■2年間を終えての成果
当初,予定していたことをある程度予定通りできたことが成果のように思う。私が訪問をした当初は,研究活動としては,やらないといけないことはわかっているし,共有もされていたが,それを実現するために何をするべきなのかが共有されていなかった。それが,2年間を通しての活動の中で,芝谷スタイルとして実現できたのではないだろうか。例えば,授業研究会では,何をどういう形で議論をするのかなどといったことがルーチンとして共有され,授業研究を行うための体力がついた。現に私が足を運んでもいないし,ICT関連の研究と少し離れる道徳の研究授業についても,同校がこれまで取り組まれてきた知見が活かされているのではないかと報告書からは読み取った。このような授業研究の体力がある学校は,ICT活用にしろ,他の研究課題にしろうまく進めていけるように思う。
加えて,ICT関係についても次のステップに移りつつあることはこれまでのコメントにおいても述べてきたつもりであるが,基本的なICT活用の知見についてはある程度共有されるようになり,より授業の本質に関する議論が増えてきた。
■今後の課題
今までの取り組みを,継続・発展できるかという一言に尽きる。そのために,私がもし次に同校の実践研究の取り組みを見るとしたら,以下の視点から,その状況をとらえたいと思う。
ひとつめに,教育に対するビジョンのとらえなおしが進むかどうかである。これまでどちらかと言えば,いわゆる基礎学力向上という目標を共有し,そのためのICT活用を考えるというところには,みんなで同じように到達できたと思う。しかし,次のステップになる「つながる学び」だとか,そこで培われる学力については,ビジョンとして共有できているとは言えないと思う。このような大きなところが共有されないと,授業研究を続けたとしてもより充実した方向に行かないのではないかと思う。
次に,学力向上としてのエビデンスをある程度見せることができるかどうかがある。同校の調査によると,この指定校の取り組みを通して,生徒の授業に対するイメージが,改善されていることは把握できている。加えて,学力向上がどの程度実現されているのかについても明確にしていただけると,ICT活用の可能性がさらに広がる。