ICT活用の進展を促す研究発表会のデザイン
広島県三原市立幸崎中学校のICT活用のレパートリーは広い。教師が生徒の思考を活性化する資料を実物提示装置と大型ディスプレイを用いて彼らに示す場合から,生徒自らがネットワーク上で資料を検索したり,コンピュータで作品を発表したりする場合まで,同校の研究テーマたる,思考力・表現力の育成に向けて,各教師が様々なタイプのICT活用に取り組んでいる。
そのようなICT活用の進展は,幸崎中学校の教師たちの授業研究に対する熱意を基盤としている。同校の活動報告をご覧いただければ,まず,その厚みに目を奪われる。10月から11月にかけて,なんと数多くの授業研究会が催されていることか――。研究発表会終了直後の11月28日にも,研究授業が実施されているのには,驚愕させられよう。もちろん,その質の高さには,さらに注目すべきだ。例えば,筆者も含めて数多くの助言者が幸崎中学校を訪れ,研究授業等に対して第三者評価を繰り広げている。小規模校ゆえに授業づくりのアイデアの多様化を進めにくいという問題点が,これによってクリアされているのだ。
さらに,同校のICT活用の進展は,研究発表会の開催,とりわけそのデザインの巧みさによって促されている。例えば,当日の研究授業後の分科会の編成である。教科をまたいで意見を交換できるトピック「学習集団づくり」「ICT活用」を定めて,中高等学校の授業づくりでよく問題視される「教科主義」に陥る事態を回避している。また,そのような分科会で報告される事例が,当日の研究授業だけでなく,同校で過去に行われた研究授業で構成されている点は見事である。参加者が,同校の過去の実践に学ぶこともできたからだ。筆者も含めた2名の助言者による講評,デジタル教科書の展示等も,幸崎中学校の教師と他校の教師による,ICT活用に関する学び合いのよき材料や道具となった。
|
|
写真 幸崎中学校の研究発表会のポスターセッションの様子 |