実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第39回特別研究指定校(活動期間:平成25~26年)

福岡教育大学附属久留米小学校/平成26年度1~3月

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研究課題と成果目標
研究課題と成果目標

取組内容
取組内容

裏話
裏話

成果と課題
成果

2年間の取り組みの成果
2年間の取り組みの成果

2年間の実践を終えた感想
2年間の自己評価・感想

取組内容 今後の展望

アドバイザーコメント
必見! アドバイザーコメント

 

研究課題と成果目標

 

■課題

情報編集力を育てる教育課程の創造
~情報科を要とした各教科等の学習の在り方の工夫を通して~

■目的

次の3つの在り方を究明する。

  • (1)各教科等の特質に応じた学習過程。
  • (2)協働的に学び合う活動や言語活動の効果的な位置付け。
  • (3)ICT機器の活用。
  • (4)情報モラルの向上を図る指導の充実。

■具体的な取り組み

  • (1)情報編集力を働かせて各教科等の内容をしっかりと捉えることができるようにするために,各教科等の特質に応じた「つくる,あつめる,つくりあげる活動」を位置付けた学習過程を明らかにする。
  • (2)「つくる,あつめる,つくりあげる活動」を機能させるために,各教科等の特質に応じた協働的に学び合う活動や言語活動の在り方を明らかにする。
  • (3)各教科等の特質に応じたICTの活用の在り方を明らかにする。
  • →特に,2学期にはICTを子どもが主体的に活用することができるように,学び方を日頃から積み上げるとともに,処理機能を活用したICTの種類と活用の仕方の2つから明らかにする。

  • (4)情報モラルの向上を図るため,指導計画に沿って指導を行っていく

■成果目標

  • (1)(2)に関して,学習過程や活動の在り方を教科等ごとに,パターン化する。
  • (3)に関して,ICTを用いる頻度や質(主体性)を高める。
  • (4)に関して,指導計画に沿った指導を積み上げる。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

 

1月

(1)情報科の授業とICTを活用した授業を公開する研究発表会の準備。

情報科の授業において,ICT機器の基本的な操作技能を指導内容とするB領域の公開授業に向けて,学習展開や使用する機器,活動の位置づけ等を検討した。また,ICT機器を活用した授業づくりとして,算数科,体育科における授業づくりについて,ICT機器のように活用して教科や領域の本質を子どもたちの捉えさせるのか検討した。 ※B領域とは、福岡教育大学附属久留米小学校が情報科学習指導で実践する3領域のうちの「情報機器」のこと。このB領域のほか、A領域「プレゼンテーション」、C領域「情報モラル」がある。

(2)発表会に向けた事前の授業とICT機器の積極的な活用。

2年間で,校内のICT機器も充実してきた。本年度は児童用にタブレットPCが40台追加されたり,21インチ型タブレットPCも導入されたりした。また,パナソニック製のビデオカメラ「ぼうけんくん」も5台,導入できた。発表会の事前の授業で,実際に子どもたちに操作させたり,授業の中でどのように活用していくのか確認したりした。

(3)テレビ会議システムの設定,動作確認。

総合的な学習の時間において,遠隔地の方とのテレビ会議を実施するために,事前の授業で子どもたちの活動や動作の確認を行った。実際には,うきは市役所とテレビ会議を実施した。また,テレビ会議の設定や動作の確認を大学(情報処理センター)にしていただいた。

2月

(1)研究発表会において,情報科の授業(ICT機器の操作に関する指導)の公開。

情報科の授業として,ICT機器の基本的な操作技能を身に付けさせるB領域に関する授業公開を2つの会場で公開した。第1学年「お絵かきソフトで文字をかこうⅡ」,第5学年「メールを送受信しよう」の2つである。

福岡教育大学附属久留米小学校活動報告イメージ1

【マウスで文字をかく子ども】

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【メールを送受信する子ども】

福岡教育大学附属久留米小学校活動報告イメージ4

【自分の考えを説明する子ども】

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【友達の動きを撮影する子ども】

福岡教育大学附属久留米小学校活動報告イメージ5

【円周率の求め方を考える子ども】

福岡教育大学附属久留米小学校活動報告イメージ6

【実験結果を撮影する子ども】

  • 第1学年「お絵かきソフトで文字をかこうⅡ」の実践について
    これまでにスタンプで文字をおして,言葉や文章をつくってきた子どもたちに,マウスを使ってドラッグしながら,文字をかく操作の方法を身に付けさせていく学習である。特にマウスの動かし方や左ボタンを押したり離したりする操作を身に付けさせていった。
  • 第5学年「メールを送受信しよう」の実践について
    メールを活用する際に,自分が知らせたい内容を詳しく知らせたり,分かりやすく教えたりするために,図や写真,表,グラフといったデータを添付することができることを理解し,実際に操作したり,受信したりすることができるようにすることを目指した学習である。自分が知らせたいことを友達に写真やグラフ等を添付してメールを送受信することができるようになった。

