#02 表彰式 第40回 実践研究助成
一般助成 研究成果報告書 優秀団体表彰
成果報告会の冒頭、平成26年度の一般助成校・団体の中から、優れた研究成果を上げた事例への表彰が行われました。各校・団体が提出した研究成果報告書を、大学の研究者を中心とする評価メンバーが選考するもので、今年度から導入された新しい取り組みです。
最優秀に選ばれた長野市立若穂中学校の他、優秀4事例、佳作10事例が表彰を受け、評価メンバー代表の木原俊行・大阪教育大学教授が各校・団体の取り組みを総評しました。
本校は平成24・25年度の市の研究指定を受けICT活用の実践研究を開始し、25年度にはタブレット端末を活用した授業提案を行いました。この研究では、グループに1台のタブレット端末を導入することにより、生徒同士の話し合いや協力といった協同的な学びが多く見られることがわかりました。26年度は財団の助成を得てグループ用のタブレット端末を購入し、「生徒が互いに聴き合う」授業のための効果的な活用方法を探りました。
当初想定していた成果は、[1]学力が定着しづらい生徒の学ぶ姿勢の高まり、[2]学級や学年の生徒同士の関係の深まり、[3]基礎的学力の定着、[4]「わかる」生徒の増加です。
[1][2]については、学力が思うように定着しない生徒や授業に意欲的に取り組めない生徒も、積極的に考え、わからないところを友達に質問する姿が見られるようになりました。自主学習の方法を聞いたアンケートでは、44%の生徒が「友達と行いたい」と答えており、タブレット端末の活用を通じて、だれとでも学び合おうとする態度や、生徒間の信頼関係が培われていると感じています。
一方で、学習した技能や知識の定着を見るテストでは、いずれの教科でも優位な差は見られず、授業への意識や関心の高まりを基礎的学力の定着につなげるためには、一段の工夫が必要という課題が見えてきました。本研究の成果と課題を踏まえ、各教科で継続利用できるハード面の整備を行いながら、今後も独自に実践を続けていたいと考えています。
木原 俊行 大阪教育大学 教授
一般助成校の研究成果には、従来から優れたものが数多くありましたが、研究成果報告書を評価し、優秀な取り組みを表彰すると共に、報告書を冊子化するのは初めての試みです。
私を含む6人の研究者が、いくつかのポイントを踏まえて研究成果報告書を評価しました。1つめの評価ポイントは、研究内容・活動の創意工夫が見られ、実践的なアイディアが豊かであること。具体的には、[1]学校全体での組織的取り組み、[2]学校の個別的課題に迫っている、[3]課題解決へのアイディアが豊富、[4]地域の学校・大学などとの研究ネットワークの構築です。
2つめのポイントは、研究の成果を量的・質的データを示し説得していること。3つめは、問題解決の過程における躓きや悩みにも言及し、自校の研究をより多くの学校に普及できる知見が含まれていることです。
4つめとして、取り組みの自己点検と改善への展望を評価しました。一般助成は単年度ですが、研究は終わりなき旅路です。子どものため、仲間のために、次の取り組みを構想することは重要です。そして5つめは、わかりやすい文章、図表や写真の適切な使用といった表現の工夫です。
表彰された15事例は、地域や校種、研究テーマは異なりますが、いずれも上の評価ポイントを高いレベルで満たしています。守るべき点をきちんと押さえれば、研究のスタイルやアウトプットには多様な形が認められるということを、15の研究成果報告書が力強く物語っていると思います。