■ 2つの取り組みを通しての学校研究の活性化
中学校において授業実践やICT活用について学校ぐるみで取り組むのは,小学校と比較し,はるかに難しい。その大きな要因のひとつに教科担任制があるのは間違いない。同校では,この課題に対し,2つに取り組んでいる。
ひとつは「教科会議の充実」である。連絡調整で終わりがちな教科内教員の会議において,PDCAサイクルに基づいた授業研究を試みている。7月の授業研究会においては,教科会議の議論を通して作り上げられた数学の授業を2名の若手教員が公開した。今後,反省に基いて再設計された授業を別の教員がやってみるなどの工夫が求められよう。また,この取り組みを早いうちに他の教科集団にも拡大していく必要があろう。
もうひとつはi-workと名付けられたタブレット端末の利用に関する,希望者を対象とした研究会がある。ここでは,地元関西大学大学院総合情報学研究科の大学院生らが機器の利用や実践事例の紹介などのサポートを行っている。
両者の取り組みに共通するのは,ベテラン教員と若手教員のコミュニケーションをこれまでよりいっそう充実させることで,学校としての組織力を高めることにある。教科会議においては,ベテラン教員の暗黙知を協同的な授業設計や議論を通して若手教員に伝えていく。逆にi-workではICT活用に長けた若手教員の発想により,ベテラン教員が刺激され,授業のレパートリーが広がることが期待される。これらの取り組みは,同校の学校研究を支える基盤となろう。
■ ICTを活用した活用型授業
同校の授業研究テーマは,ICT活用と活用型授業がキーワードとなっている。先に述べた授業公開ではこのテーマに基づいて,連立方程式に関する2つの習熟度別のクラスが公開された。それをもとに特徴をまとめると,
- 両者の授業ともICTを活用して情報を提示することで,授業の導入が素早かった。活用型授業とは直接関連せず,むしろ習得型授業での留意点であるが,まずこれができていなければ,活動や思考に充分な時間を割くことができないことを考えると,まず最低条件となろう。
- 活用型授業といえど,その授業の型は大きく二通りに分かれる。ひとつは習得した知識を実際に活用しながら定着させていく習得型の学習にかなり近いものと,習得した知識を応用的に深めていくようなものがあるだろう。先日は前者が基礎コース,後者が標準・応用コースで展開されていた。そこでは生徒の発表においてICTが活用され,彼らが説明や情報提示を工夫できるようになっていくこと,生徒どうしの学び合いの中で,今後タブレット端末を活用してくことなどが期待されるだろう。