(2)ICT 機器を活用した授業の公開

  • 第4学年体育科「体つくり運動」の実践について
    この学習では,多様な動きを身に付ける運動を2つ以上組み合わせた場に挑戦させ,楽しく運動に取り組む子どもの姿を目指した。そのために,自分の動きのよりよくしたい局面についてタブレットPCで動画を撮影し,その動画を再生しながら自分の動きを確認することができるようにした。自分では見えない動きを動画で再生することで,次の活動の工夫へとつなげることができた。
  • 第5学年算数科「正多角形と円」の実践について
    この学習では円のコースターの周りに紐をつけるために,紐の長さをどうすればいいのか調べることで,円の直径に対する割合である円周率について理解することができるようにすることを目指した。そのために,タブレットPCを活用し,電子黒板を介して相互の考えを共有しながら,考えを高めていくことができた。

(3)情報編集力を働かせる活動におけるICT機器の有効な活用

本研究では,情報編集力を働かせて,各教科等の内容をしっかりと捉えさせるために,【つくる活動】,【あつめる活動】,【つくりあげる活動】を設定した。これらの活動を,各教科等の特質に応じた学習過程に位置づけた授業実践により,学習活動の充実を図ることができた。以下に,複数の具体例を示す。

  • 第6学年理科「生物と地球のかんきょう」の実践について
    この単元では,人の生活と身の回りの水や空気の関わりによる影響を考え,生物は水や空気を通して周囲の環境と関わっていることを捉えさせることをねらいとしている。特に,本時では,自分自身の身の回りの二酸化炭素の量という実験結果によるデータやそれに対する考えをつくり,自他の考えを集め,これまでの自分の生活を振り返りながらこれからの生活についての考えを【つくりあげる活動】を位置付けた。
    【つくる活動】では,4種類の暖房器具の中から自分の生活に身近な器具を選択し,気体検知管で二酸化炭素の量を測定した。測定した検知管の結果を「ぼうけんくん」で撮影し,テレビにつけた受信機に送信することで様々な結果を共有した。また,共有した多様な実験結果をもとに,自分の生活との関わりという観点から自分の考えをつくった。子どもたちは「どの暖房器具も二酸化炭素を出している。」「私が使っている暖房器具も二酸化炭素を出していた。」という考えをつくった。
    【あつめる活動】では,個人でつくった考えを全体で交流した。自分の考えと友達の考えを比較して共通点を考え,二酸化炭素増加の要因についての多様な考えを集めることができた。
    【つくりあげる活動】では,集めた自他の考えをもとに,地球規模の二酸化炭素増加の要因について考えた。自分の考えや生活の振り返り,友達の考えとの比較等をもとに,地球全体としてはわずかだが,自分自身の生活が地球上の空気と関わっており,自分の生活を見直す必要があるという考えをつくりあげることができた。

本時の学習では,実験でつくった複数の暖房器具の二酸化炭素排出量というデータとそのデータに対する考え【つくる】について全体で共有したり,小グループで話し合ったりした。その際,自分が調べていない暖房器具の結果や自分とは異なる視点から考えた友達の考えに触れ,集めることができた【あつめる】。それを基に自分の考えをつくり上げる際に,必要な実験結果や友達の考えを選択しながら組み合わせて,自分の考えをつくりあげていった【つくりあげる】。その際,自分自身の生活と地球全体の二酸化炭素増加の関連という観点をもとに,自分の考えに多様な友達の考えと比較しながら考えた。そして,「地球全体の二酸化炭素の増加と比べるとわずかだが,自分の生活からも二酸化炭素を排出している。地球環境を守るために,自分にできることから始めていこう。」と自他の考えを組み合わせながら,最終的な自分の考えをつくりあげることができた。複数のデータや自他の考えから選択し,新たな自分の考えへと組み合わせることができた【情報編集力】。

