中学校において学校ぐるみで授業研究を進めるのは,小学校と比較すると難しい。しかし,ICTの活用や基本的な授業設計を切り口にすれば,その議論を活性化することができる。このことはすでに多くの学校の実践研究を通してわかってきていることである。それに対してさらに具体的なレベルでどう切り込むかが特別研究指定校としての本校の課題である。1年目,3分の2が終わったところで,成果と課題が見えてきた。
■ 成果:広がり,共有する「教えて考えさせる授業」
本校の授業研究について議論をする場合,「教えて考えさせる授業」(市川 2008)を土台とすることの重要性をこれまで指摘してきた。本校の吉田研究主任は,授業設計の際には各先生方に「子どもに身につけさせたい学び」を徹底するように伝えている。本校の先生方の授業力量もあり,このことが定着するようになってきた。「教える」段階においては,ある程度パターン化されたICT活用となるので,みんなができるものにしていきたい。1年目の終了時にはICT活用の典型事例を掲載したパンフレットを作るようにしている。本パンフレットに掲載されているICT活用は,他の教科でも参考にできる。来年度は,すべての教科でICT活用が実施される予定である。あとは校長のリーダシップに基づくICT環境の充実をお願いしたい。
11月に行われた英語科の研究授業においては,若手の女性の先生方が,ティームティーチングでフラッシュ型教材を活用した授業を実践された。授業後の議論は単なるICTの活用法と言うよりはむしろ,授業の本質について議論されていた。このスタンスを大事にしていただきたい。本実践での成果はそれ以外にもある。せっかく実践した授業なのだからとiWorkというICT活用法を勉強する校内のハンズオンワークショップにおいて,フラッシュ型教材作成の実際や情報提示ついて議論されたようである。今後はさらに多くの先生方がこれに参加されたり,外部にもっと開かれた会になってほしいと思う。このiWorkをきっかけに他の教科等による日常の授業公開やさらなる授業の発展につながることを期待したい。授業とiWorkの往復作用が出来れば,さらに進化するだろう。
■ 課題:教科としての授業研究の深化と実践研究成果の校外への普及
一方「考えさせる」段階では,教科独自の取り組みが生かされなければいけない。そのために本校で実施されている教科会議を質的に充実させることが必要である。時には教科内のミニ授業研究を行い,教科会議をその議論に充てたりすることもあってよいだろう。まずは各教科においてどのように授業について議論しているかについて,校内で情報共有できるようになればよいと思う。ある教科の良い議論の事例をヒントにして情報を共有しながら,他の教科でも応用させて取り組みたい。
また,来年度は,自校の研究の充実は当然であるが,財団の事業として周辺地域への普及についてもさらに積極的に考えていただきたい。例えば,研究授業の取り組みにおけるICT活用をさらにiWorkで共有し深化させているが,ここではさらに多くの外部参加者を期待したい。さらに,高槻市との連携もできているので,両者がタイアップしたワークショップの開催により,成果公開だけではなく,学校の枠を越えた研究会を実施するのも面白いかもしれない。