度,同校は,3学期にも毎月校内研修会を開催しているが,最後はなんと3月22日である。3学期に,2度の授業研究会が設定されたが,そこでは,6つの研究授業が実施している(ちなみに,幸崎中学校には全学年単学級なので,すべてのクラスで複数回研究授業が実施されている)。同校の教師たちの研究への熱意には,いつもながら,頭が下がる思いである。
幸崎中学校の教師たちの努力は,彼らのICT活用のレパートリーの広がりに結実している。筆者も,2月22日の同校の授業研究会に参加したが,そこでは,今まで同校では試みられていなかったタイプのICT活用が登場した。例えば,美術科の教師は,コラージュ作品を制作させる際に,子どもたちに,インターネットから素材をダウンロードさせていた。
また,社会科の教師は,写真のような複線型のICT活用にも取り組んでいた。この教師は,日本の自然・人口・資源と産業・生活と文化などに関するデータを有機的に関連づけて我が国の特色を考察する場面を構成した。そして,子どもたちが追究に用いる情報手段を多様化し,ICTをそのような学習環境の一翼を担うものとして授業過程に位置づけたのである。ある子どもは資料を読み込み,ある子どもは友だちと議論を繰り広げているが,その傍らで,ある子どもたちは,ICTで必要な情報を収集していたのだ。
さらに,保健体育科の教師は,電子黒板を用いて,サッカーのオフサイドトラップ等についての考察を子どもに促していたが,それも,彼にとっては,新しい挑戦であった(この教師は,1学期には,子どもたちが自身のマット運動の様子を自省できるよう,彼らに自らの運動の様子を撮影させ,分析させていた)。
要するに,幸崎中学校では,各教師が,少しずつICT活用の幅を広げている。それによる授業改善の引き出しが増えている。そして,学校として,1年間にICT活用の多様な取り組みが蓄積されている。
平成23年度もまた,幸崎中学校の教師たちのICT活用のレパートリーは増えるに違いあるまい。研究授業後の協議会において交わされるコメントの厚みやその内容の濃さから,それを筆者は確信している。