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【表現のよさを集める子ども】

・第1学年図画工作「ゆめの マイホーム マイタウン」の実践について

本題材は楽しくすごす家「ゆめのマイホーム」を想像し,自分の表したい楽しいことを箱や身辺材を使った様々な表現方法で表現することができることをねらっている。 そのために,【つくる活動】では,自分の表現主題を具体化させるために,「ゆめのマイホーム」全体の大まかな形を表現するためのイメージマップから「ゆめのマイホーム」の全体像をもち,作品をつくっていった。【あつめる活動】では,もっと楽しい「ゆめのマイホーム」にするために友だちの「ゆめのマイホーム」からビデオカメラを活用させ,材料や表現方法のよさを集めさせた。【つくりあげる活動】では,自分の表したいことのイメージの形や色を交流し,イメージに合った材料や表現方法を選択して表現した。

自分がすごすマイホームを作成するために,イメージをもって作品をつくり【つくる】,同じ表現主題の友達の作品から多様な材料や方法を集めた【あつめる】。集めた情報からマイホームに必要な材料や方法を選択し,表現主題を表すことができる作品へとつくりあげることができた【つくりあげる】。自他の作品を比較しながら,よりよい作品へと表現することができていた【情報編集力】。

◆アドバイザー(宮崎大学 新地辰朗先生)の助言

ICT機器や思考ツールはいかに活用していくかが大切であり,教師が意図的に仕組んでいくことで,学習活動を充実させることができます。ICT機器や思考ツールを従来のメディア(アナログのもの)とどう組み合わせていけば学習効果を上げるかを考えていく必要があります。本校の研究は,各教科における「情報」を明らかにした上で,課題解決の段階において必要な情報を取捨選択し,自分の考えに取り入れていくことで各教科における内容を子どもたちに捉えさせようとしているところに特徴があります。また,ICT機器や思考ツールに頼るのではなく,従来から大切にされている言語活動と組み合わせたり,板書でまとめたりといったことを大切にされているところが研究発表会でも参観することができました。

3月

(1)来年度に向けたカリキュラム検討

文部科学省の開発学校指定の期間も終わり,来年度から情報科としての時数が確保できなくなる。しかし,これまでの成果を考えて,情報科としてのA,B,C領域について,各教科・領域等との関連を図りながら,引き続き,実践していくことにした。そこで,各教科部で,来年度のカリキュラムに位置付けることができる内容があるかどうか検討し,提案しあった。その中で明らかになったのは,各教科・領域で関連できるのは活動や教材であること,位置付けるとしたら単元の導入時に位置付けるか,単元の発展として位置付けるかということである。資料1のような一覧表を各教科部から提案し,各教科の特色や重複等を検討しながら,情報科の題材を全学年,全教科領域で資料2のように割り振った。特にICT機器の操作技能を身に付けさせるB領域とモラルやマナーを身に付けさせるC領域は,関連を配慮しながら検討していった。

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(2)教科と情報科の関連表作成

カリキュラムを検討したら,来年度に生かせるようにしないといけない。そこで,割り振られた情報科が,各教科・領域とどのように関連し,授業として位置付けていくのかを資料3のように関連表を作成した。この関連表を作成することで,来年度の新体制になってもスムーズに授業を実践することができると考えられる。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

◇研究発表会のアンケートのコメントから・・・

【情報科に関して】

何より,全国からたくさんの先生方に参観していただき,提案することができたことが挙げられます。3つの領域のねらいや指導過程が明確になっていることや子どもたちが学習する姿から情報科の重要性を理解していただいたことがうれしかったし,今後の励みになります。

【 ICT機器を活用した授業に関して】

子どもたちがICT機器を使いこなしている姿に参観された先生方が驚かれていました。また,ICTを授業の中で活用することで,子どもたちの思考や交流が活発になり,各教科・領域のねらいの達成のために有効であることが主張できたと思います。また,デジタルな機器だけではなく,付箋紙やホワイトボード,カードといったアナログなものも有効であり,子どもたちが各教科・領域の内容を捉えるために,私たちが考えてきた授業づくりを多くの先生方に提案することができました。

◇発表会に向けてのICT機器の調整等・・・。

この2年間で,本校のICT機器は大変充実いたしました。また,先生方の活用も充実してきたのも事実です。そこで,実際に研究発表会に向けて,使用するICT機器を考える際に,どの授業でどのICT機器を使うのかという調整が必要です。また,発表会当日も午前中の授業で使用したICT機器を午後の授業でも使用しないといけません。その場合,保管や充電が必要です。本校職員で運営しますので,細かな役割分担が必要です。場合によっては,突発的に対応しないといけない事態も起こりえます。職員全員が発表会に向けて,成功させたいという思いから協力しながら発表会を成功させることができました。

