・春日学園つくば市立春日小学校・春日中学校 /平成26年度4-7月期 |
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研究課題と成果目標 |
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[研究課題] ICTを活用した 思考力・判断力・表現力を育む授業づくり 協働学習ツールを1年~9年の全学年で系統的に利用し,学習の質が高まり児童生徒の論理的思考力が向上するのではないか。 [成果目標] ICT(協働学習ツール)とタブレットを活用した学級の枠を超えた他校等との協働学習の実践として,この機能を活用して,他校の児童生徒と1つの課題について協働で解決していく学習を実現していく。 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応 |
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(1)3-1 つくばスタイル科(単元 たんけん!われらのまち) ○目標 町探検で分かったことや考えたことを地図やコンピュータでまとめ発信することで,人間の生活が社会や環境を変化させることを認識する。 ○内容 国語科の単元「かんさつしたことを書こう」,理科の単元「しぜんのかんさつをしよう」,社会科の単元「わたしのまち みんなのまち」の学習と関連づけ,追究活動から明らかにした地域の特色をスタディノートにまとめ,掲示板機能を活用して他学年児童に向けて発信する。 (2)4-1 国語科(単元 目的による表し方のちがいを考えよう) ○目標 広告と説明書を読み比べ,目的による表し方の違いを理解することができる。 ○内容 広告と説明書を読み比べることで,論理的なものの見方や考え方を養うことができる。読み比べの活動の際に,共通点と相違点を明確にするために得た情報を再構築し,考えを整理するために,「考える時間」で学習したベン図を活用する。また,情報を分類する際にはXチャートを用いるなど,自分の考えを可視化させるために,思考ツールを積極的に取り入れていく。これらの活動を通して,論理的に考え,表現する力の育成を目指す。 (3)6-4 算数科(単元 円の面積) ○目標 さまざまな図形の面積を求める方法を考察し筋道を立てて説明することができる。 ○内容 論理的思考力を育成するために,2点手立てを講じた。1点目は,学習課題の工夫である。児童が思考力を発揮するためには,まずは解いてみたいと心から思えるような学習課題の設定が大事なのではないかと考えた。そこで,日常生活で起こり得る状況,児童にとって身近な状況を学習課題として設定した。2点目は,解答方法の工夫である。課題に「私は~であると考える。なぜなら~だからである」という形,根拠をきちんと示して答えるよう指示することで,思考ツールの1つ「キャンディ・チャート」の学習で培った「推論」のスキルを活かせるように促す。 (4)8-1 国語科(単元 ものの見方や考え方 ~卒業ホームラン~) ○目標 小学校生活最後の20連勝が懸かった試合での智への対応について,共感できるか否か根拠を明確にして考えることを通して,監督であり父である徹夫の葛藤する心の変容を読み取り徹夫の人物像を構築することができる。 ○内容 自分の考えを明確にする手立てとして,「考える技」を活用する。中でも「多面的」に見たり「分析」したりして読み取り,「構造化」することにより,曖昧であった自分の考えを明確化する。そのための道具が「考える道具」である。これは,人に伝えるためにも,分かりやすい。なぜなら,道具となる各ツールのスペースは限られており,キーワードを明確にして要約する力が要求されるからである。本単元では,考える道具として「くま手チャート」「ボーン図」「ピラミッド・チャート」から選択して活用する。 |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など) |
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財団の助成が決まってから,本校職員の思考ツールの学習に対するやる気が高まってきた。いつデジタル化できても良いように,普段の授業でも思考ツールを活用した授業の実践が見られるようになってきた。7月初旬に教育委員会の訪問があったが,ほとんどの教員が思考ツールを活用した授業を展開していた。はやく機材が来ないかなと待ち遠しい日々である。 |
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成果 |
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本学園では,まだ,タブレットを調達することができていない。 そこで,タブレットが導入されてからスムーズに思考ツールの活用ができるように,今回は紙ベースの実践を実施した。 7月までにすでに3回実施したため,児童生徒は思考ツールの活用に関しては,違和感なく利用することができるようになってきた。 早く,思考ツールをデジタルに置き換えた授業の実践に取り組みたい。 |
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今後の課題 |
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現在の課題は,タブレットを40台調達することである。9月には思考ツールを実践できるタブレットを調達し,さまざまな教科で,比較検討したり,構想したり,創造したりする場面に思考ツールを活用していきたい。 |
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公開研究会の計画 |
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アドバイザーコメント |
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大阪教育大学 教授 木原 俊行 先生 |
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小中学校の教師たちの共通の道具としての思考ツールの活用 春日学園(つくば市立春日小学校・春日中学校)を訪問すると,まず,その建物の立派なことに,多くの方々は驚きを禁じ得ないだろう。同学園の特別研究指定校の取り組みを助言する立場にある筆者もまた,その外観に圧倒された。上の写真のように,美しく,洗練されたデザインの校舎に,最初は,魅せられる。続いて,校舎内に入ると,学習のためのリソースが量的・質的に整備されていることに感心させられる。例えば,下の写真は,教科学習(美術科)の発展的な学びを子どもたちにイメージさせるための作品コーナーである。春日学園の校舎内には,このような学習に対する関心を呼び起こす,巧みなしかけが数多く用意されている。 そして,春日学園には,上述した,すぐれた器に見合う授業とカリキュラムがたっぷりと用意されている。学校の報告に載せられた写真を再度ご覧いただきたい。子どもたちの姿勢や表情に,彼らの学びの充実を確認できよう。筆者は,6月23日に数多くの授業を見学したが,いずれの授業においても,子どもたちが学びに夢中になっている姿を確認できた。それは,多様な解がありうる学習内容に関して子どもたちが主体的に思考をめぐらせる場面において,顕著であった。そして,子どもたちが教材を十分に味わい,そのよさをかみしめるための道具として,思考ツールが授業に導入され,機能していた。これもまた学校の報告の文章や写真で確認できるが,子どもたちは,当該ツールを巧みに活用して,分析活動や表現活動を連続・発展させていた。 6月の時点では,残念ながら,タブレット端末が配備されていないため,思考ツールがデジタル化されておらず,春日学園の教師たちは,まだ直接的には研究課題に迫れていなかった。しかしながら,タブレット端末が配備されれば,それが十分に活用され,子どもたちの論理的思考はさらに発展するに違いないという確信を筆者は抱いた。それほど,春日学園の授業とカリキュラムは,豊かであった。今後の実践研究のさらなる充実に期待したい。 |
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