また,このような作業等は本校職員だけでは十分にできません。パナソニック教育財団の先生方や大学の情報処理センターの先生方のご指導,ご協力があってのものです。感謝申し上げます。

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成果

 

研究発表会で,情報科の授業を全国の先生方に子どもが学ぶ姿で提案することができた。また,発表会での授業実践や協議会において,各教科・領域の中でどのように情報編集力を働かせるのか,ICT機器をどのように有効に活用するのか提案したり,協議したりすることができた。
発表会終了後は来年度のカリキュラムの作成,実践に向けて全職員で共通理解のもと,研修を行うことができた。また,実際に来年度の新体制のもと,スムーズに実践していくための準備と見通しができた。

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2年間の取り組みの成果

 

□新教科「情報科」について,教科の目標や内容,教材等,提案することができた。

□情報編集力とは何か,各教科・領域で情報編集力をどのように働かせていくのか,子どもの学習を基盤として検討していき,研究発表会でその姿を提案することができた。

□ICT機器を授業の中にどのように位置づけるか検討し,実際に実践できるようになった。教師の活用も幅が広がりや子どもたちの技能の高まりも見られた。また,技能だけではなく,ICT機器を活用することによる思考の高まりも見られた。

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2年間の取り組みと成果についての自己評価・感想

 

「情報科」については,何もない状態からのスタートでした。「情報」とは何か,「情報編集力」とは何かを研修で協議しながら,分析授業を実施して子どもの姿で検討しながらの2年間でした。また,ICT機器をどのように活用するのか,どのように授業の中に位置付けるのかという点については,日々の授業からの改革でした。ICT機器の使用がねらいではなく,いかに活用しながら各教科・領域の本質に迫るのかという点から検討していきました。そのための機器の台数やLANの状況も初めは十分なものとは言えませんでした。先生方に積極的に活用していただき,授業実践の中から,そして子どもたちの姿から,よりよいものを模索していった感じです。2年間の取り組みの中で,私たちは授業と子どもの姿を大事にしてきたからこそ,2年次の研究発表会の成功につながったと思います。

また,先ほども述べていますが,ICT機器は十分に使用できる状態ではありませんでした。パナソニック教育財団の先生方や大学の情報処理センターの先生方のご指導,ご協力なしには,本研究は成し遂げられなかったと考えます。

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今後の展開

 

□3月に検討した来年度のカリキュラムを実践していく。そして,ICT機器の効果的な活用等をさらに見直していく。

□情報科に関する内容や教材,ICT機器の活用の仕方等,授業実践を通してさらに検討していく。また,地域の小学校等への発信を行う。

□定期的な情報機器のメンテナンスや情報教育の研修を通した教師のICT機器の使用技能や授業における活用の向上を図っていきたい。

□本年度までの「情報科」,「情報編集力を働かせる活動」に関する著書の発刊に向けた研修を実施していく。

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アドバイザーコメント

宮崎大学大学院 教育学研究科 教授 新地 辰朗 先生

 

今後,小学校,中学校,高等学校で,児童生徒の情報活用能力を高めようとするとき,日頃の学習活動に,情報や情報手段の多様な活用を柔軟に組み込むことが期待されます。その際,教科のねらいの達成,主体的な問題解決能力の向上等が同時に求められます。したがって,教師にとって,そのような授業や単元等をデザインする機会が増えるものと予想されます。

今回,久留米小学校より提出された活動報告書の中で,2月の取り組み内容として示された「(3)情報編集力を働かせる活動におけるICT機器の有効な活用」の内容は,前述の情報活用能力を高めるデザインに関わるものと評価できます。第6学年理科「生物と地球のかんきょう」及び第1学年図画工作「ゆめの マイホーム マイタウン」の授業実践を紹介しながら,情報編集力を働かせる【つくる活動】,【あつめる活動】,【つくりあげる活動】の内容と,それらの活動の教科等の内容理解への寄与について説明されています。

研究課題「情報編集力を育てる教育課程の創造」を追究する中で,各教科等の特質に応じた学習過程における【つくる活動】,【あつめる活動】,【つくりあげる活動】について,それぞれの教科部による検討を重ね,各教科等の内容をしっかり捉えさせながら,情報活用能力を高める学習活動のデザインを全職員で模索・共有された2年間であったと思われます。

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